第688話~リネットのおじいさんの依頼を受けることにする そして、白ネズミのネズ吉登場~
リネットのおじいさんがドワーフ王国の宝物庫にあるという太古の歴史について書かれてあるという書物について話してくれることになった。
「この話は他言無用だぞ」
「もちろんです」
おじいさんはそう一言俺に言い含めてから話し始めた。
「お前の言う通り、宝物庫には確かにそういう太古の書物を収蔵しているスペースがある」
「本当ですか?」
「本当だ。禁書庫と呼ばれる場所だ」
「禁書庫……ですか?」
禁書庫。閲覧が禁止されている本を置いておく場所のことだ。
その名を聞くだけでも、その本がドワーフ王国にとって重要な本なのだということが分かった。
それはともかく、おじいさんの話は続く。
「そうだ。禁書庫だ。私はそこに入ったことはないが、ずっと昔にそこを調べた学者の話だと、太古の文明に関する資料も確かにあるようだ」
「なるほど。聞いてきた通りですね」
おじいさんの話だと、その禁書庫には確かにお目当ての本があるようである。
となると、是非ともその本を見せて欲しい所である。
だからおじいさんにこう頼んでみた。
「そういう本があるのだったら、是非見せてもらえないでしょうか?」
ただおじいさんはこの俺の頼みに対して良い返事をしなかった。
「それはちょっと難しいかもしれないぞ」
「え?そうなんですか。一応俺たちは国王陛下に神命を達成するために自由に国を探索する許可は得ているのですが」
「それは知っているが、一応禁書庫があるのは宝物庫なのでな。おいそれと他国の人間に許可は出すのは、我々としても国の威信を保たなければいけないことを考えると難しいのだよ」
おじいさんの話を聞いた俺はなるほどと思った。
まあ、確かに行動の自由が与えられているとはいえ、宝物庫のような国の超重要な部分においそれと他国の人間を入れたりするのは、国の威信を保つという意味で好ましく無いから難しい。そういう事のようだ。
おじいさんの話を聞いた俺はがっかりした気分になって暗い顔になったものだが、そんな俺におじいさんはすぐさま解決策を提案してくれた。
「だから、どうだね。ここは一つ仕事をして手柄を立てて、そのご褒美ということで特別に閲覧許可をもらうというのは?」
★★★
リネットのおじいさんが禁書庫の書物を見る許可を得たいのなら、仕事をして手柄を立て、そのご褒美ということで見せてもらったらどうだと提案してきた。
おじいさんがそういう提案をするということは、おじいさんには俺たちにやってほしい仕事があるのだと思う。
そう察した俺はおじいさんにこう聞いてみた。
「仕事をして手柄を立て、そのご褒美で書物を見せてもらうというのは良い考えだと思うのですが、手柄をあげたからといって、禁書庫のような重要な場所に保管してある書物を見せてもらうことができるような仕事はあるのでしょうか?」
「もちろん、あるぞ」
「どういったものでしょうか?」
「ほら、先程ホルスト君が王都の兵士たちがピリピリしていたと言っていただろう?」
「はい、言っていましたね。何か事件が起きていてそのせいだとか」
つい数分前のおじいさんとの会話を思い出しながら、俺はそう答えた。
「そうなんだ。実は今王都では連続殺人事件が起こっていてね。犯人の手掛かりが全くつかめていなくてね。それで兵士たちもピリピリしているのさ」
「なるほど。連続殺人事件ですか。それは大変な犯罪ですね」
「そうだろう。それで、この事件の担当がね。ガイウス殿下なんだよ」
「ガイウス殿下というと、この前お会いしたスーザンの婚約者の?」
「そうだ。スーザンの婚約者のガイウス殿下だ」
ガイウス殿下。
ドワーフ王国の第二王子で、リネットのイトコのスーザンの婚約者だ。
スーザンと結婚してクラフトマン宰相家の後継者となる予定の人物である。
俺達も以前会ったことがあるが、とても人柄の良い好青年だった。
それで、そのガイウス殿下がこの殺人事件の捜査責任者らしい。
それを俺に伝えたうえで、おじいさんは話を続ける。
「だからホルスト君がガイウス殿下を手助けして、うまい具合に事件を解決してくれたら、これはガイウス殿下の功績ということになる。そうなれば国王陛下も大喜びだし、褒美という大義名分ができてホルスト君に協力しやすくなるだろうし、殿下も婿入り前に実績を積めて箔がついて、私の後を継いで宰相になる時にスムーズに行き、我が家としても喜ばしいことだ。だから、この話を引き受けてくれないかい?」
確かにおじいさんの言う通りだった。
この案なら俺たちも助かるし、ガイウス殿下、おじいさんの家も助かる。
俺としても万々歳な一手だった。
ということで。
「わかりました。協力させていただきます」
「ありがとう。それでは明日にでもガイウス殿下の所へ行って欲しい」
といった感じで、おじいさんの頼みを引き受けたのだった。
★★★
さて、このようにしておじいさんの頼みを引き受けた俺たちなのだが、この日はそれ以上特別なイベントはなかった。
皆でご飯を食べ、風呂に入って寝て、一日は終了した。
その翌朝。
「それでは行ってきます」
「行ってらっしゃい」
俺は嫁たちと一緒にガイウス殿下の所へ行くことになった。
馬車に乗り、おじいさんの屋敷から出ようとした。
その時。
「皆様、お久しぶりでございます」
今まさに馬車に乗りこもうとしていた俺にそう声を掛けて来る者がいた。
その声の方に顔を向けると。
「お、誰かと思えば。ネズ吉じゃないか」
「はい、ネズ吉です。お久しぶりです。アリスタ様のご命令により、皆様をお助けするため参上いたしました」
そこにいたのはこの国を守護するネズミの神獣『白ネズミのネズ吉』だった。




