第14話-6:ラングドシャの生キャラメルサンドと謎の仮面
プレジアが、神妙な面持ちで魔王様を見上げている。
私も二人の一挙一動を見守りながら額の汗を拭うと、魔王様はケーキを摘みながら声を発する。
「……調査班にお前の情報を集めさせ、この場所に至った訳だが。……私は昨日、今日と菓子を食していないのだが……?」
重々しい空気が魔王様から発せられ、辺りを覆い尽くしていく。
陰鬱な雰囲気に息を呑み、魔王様の顔を熟覧していると、ケーキを口にしたコンセルさんが声を上げた。
「ん! 美味ッ! 口溶けもシュワッとしてて、幾らでも食べられますね!」
「うむ、甘酸っぱくふんわりとしたこの食感が後を引くな」
コンセルさんの言葉に魔王様も頷きながらケーキを手で千切り、口に収める。
重苦しい気配を漂わせたまま魔王様が黙々とケーキを食べ進めると、プレジアは魔王様の雰囲気に萎縮しつつ、皿に伸ばされる手と、口に運ばれるケーキを、忙しなく見比べている。
「わ、儂の分……!! これはシホが儂のために……!!」
「……シホの作った菓子は、私のものだ」
「えええッッ?! た、確かにシホはサジェスの城の者じゃが……材料提供は儂が……」
魔王様の言葉にプレジアは衝撃を受け、床に両手をついて項垂れながら、一人ごちる。
その間も魔王様は食べることを止めず、素早い手付きで皿と口を往復させている。
コンセルさんも魔王様の言葉に苦笑いを浮かべながらも、魔王様の手の間を縫うようにケーキを摘み、物凄い速度でケーキを減らしていく。
ケーキは、とうとう残り一欠片となってしまった。
「し、しまった!! シ、シホ!! 追加を大至急!!」
不意に我に返ったプレジアが札束を握り締め、私に差し出してくる。
……魔王様とコンセルさんが来たのに、菓子を作っててもいいのだろうか?
私が札束とプレジアの顔を交互に見つめていると、最後の一欠片を口に運んだ魔王様が、私に視線を向けて呟いた。
「……帰るぞ、シホ」
魔王様の呟きにプレジアは衝撃を受け、伸ばした手を震わせながらゆっくりと、魔王様の顔へ懇願するように視線を送る。
「……ま、まだ……儂の大願は……成就して、おらんのじゃよ……?」
「嘘を吐くな。随分と親交を深めていたように見えるな」
ワナワナと震えるプレジアを胸元に引き寄せてそっと頭を撫でる私の行動に、プレジアもその身を委ねて甘えてくる。
そんな私達の様子を、魔王様は訝しげに、コンセルさんは笑みを引き攣らせて眺めていた。
「シホ! 帰ったら菓子を作れ! 昨日の分もだ! プレジア! お前は説教だ!」
……私、二日でどんだけ菓子を作る羽目に……
魔王様は、プレジアと私を小脇に抱えて外に出ると、上空へその身を浮かび上がらせる。
コンセルさんも蝙蝠のような黒い羽を広げ、魔王様の後に続いていった。
途中転移魔術を通過し、私達は魔王様の執務室へ辿り着く。
魔王様は眉間の皺を深く刻み、無言のままプレジアを睨み付けている。
体を震わせ怯えきった表情のプレジアに後ろ髪を引かれる私を、コンセルさんは苦笑し、部屋の外へと連れ出した。
「……魔王様、怒ると怖いからな。見てると肝を冷やすぞ?」
「……それは尚更、放っとけないな」
そもそも魔王を倒したのは、この私だ。
怒られるなら、私が先に怒られるのが筋ではないだろうか。
執務室へ戻ろうとする私の前に立ちはだかるコンセルさんは、上体を屈め、私の顔に自分の顔を近付ける。
「だから、早く甘い物を献上して、その怒りを静めないとな」
……なるほど。確かに、今の魔王様は砂糖の禁断症状なのかもしれない。
コンセルさんの説得に私が考え込んでいると、コンセルさんは私の背中を押し、厨房へと促した。
厨房に辿り着き、作業台を前にした私は暫し黙考する。
二回分の菓子を作るとなると……量だけでいいのだろうか?
