第19話 一方王城では
「知らない天井・・・じゃないなうん。普通にもう慣れたな」
ダンジョンでアキラがはっちゃけた翌朝、俺、佐藤拓郎は眼を覚ました。・・・あの、誰か分かる?いつもアキラからモブって言われてる人だよ?あいつしかそう呼ばないけど。
「それにしても、昨日のアキラは凄かったなー。何したのかはよくわかんなかっけど」
顔を洗いながらそう呟く。ドラゴンは、アキラが簡単に倒してしまったからその強さがよくわからないかもしれないが、実は超強い。ドラゴンは4つのランクに区別されていて、下から幼龍、成龍、古龍、神龍とあり、あの個体は成龍だった。成龍ともなるとこの国の騎士団が総出でいかなければ倒せないようなやつなのだ。実際、宮野の攻撃が通用してなかったし。
「そろそろ行くかー」
寝癖を直し、与えられた部屋から出る。すると、城内が騒がしかった。
「何かあったのか?」
近くに居たメイドに聞いてみる。
「なんでも、あの水瀬明が行方不明になったそうです」
「はあ!?」
アキラが行方不明!?どういうことだ!
「一体何が・・・」
ふと思い出した。そういえば、昨日アキラに渡された手紙があった。
急いで部屋に戻り、手紙を見る。
【亡命します。探さないでください。by水瀬明】
・・・・・・・ふう。
「なるほど」
ナニ目的なんだか、この部屋の防音設備が無駄に良くて助かった。おかげで、この熱い想いを叫ぶことができる。
「ふざけんなあのバッカヤロォォォォォォ!!」
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ふざけた内容に思わず叫んでしまったが、手紙の裏に色々書いてあった。
【PS なんか強くなりすぎて手に負えなくなったせいか暗殺計画が企画されたみたいです。まああのジジイにふざけた態度取ったせいってのもあると思うけど。死にたくないんで亡命します。でもそのうち会いに行くので悲しまないでね☆行き先は教えないけどお土産は期待してください。百均でなんか買ってきます。ちなみにシスティア連れて行きます。無理矢理では無いので大丈夫です。何もしません。これから大変だと思うけど頑張ってね。周りの人には警戒してください。特に雪菜になんかあったら許さない絶対。あ、警戒は特にダブル勇者にしといてください。不良イケメンの方には雪菜の貞操的な意味で。多分あいつ狙ってます。俺が居なくなったらなんかしでかしそうなので気をつけてください。一見爽やかイケメンの方には俺が前に言っといた方で。裏でなんかこそこそしてたら始末しろ。それ以外の連中にも気をつけてください。雪菜に手出そうとした奴が居たら殺せ。お前のベッドの下に色々置いておいた。それを使って躊躇わず殺れ。雪菜に傷一つでも付いたら俺がお前を殺す。最後に、できれば色々と監視したり調べたりしといてください。どんな事でもいいです。
まあそんなこんなで亡命するから。健康には気を使ってください。by水瀬明】
・・・・・・・・・・・・・・・うん。PSの方が本文より遥かに長いってどういうことなんだろね。
とりあえず事情は分かった。でも桐生さんに対して過保護過ぎない?なんかもう怖いんだけど。「傷一つでも付いたら俺がお前を殺す」って何?あいつそんなに桐生さんのこと好きだっけ?まあアキラに優しくするのって桐生さんくらいだからなぁ。この世界来てからの行動見てて凄い分かりやすかったし。つかアキラ。そんなに言うなら桐生さん連れてけよ。システィアさん連れてって桐生さん置いてくとか桐生さん泣くぞ?
・・・桐生さん大丈夫かなぁ。一応桐生さんにもアキラから手紙渡されてたけど。
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「どうして私を置いていったの?どうして?なんで?システィアさんは連れて行ったのに?水瀬君どういうこと?私の事が嫌いなの?そんなわけ無いよね?あの時好きって言ってくれたもんね?水瀬君は嘘つかないもんね?昔みたいに私を守ってくれるよね?ずっと私と一緒だよね?」
ギャァァァァァァァァァァァ!!?
