名前を呼んで
「おはようございます。ガルドさん」
「おはよう、ひかり」
「? どうかしましたか?」
「い、いや、何でもない」
食堂で、いつものようにガルドの横に座る。
ガルドが何か言いたげにこちらを見たので、ひかりは首を傾げた。
リサリアは視線で「しっかりしろ!」とガルドに圧をかけていたが、ひかりのトレーの変化に気付き、目を瞬いた。
「あら?ひかりちゃんの特別メニュー、なんか変わったわね?」
「そうなの。大人向けになったみたい。あ、これ、リサリアにもどうぞってもらったよ」
「綺麗ね。ありがとう」
ひかりは、リサリアに花の砂糖漬けが飾られたゼリーを渡す。
今までは、うさぎさんパンやくまさんパンが出たり、お皿に猫耳が付いていたり、徐々にお子様ランチに近付いていた。
どうやら、ひかりの年齢がわかると大人の女性向けに変更してくれたらしい。
パンは小さめで普通の形になり、クリームをたっぷり盛ったプリンは美しいゼリーに変わった。
お皿やカップも、繊細な花模様のものになっていた。
団員達と同じ皿でいいはずなのだが、特別扱いは変わらないらしい。
「ひかり、その話し方」
「うふふ。いいでしょう?仲良くなったの、私たち!」
リサリアは嬉しそうに、横に座っているひかりを抱きしめた。
ひかりは、照れくさそうに笑う。
「……ひかり、俺もその話し方がいい」
「え!?」
「俺も、呼び捨てで呼んでくれ」
昨夜のこともあって、突然のガルドのお願いに、ひかりは動揺が隠せない。
べ、べつにタメ口くらい何でもないよ!?同い年ですし?おかしなお願いじゃないけども!
ガルドの琥珀色の瞳が、じっとひかりを見つめた。
「ダメか?」
「ひぇっ!?」
見つめられながら、ガルドの切なげな低い声を聞いて、ひかりは思わず顔を赤くする。
もっとサラッと頼めばいいのに、なんでこんなに色っぽく言うの!?
「朝から俺たちは、何を聞かされてるんだ?」
「別の場所でや…られても、それはそれでムカつくな」
「1日が始まったばかりなんだけどな。ちくしょう、今日はもう終了したい」
ガルド達の話が聞こえた団員達は、妬みまくっていた。
「えと、わ、わかった……ガルド」
恥ずかしさで話しながらチラと目を逸らし、再びガルドを見て、頬を染めたまま名前を呼んだ。
様子を伺っていた団員、リサリア、そしてガルドの心が一つになった。
可愛すぎる!!!
「うちの子は世界一可愛いわ!」
リサリアはたまらずひかりを抱きしめ、愛らしさに感動して涙ぐみながら叫んでいた。
団員達も、うんうんと頷いている。
ガルドも想像以上の破壊力にやられ、両手で顔を覆っていた。
「……ひかり、もう一回呼んでくれ」
「もう!からかわないで!」
なんなの、めちゃくちゃ恥ずかしいな!?




