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赤ずきんはエメラルドの夢を見る  作者: デウス・エクス・マキナ
第一章 紅い宝石編
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第14話 ルドルメラフと猫

廃工場の奥から、薄いダストの気配が漂っていた。

建物の大半は崩れている。割れた窓から吹き込んだ風が、錆びついた鉄板を小さく揺らしていた。

ここは、魔物が身を隠すには都合がいい。


朔も時折訪れては、住民の暮らす区画へ近づく前に魔物を処理している。

杖を構えたまま、倒れた機械の間を進んだ。

気配はある。

だが、魔物の姿は見えない。


「やァ、お嬢ちゃん」


不意に、頭上から声が落ちてきた。

朔は足を止める。

聞こえたのは男の声だった。

まだ若い。けれど、同じ声の中に、老人のような掠れ方が混じっている。


「誰だ。どこにいる」


「ここだヨ」


声は、すぐ目の前から聞こえた。

何もなかった空間に、口だけが浮かんでいた。

三日月のように大きく裂けた口が、白い歯を見せて笑う。

その輪郭をなぞるように、顔が現れ、首が生まれ、最後に身体が形を得た。

猫の耳を持った男が、朔の目の前に立っている。

そう思った次の瞬間には、姿が女へ変わっていた。

背丈も、髪の長さも、声さえも一定ではない。


「キミに、いいコトを教えてあげようと思ってサ」


今度は幼い子どもの声だった。

朔は杖を下ろさない。


「その前に、お前が何なのか教えろ」


「ボク?」


猫耳の人物は、自分の胸元へ指を当てた。


「ワタシは、そうだネぇ……」


声が女から男へ、男から老人へ移り変わる。


「忘れちゃっタ」


「ふざけてるのか」


「でも、我はここにある。だったら、何だって構わないだろウ?」


ますます意味が分からない。

敵意は感じない。

だが、だからといって信用できる要素も一つとしてなかった。


「いいことって何の話だ」


「キミたちが追いかけている人たちの話」


猫の姿が、朔の視界から消えた。

反射的に振り返る。

猫耳の人物は、倒れた機械の上へ腰掛けていた。


「トルルカーンで、武器を集めていた金色のお姉さん」


朔の指が杖を握り直す。


「ラムカラムで、犬の少年と喧嘩した緑色の坊や」


「なぜ、それを知ってる」


「それから、氷の山で石を探している、壊れたお医者さんと食いしん坊」


その言葉で、疑いようがなくなった。

こいつは、朔たちが各都市で得た情報を知っている。

それも、蟻ノ巣へ報告された内容だけではない。


「アイツらは繋がってるのか」


「さァ?」


猫は大きく首を傾ける。

首が傾きすぎて、今にも折れてしまいそうだった。


「仲間かもしれない。家族かもしれない。お互いを利用しているだけかもしれない」


「誤魔化すな」


「名前が欲しい?」


大きな口が、いっそう深く歪んだ。


「――彼らは紅い宝石」


朔は、その言葉を頭の中で繰り返した。


「それが、あいつらの名前か」


「本人たちは、そう呼んでるみたいだヨ」


「目的は?」


問いかけた途端、猫の身体が崩れた。

細かな霧のように散ったかと思えば、今度は朔の背後から声がする。


「何でも教えてもらえると思った?」


朔は振り向きざまに杖を向けた。

目の前に浮かんでいるのは、大きな口だけだった。


「おォ、怖い怖い。ボクはただの傍観者だヨ」


口の下に顎が生まれ、顔が現れる。

今度は、年齢も性別も判別できない姿だった。


「オマエは、この世界が壊れるのを止めたいんだろウ?」


「世界が壊れる?」


「そう」


「紅い宝石が壊すのか」


「さァねぇ」


猫は両手を広げ、その場でくるりと回った。


「赤いものばかり見ていると、大事なものを見失うヨ」


朔は一歩踏み込む。


「何を知ってる」


「真実を求めるなら――」


猫の輪郭が薄くなる。

声だけが、廃工場のあちこちから響いた。

男。女。子ども。老人。

いくつもの声色が、最後には一つへ重なる。


「鳥を探しナ」


その言葉を残し、猫の姿も気配も完全に消えた。

朔はしばらく杖を構えたまま、周囲を警戒した。

けれど、もうどこからも声は聞こえない。

先ほどまで猫が立っていた場所に、一枚の羽が落ちていた。

青とも緑ともつかない色をしている。

光の角度が変わるたび、羽の表面に淡い色が揺れた。

朔はすぐには触れず、杖の先で裏返す。

罠らしい反応はない。

慎重に拾い上げ、光へ透かした。


「紅い宝石に、鳥……」


答えを得たはずなのに、分からないことは増えている。