ダメだったーー!!ダメっすよアキラさん!これヤンデレ化っすよ!完璧そうっすよ!背中刺されるよ!あの(アキラ限定で)優しかった桐生さんはどこに行った!何してくれてんだアキラァァァァァァァァ!!というかアキラ!いつの間に桐生さんに告ったんだ?告ったなら尚更桐生さん連れてけよ!
いや待て、俺がやるべき事はアキラを呪う事じゃ無いだろう。俺がやるべきことは!このヤンデレ化を阻止し血みどろの未来を防ぐことだ!じゃなきゃマジで誰か死ぬ!多分システィアさんかアキラのどっちかは確実に死ぬ!というか多分システィアさん殺害からのアキラ拉致監禁エンドにまっしぐらだ!
「あのー桐生さん?ちょっといいですかね?」
「どうしたの?」
桐生さんが微笑みながら返してくる。・・・何でだろう。初めて桐生さんの微笑みを見た時は軽くトキメキを感じたものだが・・・あのセリフを聞いた後だと恐怖しか感じられない。
「あのーそのですね?アキラが桐生さんを連れて行かなかった理由なんですが・・・。心配だったからでしょう」
「心配?どうして?」
「ほら、アキラがいつも言ってたけど、桐生さんは美人じゃないですか?この世界は物騒ですから、か弱い桐生さんは多くの仲間が居る王城に残った方がいいとアキラは考えたのでしょう」
このセリフは全てフィクションです。俺が今考えました。
「水瀬君。そうだったんだ・・・」
よし!このアキラ押しが効いたようだ!
「でもそれならなんでシスティアさんを連れて行ったんだろ・・・」
「システィアさんはかなりの実力者ですし、自分の身は自分で守れるとアキラは判断したのでしょう。システィアさんはこの世界の生まれで物騒な事にも慣れていて、俺たちじゃ分からないこの世界のことを知っているでしょうから色々と頼りになるでしょうし」
頼む・・・これで納得してくれ・・・。
「・・・そっか。そうかもね」
よし、流石俺!
「なら今よりもっと強くなって、水瀬君と一緒に居られるくらいにならなきゃ」
「そうですね。頑張りましょう」
なんとか納得してくれたみたいだ。危なかった・・・ 。
「でも水瀬君も、遊びに行くならせめて一言くらい声掛けてくれればいいのに」
「え?遊びに行く?」
「手紙に書いてあったでしょ?【遊びに行ってくる。お土産買ってくるから期待しといて】って」
殺されかけたから亡命するって書いてなかった?・・・もしかして桐生さんには本当の事を教えなかったのか?ならグッジョブだ。本当の事を教えていたら、桐生さんが国王暗殺を企てていた。
「桐生さん、ちょっといいかな?」
ん、この声はーーーー
「話をしたいんだけど」
白河だ。
「ごめん話しかけないでもらえる?私は貴方と話していられる程暇じゃ無いから」
おおう・・・流石桐生さん。アキラが居ないところだと容赦ない・・・
「ちょっとくらいいいだろう?水瀬が行方不明になったっていうのは聞いたかな?」
バカ白河!その話題はやめろ!ヤンデレ化が再発したらどうしてくれる!
「・・・聞いたけど、それが何?」
「いや、一体何があったのかなってね。もしかしたら、消されたんじゃ無いのかな?国王陛下に対して随分無礼な態度取ったみたいだし、元々目障りだったみたいだしね。今頃はもう死んでるかも・・・」
あ、これもう終わったな。
「もう口を開かないでくれる?あと不快だから二度と近付かないで」
「ふーん・・・。確かに失礼だったね。悪かったよ」
そう言って、白河は去っていった。
あいつ、何がしたかったんだ?傷心中の桐生さんを慰めに来たって言うのなら分かるが、アキラの事を悪く言ったって桐生さんに嫌われるだけだろ。
・・・アキラから手紙であの事について気をつけておけって書いてあったが、俺には何の事だかさっぱり分からない。俺そんな事言われたっけ?
