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漆黒の花々 Ⅵ´

アルキオネブリッジ


「ジョセフィーヌ機、FUNG(ファング)艦隊を殲滅。 TEAMD(デルタ)、両機共に敵艦の無力化に成功――」


 サラ副長の現状報告がアルキオネクルーに伝達される。


 嬉しい想定外だが……


 まずジョセフィーヌさんが単独で先行した時はどうなることかと……まさかたった1人でFUNG(ファング)を一掃してしまうとは……元第7艦隊というのは伊達ではないな。

 

 それと2機のDrive(ドライヴ) Dummy(ダミー)の活躍で艦隊戦になる前に決着が付いた。敵さんはまさか可変機構を備える機体が存在し、ましてやそれが奪った最新鋭機を凌駕し蹂躙するなんて思ってもいなかっただろう。

 恐らく数で優っている状況で負けは無いと判断し応戦したんだろうが、俺なら最初の2機がやられた時点で後退もしくは撤退を指示する。


 まぁ、あの2人を相手に引いたところでどの道結果は同じか……運が悪かった――

 いや、今まで悪事を働いてきた付けが回ってきたと言ったところだな。


「TeamD(デルタ)、敵艦を捕らえ降伏を呼びかけています。 が、どちらも応答がないようです」 


「往生際が悪いな」


 あの戦力をひっくり返されたんだ呆気に取られているんだろうが……ちんたら降伏するのを待っていても埒が明かないし時間を稼いでいる可能性もある。


「アスト艦長いかがなさいますか?」サラ副長が淡々と尋ねると数秒ほどの沈黙の後、アストは指示を出す。


「TeamB(ブラボー)はそのまま待機、TeamA(アルファ)をアルキオネの護衛に回せ。ジョセフィーヌさんは――」


 そうアストが指示を出していた瞬間だった。


 ヴェルルの搭乗するブラックロータスが銃口を向け無力化していた敵艦(クレイオス)に一筋の赤黒い閃光が真上から降り注ぐ。

 何が何処へ被弾したのかは定かではない。が、瞬く間に敵艦(クレイオス)は爆散し、それによって生じたものがブラックロータスを呑み込んだ。


 他クルーのほぼ全員がその爆発に意表を突かれる中、アストは瞬時に指示を出す。


「ゼノビアさん索敵を!」


『アスト艦長、既に索敵は行っております。 ですがこちらの範囲外からの攻撃の様です』


 まさか20艦隊が今更援軍を?


「メアリー、援護の艦隊情報は何か届いているか?」


「何もありません! 第20艦隊からの応答も未だありません!」


 こちらの索敵範囲外からの敵の狙撃だったが誤射したのか?

 いや、とにかくここは――


 アストは急ぎもう一隻の敵艦《ヒュペリオン》を間近で無力化しているクリスに繋ぐ。


「クリス! 急いでその場を離れろ!」


『どうして!? だってヴェルルが!』


「こちらとの通信は途絶していない、ヴェルルは大丈夫だ! あの煙の中ならそうそう当たりはしない」


『わ、わかったわ!』


 油断していた訳ではないが完全に不意を突かれた。あれがアルキオネに向けられていたらと思うとゾッとする。 だが、そうしなかったということは向こうもこちらの位置を正確に把握できていないということ。 

 つまりあの射撃は正確な位置が分かっていたあの戦艦(ふね)に向けて意図して撃ったということになる……。

 

 しかしあの装甲の厚いガイア級を一撃で沈めた謎の光子兵器…………。


 っ――!! 

 奪取された物資の中にはバイネッケ以外にも新型の武装ギアが積まれていた。


「まさかあれが!?」


 クリスがブラックストレリチュアを人型から巡航形態へと可変し急速離脱を始めようとする最中、再び赤黒い閃光が敵戦艦(ヒュペリオン)を貫いた。


 ヒュペリオンとクレイオスの爆発が入り混じる中、別の地点で索敵を続けていたゼノビアが蒼いDrive(ドライヴ) Doll(ドール)をライフルスコープの中央で捉えていた。


『2射目で位置は完全に把握いたしました。 ルーナちゃんあれの位置と視認した敵機の情報伝達をお願いいたします。 私は――あれを撃ちます』


 ゼノビアは指示をしながらも研ぎ澄まされた指先でトリガーを引く。


 それは完全にあの蒼い機体を捉えた一発だった。


 しかしその機体は分かっていたのか、それとも偶然か、機体を翻したことで弾丸は機体の側面を掠めただけに終わった。


 たった1発を外しただけ――スコープの中央にいる敵がゆっくりと振り向く。

 実際にはとてつもない距離があるというのにゼノビアはスコープの中の敵に自分の位置が捉えられた感覚に陥る。


 マズい――!


