第26話 渡航日
本間「 柳林さん、繊維に覚せい剤が練り込まれていた下着ですが、調査したところ、商品の製造会社が分かりました。
『ランジェリードリーム』という下着メーカーです。近年、業績を伸ばしていて、様々な素材やデザインの下着を作り出し、注目されている下着メーカーです。音瀬愛美香のバックから見つかった下着や、森野が高架下で見つけた下着も、ランジェリードリームのハワイ研究所で開発され、半年前から販売が始まっている商品です。 」
静岡県警捜査一課。柳林のデスクで、本間が柳林に、捜査報告をしていた。
柳林「.....ほぉか。
『ランジェリードリーム』....
どこかで、聞いたことがある名前だなぁ。
あれ? う~~~ん、、なにか知ってる気がするんだが、思い出せんなぁ。」
本間「 柳林さん、この商品は、主にハワイ工場で作られ、ハワイ国内で販売されています。しかし、日本でも限定で販売されていて、一部がハワイから日本へ輸入されているようです。」
柳林「ほぉか、、 ハワイから日本へか、、、、
これは密輸捜査が必要になるかもしれん。依子さんに連絡して、こちらの捜査に協力してもらうよう要請しよう。依子さんに連絡を取り、まずは、その下着のハワイ工場と研究所の捜査を依頼してくれ。」
本間「はい。わかりました。
それにしても、購入した人物まで、全員を調べることは出来ません..」
柳林「納品先を調査しよう。納品先のリストアップはできるか?」
本間「 はい。この商品はまだ新商品で納品先は限られています。国内でその商品が納品されている場所の特定を急いでいます。
柳林さん、まず、音瀬愛美香も購入したと考えられる販売店。商業施設ララボートのランジェリーショップへ行ってみましょう。」
柳林「いいんだがな... その..本間。 その.. ランジェリーショップに男二人が行くよりは、誰か他に女性を連れていった方が、スムーズに聞き込みしやすい気もするが...」
本間「..でも捜査ですから。」
柳林「ほら、一人いるじゃないか、ちょうどピッタリな捜査員が。」
本間「...........あっ、いますね。」
──────市街のカフェテラスで、お茶を楽しんでいる沙織
ハックシュン!!!!
沙織が大きなくしゃみをした。
沙織「 あら、誰か私の噂をしてるかしら。」
──────
───
柳林善次郎の妻、柳林依子は、国際刑事警察機構に勤務している。いわゆる、インターポールだ。アメリカに在住していて、犯罪捜査や犯人逮捕に携わる日本とアメリカ間の警察の連携を図り、情報の伝達ルートの役割を果たしている。
国外逃亡被疑者や行方不明者、盗難美術品、身元不明死体の身元確認などもしていて、国際犯罪者に関する情報を取り扱っている。
インターポールは、犯罪捜査や犯人逮捕までは仕事には含まれていないのだが、そこへ導くまで、情報を集めたり、伝えたりする役割をしている。
柳林「───しかし、先日のトルコの麻薬集団犯罪の件は、警察庁の長官が、麻薬組織の一員だったという。そういう事件もあるから、警察内の人物に関しても、用心してくれ。」
本間「はい。」
──────
───
───
──
──────
────
──
──
─
羽田空港のターミナルは、観光バスが何台も列をなして並んでいた。キャリーケースを引く人々が行き交い、ロビーには、それぞれの旅行客が、思い思いの足取りで目的地へ向かい、人の流れが出来ていた。また、搭乗手続きをする人達でごった返していた。靴音と会話は、自由に飛び交い、ロビーを満たしていた。
ガラス張りの窓の向こうでは、旅客機が低いエンジン音を響かせて、誘発路に翼を広げていた。
到着したツアーバスは、息を吐き出すように、呼吸し停車している、そこから、乗客が次々に降り立った。
パァーン
軽やかなチャイムが鳴り、場内アナウンスが流れ始めた。
「○○航空○○便、△△行きにご搭乗のお客様にご案内申し上げます。まもなく搭乗開始となりますので、搭乗口○番へお越しください。“May we have your attention, please. This is an announcement for passengers on ○○ Airlines flight ○○ bound for △△.” Boarding will begin shortly. Please proceed to gate ○.”」
空港内は今日も世界中を旅する人たちで混雑している。
ハワイ行きの航空カウンターもまた、入国手続きの列ができていた。
男はスーツ姿で、キャリーケースの上に、アタッシュケースを乗せた荷物を傍に置き、その列に並び、自分の番が来るのを待っていた。
キャリーケースの外側に、ドリンクホルダーをぶら下げていて、そこに飲みかけのペットボトルのコカ・コーラが、無造作に指し入れてあった。
「日本を離れるまであと3時間。 楽しかったな、日本滞在。 ゆみさんともゆっくり会えたし。またしばしのお別れだな.. 帰ったら、またマーティーが、研究資料の作成依頼を山ずみにして、俺に渡してくるだろうな、、ンゴっ」
そんな風に思っていると
その男の番が来た。
「次の方。」
「んん.. ンゴっ」
「本日はどちらまでご利用でしょうか?」
「んあっ、えぇ、、、 Hawaii まで」(低めのカッコつけボイスで)
「パスポートとご予約の確認書類を拝見できますか?」
「お願い します」
「本日はハワイ行き△△便でお間違いないでしょうか?」
「んっ はいっ。」
「お預けになるお手荷物はございますか?」
男が、キャリーケースとアタッシュケースを係員に見せた。
「これらを、、お願いしたいです」
「手荷物をベルトコンベアにお乗せください。」
「はい」
「液体類や危険物は入っていませんか?」
「ないです」
「あっ、そのコーラーは、、、100ml以上ある液体は持ち込むことはできません。」
「おっ、、失礼。 」
大胡田は、一気にコーラを飲み干した!
