最悪なティータイム②
「はぁ~生き返るわぁ~!」
まったくのんきなものだ……フタを開けてもらったペットボトルのお茶を、手も使わず器用に飲んでるし。
「それで秋緋はなんでそんな事になってるの?」
さすが壱弥くん、面倒なことが嫌いなだけあってさっさと話を進めたいようだ。俺はそれに応え、経緯を話した。
「――ならほどね、その夜緋呂さんが、今は秋緋の体にいるわけか……確かに、少し違和感があるなって思ってたんだ」
「そうだろ?俺あんなにベタベタしないだろ?なんでだーれも疑問に思わないんだ……」
「それは【不視】の力を使ったのではありませんか?あの建物から出る時、皆さんに触れていたのでしょう?私の姫子様にも……っ」
「やーいロリコンザマァミロー!イッタァ!」
あの過剰なスキンシップはそれか!俺にかけたであろう【不視】に加えて、皆にも保険としてかけたのか……そりゃ絶望的だ。
「僕には触ってこなかったのは、さとりの力を警戒してのことかな?秋緋の方にかけた【不視】、僕が見えなくなるように調整したって感じかな……さすがだね。あ、ね、秋緋、思い出したんだよね、約束」
そう、話したって事は記憶が戻った事も伝えたのだ。
「あぁ、思い出した。小さかったとはいえ、無茶なお願いしてたよな……背負わせて、ごめんな?単純に俺を『殺す』方法じゃなくて、違う方法を探して動いててくれたんだろ?あ、でもすずめにした事はちゃんと謝るんだぞ?それに、もうひとりでなにかやるの禁止な!俺も見つめなおすって決めた、自分でやれることはするし、努力するから」
「ふふっ……やっぱ親子だね……わかった、ちゃんと謝る」
俺の霊力を修行でどうにか出来るように助けてくれた事、ひとりで俺の霊力を消す方法を見つけようとしてくれてた事……腐れ縁なんて思っていたけど、記憶が戻った今となれば、こんなに友達思いの奴はいない。
「それで周りに迷惑かけて……ダメだね、僕。全部ひとりでできるはずなかったのに」
「ダメとかそんなことねぇよ、妖怪消滅させたり、暴走してたとはいえ自分の家燃やしたりした俺のがダメだろ?」
「そうだね……」
そうだね。は、はっきりと言いすぎて心折れそうになったが、そんな俺をずっと心配して約束守るって……ずっと友達でいてくれてたんだ。時には悪い事してたかも知れないけ、ど感謝してるのは事実だ。
「なぁなぁ秋緋くん、そろそろこれほどいてくれへん?」
友情を確かめ合ってる所に水を差してくるとは……解こうなんて微塵も思いません、大人しくしててくれ。
「そういえば……なんでこの糸と繋がったら見えるようになったのかな?」
「それはですね『さとり』のあなたと繋がったから……【不視】は『八塚壱弥』にだけに掛かっているものかと思いましたので」
この糸は本来、妖怪と繋がるためのものだもんな……ん?まて。記憶とすり合わせて壱弥との思い出を追って行く……さとりが壱弥で、壱弥がさとり……妖怪、なのか?
「なるほど……って秋緋は混乱してるみたいだから話すけど、僕は人と『さとり』という妖怪の間に生まれた子供なんだよ?わかった?」
確かに『見えてて』って言っていたな。あの時は状況も状況だったから深く考えられなかったけど、本当に心が読めていたってことか。え、授業中のあれやこれやな妄想も見えてたってこと……?