「……ちょっと、組み合わせるか」
私はバターを室温に戻し、ボウルに入れる。
バターに砂糖を加え、白くふわっとするまでハンドミキサーでよくすり混ぜる。
そこに、卵白を数回に分けて混ぜていく。
バニラオイル──ファムルに乾燥してもらったバニラの葉を、香りのない油に入れ、湯煎にかけて濾した物を数滴加え、篩った小麦粉を入れ混ぜる。
絞り袋で天板に三センチほどの円形に絞り出し、焼き上げたらラングドシャの出来上がりだ。
砂糖とバター、蜂蜜を鍋に入れ、中火で溶かす。
そこに生クリームと牛乳、バニラオイルを入れ、ゆっくりと煮詰める。
トロトロしてきたら、生キャラメルクリームの完成だ。
これをもっと煮詰めてバットで冷やし固めれば生キャラメルが出来るが、今回は程々でラングドシャの間に塗り、挟んでみる。
ラングドシャの生キャラメルサンドの出来上がりだ。
早速出来上がったサンドを皿に盛り、執務室へと運んでいると、突如魔王様の叫声が響いてくる。
「は?! 第七大陸魔王を従わせた?! 何を仕出かしているんだ、貴様はッッ!!」
……かなりご立腹のようだ。
執務室の扉を前に、私は生唾を飲み込んで佇む。
しかしコンセルさんの手により扉は呆気なく開かれ、背中を押された反動で中へと入ってしまう。
……仕方ない、現実逃避でもするか。
私は己の意志を殺しテーブルの上に皿を置き、側にあった四つのカップの内の一つを手に、ソファへ腰掛ける。
ソファの背もたれに左腕を載せて優雅に足を組み、右手で紅茶の入ったカップを口元へと運び、香りを堪能しつつ、優雅に呟いた。
「……ん~。アールグレイかね、これは」
「……そういう品種は聞いたことがないが……何の真似だ、シホ」
私のエセ紳士然とした態度に、魔王様はラングドシャを頬張りながら眉を顰め、こちらに視線を移動させる。
……現実逃避していました、すいません。
ついでに場を和ませようとしたのだが、どうやら失敗のようだ。
辺りには冷え切った空気が漂い、コンセルさんとプレジアの、異物でも見るかのような視線が突き刺さる。
私は紅茶をテーブルに戻しながら組んでいた足を下ろし、膝の上に両手を載せて深々と頭を下げた。
「申し訳ありませんでした」
「お前が気に病むことではない。反省すべきはこいつだ」
魔王様が眉間に皺を寄せたまま、プレジアの方へ目を移す。
プレジアは小さく縮こまったまま、両手で目元を覆っていた。
嗚咽に合わせて揺れる肩を見ると、どうにも焦燥感に駆られるが、手の間から偶に見える弛んだ口元で嘘泣きであることが判明する。
「わ、儂はっ……儂は……サジェスのために……っ」
「まず、その嘘泣きを止めろ。シホが気に病む」
端から見れば、大の男が小さい女の子を苛めているように見える。
嘘泣きだと分かっていても、魔王様に対する視線が冷たくなってしまう。
魔王様は額を拭い、こちらを一瞥してプレジアへと向き直した。
「……反省はしているのか?」
「しとる、しとる。大いに……む!! 何じゃこのコクは!! 隠れ家で食った菓子とはまた違う旨味があるぞ?!」
「していないではないか!!」
嘘泣きを止め、ラングドシャを口に入れたプレジアが、眉を吊り上げてラングドシャを瞠目する。
「はんへいひほふっへ!! はんほはほひはふはふふほ!!」
「口の物を飲み込んでから話せ!!」
両手にラングドシャを掴み、貪り食うプレジアの態度に魔王様は額に手を当て顔を背ける。
が、直ぐに考え直したのか、プレジアと争うようにラングドシャを頬張り始めた。
「このクッキーとクリームの相性が凄くいいな! なるほど、これで二回分か?」