悩んでいると、
「おい桐生!ちょっといいか!」
宮野+その他男子が話しかけてきた。宮野お前、よくドラゴンの火球喰らったのに生きてるな。全治一ヶ月位にはなってると思ってた。
「悪いけど私忙しいから」
そう言って桐生さんが華麗に立ち去ろうとする。が、
「ちょっとくらいいいじゃねえか」
そう言って宮野が桐生さんの肩に腕を回そうとする。だがしかーし!
「止めとけって。桐生さん嫌がってるだろ?」
俺が宮野の腕を掴む。こんな時こそ俺の出番である。寧ろそれ位しか出来ない。頭脳プレイはアキラがやってくれ。
「あ?なんのつもりだ佐藤。邪魔すんじゃねえよ」
そう言って睨んできた。こいつ背高いし、髪金色に染めてるから超怖い。だが俺は知っているんだ宮野。お前らが自分たちの部屋にメイドを連れ込んでナニしてるのかを!それ考えると連れて行かせるわけにはいかない!
「いやー邪魔ってわけじゃないんだけどさ?嫌がる女の子に無理やりっていうのはどうかと思うんだよね」
必殺爽やかスマイル!笑顔は世界を救う。
「はぁ?お前何言ってんの?」
うわ出た!頭の弱い奴が相手を黙らせたい時によく使うやつ!
「だからさ、桐生さんにちょっかい出すのは止めろって事だよ」
直接的に言ってやった。不良にこんなことを言える俺は勇者だな。天職は侍だけど。
「あぁん!んだとテメェ!」
だから怖いって!なんですぐ大声出すんだよこの単細胞!
「おいお前ら!一旦コイツシメるぞ」
そう言って、取り巻きたちと取り囲んできた。
なんですぐ数に頼るんだよ男ならタイマンだろ!それでも多分勝てないけど!
だがしかし、俺にはあれがある。
「先に一発殴っとくぞ」
宮野が殴りかかってくる。が、
「うっ・・・」
急に宮野が倒れる。よし、効いたみたいだ!アキラに貰った道具が!
俺が今使ったのは、その貰った内の一つであるなんかのガスだ。殺虫剤みたいな容器に入っていた。使用方法とか効果とか分かんなかったけど、ちゃんと効いたみたいで安心した。なんでアキラがこんなの持ってるのかは気にしない。
「おい大丈夫か!」
取り巻き共が宮野を助け起こす。今のうちに逃げよう。
「何があった宮野!口から泡吹いて痙攣してるぞ!」
・・・効きすぎた気がしないでもないが放置だ。正当防衛だし、そもそも何やったかバレてないだろうし。バレなきゃ怖くない!
「桐生さーんって、あれ?」
桐生さんが居ない。・・・もしかしてもう帰っちゃった?
「酷い・・・俺頑張ったのに・・・」
桐生さんはアキラ以外には冷たいようです。俺結構桐生さんと仲良いと思ってたんだけどな・・・
「宮野!?宮野ォォォォォ!!」
・・・聞こえなかったことにしよう。
拝啓アキラ。はっきり言ってこの王城で俺が桐生さんを守り切るのは難しいようです。なので早く帰ってきてください。いやマジで。
ちなみにですがアキラは別に告ってません。召喚される前の「俺って桐生のこと好きなのか?」という発言を雪菜がちょっと聞き間違えただけです。
アキラは難聴ではないですが鈍感で、というより雪菜の自分に対する好意はラブじゃなくてライクだと思っているので、このままだと雪菜の恋が進展することはありません。ですが、雪菜が一言「好きです」と言えば、雪菜に対する好意がかなりラブに近いライクであり、難聴でもなんでもないアキラは余裕でオッケーくれます。アキラは優しくしてくれる子のことはすぐ好きになります。もしアキラが女の子だったらチョロインと呼ばれること間違いなし!しかし、いつまでたっても告らないせいでシスティアさんという強力なライバルが出てきました。このままいくと昼ドラみたいな展開が待っています。。しかし!この話は異世界ハーレムモノです。更にヒロインが増えてカオスな状況になっていきます。
頑張れアキラ!自分に攻撃が当たらない設定は絶対に解除しちゃ駄目だぞ!じゃなきゃ背中刺されるから!




