王都へ行こうか
「お店は住むことも考えると、呑み屋さんが近いのはちょっと怖いので、商店通りの曲がった所にしようと思う」
昼食を済ませた後、ひかりとガルドは地図を見ながら、どこに住居兼店舗を建てるか思案していた。
「うん。それがいいな。団員達の見回りはあるけど、治安が良い方が安心だ。
ひかり、王城から明日、使者が来て生活資金や勉強の教材を届けてくれるそうだ」
「そうなんだ。先生も一緒に来るのかな?」
「そこは未定だそうだ。短期間でも砦に教師として暮らすための準備があるから、もう少し時間がかかるかもしれないと書いてあった」
「じゃあ予習しとこう」
ひかりはふむふむと頷き、気合いを入れていた。
ガルドは優しいし話しやすい。敬語を無くすと仲良くなった感じがしていいな。
ひかりは、この世界に馴染んできてる気がしてニコニコとしながら、地図を巻いて片付けているガルドの姿を見ていた。
「店を出す場所が決まったことだし、これから王都に家を建てるのを頼みに行くか」
「王都に?」
「俺の親戚がいるんだ。色々と手広くやっていてな。何か用立てが必要な時は、そこを通しているんだ」
「そうなんだ?」
あまりピンとこないのか、ひかりは首を傾げている。
「辺境伯では貿易もやっているからな。あちこちに親族の店があるんだ。店を構えるなら、仕入れもそこで相談すれば、どの店がオススメか教えてもらえるぞ」
貿易?あちこちに店?
何でもないことのように話していて、ひかりは頭の中が混乱していた。
「辺境伯って、すごいんだね」
「うーん、まあそこそこの貴族ではあるかな」
ガルドは苦笑しつつ、外へ出る為に開いてた窓を閉める。
「この爵位はひかりを守るのに丁度良いんだ。王族は簡単に手を出せないからな」
「そ、そんなに?」
話がすごすぎて、動揺が隠せない。
話せば話すほど、ひかりが慄いているのがわかり、ガルドは眉を下げる。
「……貴族は怖いか?」
ひかりは慌ててブンブンと首を振った。
「ううん、違う!驚きがすごいだけ。ガルドは怖くないよ!」
「そうか、なら良かった」
ガルドはホッとして笑顔を見せた。
「じゃあ、これから王都へ向かおう。馬の用意をするから、裏門で待ち合わせをしよう」
「わかった。よろしくお願いします」
ひかりは笑顔で頷いた。
ガルドはニッコリ笑いながら、これからやることに密かに気合を入れていた。
団長としてではなく、狡猾で隙を見せない辺境伯令息として王都へ。
ーーーさて、奪うために始めようか。