「そうそう、倍量だけじゃ面白くないしね。クッキーもよく作るのとは、ちょっと変えてあるんだ」
「おー! 考えたな! 確かに普段のより、ギュールが効いてるのに軽くて進むな!」
淡々としつつも、手が高速でラングドシャと口を行き来しているコンセルさんが、微笑みながら話し掛けてくる。
コンセルさんの理解に私も嬉しくなり、コンセルさんと話を弾ませるが、その状態は、魔王様の発する重々しい気配で瞬時に掻き消されてしまう。
「……各種族の王という立場の者へ、不用意に干渉するという事態の重さが分かっているのか?」
「わ……儂は既に、全ての王と既知の仲じゃし、さして問題では……」
「私がいっているのは、『干渉』という意味だ」
魔王様は眉間の皺を一層深く刻み、鋭い目つきでプレジアを凝視する。
プレジアは魔王様の威圧感に耐え兼ねてか、顔を背け視線だけを魔王様へ向けて弁解を述べるが、魔王様はその言葉を遮り、強い口調で警告する。
魔王様の声色に、プレジアは瞳を潤ませ顔を歪めながら、掌大の透明な球を頭上に掲げた。
「わっ儂はっ……!! 分かったのじゃ! サジェスにも此奴の力を貸してやるのじゃ!! シェーヴ!! ここに来て役立つ所を見せいっ!!」
「……いや、そうではなく、あまり干渉をするなといいたいのだが……」
プレジアの持つ球が光を放ち、執務室を照らす。
聞く耳を持たないプレジアに、魔王様は頭を抱えて閉口した。
暫しの猶予の後、執務室の奥にある転移魔法陣の部屋から、徐に顔を出す。
扉から中を伺うように覗き込む山羊男は、皆の注目を集めていることを察し、慌てて己の背中を反り返らせ、居丈高に歩み寄る。
「プレジア様のお呼びにより、参上したぞお!!」
「よう来た!! さあ! お主がサジェスの役に立つ所を、見せるのじゃ!!」
「……え?」
瞳を輝かせ満面の笑みを見せるプレジアに、山羊男は顔を顰めプレジアへ視線を落とす。
まさか逆らうと思わなかったプレジアは驚きのあまり体を打ち振るわせ、山羊男を見つめ返した。
「な……何故じゃ?! 儂のいうことが聞けんのか?!」
「いや、プレジア様やシホ様はともかく、野郎のいうことお、聞くのはよお……」
乙女チックな私服を好むのに、意外と硬派なことをいう。
いや、女の下僕なら良いという考えでは、それも可笑しいか。取り敢えず、変わった嗜好の持ち主は理解がし難い。
プレジアも山羊男の言い分に納得いくはずもなく、眉を吊り上げて拳を突き上げ、山羊男に怒鳴りつける。
「何じゃと?! 儂に恥を掻かす気か?!!」
「……これは俺のポリシーですからよお、そうは……」
「……第七大陸魔王が役に立てるほど、有能だとも思えないですがね」
尚も渋る山羊男の態度に、コンセルさんがコーヒーカップを口に運びながら呟く。
涼やかにせせら笑うその表情は、明らかな挑発だろう。
山羊男は血管を盛り上がらせ、指を鳴らしながらコンセルさんへと近付いていく。
コンセルさんも笑みを浮かべたまま山羊男を睨み付け、ゆっくりとソファから立ち上がった。
「……サジェス様やシホ様達はあ、ともかくよお、貴様如きに後れを取るほど、落ちぶれちゃあ、いねえぜえ?!」
男は言葉と共に己の鎌を振り上げ、コンセルさんに向かって振り下ろす。
コンセルさんは振り下ろされる鎌の刃部分を拳で叩き、山羊男の重心を崩し、前傾姿勢になった山羊男の脇腹を蹴り付け、地面に平伏させる。
案の定、赤子の手を捻るような有様に、魔王様も一瞥すらくれず優雅にチョクラを啜っている。
「貴様如きに……何だって?」
「き、貴様ああ!!」
