No.12
No.12
ゴブリンの数の多さに辟易していた頃。目の端にチラリとゴブリン以外のモノが映る。
そちらの方に意識を向けると、ダチョウのような生き物に乗った。揃いの皮鎧を身に纏った者達であった。
渡界者ではあり得ない。その頭に羊の様な捻れた角を持つ。魔人族と呼ばれる者達が呆然とした表情でシンを見ていた。
(あの方達はこの町の騎士の方達で間違いないと思いますが、何故見てるだけなのでしょうか……?)
その後直ぐに後続もやって来たのだか、その後続も呆然とシンを眺めていた。
しかし大柄な魔人族と熊の獣頭人族の二人が正気に戻り。
シンに手助けに入って良いかの許可を求める。
シンは自分の事情を簡潔に説明し、彼らの参加を求めた。
その後はゴブリンは烏合の衆。連携の取れている騎士達に殲滅されていく。
しかし彼らはゴブリンを倒す事のみに集中して『異界の門』への対処を一向にしようとはしていなかった。
そのせいでゴブリンは倒されればまた出現。と言う繰り返しがなされている。
そんな状況の中、一人の獣人族の少年がゴブリンに襲われそうになる。
「攻撃が避けられても、次に繋げるようにしなくては駄目ですよ」
ゴブリンを倒している騎士の中にはまだ技術が稚拙な者が居たようで、その者のフォローをするシン。
「あ、ありがとうござきます」
年若い犬系の獣人族の少年は、助けてもらったシンにお礼を述べる。シンもまたそのまま戦いのアドバイスをする。
そうすると少年は直ぐ様それを実践し。ゴブリンを倒す。上手く言った事でその場で喜びの声を上げる。。
「喜んでいては駄目です。まだ周りにはモンスターがいます。喜びはすべてのモンスターを倒してからにしましょう」
「はい! はああああ!!」
シンの言葉を素直に聞くと、そのまま次のゴブリンへ向かって行く。
(真っ直ぐで素直な子のようです。ああ言った子は伸び代が良いでしょう。また壁にぶつかったとしても先人の言葉をよく聞くようですから、壁を壁と思わずに乗り越えて行ってしまうかもしれませんね。その辺が少し心配です。苦労を知るからこそ得るものもありますからね。
さて、彼の事は一先ず置いておきましよう。『異界の門』の対処を何故しないのか、それを聞かなければいけませんね。しかし皆さんお忙しそうですからね。誰か聞けそうな方はーーーああ、あの方が良いでしょう)
シンは先程声を掛けてきた一人、熊の騎士に近寄り。共に戦いながら事情を聴くことにした。
「むっ! 貴殿は確かーーー」
「シンと申します。時にお伺いしたいのですが、騎士の方達は『異界の門』の対処法をご存じだと聞きましたが、何故いまだに門への対処を行わずに、モンスターを倒すだけに留めているのでしょうか?」
「私はカムイだ。シンの言い分はわかる。我々も対処をしたくなくて行っていない訳ではないのだ」
「何かしらの理由があると?」
「そうだ。『異界の門』の対処法は、その『異界の門』の周りに結界を張ることだ。しかしその為には『異界の門』近くに、大きな生物が五体以上居ると結界が上手く張れない場合がある」
「では一気に術式を使い、殲滅をすれば?」
「その場合も周囲の星力が不安定に為るせいで張れない場合がある。また出来たとしても、術式は周囲の影響が出ないようやりながら一度が限度だ」
「それでは張り終わった後が困るのでは?」
「いや結界は安定すれば問題がない。張るまでに問題がある品物なのだ」
(なるほど。ですから皆さん物理的な攻撃のみでゴブリンを倒しているのですね)
「それに恥ずかしい限りだが、我々の中にはこれだけのモンスターを一気に殲滅できるだけの術士がいない。シン。君は渡界者ならば広範囲型のスキルのひとつでも持っていないだろうか? モンスターを集めるだけであれば、我々でも出来るのだが……」
シンはその言葉に、今まま今まですっかり忘れていたことを思い出した。
「……そうでした。私は自分のスキルも使っていませんでしたね。ええっと、確か私のスキルは【幻術】と【幻想召喚】がありましたが……はて? これはどう使うのでしょうか?」
「あれだけの戦い方をして術士系なのか君はッ!?」
驚愕するカムイ。当然である。あの戦い方はどう考えても戦士系の戦い方だから。
「リアルではスキル等と言う力は有りませんでしたからね。ころっと忘れていましたよ」
シンは愉快そうに答えると、懐からユニークカードを取りだし。スキル欄をタップ。先ず【幻術】からの説明を読み始めた。
【幻術】Lv:1
対象者(複数人可)に対して、術士がイメージした幻を対象者の五感、精神に働きかけ、惑わすことの出来る力。
