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卒業パーティー 黒幕の陰謀②

 これでゲオルクとレイラには繋がりがあると証明できた。あともうひと踏ん張りだ。


「仮に……レイラ・アードラー男爵令嬢と私が親子の関係だったとしても、私が断罪を受けるような云われはないと思いますが。今回のアイリーシャ嬢の拉致事件など私は知らなかったし、その薬草のことも初耳です。全てレイラ嬢が行ったことではないのですか? 協力者と仰っていましたが、アードラー夫妻やレイラ嬢が懇意にしていた令息たち……それこそカイル殿下だって有り得るわけです」

「な、なんだとっ」


 カイルが青ざめた顔でゲオルクを見た。


「私はなにも知らないっ!」

「……カイル殿下は……どちらかといえば被害者だと思います」


 アイリーシャの言葉にカイルが情けない顔でアイリーシャを振り返った。


「ア……アイリーシャ……」

「……どういう意味ですか?」


 ゲオルクが鋭い眼差しをアイリーシャに向けた。


「まずは順にお話しましょう。ロイスナー宰相、あなたは薬物に関しては無関係だと仰いますが、最近……ある薬草に大変関心があられたとか」

「なんのことですか?」

「ロイスナー侯爵家が援助されている薬屋で、その薬草を使って新薬を開発していたと聞いていますよ」

「ああ、それはまったく別の薬ですよ。私の薬屋では常に新しい薬を作ろうと模索していますから」


 にこやかに答えるゲオルクを、アイリーシャは冷ややかに見返した。


「そうですか。ではこちらをご覧くださいませ」


 アイリーシャは、ドレスの袖に小さな布に包んで忍ばせておいたものを取り出した。布を開くと、根がついたままの青々とした植物が、ひと株現れた。


「ターニャ・マクミラン子爵令嬢。この植物に見覚えはありますか?」


 指名を受けたターニャは、颯爽とアイリーシャの元へと近づき、じっとアイリーシャの手元を見つめた。


「……はい。この植物は我がマクミラン家の領地に生息しているものだと思います」

「領地では馴染みのある植物ですか?」

「いいえ。たくさん生えている場所がありますので、領主も領民も見覚えがある程度には記憶しておりますが、詳細はほとんど知りません」

「それはなぜですか?」

「生息地が山岳地の大変環境が厳しい場所なのです。だから普段は私たちも領民も滅多に近づきませんし、唯一商人が隣国との近道のために利用するくらいでしょうか」

「そうですか……」

「はい。それに、その植物は実がなるわけでも花がなるわけでもなく、見た目も目立つものではないので誰も気にしていなかったこともあると思います」

「ということは、これが薬草だということも知らなかったと?」

「はい、まったく」

「まったく」に力を少し込めてターニャが答えた。


 さすがターニャだ。アイリーシャの質問の意図をすぐさま理解して、適切な回答をくれる。


「実はこの植物は……先ほどご報告した新種の薬草と同じものです」

「……それがマクミラン領に生えていたと?」


 アーロンの問いかけに、アイリーシャは頷いた。


「はい。調べた限りですが、現在本国ではマクミラン領の山岳地帯のみに生息しているようです」


 おそらく偶然に条件が揃った環境で、奇跡的に生まれたのだろう。とアイリーシャは続けた。


「なるほど……。して、ゲオルクがそれに関与しているというのは?」

「ロイスナー侯爵家が所有する薬屋からも同じ植物が見つかっています」

「なっ、私の店を勝手に調べたのかっ」


 ここで初めて、ゲオルクが動揺の色を見せた。アイリーシャは冷静に言葉を返す。


「……これはその店に勤めている薬師が自ら証言した結果ですよ。こちらから丁(・)寧(・)に(・)お願いしたところ、話してくださいました」

「……ぐっ!」


 ゲオルクが顔を歪ませて黙った。


「薬師はこの薬草で何を開発していたかも話してくれました。それによると、摂取した者を薬に依存させ、思いのままに操る精神作用がある薬、つまり『麻薬』を作っていたと」

「なんだと?」


 アーロンが眉を吊り上げた。


 薬草は毒にもなれば薬にもなる。依存性や毒性の強い薬物は、同時に効果的な鎮静効果や消毒作用があるものも多い。そういった薬草は医療目的に限り使用が認められているが、国への申請と許可が必須だ。怠れば違法となり重罪を課されることもある。

 ましてや、秘密裏に危険な薬草を開発し、使用していたとなればなおさらだ。


「その『麻薬』は未完成だったようですが、実験的に複数の人間に試していたようです。……レイラ嬢を通して」

「どういうことだ?」

「ロイスナー宰相は娘であるレイラ嬢をまずアードラー家の養女にし、貴族の称号を与えました。そしてレイラ嬢に複数の令息に近づかせ、薬を服用させる。そうして他人を意のままにする効果を確認したあとで、カイル殿下にも同じようにしたのだと推測します」

「しかしどうやって……」

「クッキーです」

「クッキーだと?」

「はい。レイラ嬢は手作りしたクッキーに薬を混ぜ、定期的に令息たちに渡していました」


 カイルがはっとして、顔を上げた。


「クッキーの実物はすでに手に入れ、解析済みです。レイラ嬢の作ったクッキーにその薬物が入っていたことは証明されています」


 隣でジークハルトがつけ加えた。


(……どうやって手に入れたのよ?)


 じろりとジークハルトを見上げると、ジークハルトは意味深な笑みをアイリーシャに返し、「それもあとで説明しますね」と小声で伝えてきた。


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