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最悪なティータイム①

 俺たちが今どこにいて、今いつなのか……森を抜ける道すがら、拍子抜けすくらい素直に東雲が教えてくれた。


「秋緋くんの気配が急に消えてもうて、その後すぐにそこの鬼が鬼門開いた音とニオイがしたもんやからきたわー!ってここでまっててん。目印ついたままやから絶対戻ってくるぅ!って……2日!2日や!どんだけ待たせんねん!!」

「あぁ、だから余計に獣臭かったんですねぇ?」

「んなわけあるかぁ?!俺の体臭はみずみずしいピーチの香りじゃアホぉ!」


 まさか2日経ってたとは……キャンプも終わって、本当になんてタイミングでこんな事に。


「せやからぁー腹も減ってて喉もカラッカラやねん、秋緋くぅん~?」

「気色の悪い声をだすな!あんまりうるさいと茨木に処分頼むぞ!ったく……」


 流石に処分はされたくなかったのだろう、しょぼんとして黙って歩くようになった。茨木は残念そうだったけどな?


 で、ここは学校の裏山らしい。割と近場で助かったは助かった。まっすぐ、道なき道を通って少し下ると、住宅街に出た。


 普段通学路にしている方角とは逆側にあるところだ。修行で朝、屋根の上から向こう側が見えることはあったが実際に行くことはなかった。だから、森を抜けたからといって土地勘があるわけではない。


 もう、勘で行くしかないか。


 なんとなく、どこかで左側に曲がれば見覚えのあるところに出るのでは?と歩いていたら、小さい公園が見えた。街灯と自動販売機の明かりが見えたので、そこのベンチでひと休み。


 東雲のお望み通りのお茶をする事に。


「あ……小銭ありますか茨木さん……」


 ポケットゴソゴソしてはっとする。金が無い。それどころか体もないのであるわけがない。

 茨木は渋々だが、買ってくれた……なんか少し優しい?


「出世払いでよろしいですよ?何千倍で返してもらいましょうかねぇ」


 そんなことなかった。俺が就職しても茨木に搾取される日々が続くだろうことが決定した。

 ニコニコで買ったお茶のペットボトルを東雲に投げつける茨木はまさに鬼。


「いったぁ!ホンマなんやねんお前!なぁ~秋緋くぅん~あけてぇ♡」


 縛ってるから手が出せないし仕方ないか。触れる可能性は低かったが足元に転がってきたら拾い上げる動作をしてしまうのは性だろう。お茶を拾い上げようとしたその時だった。


「茨木さん……?ここで、なにを?」


 俺をすっと素通りしてお茶を拾い上げた人物がいた。


「おや、八塚くん……貴方こそどうしてこんなところへ?」


 ……壱弥。


「うん?この人は……あぁ、あの狐?それにこの拘束は……」


 まぁ、俺には目もくれないか。そもそも見えてないもんなぁ。実感すると心が痛い……俺はそのままヘタリと両足を地面について項垂れた。


「この拘束は秋緋様がなさってるものですよ」


 え?言うの?言っちゃう?


「秋緋が?さっきまで部屋にいたはずだけど……どこにいるんです?」


 そりゃそうだ。

 壱弥がなんでここに来てるかはわからないけど、あいつと俺は部屋が隣同士だ。それに、突然家に上がり込んだりもしてるだろうし、俺がなにをしてるかわかるはずだ……ある意味ストーカーだが。


 キョロキョロしている壱弥に、茨木は更に言った。


「ここですよ、ここ、無様に跪いてますよ」


 無様は余計だろうが!心が折れとるんじゃい!

 壱弥は茨木の指す方を、俺がいる場所をじーっと見つめ不思議そうにして手も出して探っている。

 目があったような気がした俺は思わず手を伸ばした。


「秋緋様、こいつを縛ってる糸を八塚くんにも」


 ぼそっと茨木が言うのが聞こえた。訳がわからないけど……やってみるに越したことはない?


 よっと……壱弥の手を取り、絡み合うように糸を巻き付けてみる。


 すると。


「は……?秋緋?なんで?」

「見える……のか?」


 まさかまさかの展開。

 俺を、見てる!見えてる!こんなにも安心するものなのか!思わず、繋いでいる手を強く強く握る。


「ちょっとよくわからないけど、とりあえず恋人繋ぎやめてもらっていいかな秋緋」


 あーこのドン引きしてる目!なんか久々だなぁ……なんか妙に嬉しくて顔がニヤけてしまう。


「茨木さん……秋緋気持ち悪いんですけど、なにがあったんですか?」


 壱弥が茨木に話を聞こうとした時、東雲が割って入った。


「なぁー!!俺のこと無視せんといてぇ!」


 ぷくーっとふくれっ面で怒って駄々をこねる東雲。すまん、すっかり忘れてたわ。そんなんしても可愛くないぞ?茨木がまた蹴ってるし。


「まったくうるさい狐ですね……さて?積もる話もあるでしょうし、八塚くんも一緒にお茶をしませんか?ね、秋緋様?」


「いたいねんもぉー!はぁ……そやで秋緋くん、ちょうどよくみんなおるんやし、情報交換といこうや?」


 ああ、そうか。

 真砂家に長く仕える茨木、夜兄側の東雲、ひとり行動していた壱弥……それぞれ話を聞けるじゃないか。


「……色々話をしなきゃな、壱弥……いいだろ?」

「そう……そうだね、わかった」


 よし、じゃぁ……話しを……、


「よっしゃぁ~!皆でお茶飲もかぁ♪」


 っとにこの男は……真面目なのか、ふざけてるのか。

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