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SCHUTZENGEL ~守護天使~  作者: 河野 る宇
◆第六章~人にあらざる者
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*悩める青年

「そんなの嘘だろ? だって……」

 デイトリアは、信じられずに薄笑いを顔に貼り付けて呆然と宙を見つめている久住を一瞥しガデスに視線を移した。

「これがお前の望みか」

「全ては君のためだよ、デイ。短い命の人間といるより、私と共に永遠を生きようじゃないか。そうすることが君にとっての幸せだと思うけどね」

 幻影は口角を吊り上げ鋭くデイトリアを見据えて求めるように手を差し出す。

「幸福かどうかは自分で決める事だ、貴様に指図されるいわれは無い」

「強情だね。いつまでも意地を張らない方がいい」

 それだけ発すると、ガデスだけでなく魔物たちも姿を消した。その後、猶予を与えるかのようにデイトリアの元には攻撃の手はしばらくなかった。

 この戦いにより、電話回線、電波回線など不通となっているが実は地下に霊術士たちが使う特別な回線が引かれている。本格的な戦いが始まるまでに通信衛星も打ち上げられるだけ打ち上げて仲間との寸断だけは免れていた。



 ──久住は受話器を見下ろし苦い表情を浮かべる。二人は勇介のマンションから霊術士たちが利用する宿舎に移っていた。建物は特殊なシールドによって守られているが、それほど強力とは言えない。

「うう……。どうしよう」

 デイのことを報告するべきなのか? そうしたらデイはどうなる? 考えがぐるぐる回ってまとまらない。

「報告すれば良いだろう」

「デイ」

「その結果がどうなろうとお前の責任ではない。自身のすべき事をすれば良い」

「なんでそんな言い方するんだよ。自分のことなのに、他人事みたいに──」

 淡々と紡がれる言葉に息が詰まる。

「私は人ではない」

 はっきりした言葉に久住は衝撃で目を見開く。

 しかし、青年を見つめる青い瞳は何も示さない。哀しみも苦しみも、何一つとして示されていない。

 なのに、その瞳に空虚は窺えず強い光が宿っているようだった。

「人ではないのだ」

 発したデイトリアの面持ちは、少しだけ哀しみを帯びた微笑みを浮かべた。そんな顔を見たくなくて、久住は視線を反らす。

「お、俺は人間だし、まだちょっとしか生きてないから、沢山生きてるかもしれないデイのことわかんないけど……。好きな相手を簡単に売るみたいなこと、出来ないんだよ」

 出来る訳がないじゃないか。

「悩んでいる場合かね」

 ふいに、ピンと張り詰めた声に伏せていた顔を上げる。

「私情を挟んでいる状況ではなかろう」

 確かにそうだ。意を決して受話器を取るも、ボタンを押す事が出来ない。

「わかってるよ、わかってる。自分が何をするためにこの世界に入ったのかくらい。この力に目覚めた時はどうしていいかわからなかったけど……。キャステルに出会って俺はああ、こんな人になりたいって思った」

「そのキャステルを信用できないのか」

「そんなことないよ」

「ならば報告すれば良い」

「あ──」

 促されて再び受話器を見つめる。久住はそれでも迷いを捨てられずデイトリアと受話器を交互に見やった。

 そうして口を引き結ぶと、静かに受話器を戻す。

「バレるまで黙っててもいいよね。俺が言われたのはデイの警護と監視だけだから」

 目を丸くしているデイトリアに苦笑いを浮かべた。

「どうせすぐにばれる」

 久住の判断に溜息を吐いて肩をすくめた。

「そのときはそのとき。俺がなんとかするさ」

「お前が? 期待できんな」

「ぐっ……」

 痛いところをつかれてぐうの音も出ない。


 ──それから数日後、マリレーヌは魔物を引き連れてデイトリアのもとを訪れた。

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