第712話~ドワーフの国の巨大地下墳墓 地下三階 その2 船で水路を進もう!~
ドワーフの国の巨大地下墳墓の地下三階の水路エリア。
当初水路脇の歩道エリアを探索していた俺達だったが、これ以上探索する歩道が無くなったので船で水路を進むことになった。
「それじゃあ、行きますね。えい!」
ヴィクトリアが気合を入れて収納リングを使用すると、ポンと一隻の船が水路に姿を現す。
俺達の船『エリュシオン号』だ。
魔力動力で動く素晴らしい船だ。
ここの水路は結構流れが速いがこの船ならその流れに負けることなく自由に水路を動き回れるはずだった。
「よし!乗り込め!」
「はい」
俺はそうやって指示を出すと一斉に船に乗り込んだ。
★★★
船での移動はとても楽だった。
というのも船での移動なら交代で休むことができるからな。
現に今も俺が見張りとマッピング、ネイアが操船をして残りのメンバーは奥で休憩という体制だ。
「ご飯は私が作りますので、ヴィクトリアさんとリネットさん、それにネズ吉さんは三十分くらい仮眠でもしていてください。ご飯ができたら起こしてあげますので」
「「「は~い」」」
奥からはそんな会話が聞こえてくるので、今はエリカがご飯を作って残りの三人は仮眠するらしかった。
しばらくすると、タンタンと食材を切る包丁の音と「ZZZ……」、「スー、スー、スー」、「スヤスヤ」という三人分の安らかな寝息の音が聞こえてきたので、先程の言葉通りにしているのだと思う。
そんな中、艦橋に残された俺とネイアは会話をして過ごす。
「全然魔物、出てきませんね」
「そうだな。まあ、この水路流れが速いし、この船も速度が出るほうだから魔物も襲撃しにくいんだろうな」
実際、俺の言葉通り、船に乗ってから魔物に襲撃されていない。
多分、ここの水路は流れがとても速く水の魔物は生息しにくい。
歩道を歩いていた時に水の魔物が襲ってきていたのも、水路の途中にある遊水地みたいになっている流れの遅い箇所だったしな。
それに俺たちの船もこの水路の流れに逆らって動くために魔力動力を全開にして高速航行を続けている。
だから水の魔物もそんな高速で移動する船に簡単に手を出せず、襲ってこれないのだと思う。
え?そんなにずっと魔力動力を回し続けても大丈夫なのかって?
問題ない。
この船には三基の魔力動力が積まれていて、高速航行にはうち二基を使えば十分だからだ。
だから常に一基は休ませられて、ローテーションでうまい具合に回せるので問題ないのだった。
ちなみに三基すべてを使えば最高速モードになるのだが、これは緊急事態用なので今は使っていない。
「そうですね。この船、速いですもんね。大海原にいるようなものすごい速度で泳ぐような魔物じゃないと近づけないですもんね」
「そういうことだ」
「それはそうと、水路の上を船で移動すると少し冷えないですか?」
「確かに少し冷えるかもしれないな」
「だったら、今からそこの足元にある暖房を使いますので、一緒に暖まりませんか?」
「ああ、いいよ」
少し寒かったこともあって俺はネイアのその誘いに乗った。
ネイアの横に移動して、暖房器具で一緒に体を暖めた。
とても暖かった。
同じ暖房器具を二人で使うだけの話なのに、一人で使うよりも何倍も暖かい気がした。
不思議な気分ではあるが、まあ暖かいのだからそれで良いと思う。
そして、少し暖まった所でネイアがおねだりをしてくる。
「そこの魔道ポットにお湯が入っているので、それでお茶を淹れてくれませんか?今操船中で手が離せないので、お願いできますか?」
「もちろんだ」
ネイアに言われた俺はお茶を淹れた。
それを二つのマグカップに注ぎ、ネイアの所に持って行く。
そして、そのうちの一つをネイアに渡し、こう言うのだった。
「それじゃあ、一緒にお茶を飲もうか」
「はい」
そうして、二人してお茶を飲んだ俺たちは交代までの時間をさらに暖かく過ごすことができたのであった。
★★★
そうやって順調に船旅を続けると事丸一日。
移動できる範囲の水路を一通り回った俺たちは新しい通路を発見した。
船で移動しつつも地道にマッピングした地図を見ながら、エリカが発言する。
「旦那様。これ以上水路は無いようです。これから先へ進むにはこの通路を進むしかないようです」
「本当か?」
「はい。間違いありません」
「そういう事なら進んで行くか。みんな、準備しろ」
ここしか道が無いと知った俺は仲間に船を降りるように指示を出す。
十分ほどで。
「旦那様。準備ができました」
「そうか。じゃあ、ヴィクトリアは船を収納して出発だ」
「ラジャーです」
全員の準備ができたようなので、最後にヴィクトリアに船を収納させてから出発した。
★★★
水路をくまなく探索した後に辿り着いた通路は一本道だった。
幅十メートルくらいある広めの通路がずっと真っすぐ続いている。
こういう一本道。本来なら魔物とかの格好の襲撃ポイントなのだが……。
「ホルスト君。この通路静かすぎるね」
「本当だな。静かすぎるな」
魔物が襲撃してくるどころか、リネットの言うようにこの通路静かすぎたのだ。
それにこの静けさ。何と言うか嵐の前の静けさという感じでとても不気味な類の静けさだった。
そして、俺のこの予感は正しく、二十分後。
「ホルストさん、。何だか禍々しい感じの扉がありますよ」
ヴィクトリアが通路の奥に、邪悪そうな怪物のレリーフが彫られた不気味で禍々しい感じの扉を発見した。
これは何かありそうだな。
そう思った俺が『生命力感知』と魔力感知で中の様子を探ってみると。
「うん。中から強力な魔力と生命エネルギーを感じる。どうやらこの先に強敵がいそうだ。ここの階層のボスかもしれない。皆、備えろ!」
扉の奥に強敵の存在を確認したおrは仲間に指示を出すと、自分も武器を構え、そっと扉を開けるのだった。




