第37話 応援してあげましょうよ!
朝、カーテンの隙間から入ってくる光で目覚める。
と同時に。
重苦しさで目が覚めた俺。
布団の上に乗っかっている鬼村。
「センセ、おはよ♡」
「……………………おはようじゃねーんだよ」
この起こし方も今週に入って五度目だ。いい加減慣れてきたのか俺は鬼村を放って布団から這い出ると、テーブルの上の灰皿を持って台所に向かった。
「センセー朝ご飯は~? 今日も食べないの?」
「食べない。朝はそんな食欲無いんだよ」
「じゃースムージーとか飲めばいんじゃん? フルーツとか野菜とか~飲むだけ簡単摂取♪」
「高いだろ、あれ」
「自分で作っちゃえば?」
「めんどくせー」
俺に必要な栄養摂取の為に換気扇を回す。カチカチとライターを鳴らすものの、火は上手く付かない。何度目かの挑戦でどうにか点火できたものの、中身を見ればオイルはほとんど切れていた。
「はー……コンビニ寄るか」
「コンビニ行くの? あたしも行こーっと」
「やめろ、どうせまた誰かに見られてうるさく言われるっての」
「いーじゃん別に」
「よくねえわ」
深く息を吸って、回る換気扇に向けて煙を吹きかけた。そこでようやく頭が働き始めた為、俺は鬼村の方をちらりと見る。
「今週に入ってから一度も狗谷木が来てないんだけど、お前なんか聞いてるか?」
「えー?」
「ほら、体調悪くして風邪引いて寝込んでるーとか……どうせあいつも一人暮らしだろ?」
「あたしら風邪なんて引かないよ。連絡は来てないかな」
鬼村の目が、テレビの方へ向く。電源を点けたようだ。天気予報が聞こえてきた。
「お前から連絡したら返事来るんじゃねーの?」
「えー来なくない?」
「来るだろ」
「はあ、仕方ないなぁ。じゃーなんか送っとくよ」
そう言って鬼村はスマホを取り出し、五秒ほど操作した後、また鞄の中へとしまい込んだ。なんと送ったかはわからない。けど、ひとまずはそれで良しとする。
「天、来てないんだ~」
鬼村の呟くような声が聞こえたが、相変わらず視線はテレビに向かっている。さすがのこいつも心配してるんだろうか。何やら不穏な空気を感じて俺は眉間に皺を寄せた。
***
──時刻は午後一時近くになった。
四時限目の授業を終えてすぐ生徒から質問され、その後は職員室へ寄った際に呼び止められ、化学準備室まで戻ってきた時には俺の昼休みはかなり削られていた。そして案の定、鬼村はすでに準備室にいてソファの上に寝転んでいる。
「くつろいでんじゃねぇよ。ってか鍵かかってただろ」
「センセーいないから入っちゃったー」
「人間らしい行動を取れ」
「えー? 準備室前で座って待ってればよかった~?」
「まあ、そうだな」
「あたしのそんな姿見られたらまた周りからあーだこーだ言われるんじゃないの?」
鬼村はスマホから視線を俺に移し、ふふんと笑った。腹が立つ。
「……狗谷木から返事来たか」
「あー話逸らした~」
「来たのかよ」
「来ないよ、全然」
冷たさすら感じる声だ。今朝こいつが狗谷木を心配してると思ったのは気のせいだったんだろうか。
「そういや前におつとめがどう、とか言ってただろ。学校休んで天狗の仕事の方に行ってるとかじゃないのか?」
「うーん、まあ実際天狗は山とか谷の管理してて何か起こればすぐすっ飛んでくけど~……どうかな、そんな感じじゃないと思うけど」
「管理って何するんだ? 人間が山とか保有して管理するってのとはまた違うんだろ?」
俺が質問すると、ようやく鬼村は寝転んでいた体を起こしてソファに座った。