但し対象者が強い術抵抗が有る場合は、術を打ち消される可能性もある。
[術式文]
ーーー《魔技》・虚ろなる夢をここに。まやかしなる幻をここに。在らざる夢幻をここに築き上げよ。【〇〇〇〇・幻灯】ーーー
※注意一
〇〇〇〇の部分は術士専用の起動ワードとなります。〇〇〇〇の部分にはお好きな言葉をお入れください。
※注意二
【元術】系統の術をお持ちの方で、既に起動ワードをお持ちの方は。そちらの起動ワードが適用されますことをご承知ください。
※注意三
イメージは明確なものほど強い力を発揮します。漠然としたイメージの場合、術が発動しない場合もありますのでご注意を。
指定範囲にも限界はありません。但し範囲が広くなればなるほど、消費する精力の量。持続時間が短くなります。
【幻想召喚】Lv:1 使役数[0/1]
かつて存在した、または存在していたモノ達を喚び出し、契約して使役することの出来る力。
喚び出されるモノ達はランダムであり。どの様なモノ達が来るかは術士の運次第。
[術式文]
ーーー《魔技》・来たれよ。来たれ。
其は忘れ去られしモノ。其は途絶えしモノ。其はまつろわぬモノ。
我は今、汝等との緣を求める者なり。
我は時を紡ぎ。想いを重ねり。共に歩みを望まんとする者なり。
我が言の葉よ届け。
其は英雄なるモノよ。其は叡智持つモノよ。其は慈愛深きモノよ。
我は常世に善を成し。悪を滅する者なり。
今ここに剣を。杖を。盾を。
我が命運と共に、これら全て汝へと預けよう。
今は理の輪より外れし汝らよ。この意に従うならば疾く馳せ参じ、その姿を現せ。
【幻想召喚】ーーー
※注意一
使役するモノには必ず命名が必要となります。
命名をすることにより使役が可能となります。
命名が出来ない場合は使役が不可能なモノとなります。
※注意二
使役するモノは使役限度数を越えての使役はできません。
但し特定の条件を満たせば限度数を増やすことはできます。
※注意三
使役するモノは渡界者と同じくレベルが存在します。共に居ることでレベルを上げることが可能となります。
レベルの上げ方は渡界者と同じです。
また戦闘中使役者が死亡した場合、使役しているモノが生き残っていても死亡扱いとなります。
その場合、渡界者と同じように一時的なステータスダウンがあります。
なるほどと、頷き。読み終えたシンは、今考え付いた案をカムイに提案する。
「ーーーと言う案なのですが、どうでしょうか?」
「少し待って欲しい。それは私だけでは決めかねない。アスラ!」
カムイは前線で戦っていたもう一人の人物に声を掛ける。
声が聞こえると魔人族の人物は走鳥に乗ってシン達の場所へ駆けてくると。
「なんだカムイ! こっちはモンスターの殲滅に忙しいんだ。くそっ! 奴らわらわらわらと、全然減らね!」
「その事についてだ。こちらの渡界者のシンが、この状況を打破する案を考えてくれた。お前の考えも聞きたい」
「案だと!? 俺はアスラだ。その案はこの状況を変えられるのか?」
「どうでしょう? 何分初めての試みです。失敗する可能性も有ります。これら来るであろう渡界者達を待つか。町から更なる援軍を呼んでくる、と言う案もありますが、お聞きになりますか?」
「良案なら受け入れる。話せ」
「はい。ではその案ですが」
シンはカムイに説明した案をアスラにも説明する。
「そいつは単純だが、確かに上手く行けば一発逆転も狙えるか……やれんのか?」
アスラはシンの案に希望を見出だした。しかし不安もある為、再度シンに案を実行できるかを問いただす。
「この案ではありませんが、似たようものを何度か試したことがあります。しかし今回の方法は初めてとなります。ですので失敗することもあります。それを考慮して頂ければと」
シンの嘘偽りない言葉を聞き。二人は話し合い。暫し考え込む。
そして同時に考えが纏まったように互いの顔を見て頷く。
そして前線で今尚戦っている騎士達に向かって。
「「両騎士隊に告げる! 密集陣形を取り。前線を下げよ! その際にモンスターを引き付けながら下がれ!」」
どうやら二人はシンの案を受け入れたようだ
「私の案受け入れて頂きありがとうございます」
「私はシンの案は試すに値すると思ったまでだ」
「今は手はねえからな。失敗だけはすんなよ」
「御期待に応えられるよう、私もそれなりのモノを見せる事に致します」
シンは仰々しく頭を下げる。
それを見て二人は、まるで気負うなと言うように無言でシンの背中を叩き。己の持ち場へとそれぞれ立つのであった。
次回の更新は12月9日となります。