山羊男は黒い毛に覆われた顔を真っ赤に染め上げながら立ち上がり、鎌を八の字に振り回してコンセルさんを斬り付ける。
が、コンセルさんは足を一歩も動かさず、上体を反らすだけで難なく攻撃を躱している。
圧倒的力量差に山羊男はますます頭に血を上らせ、身に付けているアイテムをガムシャラに投げ付けた。
その中の一つ、ビー玉ほどの球がコンセルさんの目の前で魔力の粒を放出させる。
「……な?!」
「仕舞った……! 精霊王様に貰ったアイテムを……!!」
「……何?! マリンジから、だと?!」
魔力の粒に包まれ驚きの声を上げるコンセルさんに、思わず投げ付けたアイテムの価値を惜しみ、山羊男が声を上げる。
突如飛び出した大物の存在に魔王様は事の急変を予測し、カップをテーブルに戻し、山羊男へと詰め寄った。
「……まだマリンジから貰ったものがあったのか」
「こ、これで全部ですぜえ……けど、これは……『気に入った女を攻撃してしまう効果』とかいうもんでえ、使いようがな……」
「何?!」
魔王様が山羊男の言葉に肩を震わせ、コンセルさんへ顔を動かす。
コンセルさんが頭を押さえながら体を捩らせ、呻き声を上げる。
私に視線を向けるコンセルさんの顔には、何故か仮面が浮き上がっていた。
白い陶器のような物で作られており、上端は上に、下端は下に伸び、ちょっと蝶の形にも見える。
黒と赤で面全体に模様が描かれており、その周囲を金色の飾りが華美に施されていた。
……などと、じっくり観察している場合じゃないな……まさか、よもや、もしかして私が狙われているのだろうか。
無表情になったコンセルさんが、一歩、一歩とこちらに近付いてくる。
光栄なような、複雑な心境で、私はコンセルさんに視線を固定させたまま、ソファから下りて身構える。
コンセルさんは私の前で立ち止まり、拳を振り上げた。
「うわっっ!! は、早っっ!!」
「……え? あ、あれ?」
何とか躱してみるが、かなり早い。
山羊男は己の為出かした事態が飲み込めず、コンセルさんと私を呆気に取られて見つめている。
私が身構える前に、コンセルさんの二撃目が放たれる。
辛うじて片手でそれを受け流し、ガラ空きになったコンセルさんの腹部へ蹴りを入れる。
……硬っってえええッッ!!
筋肉に弾き飛ばされるように私は壁へ激突しそうになるが、すかさず壁を蹴り付け、その勢いでコンセルさんの鼻と口の間にある急所、人中へ拳を伸ばす。受け身を取り切れなかったコンセルさんは己の頬に私の拳をうけ、体を僅かに傾けた。
私はそのまま体を翻し、コンセルさんの顎へ目掛けて両足で蹴り付ける。
が、同じ位置からの攻撃はコンセルさんに呆気なく躱され、私の脇腹に蹴りを入れようとするコンセルさんの攻撃に、私は空中で脚を曲げ、受け流そうと受け身を取るが、コンセルさんの強烈な蹴りの威力は止めきれず、そのまま吹き飛ばされて壁に叩き付けられた。
壁に激突した衝撃よりも、受け身で受けたはずのコンセルさんの蹴りによるダメージの方が大きい。
私は身構えながら痺れた脚を撫でる。
……痛ええええっっ!!
「シホ!! ……コ、コンセル?!」
「シ、シホ?! コンセルもいつの間にやら腕を上げおったようじゃの……! 構わぬ、シホ! コンセルを昏倒させてしまうのじゃ!!」
「出来るかぁぁぁっっ!!」
魔王様の動揺に、プレジアも驚きを隠せず声を荒げ、無茶な注文を要求する。
正直、コンセルさんの実力は私より上で、気絶させるような攻撃は入りそうもない。
かといって物理でどうにかするのが精一杯で、魔力の粒を操作する余裕もない。
……誰かどうにかしておくれ?!
