表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/37

No.18




 No.18




 子供達の件を終えたシンは、残されているもうひとつの仕事を今日中に片付けて終おうと思っていた。


 「まだやりきっていないのは……『町の地図作り』だけでしたね。本当は時間一杯まで使って、観光がてらに仕上げようと思っていましたが、こうなると時間が足りませんか……。仕方ありません。一区でも言いと言うことなので、そちらに切り替えましょう」


 少々残念な気持ちに為りながらも仕事を完遂しなければと、持っている『白紙の地図』を広げる。

 白紙だった地図にはシンが通ったルートの道が書かれている。が、描かれている地図はあっちこっちに行ったり来たりと言った具合に、虫食い穴と表現した方が良い描き方になっていた。


 「『配達』をしていましたからね。これは仕方有りません。居住エリアの方が幾分埋まっていますか。ではそちらの方面を埋めてしまいましょう」


 『商人ギルド』への買い物はこれが終わってからすれば良いと判断したシン。

 そして仕事に意識を切り替えるいつもの言葉を。


 「それではーーーお仕事を始めましょうか」


 シンは地図を片手に町を散策していく。

 大通りを。細道を。隈無く通って行く。時折脇道に柄の悪い者達が居たりもしたが。それを難なく躱して、地図の制作を順調に進めていくのであった。


 「……この辺りに一本道が在りそうな気がするのですが、壁ばかりで道らしいものは在りませんね。区画整理と言うことで道が無くなったのでしょうか?」


 シンは浮き上がっている地図を見ながら、今通っている道には横道が一本在る筈だと首を傾げていた。

 よく不完全な地図から道が在ると推測できるものだ。まあ確かにこの辺には一本道が在ったが、はて? いつの間に無くなったのだろう? (トゥルルル。トゥルルル) おっと電話だ。誰だろう? 失礼。少しの間だけ役目を離れさして貰う。

 はいもしもし。こちら現在お仕事中の語り部(ナレーター)です。


 語り部(ナレーター)が指を親指と小指だけ伸ばし。電話をの様な形にすると、目の前に仮想画面が出現する。

 その画面にはギリシャ神話に登場する女神と思わせるような、金髪碧眼に真っ白なドレスを着た女性が現れた。


 《すみません語り部(ナレーター)さん。先程の一件(シンが倒したモンスター)で渡界者(プレイヤー)の方達から問い合わせが来ています。如何致しましょうか?》


 おお、響子さんか。さっきのモンスターな。例の因子の影響を受けたヤツだったか?


 《間接的に、となります。ですが問題ないレベルのものでした》


 なるほど……。あいつは何て言っている?


 『今回の件は意図したものではないだろうと言っておられました』


 そっか。じゃあ以前話していたプランを前倒しでやってくれ。


 『モンスターの特殊スキル付与の件ですね。わかりました。では今回の一件は告知が出来なかったことのお詫びと、一部内容を公開でよろしいでしょうか?』


 まあその辺りが妥当だろう。文句言ってくる渡界者(奴ら)が居たらいつも通りの対応でよろしく。


 『お仕事中に申し訳けありませんでした』


 いや構わないよ。そっちもこの世界の管理は大変だろうが頑張ってくれ。


 『ありがとうございます。……あの、私的なご質問になるのですが、何故私のことをいつも『響子』さんと、お呼びになるんでしょうか?』


 ん? 管理人さんって言ったら『響子』さんだからさ。


 画面越して困惑した表情を見せる管理人(響子)

 もう告げるべき事は告げ終えた。次にやるべき事もあるので、それ以上は何も言わず。語り部(ナレーター)には『失礼します』と言って、通信を切るのであった。


 渡界者達(あちら)の対応は任せておけば平気だろう。よし皆さんお待たせしました。ナレーションを続けーーーあれ? シン()は!? どこ行った!?


 語り部(ナレーター)管理人(響子)と話している間に、シンは何処かへと消えていたのである。


 やべぇ!? 見失った!? 管理人(響子)さんに連絡して探すのは、今は渡界者達の対応を始めたから無理か。くそっ! ホントどこ行ったんだ!?


 シンが何処へ消えたのか探し回る語り部(ナレーター)