「プハーッ!」
「お座席のご希望はございますか? 窓側・通路側など。」
「通路側でお願いします」
「こちらがお客様の搭乗券でございます。」
「ありがとうございます」
「搭乗ゲートは○番、搭乗開始は○時を予定しております。」
「分かりました」
「保安検査場を通過し、出発二十分前までにゲートへお越しください。それでは、どうぞお気をつけていってらっしゃいませ。」
手続きは終わった。
しかし、男が、グランドホステスの瞳を見つめたまま、その場を動かなかった。
「お客様、以上で手続きは終了でございますので、手荷物検査の方へお進みください」
その男の後ろに並ぶ次の客が、時間がかかっている手続きに、まだ終わらないのかと少し苛立ちを見せ、怪訝な顔をしていた。
「お客様。お客様。 もう手続きはこれで完了です。次へお進み下さい。」
「、、、、、美しい、、、ンゴっ」
「え?」
「その、、、、突然で申し訳ないんですが、私は、こういうもので (引き続きカッコつけ低音ボイスで)」
───────────────
株式会社 ランジェリードリーム
Lingerie dream
ハワイ研究所責任者
director of the institute
大胡田 修輔
Shusuke Ogoda
あなたのおパンティを夢色に
ご試着、訪問販売、オーダメード
tel 0101080-7878-194△
───────────────
スッと、大胡田がカウンターに自分の名刺を置いた。
元々、暑苦しい顔立ちの大胡田が、その美人グランドホステスの瞳に、さっきからずっと、まとわりつくように、熱い視線を送っていた。
グランドホステスは、次のお客様の対応を早くしなければと、焦る気持ちが心の中に湧いてきていた。普段は、機転が利き、どんなお客も迅速丁寧に対応できるグランドホステスが、販売セールス戦闘モードの大胡田の勢いに押されていた。そして、つい個人的な思いを口にしてしまった。
「まぁ、研究所の責任者をなさってるのですね、すごいわ。ランジェリードリームって、先月、雑誌Vogueに取り上げられていたわ。ハリウッド女優にも人気なんですよね!」
大胡田「 えっ、まぁ、、そうですね。それで、あなたの美しさが、格段、このロビーの中で、輝いていまして。是非、うちの商品をこ試着していただきたいので、良かったらいつでもご連絡ください。きっと、ご満足していただけると思います。」
「ありがとうございます。そんなに、褒めて貰えて、、照れてしまうわ。嬉しいです。」
大胡田「んはっ、す、すみませんでした。後ろのお客様がまだまだいらっしゃるのに、お時間取らせてしまって。」
「いえ大丈夫ですよ、ご連絡させてください♡」
大胡田「ンゴっ。んあっ、宜しければ、お名前は、、、?
「野中と言います。」
大胡田「 わかりました、野中様。んはっ。お待ちしております。んんっ。 んはっ。 さばっ。」
微笑む野中。
野中「 それでは、大胡田様、良いフライトを。 」
野中というグランドホステスから搭乗券を受け取った大胡田は、保安検査場へ向かった───
──保安検査場
係員「こんにちは。搭乗券をご提示ください」
大胡田「どぉぞ。(スマートに)」
係員「ありがとうございます。
それでは、手荷物をX線検査致しますので、こちらにお荷物を置いてください。
そしてあちらにある金属探知ゲートを通過していただくようお願いだします。」
大胡田「んごっ。(Hawaiiと日本を行き来しているので、慣れた様子の大胡田)」
大胡田が金属探知機ゲートを通り抜けると、何も反応はなく、すんなりと済んだ。
大胡田は、Hawaiiに戻ったら、ダイニングバーROXYで、キャサリンと、飲む約束をしていることを、思い出した。テイラースウィフトの曲が流れる陽気な店内に、待ってくれていた同僚とコナビールロングボードの入ったグラスで乾杯し、ハワイアンガーリックシュリンプを頬張る光景が目に浮かぶと、大胡田はますますHawaiiに戻ることが嬉しくなってきた。
と、その時だった。
ピンポーーン!! ! ピンポーーン!!!
手荷物検査のブザーが
響き渡った。
大胡田の荷物が、X線検査機を通過した瞬間だった。
続く