私は雄叫びを上げながらコンセルさんの連蹴りを跳び越え、背後に回り、膝裏へ蹴りを入れる。
膝カックンの要領で体が下がったコンセルさんの脳天へ肘を振り下ろす。
それを予測していたのか、コンセルさんは後ろ向きのまま振り下ろされる私の腕を掴み、放り投げる。
咄嗟に空中で体を捻り、私は床に降り立った。
お互いに向かい合い、間合いを開け、全身の動きを探り合いながら身構える。
コンセルさんからダメージを感じさせる挙動は一切ない。私の攻撃は全く効いていないのだ。
私は捕まれた腕からも痺れを感じ、改めてコンセルさんの力量を痛感する。
……やっぱ強すぎるぜ、コンセルさん……!!
コンセルさんが僅かに身を動かす。
……来るッッッ!
その時、魔王様が驚きと躊躇いの混ざった表情から意を決したような顔付きになり、私達の間に入ってきた。
「……その辺にしておけ、コンセル」
魔王様が仮面に掌を翳し、魔力の光を当てる。
すると私に襲い掛かろうと拳を構えたコンセルさんが動きを止め、苦しそうに頭を抱え始める。
「……ぐ……があああっっ!!」
「コンセルさん?! ちょ、魔王様?!」
「案ずるな。この魔法にはさほどの力は込められていないようだ。心の片隅にあった『シホと一戦交えてみたい』気持ちを刺激されたのだろう」
「……は、はあ……?」
私はちょっと喧嘩が出来る程度で、この世界で通用するほど戦えるわけではないのだが、どうしてこう皆さん誤解されているのだろうか。
それとも自分で気付かぬうちに、この世界で能力が開発されているのだろうか?
……菓子作りを楽しむ安穏とした生活で、そんな能力に目覚める気配は欠片もないが。
苦しみ蹲るコンセルさんから視線を外し、思わず魔王様の顔を凝視する。
「……何だ?」
「……いえ。過分な評価は現実を知って落胆する元ですぜ?」
「……ぐ、あ……!!」
コンセルさんが震えた手で仮面を握り割り、床に膝を付いて荒い呼吸を整える。
床に叩き付けられた仮面の欠片はその場で魔力の粒に変化し、霧散する。
私はコンセルさんの体調が不安になり、しゃがみ込んでその顔を覗き込んだ。
「……な、何かゴメン、シホちゃん……」
「いやいや。悪いのは……ねえ?」
「……だな」
コンセルさんが私の方へ顔を上げ、突然謝罪する。
私は魔王様を振り返り、視線を動かして真犯人を指し示す。
魔王様は私の言葉に大きく頷き、半目で後ろに視線を向ける。
プレジアと山羊男は魔王様の背後に回り、部屋奥にある転移の部屋に逃げ込もうとしていた。
「わ、儂は急用を思い出したんで失礼するぞ!」
「お、俺も……!! 会議の途中で抜けてきたんでなあ……!!」
「そうはいくか!!」
逃げだそうと走り出すプレジアの首根っこと山羊男の角を掴み、魔王様は部屋の隅に連れて行く。
ジタバタと抵抗するプレジアと山羊男に一喝し、その場に正座をさせて説教を始めた。
「……だからお前はいつも……!! ……その考えなしで行動するのを止めろ!! ……大体尻ぬぐいする身にもなれ!! ……シェーヴ!! 大体お前は魔王としての尊厳はないのか?! そうやって……」
「お、俺はあ……す、すみませんでしたあ……」
「お、面白そうじゃったんで、つい……シホ! 助けるのじゃ!!」
……魔王様の説教攻めは可哀想だとは思うが、少しは反省してもらわないと、こっちの身が持たない。
私とコンセルさんはソファに戻り、怒濤のように捲し立てる魔王様の説教に聞こえない振りを装いながら、冷え切った飲み物を口に運んだ。