 そしてその件のシンはと言うと。




 ☆★☆★☆




 「……隠し扉とは。町中に作るものではないと思われますが、しかし一体ここは何処でしょうか?」


 シンは壁の一部に違和感を感じ調べていると、カラクリ扉のようなモノを発見した。

 シンがその扉を潜ると、本来細い路地裏であるにも関わらず、何処かの洞窟の様なトンネルの様な場所の通路に迷い込んでいた。

 しかも通ってきた扉はいつの間にか消えていたので、進む以外の道が他になかった。

 そして薄暗い通路の奥からは、何かを金属製の物でリズミカルに叩く音と。子供のような若い男の子の楽しげな声が響いて聞こえてくる。


 ひとつ作っては~父のため~♪

 ふたつ作っては~母のため~♪

 みっつ作っては~僕の趣味のため~♪

 ああ~♪ エンヤトット♪ エンヤトット♪


 「……賽の川原の歌と盆踊りの歌が混ざったような歌になってますね。……もしや鋼霊人族(ドワーフ)の方がいらっしゃるのでしょうか?」


 ゲオルグ達が思い出される。

 もしやこんな場所でもミュージカル(仕事)をしているのかと疑問に感じたが、現状何か宛があるわけでもないので、先に進むことにした。

 そして奥に行くと歌の主が分かった。

 歌の主はツルハシを振り上げ。この場所を開拓しているようであった。


 「人……ですよね?」


 薄暗い通路でも人型の姿をして要ることは分かる。

 しかし如何せん体のあちこちが四角く角張っている。ブリキのオモチャとか言われた方が適切だと言える容姿をしていた。


 「あの様な姿の種族の方はいらっしゃらなかった筈ですが……? 私の記憶違いでしたか?」


 渡界者や現地人。そのどちらかであることは間違いないだろうと、シンは意を決して歌の主に声を掛けた。


 「失礼します。私は渡界者のシンと申します。すみませんが、ここは一体町のどの辺りになるのでしょうか?」

 「え? あれ? お兄さんどうやって僕のプライベートルームに入ってきたの?」

 「プライベートルーム……? 確か個人専用のサーバーの様なものでしたね」


 どうやってプライベートルームに入り込んだのだろうと首を傾げる。

 プライベートルームは専用のIDかパスワードがなければ入室することが出来ない場所であるからだ。


 「もしかしてお兄さん。アコルの町の細道に隠していた扉から入ってきちゃった?」

 「ええ、確かに隠し扉らしき場所から入って来ましたが、問題が、ありますね。申し訳ありません」


 他人のプライベート空間。おいそれと入ってきて良い場所ではないと謝罪する。


 「ああ、そっか。ううん。それは良いんだ。誰かが見つけてくれるように作った入り口だから。でも困ったなぁ。まだここ完成してなかったんだよ」


 歌の主の表情が困ったなと言うような顔になり。四角く角張っている体で腕組をして何かを考え始めた。


 「出口をお教えして頂ければ直ぐに出て行きますので」

 「ああごめんごめん。君を悪く言った訳じゃないんだ。僕のプライベートルームは他の渡界者達の為のアトラクションルームって言えば良いのかな? それがまだ未完成だったから。みんなを楽しませる場所だったのにと思って、ね」

 「そうだったのですか。ここの事は誰かに漏らすようなことは致しませんので」

 「あっははは。それだと誰も来てくれなくて、作った意味がないよ」


 歌の主はシンが入ってきた入り口を広めても良いと言い。

 そして思い出したかのように自らの手を打ち。


 「そうだ! 未完成とは言え、君は僕の所までたどり着いたんだから、賞品をあげなきゃ」

 「いえ私は偶然ここを見つけただけですので……」

 「気にすること無いよ。これはみんなに言ってる事だからね。僕の所までたどり着いた人には賞品をあげる約束なんだ。ただしーーー」


 そこで陽気に接していた歌の主の気質が変わった。

 しかしシンは歌の主の気質が殺気や邪気と言った感じではなく。無邪気と言った感じがしたので慌てる事なく。歌の主の言葉の続きを聞く。


 「この三つの宝箱から選んで貰うけどね!」


 そう言って歌の主の目の前に突如三つの宝箱が現れる。


 「さあ! この三つ宝箱からひとつを選んで! それが君への賞品になるよ! 中身が何か気になるって? よろしい! 答えましょう! ひとつは僕お手製の超絶レアアイテムセット。二つ目はかなりレアな素材セットに。最後はざ~んねん! ポーション詰め合わせセットだよ!」


 ジャッジャーン♪ と、効果音をつけて紹介した。


 「いえ、あの、本当に結構ですので」

 「これは僕のルールでもあるからね♪ 君には悪いけど最後まで付き合ってもらうよ~♪ さあ♪ ど・れ・が・い・い?」


 楽しんでいる雰囲気がこれでもかと言うほどに伝わってくる。


 「ではこれで」


 シンはこの手のタイプは自分の意見を聞いてくれる人物ではないと判断。相手の求めるものを提示し。早めに終わらせるのが良いと宝箱を選ぶ。


 「……ファイナルアンサー?」


 歌の主は少々シンの即決な判断に驚きはしたが、再確認のために再度問う。


 「ええ構いません」

 「……本当にぃ~?」

 「はい」

 「…………お兄さん。友達からユーモアが足りないって言われない?」

 「知人からはよく変わった人間だと言われますが?」


 煽っているのにも関わらずシンあまりにも動じない態度に素で聞く歌の主。


 「まっいいや。これだね! では賞品はこちらら! パンパカパーン♪ おおッ!? スゴーイ! 大当たり~♪ 僕のお手製超絶レアアイテムセット~♪」

 「そうですか。ありがとうございます」

 「……お兄さんぜんぜん嬉しそうに聞こえないよ」


 シンの変わらずの態度に、自分のペースが崩される歌の主であった。




 【藍の衣服三点セット】+10 製作者:トイ・ボーイ

 防御力:+10 耐久性:136 付加能力:闇の収納魔法(極)