「そういうこと考えてても秋緋の自尊心に関わるだろうから触れないようにしてた、安心してね?」
安心できないです!いつも見てるわけじゃないだろうけど、わかった以上は気をつけなければ。
「それにしても厄介だね……本当の秋緋がみんなに見えないのは。夜緋呂さんもうまくやってるから、余計にね」
壱弥いわく、夜兄はほぼ俺そのもので生活してるらしい。砂鬼や砂羅も気付いていない。ないし、夜兄に落とされてるだろうな。
今の所、ここにいる3人とかーちゃん。そして夜兄しか俺を認識できない。俺ひとりで解決しなきゃと思っていたところに壱弥が加わってくれたのは心強いところだけど……あ、東雲は夜兄側だったわ。
「さすが夜くんや!うまくやっとるんなら安心安心~♪」
鼻歌を歌いだした東雲をチラリと見る壱弥。
「……秋緋、少し耳を貸してくれる?」
なにか考えついたのか、壱弥が俺に耳打ちする。
『意識を集中して、糸を細く強くするように強く想像して?そしてそれを、あの狐の男の1番強い力が宿る所を見つけて……そこに縫いこむように糸を刺しこんでみて?』
不思議に思いながらも、言われるがままやってみる俺。
「お?なになにぃ?やっぱほどいてくれるん?なはははは!!くすぐったいてぇ!!」
東雲の1番力が宿る所……みつけた。
「ぬはっ?!……なんしてん……のや……?」
ここを縫うっと……。
「まさか……やめぇ!やめろ!やめてぇぇ!」
完了っと。
「そんなぁ……鬼ぃ悪魔ぁケダモノぉ……シクシクシク」
なんで泣いてんだ?あれ?縫い込んだら拘束も自然に解けてる。
「少し教えただけで出来るなんてすごいよ秋緋」
なにを?
「はぁ……できるわけ無いと見てたらまさかですね……よりによってこいつを……八塚くんも人が悪い」
だからなにを?!
「使役妖怪の強制契約だよ。普通はお互いの同意で契約終了の条件を立ててやるものなんだけど、強制は根源に直接一方的に刻むものだから、なにがあっても離れられない一生モノなんだ」
は?
はぁあぁあぁ?!なんてことをしやがる!いや、確認しなかった俺が悪いけども?!
「なんてことしてくれたん秋緋くん……俺もうお婿に行かれへんやん……シクシクシク」
くそ。泣きたいのは俺の方だ、これじゃ俺の目指すものが。
「どこか余裕がある泣き方ですね、狐」
「シクシク……ん~バレたぁ?」
ウソ泣きかよ!!今1番ダメージ受けてるの俺だけ?!
「繋がった事で秋緋の事が伝わったんじゃない?とりあえず今の秋緋に夜緋呂さんに対抗する力が無いのは明らかだったからこうしたんだけど……彼、ちょろいけど結構強い気を感じるし、もう抵抗も、下手な事しようとしても制止できるし、僕でもよかったけど、獣は好きじゃないから」
鵺は獣じゃないってのかえぇぇ?!俺への扱いひどくない?!もしかして、努力するって言ったところ、捉え方間違ってるんじゃない?おかしいなぁ?!
「秋緋、ちゃんと体を取り戻す協力はするから安心して?」
そこはありがとうだけど?いやいや違うんだよ。
「秋緋くんの気持ちギューンって入ってきて、なにしようとしとるんかわかってもうたんよ。俺は夜くんが本当に幸せになってほしいっておもてるから……わかるやろ?俺の気持ちも……せやからな、こんな俺やけど夜くんの為によろしゅうな♡」
うわわぁ。東雲の夜兄への熱い想いが伝わってくるの気持ち悪っ!さっきのバトル見てたから余計に気持ち悪い!
「妖怪にとっての一生は人の一生より遥かに長いで、少しくらい関わっても、瞬きするのと変わりませんしね」
いやお前らはそうかもしれないけど俺は?俺の一生は?全無視?
「ひどすぎる……っ」
「まぁまぁ秋くん♡俺がおっても平和につつましく暮らせるて♡邪魔なんかせぇへんから安心してや♡」
呼び方も変わってるしっ!
「それじゃ、作戦会議始めよう?」
あーもー!!前もあった気がするけど!俺の話を、聞けぇぇえぇえ!!




