戌井と小鬼【壱弥】
師匠に言われたとおり、僕は真砂の本家へ走っている。
鵺に乗っていけば早いんだけど、さすがに人目に付きすぎるし、そこまではなれてるわけでもない……5分もあれば着くかな?
ほんと、油断したっていう言葉しかでない。
みんな秋緋のこと……古泉さんもだけど、一番に気をかけていたから。まさか古泉さんをさらっていくなんて思ってなかった。
でも、彼女を連れ去るなんてよくやるなぁって。
使役妖怪はそこまで強力ではないけど、彼女を守っているあの存在が一番ヤバいのに……そこまでは調べられなかったってことなのかなぁ?
まぁ、どこに隠しているかわからない以上、危険な状況であるのは変わらないけれど。
ふう……それにしても、相変わらず大きな門。
そっち系の住まいって思われても仕方ないよね、これは……と、それより、早く伝えないと。
「ごめんくださーい!八塚壱弥です!戌井さんいらっしゃいますかー!」
秋緋の部屋になら勝手に入っても大丈夫だけど、さすがに本家にそれはできない。いくら子息の友人だとしても、不法侵入でどんな目に合うかわからないし。
しばらくして、足音が近づいてきて、門が開く。
「お待たせしてしまいまして申し訳ございませんな、ほっほっほ。今日が見学の日でございましたかな?はて、なぜおひとりでこちらに?」
「緊急なんです、戌井さんに助けてほしいと、師匠から」
「……手短で結構です、要件を」
にこやかに迎えてくれた戌井さん。僕の焦った様子に表情を変えて、頷きながら僕の話を聞いてくれた。
「わかりました。このような老いぼれでございますが、お力添えを致しましょう……まだまだ鼻は聞きます故、ほっほっほ」
「お願いします……僕はこれで戻ります!ありがとうございます!」
「壱弥くん、お待ちなさい」
教会へ戻ろうとしたんだけど、呼び止められてた。戌井さんが屋敷の方へ向かって、呼ぶ。
「砂鬼殿、砂羅殿……秋緋様の一大事にございます、八塚くんに付いて行ってくださいませんか」
小鬼たちの名前を……あの2匹がついてきても今はそんなに役に立つわけが――。
「ちー」
「みー」
ゆっくりと歩いて、戌井さんの両隣に現れた2匹。
聞き覚えのあるはずの声のはずだったんだけど、しばらく成長のために本家で預かるっていうのは……こういう意味だったの?
「引き留めてしまってなんですが……さぁ、急いで!」
「っ!ありがとうございます!行こう!」
前言撤回……役に立たないはずがない!