「別に、ふつーだよ。山崩れとか川の氾濫をなるべく抑えたりして、その土地が死ぬのを防ぐの。そこに決まった神様とかがいればそっちに任せたりするけどー……神様のいない山や谷っていっぱいあるから、それらを守るお仕事って感じ」
「ちゃんとしてるんだな、天狗って」
「神様に近いからねぇ」
鬼村はそう言うと、窓際に置いていたコンビニ袋を持ってこっちへやってきた。
「はいセンセー」
「ん?」
「スムージー買ってきてあげたよ」
そう言って袋の中からパックジュースを取り出して俺の机の上に置いた。
「どうせお昼はカップ麺なんでしょ~。これ飲んで栄養取りな~」
「あ……サンキュー……悪いな、いくらだった?」
「お代はちゅーでいいよ」
「おまっ、だからそういうのは……!」
「じょーだんだってば」
鬼村は唇を尖らせて隣の椅子に座った。軋んだ音が部屋に響く。
「今日の帰りセンセーのこと待ってるね~」
「遅くなるから帰れよ」
「いーよ今日バイトもないし」
「あのなぁ」
「帰ったってあたし一人じゃん。センセーのこと待ってるよ」
「寂しがるような性格か?」
「センセーが寂しいかと思って♪」
「帰れ帰れ」
苛立ちを覚えつつ、今もらったパックジュースにストローを差す。……味は悪くない。次からこれも買うか。
あっという間に鐘が鳴り、鬼村は準備室を出ていく。俺はそれを目で追うと、お湯を沸かす為電気ポッドの電源を入れた。
***
放課後になり、俺は職員室で仕事をしていた。
向かい側に座る三組の担任、崎田先生へ狗谷木のことを聞いたが……やはり連絡は来ていないという。「親御さんには連絡を取った」と言っていたが、一体誰に連絡したのか。鬼村なら狗谷木の親代わりの妖怪のことを知ってるんだろうか。ってか妖怪にどうやって連絡取るんだ、やっぱケータイ持ってんのか?
「桃間せーんせ♪」
先ほどまでいなかった河原先生が、職員室に戻ってくるなり俺に話しかけてきた。時計を確認する。もう六時になるのか。河原先生は自分の席につくと、すっきり片付いたデスクの上に頭をのせてため息を吐いた。お疲れの様子だ。
「はあー、お腹減った。今日ご飯行きません?」
「飲みじゃないんですか」
「え、飲みたいなら飲みでもいいですよ?」
「いや結構」
「新しく出来たタイ料理屋さんがあるんですよ~。パッタイが美味いらしいですよ、三年一組の小夏ちゃんが言ってました♪」
「パッタイって何ですか。俺、タイ料理ってトムヤムクンとガパオライスくらいしか知らないすよ」
──夏休みの期間中になると教頭がまとめてみんなの昼飯を注文してくれるのだが、いつも頼む弁当屋で期間限定のガパオライスがありそれが結構美味かった。今年もまた頼むと思う。
「じゃあ尚更食べに行ってみましょうよ~」
「新しい店行くより慣れた店の方がいいっす」
「え~」
つまらなさそうに文句を言う河原先生を無視して、俺は仕事に集中した。が、河原先生は俺を放っておく気はないらしい。
「そういえば、二年に転校生来てたじゃないですか。もうひと月くらい経ちましたっけ?」
「ああ、狗谷木ですか? そうですね」
狗谷木の話題が出て、俺は思わず手を止める。
「あの子、声大きいし背もでかくて目立つから、一年生とかの間でも有名みたいで~」
「なんでそんな話知ってんすか」
「生徒が教えてくれるんですよ♪」
「お前ほんとに授業ちゃんとやってる……?」
俺が疑いの目を向けると、河原先生はデスクの上にのせてた頭を起こしてこっちに指を差した。
