No.17
No.17
『はぐれ異界の門』より出現した赤黒い鬼を倒したシン。
それにより門は急速に閉じていき。アコルの町は門からの脅威が無くなったのであった。
その後事後処理等を騎士達に任せ。それぞれが再び思い思いの行動を取っていく。
そしてシンもまた、翌日より罪人としての罰を受けねばならないため、孤児院の子供達と約束したことをなんとか守れるように出来ないかと、導き者・Dに相談するため『高殿の搭』へと向かった。
「はあ? 孤児の子達に依頼を任せたい!?」
「はい。お手伝いと言う形で彼らにも手伝って頂いていたのですが、少々私の方でどうしても彼らと共に依頼を受けられなくなりそうでして」
「それでその子達だけで依頼を受けられるようにして欲しいと」
「なんとかお願いが出来ないでしょうか?」
拝み倒すように願うシンに導き者・Dはため息を吐き。依頼受付のカウンターへと行き。そこの人間と一言二言話すとシンの下へ再び戻った来た。
「これをその子達に渡しなさい」
渡されたのは手のひらに納めるほどの大きさの真鍮のメダル。
それには彫り物がされており。絵柄は『高殿の搭』である。
「これは?」
「特別許可証。何らかの事情で渡界者本人が依頼を受けられない時に発行するものよ」
「そんなものが」
「言っとくけど。それはあなたの名義で貸し与えるものよ。それを渡した相手が何か問題を起こせば、あなたにもその罰が行くことになるわよ」
「分かりました。その事は彼らにも重々承知させておくように言い聞かせておきます」
「そう言うことじゃないんだけどね。……ハァ、好きになさい。あなたが変な渡界者だって言うのは始めからだものね」
特別許可証を使い悪逆を行えば、例えシンが何もしていなくとも罰せられると導き者・Dは言っているのだが、そんな事で臆したり躊躇ったりする人間ではないと諦めた。
「ああそれと。『はぐれ異界の門』を閉じるのにあなたが尽力してくれたと騎士団から連絡を受けたわ。町の人達に代わってお礼を言わせて。ありがとう」
「いえ、たまたま居合わせただけです。それに私ひとりの力だけではありません。騎士の方や他の渡界者の方達もお力を貸して頂きました」
決して自分一人だけではないと、そう謙虚に語るシンに、自分が受けた報告と大分食い違いが有ると首を捻る導き者・D。
しかし目の前の男が変わった人間であると思い出し。あとで調べれば分かるだろうと今の話を取り合えず流した。
「少ないけど報償金が出てるわよ。どうする?」
「そうですね? どうしたら良いでしょうか?」
「あなたね……」
そんなことは自分で考えなさいと言うような呆れ果てた目で、シンを見つめると。
「正直頂いてもこちらでは使い道が思い浮かばないのですよ」
「ならあなたの場合は先ずその身なりをどうにかしてみたら? 来たばかりの渡界者ですって格好だし。着飾るのも良いかもよ。
他にはモンスターを相手にするなら武器防具を買い揃えておいた方が良いわよ。あとはそうね。回復アイテム類の消耗品を買うとか。私が思い付くだけでもぱっとこれだけ出てくるわよ」
「なるほどな。身なりですか。武器は百地さんがいらっしゃいますからそちらは良いでしょう。防具ですか、防弾防刃チョッキの様な物がこちらにもありますでしょうか? 消耗品と言うと弾薬が思い浮かびますが、百地さんは刀剣ですからね。意味がありません。となると非常食的なものですね」
「知らないわよ。目ぼしい物がわかったのなら商人ギルドへ行ってみなさい。大概の物はあるから。それでも無ければ渡界者が出店してる店を見て回りなさい」
その後もシンは導き者・Dに様々なことを聞いた。
最後の方は導き者・Dが「私に聞くより。まずは自分で見聞きしてきなさいよ!」と、呆れるほど質問してくるシンに若干キレ気味に答えていたが、それがお前の仕事ではないのだろうか?
