第689話~ドワーフの王都で起こっている連続殺人事件の犯人は?~
白ネズミのネズ吉が俺たちを助けるために駆けつけてくれた。
ガイウス殿下の所に辿り着くまでの間、ちなみには馬車はリネットのおじいさんの家来が操縦してくれている、俺たちはネズ吉と今やっていることについて話をした。
「それで、ホルスト様は今度はどちらへ向かうおつもりですか?」
「俺たちの今回の目標は太古に造られたという地下墳墓だ。マウントオブスピリットに棲む山の精霊から聞いた話だと、その地下墳墓は地脈の中にあるらしいんだ。だから行ってみようと思ったんだ」
「なるほど」
「それで、ネズ吉。そういう地下墳墓について心当たりはないか?」
「う~ん。そうですね。拙者には特に心当たりはないです。ですが……」
「ですが?」
「地底湖の遺跡の警備のためここに来ていないカリュドーンの猪なら何かわかるかもしれません」
「あいつ、遺跡とかに詳しいのか?」
「いえ、詳しくはないです。でも、彼は猪でしょう?猪って土を掘って中の芋とか探して食べるんです」
「ああ、それは聞いたことがあるな」
確かに猪は雑食性で、その鼻で土を掘って土の中のイモや小動物を食べるのだ。
「なので、彼には地中に埋まっている物を探索する能力があるのです。だからか彼ならば、遺跡が土の中に埋まっていたとしても遺跡の入口とかわかると思いますよ。もっとも土に埋まった遺跡って意外と多いので、大体の位置が分からないと数が多過ぎて調べきれませんが」
「本当か?それはすごいな。でも、カリュドーンの猪は遺跡の守護があるからそこから動けないのでは?」
「問題ないですね。彼の能力なら地底湖の遺跡からでもこの国の中くらいなら問題なく探せますよ」
「それなら、今度の依頼をこなして大体の遺跡の位置が分かったなら頼んでみようか」
という風にネズ吉からよい情報をもらえたので、遺跡の大体の場所の情報が手に入ったらカリュドーンの猪にも聞いてみようということになったのであった。
★★★
さて、そうこうしているうちに王宮にあるドワーフ軍の本部ついた。
今回の事件は重要事件らしいので町の警備隊でなく軍が対応しているという事だった。
さらに言えば、ガイウス殿下は王子として軍の高位の職に就いており、今回の事件の担当になったということのようだった。
それで、到着と同時に門番に来訪を告げると。
「ホルスト様ですね。はい、お話はお伺いおります。どうぞ、こちらへ」
と、すぐに案内してくれた。
そして、客間に通されて待つこと五分。
「やあ、ホルスト殿、お久しぶりだね」
「はい、お久しぶりです。ガイウス殿下」
ガイウス殿下が現れたのだった。
★★★
「お茶とお菓子をどうぞ」
俺達とガイウス殿下が席に着くと、係の人がお茶とお菓子を持ってきてくれたので、それを飲みながら話をすることにする。
先に口を開いたのは俺の方だった。
「それで、ガイウス殿下。宰相様に聞いてきた話では、今王都では連続殺人事件が起きていて、殿下がその捜査の担当をなさっているとか」?」
「そうなんだよ。私は一応国軍の治安部門の責任者を務めていてね。わが国では治安部門が核都市の警備隊を統括しているんだけど、今回の事件当初は王都の警備隊が担当していたんだが、そこでは手に負えないということになり、警備隊の上の治安部門にお鉢が回って来て、私が直接指揮を執ることになったという訳なんだ」
「なるほど。そういう事情でしたか。それで、現在どのような状況なのでしょうか?」
「今のところ被害者は五人だ。全員鎌のような鋭利な刃物で切り裂かれている。そして、全員その傷口から血を吸われている」
「え?被害者全員、血が吸われている?それってもしかして?」
「そうだ、ホルスト殿の想像する通りだ。今回の事件の犯人。それを我々は魔物だと判断している」
何と今回の連続殺人事件。どうやら魔物の仕業のようだった。
★★★
俺とガイウス殿下の話し合いは続く。
「やはりガイウス殿下も魔物の仕業だと判断されたのですか」
「当然だ。人間が犯人なら吸血などせぬからな。普通に考えれば魔物の仕業だと推測できる」
「そうですね。その判断で正しいと思います。それで、事件はどのくらいの頻度で起きていますか?」
「事件は大体三日に一度、決まって夜に起きている。前回起きたのが三日前だから、今日くらいにまた起きるのではないかと我々も警戒している」
「そうなると、これ以上の被害を出さないようにするためには今日中にどうにか対策する必要がありそうですね」
「うん。ホルスト殿の言う通りだ」
「しかし、それも中々難しそうですね。何せ今回魔物の正体が不明ということでその魔物に合った対策が取れないですからね。確か目撃者も皆無らしく、手掛かりがないという事でしたが……」
「その通りなんだ。だから我々も苦慮している。これが特定の魔物、例えば吸血するということで仮にヴァンパイアの仕業だと判明すれば、多少の手の取りようもあるだろうけど。傷口から吸血する以上、噛んで吸血するヴァンパイアと明らかに違うからヴァンパイア用の対策はしても意味はない。他に吸血する魔物の情報を持ちあわせていないし、本当手の打ちようがなくて困っているんだ」
「なるほど。大体の事情は分かりました。それでは、そろそろ何か対策を……」
「その魔物の正体。拙者には心当たりがありますぞ!」
俺がガイウス殿下の話を聞き終え、一緒に具体的な対策を考えようと提案しようとした矢先、そうやって俺たちの会話に割り込んできた者がいた。
「心当たりがあるって、ネズ吉、本当なのか?」
「ええ、間違いなくあの魔物の仕業だと思います」
それは俺の衣服に隠れて俺たちの話を聞いていたネズ吉だった。
★★★
ネズ吉が魔物の正体に心当たりがあると言って来た。
それは良い知らせだったが、ネズ吉を見てガイウス殿下が目を丸くしている。
「え?ネズミが話している?」
と言って驚いている。
まあ、当然といえば当然の反応だ。普通のネズミは話さないからな。
なので、まずはネズ吉の紹介をしておく必要があると感じた俺はここでネズ吉を紹介することにする。
「ガイウス殿下はネズ吉に会うのは初めてですかね。こいつの名前は白ネズミのネズ吉。この国を守護する神獣で、この国の伝承にも残っている存在です。だから国王陛下の持つ儀仗にも肖像が彫られているのですよ。一応前に国王陛下と謁見したこともあるんですが。そうだったよな?ネズ吉」
「はい。今ホルスト様にご紹介いただいたネズ吉です。この国を守護する神獣をやっています。ええ、確かに前に国王と会いましたね」
「え?この国を守る神獣?そういえば、前に父上がそんなことを話していたような……。そうですか。あなたがこの国を守る神のおつきの神獣様でしたか。初めまして。私はガイウスと申します。この国の第二王子です。よろしくお願いします」
「ああ、よろしくお願いします」
こんな感じで二人の挨拶が終わったところで本題に入る。
「それでネズ吉。町で起こっている殺人事件の犯人の正体について心当たりがあるということだったが、それはどんな魔物だ?」
「はい。多分それは『キュウケツカマキリ』の仕業ではないかと思われます」
キュウケツカマキリ。
どうやらそれが今回の事件の犯人らしかった。