「あーそんなこと言って、桃間先生だって生徒に煽られて授業中にぶちギレてたって知ってんですよ~!」
「いつの話ですか」
「結構前の話ですー。その狗谷木くんが転校してきたくらい??」
「知らないですね」
「桃間先生の嘘つき!」
覚えてはいるが、白を切る。
あれだろう、うちの生徒たちに鬼村との仲をあーだこーだ言われた時の話だ。
「で、その狗谷木くんって子、鬼村ちゃん追いかけてうちの高校来たって話じゃないですかぁ~。愛ですね、愛」
「なんですかそれ」
「校内で噂になってるんですよ? あんなに愛されちゃったら鬼村ちゃんだってぐらついちゃうと思いません? ほら、どう考えてもおじさんに片足突っ込んでる桃間先生より若くて歳の近い男の子の方がいいじゃないですか~。僕は断然狗谷木くん応援したいですね♪」
「はあ?」
突然わけのわからないことを言い始め、俺は思わず声が裏返る。
「あーでも鬼村ちゃんの健気さも捨てがたいなぁ~。あーんなに桃間先生のこと好き好き言ってたら可愛いですし、頑張れってなっちゃいますよねぇ。迷うな~」
「……生徒の恋とか教師に関係ないじゃないですか」
「え? 何言ってるんですか鑑賞ですよ、鑑賞。ほら、恋愛リアリティーショーとかいうのと一緒。あれ面白いでしょ?」
「あーゆー番組は見たことないんでわかんないです」
河原先生はああいった番組を見るのか。容易に想像はできるが。
「でもー……桃間センセーは鬼村ちゃんの婚約者~なんでしたっけ?」
そう言われて目を丸くした。
「ちがっ……いや、そういうことにはなってますけど、別に俺はどうとも……」
そうだった、何故か婚約者だとかそういうことになって俺が鬼村といることはひとまずお咎めされることは無くなったんだ。その為、あまりこの話を否定しすぎるのはよくない。よくないが……。
河原先生は俺の表情を探るように見ると、すぐさまいつものにこやかな表情へと変えた。
「えーなら狗谷木くん応援してあげましょうよ~! ほら教師として!」
「教師として?」
「そーですよ、青春真っただ中の男子! フラれるとわかっていながら健気に愛を伝え続ける~なんて応援するしかないじゃないですか~。僕ら大人は、そういう青春に首突っ込んじゃいけないんですよ」
「………」
にこりと笑う河原先生の表情に、妙に苛立つ。
ただ、言ってることはわかる。女子高生が教師と結ばれるよりも、高校生同士で結ばれた方がいいに決まってる。……普通の人間の話ならそうだろう。でもあいつは鬼だ。そもそも人間じゃないんだから高校生とかいう枠組みで考えるのがそもそも間違いで……いや、違う、待て。そんなこと考えれば俺が鬼村と結ばれるのを受け入れてるみたいじゃないか。別に受け入れてないぞ俺は。
「──おっと、もうこんな時間じゃないですか。僕はタイ料理屋さんに一人で行くことにしまーす」
「どうぞ行ってらっしゃい。というか、浅見先生とか芝山先生とか誘えばいいじゃないですか」
浅見先生と芝山先生は主に一年を担当してる先生方だ。俺達より年上で話しやすく、河原先生がよく一緒にいるのを見る。
「二人ともお忙しいようなのでお誘いできませんよ~、どっちも既婚者だし?」
「それはまあ……そうですね」
「やっぱご飯も飲みも誘うなら万年独りの桃間先生でしょう♪」
「とんだ言いようだなぁおい」
俺が何か言い返そうかと思うのと同時に、河原先生は逃げるように帰り支度をしてさっさと職員室を出ていってしまった。なんなんだあの人は。
