第7話 L’eau enveloppée d’un ruban (6)
占い師「これで、タロット占いはおしまい。ここからは、悩み相談よ。何か、話したいことある? 私で良かったら、聞くわよ」
蕾も若菜も占い師から、気になっていたことを聞けた。初めは、妖艶な少し近寄り難い不思議な雰囲気を持ったイメージだったのだが、二人ともすっかり占い師のことを身近に感じるようになり、この人生の先輩、美魔女に、さらに聞きたいことが、出てきていた。
占い師「すみません、コーヒーのおかわりください。あとこの子達にも、ローズヒップの紅茶を」
占い師がウエイターに声をかける
ウエイター「はい。かしこまりました」
若菜「 私は、ずっと気になる人がいて、でも彼のこと名前も知らなくて....... 遠くからずっと見てるだけの人なんです。でも、勇気を持って、話してみたいって思ってるんです。でも臆病だからできないでいます..... 」
占い師「 そっかぁ。恋愛あるあるだね。蕾ちゃんは?」
蕾「私は........ 別に特に........。 まぁ、毎日平穏に楽しく過ごせればいいかなぁって思っていて。」
占い師「 夢とかないの? 好きな人は、いないの?」
蕾「 それは....... 仕事がもっと上達するようにとか、夢っていうか、目標みたいのは、ありますけど.........。」
占い師「 ありますけど......?
その仕事を頑張りたいって言う気持ちを持っているって言う事は、良い事よね。頑張ってね。悪魔の逆位置が出てるから、きっといい方向に行けるわよ。」
蕾「あとは、近々遊園地に......。」
占い師「 遊園地? 」
若菜「 郡山君と行くって言ってた話? 」
蕾「 うん....。そうそう。」
占い師が、目を細めて、左口角だけをキュッとあげて、微笑む。
占い師「 ほほぉん。なるほど、楽しみも持っているのね。それも心を豊かにする大事なことよ。その、、郡山? 郡山君ね。
多分、蕾ちゃんの頑丈な心の蓋を開けた中に、その郡山君が、いそうだわね。」
蕾「 えー?! はぁ~~ぁ~.... そ、そんなことは、全然ないですよ。本当にただの友達ですから。」
若菜がニヤニヤして蕾の顔を見ている。
若菜「 友達だからねぇ~。」
占い師と若菜が目を合わせて、二人でニコニコしながら三回くらい頷く。
蕾「 なに?なに?汗 ほんとだよ!」
占い師「 友達って言う人ほど、心の真ん中に居たりするものなのよ。
まぁ、まぁ、いいわ。
かわいい若い二人と今日は話せて楽しかったわ。少しは私、力になれたかしら?
恋愛はね 上手くいかない時もあるわ。悲しい時も出てくるし。でもね、それは今よりもっといい人が、自分に合った人が現れるって神様が言ってるのよ。悲しいことがあると、優しさを含んだ強さみたいな、そんなものを学ぶことも出来るのよ。だから、落ち込むのもある程度にして。
美しいものを観たり美味しいものを食べたりして、自分を大事にするのよ。それで元気が出てきたら、また勇気を持つのよ。
いい、聞いて。───人生は一度きりよ。
モタモタしてたら、見頃の桜も散ってくわ。綺麗に、自分の心の花を咲かせて、謳歌してね。
それじゃあ、がんばってね。
かわいい二人に会えて嬉しかった。
またなんでも悩みがあったら、いつでも聞くわ。
相談に来たらいいわ。ローズヒップの紅茶は私の奢りよ。ローズヒップは、美肌効果があるわ。 あとこれあげるわね。
乙女時代を、存分に楽しんでね♡ 」
占い師はそう二人に言うと、二人の前に可愛くリボンで包装された紙袋を二つ置いた。そして、占い師は席を立ち、8cmほどの黒色のピンヒールをコツコツと鳴らしながら、店を出ていった。
蕾と若菜の前に出された、ローズヒップティーは、鮮やかで透明感のある瑞々しい赤色だった。
ゆらりとのぼる湯気の奥に、
まだ角の取れない青みを含む香り。
それはまるで若い二人のよう。
やがて追いかけるように、柔らかい甘みのある香りが広がり、二人の心を落ち着かせた。
続く