 ()星力(プラーナ)の力を布に込めて作られた小袖。袴。羽織の三点セット。

 防御力を犠牲にして、収納率を極限まで高めた一品。

 最大収納量は重さ百トンまで可能な衣服型収納箱(ボックス)となっている。


 ※注意一

 この三点セットを装備しないと付加能力は発揮されない。


 ※注意二

 生きた生物は収納出来ない。また収納された物は外界時間(グローリア)とリンクしている為に、時間経過と共に品物は劣化していく。


 ※注意三

 衣服が全損した場合、収納されていた物は全て外界へと出される。

 

 ※補足説明

 衣服が破けるとインナーのみになるから、イヤーンまいっちんぐ❤ だよ。




 「これは……!? 私が望んでいた物ですね!」

 「え? ホント!? この宝箱ランダムで中身変わるから、欲しいのが出てきたんなら僕も嬉しいよ!」

 「はい。衣服を買おうと思っていたので丁度良かったです」

 「え!? そこ!? アイテムの中身じゃなくて!? そこなの!?」

 「いえ中身も大変素晴らしいものだと思います。残念ながら私にはその価値が分かりませんが」

 「あ、うん。そうなんだ。うーん。このお兄さん相手だと調子が出てこないなぁ」


 シン相手だといつもの調子が出ないと首を捻る歌の主。改めてトイ・ボーイ。


 「トイ・ボーイさんと言われるのですか?」

 「YES I AM! 中に人などいません! もちろんみうらちゃんもいません!」


 腕を十字に切り。胸を張って自分は被り物ではありません。この姿がデフォルトですと言う。


 「これを頂いても宜しいのですか?」

 「あ、うん。どうぞ……ダメだ! やっぱり調子が出ない!」


 スランプに陥ったと嘆き始めた。

 こんなんじゃトリックスターの名折れだと、どうにかしてシンに驚きと興奮と嘆きのキッスを君に与えたいと思い悩むトイ・ボーイ。


 「この収納には使役するモノ(サーヴァント)も可能なのでしょうか?」

 「使役獣(サーバント)? あれも生き物だから無理だよ。注意事項に書いてあるけど、生物は取り込めないんだ。死体とかだったら可能だけど」

 「私の使役するモノ(サーヴァント)は刀剣なのですが、意思を持っています。となると体が有機体なら生物なのでしょうか? それとも無機物でも意思を持っていたら生物と認識されるのでしょうか? 哲学的な話のような気もしますね」

 「ちょっ、ちょっと待って!? もしかしてお兄さん使役獣(サーバント)じゃなくて、使役するモノ(サーヴァント)の方を言っているの!?」

 「はい? ああ同じ言い方なのでご理解されなかったのですね。はい確かに。私が言っているのは使役するモノの方の使役するモノ(サーヴァント)です」

 「うっはー!? さすがの僕も驚いた!? もう使役するモノ(サーヴァント)を召喚できる人が要るなんて! 彼の予想ではもっとずっと後の筈だったのに……うん? こんな話し前に聞いたような気がする?」

 「どうかされましたか?」


 突然驚いたかと思えばぶつぶつと何かを呟き始め考え込む。


 「え? ああごめんごめん。こっちの話し。それでお兄さんの使役するモノ(サーヴァント)が収納できるかだね。刀剣類と言うことなら収納量を越えなければ、多分収納できる筈だよ。呼び出して収納してみれば?」

 「宜しいのですか?」

 「この空洞内より大きくはないでしょう?」

 「ええ。それは勿論」

 「なら呼び出して試した方が良いよ」

 「では失礼させて頂き」


 シンはトイ・ボーイに礼を言い。使役するモノ(サーヴァント)である百地を召喚する。


 『なっはっはっはっ! 呼ばれて飛び出て俺様。百地様参上だあ! おう! おう! おう! 今日はどこのどいつをぶった斬ればいいんだ! ん? この妙チクリンな奴か?』


 召喚陣より高いテンションで現れたのは大剣百地。

 ハバキの辺りからギョロリと生物の目を現して辺りを見回す。するとトイ・ボーイを見つけて、斬るのかと問う。


 「この方はお世話になった方です。敵ではありませんよ。ちょっと試させて頂きたいことがーーー」

 「へえー刀剣類って聞いたけど。インテリジェンスウエポンの類いじゃないね。これは、生物の類いのものだね。とすると、人工霊人族(ツクモ)の一族! うわあ! 本当に珍しい一族だよ!」

 『よく知ってんな。なんだお前さん文屋か? なに? 俺様の事が聞きたい。よーしよし! ならその耳かっぽじって聞きやがれ!』


 シンがトイ・ボーイが貰った【藍の衣服】の能力を試そうと百地に頼もうとしたら、トイ・ボーイが百地を物珍しげに見て。百地の正体を看破する。すると百地が誰も聞いてもいないのに怒濤の勢いで自分の事を語り出す。

 途中シンが百地の言葉を止めなければずっと喋っていたことであろう。
















次回の更新は1月20日となります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