『ルーナちゃん移動します! カバーしますのでジグザグに後退を』

『り、了解です!』


 普段温厚なゼノビアの慌てた声に動揺しつつルーナは指示通りに後退を始める。




*



――敵視点――




「くっ……こんなバカなことが……」


 圧倒的な力の前に訳も分からないまま、たった2機の相手に戦力を全て失ったヴェスヴィオは力無く艦長席に寄り掛かった。


 そんなヘタれた男にドレークが冷たい声で煽る。


『敵のDDが特殊だったとはいえ、無様だなヴェスヴィオ』


「き、貴様も観ていただろう!? あんな化け物……想定外だ!」


『想定外? 違うな、だだの采配ミスだ。既に得ていた敵の情報を分析せず、状況も把握せず、保有する最新鋭機という戦力に慢心し引き際を見誤った。 大胆過ぎたんだよ、お前は』


 散々見下していた宙賊相手に何も言い返せないヴェスヴィオは無意識に歯を食いしばり拳を握ると肘掛けへ目掛けそれを思い切り振るった。


「ぐっ……まだだ……そうさ、その位置から今すぐに貴様が奇襲さえすれば……こいつらを!」


『FUNG(ファング)を潰した複数の黒い機体も恐ろしい性能だが、お前たちを追い込んだあの2機はそれ以上の性能の様だ。それにDDとは思えない優雅なフォルムをしている。まるで黒い花……さながら漆黒の花々と言ったところだな』


「なにを悠長なことを……!」


『お前が邪魔をするなと言うからこうして黙って観ていてやったんだがな。 だが、お前の言う通りこのタイミングで奇襲を掛ければ奴らにも多少の損害を与えることは出来るだろう』


「だったらさっさと動けッ!」


『はぁ……その耳は飾りか? もう一度言う、分析と把握だ。結論、撤退以外ない。 どれだけ奇襲が旨くいこうが我々にはメリットがない ただ損害が出るだけだ』


「ふざけるな! こちらは報酬を出すんだ! 貴様らはそれ相応の働きを――!」


『あぁ、そういえば』といつまでも怒号を飛ばすヴェスヴィオにドレークは呆れ、惚けた様子で遮る。


『ラビアータにはお前の尻を拭ってやってくれと言われていたんだったな』


 冷徹にそう言うとヴェスヴィオが乗艦する戦艦(ヒュペリオン)の頭上の遥か先で待機していた蒼いDrive(ドライヴ) Doll(ドール)が右手に保持した武器を構える。


『あの日運ばれていた積み荷は新型機(バイネッケ)だけじゃなかった。お前達との契約には最新鋭機の奪取、とあったからな。 すまないがこれは俺たちがうまく使ってやろうと思ってね』


「な、何を言っている!?」 


 先程までは拳を振り上げ怒鳴り散らかしていた巨漢が戸惑う姿にドレークは小さく口角を上げる。


『幹部のお前が捕らえられてしまってはMARE(マーレ)にとって大きな損害になる。そうだろう?』


「貴様っ……! まさか!?」


『このフ(・)ォ(・)ト(・)ン(・)レ(・)ー(・)ル(・)ラ(・)イ(・)フ(・)ル(・)の試射には良い的だ』


 ドレークは引き金を引く。


 ヒュペリオンと並走していたクレイオスが一筋の赤黒い閃光によって貫かれる。その一瞬の間の後、爆破の衝撃でヒュペリオン内部は大きく揺れる。


「クソぉッ! どうなった!? 何をしたぁ!?」


「ほ、本艦にではありません! クレイオスです! データに無い光子武装(フォトンウェポン)により通信途絶……大破、もしくは轟沈した模様!」


「でたらめだ! 一瞬でこのガイア級が簡単に沈むものか! 奴の! 通信位置と撃たれた方向から位置を、映像を出せ!」


 錯乱した指示にも急ぎ対応した部下は索敵モニターにドレークが操縦しているであろう蒼いDrive Doll(ドライヴドール)を映し出す。 その機体は右手に持つ厚みのあるカービンライフルとでも言えば良いだろうか、それの赤熱化した内部バレル及びカートリッジを再装填していた。


