閑話休題100~その頃の妹 妹、本業でも酷い目に遭う~
皆様、お元気でしょうか。
レイラ・エレクトロンです。
最近、私は紅茶の屋台のアルバイトをしています。
「姉ちゃん。ミルクティーをくれや。砂糖とミルクをたっぷりと入れてな」
「はい。畏まりました。……ではこちらが商品になります。銅貨三枚になります」
「ほらよ」
「ありがとうございます」
といった感じで、真面目に働いています。
まあ、この仕事を始めたのはこの仕事で稼いだお金を仲間に借金の返済の一部として渡すことにより、エリカお姉さんに真面目にやっているところを見せ、失態をしたあげく仲間に借金までしたことに対して反省の意を示し、エリカお姉さんにあまり怒られないようにするためなので、当然と言えば当然なのですが。
とはいえ、この寒空の中、外で売り子をするのはとても辛いです。
エリカお姉さんが帰ってきて、謝って、自分の貯金の引き出し許可をもらえたら、この仕事も辞められるのになあ。
そう内心では思いつつも、エリカお姉さんにあまり怒られないように一生懸命働くのでした。
★★★
さて、そうやってバイトに精を出す私なのですが、それはあくまでもバイト。
本業の冒険者の仕事もきっちりとこなします。
本日向かうのはノースフォートレスの町から少し離れた所にある鉄鉱石の鉱山です。
「え~と。今日の獲物はクモの魔物、シャインスパイダーだって?」
「うん。何でも鉱山の中にある食糧庫に突然進入して来て、食糧庫を占拠したんだって」
「まあ、よくある話だよね。クモの魔物って冬場は外では活動が鈍って姿を見せなくなるけど、逆に鉱山の中とか外よりも暖かい場所に良く出現するんだって」
「そうなんだ」
といった感じで今回の獲物であるシャインスパイダーについて仲間たちと話しながら鉱山と向かいました。
シャインスパイダーはクモの魔物で、春から秋にかけてよく退治依頼が出る魔物です。
冬はあまり出てこないのですが、鉱山のような割と暖かい場所にはやってきます。
大して強くなく、基本単独行動をし、その吐き出す糸が素材として売れるため、私たちクラスの冒険者にとっては手ごろな相手でした。
うちの兄貴も冒険者を始めた頃はシャインスパイダーを討伐し、糸を売って稼いでいたらしいですし。
そんな訳で、私たちもサクッと退治して稼がせてもらうとしましょう。
★★★
鉱山に到着した私たちは鉱山の管理者さんに案内されて、シャインスパイダーが占拠しているという食糧庫へと向かいました。
「おおーー。確かに聞いていた通りシャインスパイダーが食糧庫にいるね」
「うん、美味しそうにお肉食べているね」
「まあ、クモって肉食だからね」
すると、シャインスパイダーがおいしそうに肉を食い漁っているのを目撃したので、早速退治することにします。
「ベラとフレデリカは反対側の入口に回ってシャインスパイダーの逃げ道を塞いだ上で、フレデリカが援護してベラが攻撃ね」
「「了解!」」
「マーガレットは私が魔法で支援するからこちら側からシャインスパイダーを攻撃して」
「わかった!」
「それじゃあ魔法をかけるから、相手に気づかれないように持ち場に行ってね。『姿隠し』。『遮音』」
そうやって自分と仲間に隠蔽するための魔法をかけ準備完了です。
「それじゃあ、配置が完了し、私が合図したら攻撃開始ね」
私の言葉で全員が持ち場へ向かい、全員が持ち場についたら作戦開始です。
★★★
ブン、ブン。
食糧庫の反対側の入口で、フレデリカが大きく手を振るのが見えました。
これはあらかじめ決めていた配置が完了した合図です。
どうやらフレデリカたちの配置が完了したようです。
配置が完了したので早速攻撃開始します。
ブン、ブン。
私も大きく手を振って攻撃開始の合図を送りました。
私の合図をきっかけに攻撃が始まりました。
★★★
まずは私とフレデリカの二人が遠距離攻撃を仕掛けます。
「『風刃』」
