5 セルネイア ①
わたしはセルネイア、十七歳。
リンフェル王国の神、マールジューランの言葉を聞くことができる一位巫女姫。
まあ、一位巫女姫といっても、現在確認されている神の声を聞くことができる巫女は、わたし一人だけなんだけど。
わたしは歴代の巫女姫の中でもかなり強力な力を持っていて『神に愛された娘』との異名を持ち、さらに、とても珍しく貴重な『癒しの力』も持っている。これは名前の通り、他人の傷や病を癒すことができるんだけど、それほど劇的に癒すことは出来なくて、しかも反動で自分の具合が悪くなるから、、ほんの一部の人にしか知らせていないし、先代の巫女姫様からは使わないようにと言われていた。
そんな、すごい力を持つわたしだけど、実は、別世界からの転生者なのだ。
わたしは国境付近の小さなダカダという町の宿屋に、兄三人、姉一人の五人兄妹の末っ子として生まれた。
小さな頃からわたしは、不思議な子どもだったらしい。
『テレビ』だとか『パソコン』だとか、わけのわからない単語を口にしたり『ラーメン』や『カレー』など、誰も知らない物を食べたがったり。
両親に説明して作ってもらい、宿の看板商品となったものもある。ちなみに実家の宿屋はその看板料理にちなんで『コロッケ亭』という。
今にして思うとそれは、セルネイアとしてこの世界に生まれる前に生きていた世界の記憶。
まあ、前の世界の記憶はそれほど詳しくは思い出せない。名前や、何歳まで生きていたのかもわからない。断片的に思い浮かぶことが本当なのか、単なる想像なのかもわからない。テレビなんて、四角い板の中で人や動物や絵が動いているイメージで、そんなのありえないと思うし。
もしかしたら前の世界は、魔法が使える世界だったのかもしれない。
わたしは、勘がいい、というか、予知をする子どもだった。
「今年は雨がいっぱい降るから、川があふれないようにしておいた方がいい」
「来年は寒い日が続くから、今年とれた麦を残しておいた方がいい」
そんなことをいきなり言って、しかも、それはことごとく当たっていたそうだ。
「この子は神の声が聞こえるのかもしれない」
「巫女の素質があるのでは?」
「そういう子どもがいたら知らせるようにと言われているが……」
「まだ小さいこの子を王都にやるなんて……」
「それに、この町にいてくれた方が何かと助かるんだが」
「じゃあ、この子が予知能力があることは秘密にしておこう」
と、家族と町のみんなに守られ、大切に育ててもらっていた。
けれど九歳の時にとうとうばれてしまい、王都に連れて来られて巫女姫様に会って、結局次期巫女姫候補にされてしまった。
最初のうちは寂しいし心細いし、勉強ばっかりさせられるしで、どうやって逃げ帰ろうかと考えていたけれど、十一歳、初めて正式に神託を受ける儀式で、鮮やかに記憶が蘇った。
『――――――の名において○○○○を我の言葉を民に伝える巫女姫としてリンフェル王国へと転生させる』
『おぬしは赤子としてリンフェル王国に生まれるのじゃ』
『リンフェル王国の未来はおぬしにかかっていると言うても過言ではない。国が滅ぼされぬよう必死になるように』
「うわぁぁぁ……思い出したぁぁぁ……」
真っ白の空間でリンフェルの美しい守護神、マールジューランに会ったことを思い出し思わず呻いていると、懐かしい声が頭の中に響いた。
『ようやく思い出したか。まあ、これまでの者と比べると早い方じゃ。これから困難なことが起きるじゃろう。おぬしは我の声を、しっかり民に伝えるんじゃぞ』
「……はぁい、かしこまりましたぁ……」
こうして、わたしはそれから数年間は高齢の一位巫女姫様のお手伝いとして、その後は責任ある一位巫女姫として、神託を伝えてきた。
今回の戦もそう。
いち早く敵国の動きを予知し、伝え、勝利に貢献した。
『おぬしは本当に、驚くほど我の声を聞く。このように会話ができる者など、これまでおらなんだ』
「この国の存亡がかかってるって言われれば、そりゃあ必死にもなりますよ。……ところで、この『聖なる湖での禊』って、本当に必要なんですか?」
『我は知らん。民がいつの間にか始めたことじゃ』
「えっ? そうなんですか? えー、それじゃあ凍えながら湖に頭まで浸かる意味って……あーもう廃止だ、こんなの!」
『様式美を大切にする者達が、納得するかな?』
そう言ってマールジューランは笑った。
セルネイア、『なんとなく』といわれていましたが、かなりすごい巫女姫になりました。
ちょっと長いので①②に分けました。わたしは、一話2000字前後くらいが読みやすいと思っているのですが……どうなんでしょう?