「どうせ俺は一生独り身だっての」
吐き捨てるように呟いた時、スマホにメッセージが届いた。一応確認すると、鬼村だった。そういや待ってるとか言ってたっけか。
『センセーまだぁ~?』
どこで待っているかはわからないがなんとなく悪い気がしてきて(いや、そんなことを思う必要は全く無いはずなんだが)、俺も帰り支度をすることにした。
『帰る』
それだけ送ってからノートPCをシャットダウンし、リュックサックにしまう。職員室を出ると、待ち構えるように鬼村が立っていた。驚いて声を上げそうになったが、ここで何か言えば職員室に聞こえてしまう。俺は静かに後ろ手で扉を閉め「なんでいんだよ」と小声で言った。
「連絡くれたじゃん」
「フツー送ってすぐ来るかよ」
「近くにいたし」
鬼村は俺の先を歩き、生徒玄関の方へと向かった。俺は職員玄関へ向かう。
『えーなら狗谷木くん応援してあげましょうよ~!』
頭に河原先生の声が響いた。
『ほら教師として!』
にこやかな笑みが貼り付けられた顔が腹立たしい。
──外靴に履き替えて玄関を出れば、生徒玄関の方から走ってくる音が聞こえた。
今日も一日仕事を終え、俺は右肩をぐるりと回した。ゴキゴキとなる音が気持ち良い。もう片方も、と左肩を回そうとした時、静電気が顔の近くでばちんと音を立てた。
「痛っ……?」
視界に鬼村が入ってきたところで、
世界を切り裂くようにして
何かが俺目掛けて急接近してくる。
「──センセ!!」
声が聞こえたと同時に鬼村が俺の前に立ちはだかり、金棒で何かを防いでいた。
あまりの急展開に頭が追い付かない、今何が起こってる!?
辺りが赤紫色の液体を被っていくみたいに変わり始めた。
もう俺達は転外界へと引きずり込まれてるってことだろう。
鬼村が金棒を手に、前を見据えていた。その視線の向こうに立つのは──山伏のような恰好をし、大きな烏の羽を生やした男。顔の上から半分には鼻の長いお面のようなものをつけている。
「……狗谷木、か?」
俺が名前を呼ぶと、狗谷木《天狗》は剥ぐようにして上部の着物を脱ぎ始めた。露わになっていくのは隆々とした筋肉。
これは、普通に肉弾戦でもやばいだろ。
「桃間先生はさー、いい先生だと思うよ」
天狗は声を張り上げていった。
「でもさぁー。やっぱオレ、我慢なんないんだよね!」
「……何がだよ」
「弱っちくて──そうやって美鬼ちゃんに守られてんのが!!!」
遠く離れた場所にいた天狗が、地面を蹴って急激に距離を詰めてくる。
鬼村は金棒を地面に叩き付け、盛大に土埃を巻き上げた。
「おまっ、見えな……!」
「センセ、あの子たち出してて!」
鬼村はそう言うと、走ってどこかへ行ってしまった。上空からはバサバサという大きな羽ばたきの音が聞こえてくる。天狗が土埃を避ける為飛んだんだろう。
俺は煙草に火を点け、三匹を召喚した。
土埃が収まってくると、少し先で鬼村と天狗が戦っているのが見えた。金棒での戦闘が不利とでも思ったのか、今のあいつの手の中には何もなく、止めどなく迫る天狗の拳を素手で受け止めていた。
「美鬼ちゃん美鬼ちゃん! オレ! 強くなったでしょ!?」
「……っ」
「昔もさぁー、こうやってぇー、いっぱい遊んだよね! でもいっつも美鬼ちゃんには勝てなくってさぁー」
「……そう、だっけ?」
「でもオレ──今日勝てそう!」
天狗の拳が、防ごうとした鬼村の両腕に当たり、鬼村は後ろへ吹っ飛んでいく。
――ドォォォォォン……!