あの猫が何者なのか。

なぜ各都市の出来事を知っているのか。

そして、世界が壊れるとはどういう意味なのか。


「……本当に、不親切な奴」


返事はなかった。

朔は羽を布へ包み、スカートのポケットにしまった。

もう猫を追うことはできない。

それに、ルドルメラフの調査はまだ終わっていなかった。

朔は廃工場をもう一度見回し、魔物が潜んでいないことを確認してから、都市の中心部へ向かった。


ーーーーー


廃工場を抜けても、ルドルメラフを覆う重苦しい空気は変わらなかった。

朔は外套の内側へしまった羽を、布越しに指先で確かめる。

紅い宝石。鳥を探せ。世界が壊れる。

あの猫が残した言葉は、どれも意味が分からない。

分からないものをいくら頭の中で転がしても、答えが出てくるわけではなかった。

朔は考えるのをい一旦やめ、都市の中心部へ向かって歩き出した。

今回の目的は、あの奇妙な猫と話すことではない。

ルドルメラフで、何か異変が起きていないかを確かめることだ。

外縁部の廃墟を抜けると、少しずつ人の生活する気配が戻ってくる。

崩れた建物の隣に、新しい木材で補強された家が建ち、その軒先には洗濯物が干されていた。

道の端では、割れた石畳を男たちが黙々と直している。

戦争で失われたものすべてが、元に戻ったわけではない。


それでも、生き残った人々はここで暮らし続けていた。


朔は、歩きながら周囲を見渡した。

かつては、この辺りにも家々が隙間なく並んでいた。

商店からは威勢のいい声が響き、道を走る子どもを大人たちが叱っていた。


あの戦争が始まるまでは。


ルドルメラフのアーティファクトは、ほかの四都市にあるアーティファクトから力を借り、街全体を覆うバリアを維持していた。

だが、戦争の最中。

第二都市ヘイズロストを覆う霧が、突如として異常なほど濃くなった。

霧の中で何が起きたのか。

当時の朔には知る余裕などなかった。

ただ、ヘイズロストのアーティファクトが機能を失い、そこから送られていた力が途絶えた。

五つで一つだった均衡が崩れ、ルドルメラフを守るバリアの一部が消えた。

その穴から、魔物たちが押し寄せてきた。

あの日、朔はひたすら戦った。

倒しても。

倒しても。

ダストは次々と集まり、新しい魔物へ姿を変えた。

泣き叫ぶ声。崩れていく家。

瓦礫の下から伸びていた手。

抱き合ったまま動かなくなった家族。

助けを求める声がいくつ聞こえても、朔の身体は一つしかなかった。

魔物を倒すだけで精いっぱいだった。

ーーもう少し、早く行けていたら。

思い出すたび、同じ考えが胸へ浮かぶ。

けれど、それに答えがないことも分かっていた。


どれだけ早く走っても。

どれだけ強い力を持っていても。

あの日、すべてを救うことなどできなかった。

道の脇に、草だけが生い茂った空き地があった。

そこに何が建っていたのか、朔は覚えている。

小さな食堂だった。

戦争の最中、避難所として住民が集まっていた。

今は、建物の土台すら残っていない。

朔は足を止めかけた。

だが、立ち止まったところで、失われたものが戻るわけではない。

視線を前へ戻し、歩みを続ける。

ルドルメラフの傷は、まだ塞がっていない。

バリアも完全には修復されておらず、今でも外から魔物が入り込むことがある。

魔物が住民を襲えば、恐怖や不安からダストが生まれる。

そのダストが集まり、また魔物になる。

魔物が魔物を生み続けるような悪循環が、この都市には残っていた。

バリアさえ元に戻れば、少しは変わる。

けれど、失われた力をどう補えばいいのか。

その方法は、今も見つかっていない。


朔は人通りの増えてきた通りで足を止めた。

道端には、乾燥させた薬草や保存食を並べる露店が出ている。

店番をしていた中年の男が、こちらへ顔を上げた。


「何か探してるのか?」


「物じゃなくて、人を探してる」


朔は店先へ近づいた。


「最近、この街で見慣れない奴を見なかった? 軍服を着た奴とか、妙な武器を持った子どもとか」


男は顎へ手を当てた。


「見慣れない奴ねぇ……」


「小さなことでもいい。物がなくなったとか、変わったダストが出たとか」


「物が消えるなんて、ここじゃ珍しくもないからな」


男は困ったように笑った。

人の集まる場所では、盗みも起きる。

生活に困った者も少なくないのだろう。


「軍服を着た子どもは?」


「兵士の見習いならいるが、それとは違うのか?」


「たぶん」


ラムカラムで薬が遭遇した少年は、軍服を着ていた。

だが、それが本物の兵士なのかすら分からない。


「変な奴なら、廃墟の方で時々見るって話はあるな」


「どんな奴?」