「さあ、とっておきのミスリルの矢よ。食らいなさい!」
そうやって夢中で食糧庫のお肉をむさぼっているシャインスパイダーに攻撃しました。
スパッ。グサッ。
私たちの攻撃は見事に命中し、私の魔法はシャインスパイダーの足を一本切り飛ばし、フレデリカの矢は見事シャインスパイダーの頭に命中しました。
「シャシャアアア」
真逆の方向から一斉に攻撃されたのと、奇襲攻撃の効果もあってシャインスパイダーは大混乱です。
口をもぐもぐさせ、足をバタバタさせ、はた目からでも混乱しているのが丸わかりな状況です。
そこに前衛のマーガレットとベラが正反対の方向から同時に攻撃を仕掛けます。
「えい!」
ベラは槍でシャインスパイダーの心臓などの急所を狙っていき。
「とうっ!」
マーガレットは大剣でシャインスパイダーの胴体を断ち切ってやろうとします。
もちろんシャインスパイダーも無抵抗という訳でなく。
「フシャー」
と、足で二人を攻撃しようとするのですが。
「『風刃』」
「追加の矢を食らえ!」
私とフレデリカの援護攻撃に邪魔され、攻撃が空振りに終わってしまいました。
そうこうするうちに。
「『石槍』」
「グハッ」
私の魔法攻撃が決まって、シャインスパイダーが断末魔の悲鳴を残して動かなくなりました。
こうして私たちはシャインスパイダーの討伐に成功したのでした。
★★★
さて、魔物の討伐の後はお待ちかねの回収タイムです。
私たち冒険者は討伐依頼の報酬と共に倒した魔物を回収売却することで生活しているのです。
ということで。
「じゃあ、私が回収するね」
私は討伐したシャインスパイダーを自分のマジックバッグに回収しようとしました。
しかし、ここで。
「シャアアアア」
何と倒したはずのシャインスパイダーが動き始めたのでした。
どうやらシャインスパイダーの奴はまだ生きていたみたいで、残された力で最後っ屁の攻撃を仕掛けて来たようでした。
動き出したシャインスパイダーは。
「フー」
と口から糸を吐き出してきました。
完全に油断していた私はこの攻撃を避けることができず。
「ぎゃー」
と悲鳴をあげながら、全身糸まみれにされました。
全身糸まみれにされ動けなくなった私は、追加の攻撃があると身構えたのですが、ここで。
「えい!」
ベラが槍で糸を吐き出していたシャインスパイダーの口を突いてくれました。
そのおかげでシャインスパイダーは糸を吐くのを止め、動かなくなりました。
その後慎重に調べたところシャインスパイダーは完全に動かなくなっていたので、今度こそシャインスパイダーの討伐に成功したのでした。
★★★
シャインスパイダー完全討伐後の後始末は大変でした。
「レイラ、大丈夫?」
仲間たちは急いで私に駆け寄ってくると、私の体をくまなく調べてくれたのですが。
「よかった。怪我とかはないみたいだね」
幸いなことに私には怪我はありませんでした。
まあ、シャインスパイダーの糸は身動きを封じるために使うためのものなので、これを食らったからと言って怪我をすることはまずないですしね。
ただ、そのかわり。
「やだー!私のローブ。ぐちゃぐちゃになっちゃった」
私のローブが糸でぐちゃぐちゃになってしまったのでした。
シャインスパイダーの糸はとても粘着性が強いことで知られています。
私のローブのように糸まみれにされてしまった以上、きれいに全部はがすことは不可能です。
このローブはもう諦めるしかないでしょう。
「ああ、戦闘用の一番良いローブがダメになっちゃった。腹立つ!」
こうして、私は今回の仕事で一番上等なローブを失うという大損害を被ったのでした。
★★★
しかし、最近私は本当についていません。
この前は闘技場で魔道具を壊すし、今日はローブをダメにするし、本当に最悪です。
本当どうにかしてほしい。
そう思った私はこう祈りました。
ああ、神様。どうか私に幸運を!
もちろん、その願い通りに行くことは無かったのでした。