そんなキレた導き者・Dに質問に答えてくれた礼を言い。総合ギルドにて『はぐれ異界の門』を閉じた事への報償金を貰う。
「はいご確認ができました。今回の報償金に関してですが、五十万リーエンが出ます。また未受理のご依頼のものがありますが、いががいたしましょう?」
「未受理? ああゲオルグさんのやつですね。ではそちらもお願いいたします」
「わかりました。受け渡しは現金がよろしいですか? それともユニークカードへのチャージをお望みになりますか?」
グローリア内での貨幣の呼び名は『リーエン』。それぞれ賊貨。鉄貨。銅貨。青銅貨。銀貨。金貨。白金貨と、上がっていく。
またそれぞれの貨幣の間には半貨と呼ばれる貨幣や白金貨以上になると紙幣が存在する。
それから渡界者の持つユニークカードだが現金チャージが可能である。チャージしたものはギルドや渡界者同士だけとなるが、品物をカード内の残金で買うことが出来る仕組みとなっているが、こんな話は覚えておかなくても良い話だ。
「ではカードの方に全てチャージでお願い致します」
「わかりました。ユニークカードのご提示をお願いいたします。……はい。チャージいたしました。ユニークカードでチャージされているかのご確認をお願いいたします」
「はい問題ありません。ありがとうございました」
現金をチャージしたシンはその足で『記録石』へと向かう。
それは導き者・Dに「『はぐれ異界の門』を閉じたのなら、それなりのレベルが上がってる筈よ。確認しておきなさい」と、言われたからだ。
シンはこのシステムの事を頭では理解していたが、やはり現実とは違う感覚の為に後回しにしていたことであった。
そして長蛇の列。とまではいかないが、それなりに並んでいる列に並ぶ。人の列はスムーズに動いているのでシンの番まではそれほど掛からなかった。
「この台座にユニークカードを置けば良いのですね」
ユニークカード台座の指定場所へと置くとカードが淡く光だし。連動するような台座も光出す。
そして台座の上部に仮想画面が出現する。
そこには更新されたシンのステータスが表示されていた。
【名前】:シン
【種族】:渡界者Lv:1→10
【星力】:夢幻
【職業】:幻想者Lv:1→2
【所属ギルド】:No Deta
【所属クラン】:No Deta
【基本能力値】
【体力】:50→110
【精力》】:120→380
【筋力】:9→16
【耐久】:9→18
【知力】:14→25
【器用】:12→23
【敏捷】:11→20
【幸運】:13→15
EXP:0→54
【固有スキル】:No Deta
【職業スキル】
【幻術】Lv:1 【幻想召喚】Lv:1
【使役されるモノ】(1/1)
【百地】(休眠中)
【持ち物】
ユニークカード 安物の衣服(上下セット) 安物の下着 安物のサンダル
【チャージ金額】:751,400 リーエン
「レベルが上がってますね。能力値の上がり方は術士タイプだからでしょうか? 精力の上がり方だけ一際高いですね。EXPでの底上げやスキルの習得は特にしなくても良いでしょう。それよりは百地さんのステータス確認をしておかないといけませんね」
画面から百地の項目を選び呼び出す。するとシンと同じような項目が現れた。
【名前】:百地
【種族】:人工霊人族Lv:1→5
【星力】:無
【基本能力値】
【体力】:100→290
【精力】:10→35
【筋力】:50→110
【耐久】:90→210
【知力】:30→38
【器用】:5→13
【敏捷】:1→3
【幸運】:25→28
【固有スキル】
【大喰らい】Lv:1→2 【化生変化】(2)
「私より項目が少ないですね。渡界者との違い、と言うことなのでしょう。【大喰らい】と【化生変化】ですか、内容を確認しておきましょう」
【大喰らい】Lv:2
【悪食】から発生したスキル。何でも食べる事が出来る。食べたものを『最大【体力】値の2%』の割合で自身の体力を回復させることが可能。
ただし【満腹状態】になると回復はしない。
【化生変化】[変化可能数](2)
自身を別存在へと変化させることの出来るスキル。
変化の取得条件はその者によって様々。また変化するものによっては、ステータスの変化がある場合もある。
【変化可能なもの】
【百地】
その変幻自在の姿を持って、あらゆるモノを斬る事が出来ると言われた片刃の巨大包丁。現在はそれほどの力はない。【百地】の基本の変化である。
【鬼切】
鬼を斬るために鬼の力を得た片刃の太刀。鬼系モンスターに対して2.5倍の攻撃力を持つ。
「なるほど。内容は少ないですが大まかなことが分かりました。……あまり独占していては他の方に迷惑ですね。ここらで退散しましょうか」
ステータスを確認していたシン。後ろで待つ者達がまだかまだかと言うような視線を投げ掛けていたので、シンは『記録石』から離れることにした。
「しかし巨大な包丁ですか。確か百地さんはご自分の事を大剣と言っておられた気がしましたが……まあ、勘違いと言うのもあるでしょう」
その確認はしない方が良いであろうと思うシンであった。
そして次にシンが向かったのはフードコートである。
そこで揚げパンを購入したシンは、『高殿の搭』の前で待っているかもしれない子供達に会いに行く。
外に出て待ち合わせの場所に行くと、避難勧告が出されていたのにも関わらず。彼らは籠一杯のゴミを集め、その場所でシンを待っていた。
「よう、おっさん。遅かったな」
集まって座っていた子供達のうち、リーダー格の子供がシンを見つけ。不適な笑みを浮かべ挨拶をしてきた。相も変わらず子供とは思えない子供である。
「お待たせしたようで、こちら今回の報酬となります」
揚げパンを差し出すシンに訝しむリーダー格の子供。
自分達の報酬の貰いはその日の最後の働きで貰うもの。
昨日は続けるか続けないかはその時の判断と言っていた。では今日はこれで終わりかと思ったからだ。
しかしシンは彼らが集まった時に応じて報酬を渡すことを決めていた、その違いである。
その事を伝えると子供達は遠慮なく揚げパンを貰い。昨日と同じような揚げパンを食べただけでは、決して取ることはないであろうリアクションを出して食べていた。
そして彼らが食べている間に自分に起こったことを話。導き者・Dから貰ったメダルを彼らに見せる。
「へぇ、そいつがあれば俺らだけでも依頼が受けられるのか」
「と、言っても私が受けたゴミ集めの依頼だけとなります。それも残り今日を入れて六日間」
「それでも構わねえよ」
「ではお渡しいたします。ただしくれぐれも注意してください。このメダルを持って悪行を働くと、重い罰が課せられます。それがお嫌でしたら受け取らずにいて下さい」
シンは強い言葉で子供達を脅すように言う。
しかし彼ら全員がシンの言葉に鼻で笑うようにして、リーダー格の子供がシンの手にあるメダルを奪い去るように持っていくと。
「「「「俺らをナメんなよおっさん。おっさんが俺らを裏切らない限り。俺らもおっさんを裏切らない」」」」
子供達は不適な笑みを浮かべ、そう答えたのであった。
その子供達の答えにシンはどことなく優しげな笑みで返したのであった。
次回の更新は1月13日となります。