大きな音を立てて鬼村はかなり先まで飛ばされ、地面に打ち付けられた。そのせいでまた土埃が起こり鬼村の姿は当然見えない。
「鬼村!!!」
俺が呼んだのも束の間、
天狗は地面を蹴り、大きな黒い翼を羽ばたかせてこっちへ近づいてきた。
「ねえ桃間先生、美鬼ちゃんいなくなったらどうやって自分のこと守んの?」
「……っ、俺に力がなくてもなぁこいつらがいりゃ何とかなんだよ!」
犬が震わせるように体全体を大きくさせると、最大音量で咆哮した。それを全身に浴びた天狗は少しばかり怯んだように一歩後ずさる。
その後すぐに猿が小さな体で天狗に駆け寄ったかと思うと、体を大きく変化させ、まるで覆い被さるようにして叩き潰そうとした。
天狗は後方へひとっ飛びすると、俺に向かって雷を打ってきた。俺の頭上にいた雉が強い風を放ち、雷は急に角度を変えて俺ではなく別の地点へと落ちた。
「すげー、それが桃太郎のお供の攻撃ってやつ!? こないだ戦った時はいなかったもんなぁ!」
「俺が煙草買いに行ってる最中にお前が攻撃してきたからな」
「あーそっかそっか~。煙草が無いと桃野郎も丸裸ってことだな。……じゃーやっぱ弱ぇーじゃん」
天狗は持っていた羽団扇で強大な風を起こした。思わず吹き飛ばされないよう俺はその場で足を踏ん張って目をぎゅっとつぶってしまう。
風が収まると同時に、天狗がまた近くへ迫りくる。俺は慌てて刀を握るイメージをして、天狗の拳の攻撃を受け止めた。
──バキィィン……!
まるで折れたかのような音がしたが、どうにか刀はその力を受け止めていた。ただ、俺の方の筋力が持たない。天狗の力が圧倒的過ぎた。
ちらりと周りの様子を伺えば、三匹とも気配を感じない。さっきの風で吹き飛ばされたみたいだ。
「くそっ……」
刀越しに見える天狗の拳からは、血が滲んでいた。刀で切ったわけではないんだが、いくらかはダメージがあるらしい。
しかし天狗の拳から伝わる圧力に、そろそろ屈しそうになる。その瞬間、キラッと何かが反射して俺は目をぎゅっとつぶってしまい、力の入れどころがずれた。
「……っ!!」
天狗は低く腰を落とすと、
俺の腹目掛けて拳を突き出した。
「──ゲボッ……!」
胃の中のものが口から出る。
圧迫感と気持ち悪さの後で、痛みが全身を支配した。
刀は手から滑り、
俺は地面に崩れ落ちた。
あ
死ぬのか。
諦めにも似た感情が脳に染みていった。
「──痛い? だいじょーぶ?
オレ優しいからさぁ、
今ラクにしてあげるからねー」
天狗の声が上から降ってくる。
頭の上に足を乗せられた。
地面に強く押し付けられる。
「脳みそパーンてしてやるよ」
視界がモノクロになっていくように感じた。
──その時、ふいに頭の圧迫感が消えた。
どうにか頭を動かして、眼鏡を押し上げて見れば……向こうで天狗が何かに締め付けられたようにじたばたしているのが見えた。
「……桃間さん、ひどい格好ね」
またもや声が上から降ってくる。
ただし、今度は天狗のじゃない。
「……土御門、さん?」
見えたのは近くの私立小学校の制服。
そしてそれを着るのは、
お札を手に持ち、
凛々しい顔付きで立つ少女。
「騒がしい気がして見に来てみれば、とんだ状況ね」
俺と土御門の周りを、透明な壁のようなものが囲んでいる。もしかするとこれは、結界とかそういうものだろうか。
ふとじたばたしていた天狗が、何かの拘束をぶちぶちと破き立ち上がるのが見えた。
「あれぇ? おチビちゃんだ」
やっほー、と天狗が手を振る。
その瞬間、土御門はギリッと歯軋りをし、
地面に唾を吐いて見せた。
「私──天狗はがめつくて嫌いなのよ!」
嫌悪感を露わにした土御門の声がその場に鳴り響いた。