「それが、誰に聞いても話が違うんだ」


男は肩を竦めた。


「女だったって奴もいれば、男だったって奴もいる。子どもみたいだったとか、爺さんだったとか。笑い声だけ聞いたって話もある」


朔は、スカートの内側にある羽を思い出した。


「……そいつなら、もう会った」


「知り合いだったのか?」


「全然」


男は不思議そうな顔をしたが、朔はそれ以上説明しなかった。


「他には?」


「最近、魔物が増えた気はするな。特に外縁の工場跡だ。兵士が何度か片づけてるらしいが、またすぐ出る」


やはり、異変らしい異変は魔物の増加くらいか。

それもバリアが壊れてから続いている問題で、今回の不審者たちと関係があるとは限らない。


「ありがとう」


朔は店を離れ、次の通りへ向かった。

それからも、何人かへ同じ質問をした。

荷車を修理していた職人。

道の掃除をしていた老女。

巡回中の兵士。

だが、軍服を着た不審者を見た者はいなかった。

武器や大きな荷物が盗まれたという話もない。

青いダストを見た者もいなかった。

少なくとも、今のところルドルメラフで、メリーたちに似た者が騒ぎを起こした形跡はないらしい。

何も見つからなかったことへ、朔は少しだけ安堵した。


だが、胸の奥へ沈んだ違和感は消えなかった。

あの猫は、なぜこの場所にいたのか。

偶然、朔を見つけて話しかけたのか。

それとも、朔がここへ来ることを最初から知っていたのか。

考えながら通りを歩いていた、その時だった。


一人の少女が、朔の横を通り過ぎた。

年は同い年くらいに見える。

華奢な身体をゆったりとした衣服に包み、人の流れに逆らうように静かに歩いている。

特別に目立つ格好ではない。

武器を持っている様子もない。

それなのに。

少女と肩がすれ違った瞬間、朔の胸の奥が微かに震えた。

風が吹いたわけではない。

音がしたわけでもない。

ただ一瞬だけ、周囲の景色から色が失われたような感覚があった。

住民の話し声が遠ざかる。

行き交う人々の動きが、ひどく遅く見える。

少女だけが、何事もないように朔の横を通り過ぎていく。

その足元で、淡い光が揺れた。

緑。

いや、ただの緑ではない。

深い森の奥で磨かれた宝石のような、鮮やかなエメラルドの光。


「……待って」


朔は振り返った。

だが少女がいた場所には、もう誰もいなかった。

真っすぐに伸びた通りにも、身を隠せそうな路地にも、その姿は見当たらない。

ただ、エメラルド色の光だけが、細かな粒となって宙を漂っていた。

朔はその一つへ手を伸ばす。

指先が触れる寸前、光は音もなく砕けた。


「……何だったんだ、今のは」


答える者はいない。

通りを行き交う人々も、少女が消えたことには気づいていないようだった。

朔がスカートのポケットから通信結晶を取り出そうとした、その時。

甲高い鐘の音が、街中へ鳴り響いた。


一度。


二度。


続けざまに打ち鳴らされる。

通りにいた住民たちが、一斉に顔を上げた。


「魔物だ!」


誰かの叫びが響く。

街の外縁へ続く道から、人々が雪崩れ込むように走ってきた。

その後ろで、石造りの建物が大きく揺れる。

壁を突き破り、黒い獣のような魔物が通りへ飛び出した。

一体ではない。

崩れた壁の向こうから、さらに二つの影が姿を現す。

住民の悲鳴が上がった。

その恐怖へ引き寄せられるように、通りの上へ薄いダストが集まり始める。


「まずい」


このまま放っておけば、あれも新しい魔物になる。

朔は赤いフードを押さえながら、人の流れに逆らって駆け出した。


「そこの人たち、建物の中へ!窓から離れて!」


朔の声に、近くにいた兵士が振り返る。


「お前は――」


「説明はあと! 避難させて!」


魔物が前脚を振り上げる。

その先には、転んだ子どもがいた。

朔の視界へ、別の光景が重なる。

泣き叫ぶ人々。

崩れ落ちる家。

瓦礫の下から伸ばされた手。

あの日は、間に合わなかった。

助けを求める声がいくつあっても、朔の身体は一つしかなかった。


「今度は――」


杖を振り抜く。

赤黒い光が通りを走った。

子どもへ迫っていた魔物の前脚が弾かれ、その巨体が横へ吹き飛ぶ。


「間に合わせる!」


朔は地面を蹴った。

倒れた子どもの前へ滑り込み、魔物との間に立つ。


「走れる?」


子どもは震えながら頷いた。


「じゃあ、あの兵士のところまで。振り返らないで」


子どもが駆け出す。

もう一体の魔物が横から襲いかかってきた。

朔は振り返ることなく、杖の先を地面へ突き立てる。

赤黒い光が足元から噴き上がり、魔物の腹を打ち抜いた。

大きな身体が宙へ浮く。