『最大出力では一発がバレルの限界か……』


「あんな小型武器で……あの距離からガイア級を貫いたとでも……!?」


『おや? お前が乗っていたのはそちらだったか……だが、あのデカい的(クレイオス)のお陰でこの武器の威力が分かった。感謝しよう。 それでは去らばだ。 MARE(マーレ)幹部、ヴェスヴィオ』


 再びドレークは赤黒い光の線を放つとヒュペリオンの分厚い装甲を容易く貫き爆散させた。

 

 『良い威力だが、弾丸に限りがあるのが難点か。 ゴーグここでの仕事は終わりだ引き上げるぞ』


 ドレークがそう言い機体を翻した瞬間、1発の弾丸が機体を掠めた。

 彼は少し驚き目を見開くと弾丸が放たれたであろう方向へ機体のメインカメラだけをゆっくりと向ける。


『ほぉ? こちらの武器の威力を見て怯まず この距離を当ててくるか、腕の好いのが揃っている。 だが今回は引かせて貰おう』


 蒼いDrive Doll(ドライヴドール)は4門のテイルスラスターを唸らせ一瞬にして闇の中へ消えていった。



*



 クリスは辛うじてヒュペリオンの爆発から逃れると急いで返事のないヴェルルの捜索を行う。煙とデブリで良く見えないがアルキオネとお互い通信接続されているため機体の反応と位置がレーダーに表示されており、それのおかげですぐに探し出すことができた。 


 ブラックロータスは花弁の翼を閉じ蕾のまま宙を彷徨っていた。

 巡航形態のブラックストレリチュアが外部装甲を開き人型の部分を露出すると、ブラックロータスを優しく抱いた。


『ヴェルル! 聞こえる? 無事なら返事して!』


『聞こ――てる』ノイズ交じりのヴェルルの声が接触回線でクリスに届くといつも強気な赤髪の少女は目を潤ませた。

 

『さっき――爆発――不具合が――開かない』

 ヴェルルは爆発に呑まれたが咄嗟にブラックロータスの外部装甲である花弁の翼を閉じ難を逃れていた様だがどうやら機体が上手く動かないらしい。


『何? はっきり喋んなさいよ!』クリスは機体に対して問題なさそうなヴェルルのいつもの無機質な声に怒りながら安堵の笑みを浮かべた。


 そしてブラックストレリチュアはブラックロータスを抱いたままゆっくりとアルキオネへと向かい帰投するのだった。

皆様、大変お久しぶりです。作者です。

最新話の更新が全くできず本当に申し訳ございません。

(本当は七夕までに投稿したかったのは内緒……)

言い訳を言いますと環境の変化が大きく執筆時間を作るのが難しい生活を余儀なくされています(-_-;)


因みに今回

奪取された物資の中にはバイネッケ以外にも新型の武装ギアが積まれていた。

とアストが思い出すシーンがありますが【本格始動と新年 Ⅶ´】を参照していただくと一応アストが積み荷について把握していたことが分かるかと思いますのでご参考までに……


また、戦闘シーンでクリスとヴェルル視点やジョセフィーヌ視点も書いていましたがまとまって書けない所為か格好がつく文章が書けないので一旦断念しました(/ω\)

(もし要望が有ったり書けたら追加で投稿します……多分)


とりあえず漆黒の花々、というより第2章が後1話で終わりになります!


次回と第3章もお楽しみに!

読み辛かったり変な部分がありましたら遠慮なくご連絡くださいませ。

絡んでもらえると作者が喜びます。

でわでわ~(^^)/

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