そのまま朔が杖を横へ払うと、魔物は誰もいない道の端へ叩きつけられた。

残る一体が咆哮する。

その声に怯え、住民の周囲からさらにダストが生まれた。

黒い粒子が寄り集まり、獣の輪郭を作り始める。

まだ完全な魔物にはなっていない。


「増える前に、終わらせる」


朔は杖を握り直した。

目の前の魔物を倒すだけでは足りない。

住民の恐怖が続けば、何度でも新しい魔物が生まれる。


「大丈夫!」


朔は逃げていく人々へ向けて叫んだ。


「ここは私が止める!だから、前だけ見て走れ!」


その声が届いたのかは分からない。

けれど、逃げる人々の足取りから、僅かに迷いが消えた。

通りに浮かんでいたダストの動きが鈍る。

朔はそれを確認すると、正面の魔物へ駆けた。

振り下ろされた爪をかわし、懐へ潜り込む。

杖の先を魔物の胸元へ押し当てた。


「吹き飛べ!」


赤黒い閃光が弾ける。

魔物の身体が内側から砕け、黒い粒となって通りへ散った。

形になりかけていたダストも、その衝撃へ巻き込まれる。

集まりかけた粒子がばらばらに引き離され、風へ流されていった。

静寂が戻る。


壊れた壁。

通りへ散らばった瓦礫。

泣き声は残っているが、先ほどまでの悲鳴はもう聞こえない。


朔は周囲を見渡した。

倒れている住民はいない。

転んでいた子どもも、兵士の腕に抱き上げられている。

今回は、間に合った。

胸の奥に沈んでいた重さが、ほんの僅かに緩んだ。


「……待て」


住民を避難させていた兵士が、足元へ目を落とした。

魔物が崩れた場所には、まだ黒い残滓が薄く漂っている。

だが、それだけだった。

朔が何度も術を放ったにもかかわらず、その周囲に新たなダストは生まれていない。

兵士は辺りを見回し、信じられないものを見るように朔を見た。


「ダストが……増えていない」


その声を聞き、近くにいた別の兵士も地面へ視線を向けた。


「これだけの力を使ったのに?」


魔法を使えば、必ずダストが生じる。

それは、この世界に生きる者なら誰でも知っていることだった。

けれど、朔の力は、何一つ残さず消えている。

黒い粒子も。

淀んだ魔力の跡も。

そこには初めから何もなかったように、澄んだ空気だけが残されていた。

やがて、誰かが小さく呟いた。


「パンタシア使い……」


その言葉が、静まり返った通りへ落ちる。

近くにいた住民たちの間から、低いざわめきが広がった。


「本物なのか?」


「ダストを生まないなんて……」


「神聖な力を使う者が、どうしてこんな場所に……」


先ほどまで逃げ惑っていた人々が、今度は朔を見つめている。

恐怖とは違う。

けれど、その視線には強い畏れが混じっていた。

一人の老女が、胸元へ手を当てて深く頭を下げる。

それを見た周囲の者たちも、次々と同じように頭を垂れ始めた。

兵士に抱かれていた子どもが、朔を見つめたまま尋ねる。


「あの人、神様なの?」


「違う」


答えたのは、子どもを抱いていた兵士だった。

それでも、その声には僅かな緊張があった。


「パンタシア使いだ。ダストを残さず、力を使える人だよ」


朔は集まる視線から逃れるように、赤いフードの縁を指で直した。

こうして見られるのは、どうにも落ち着かない。

自分は祈られるために戦ったわけではない。

目の前に魔物がいて、助けを求める人がいた。

だから倒した。

それだけだった。


「頭を上げて」


朔が告げても、すぐに顔を上げる者はいなかった。


「まだ近くに魔物がいるかもしれない。怪我人を確認して、壊れた建物から離れて」


近くの兵士が我に返ったように姿勢を正す。


「は、はい!」


その返事をきっかけに、止まっていた人々が再び動き始めた。

それでも、朔のそばを通る者は皆、どこか遠慮するように距離を取っていく。

感謝と畏れ。

その二つが混じった視線が、背中へ残り続ける。

朔は小さく息を吐いた。


「……やりづらいんだよね、これ」


もちろん、誰にも聞こえないほどの声だった。


住民たちの避難が進んでいることを確認し、朔はもう一度、少女が消えた場所へ目を向けた。

先ほどの襲撃で、エメラルドの光はすっかり掻き消されている。


住民たちは朔をパンタシア使いと呼び、神聖なものを見るように頭を下げた。


けれど、あの少女とすれ違った瞬間に感じたものは、朔の力とはまるで違っていた。

もっと古く。もっと深く。

この世界そのものに触れたような、不思議な感覚。


「……アンタは、何者なんだ」

答えの代わりに、街の上を冷たい風だけが通り過ぎていった。


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