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コミック③巻発売中!【最強は田舎農家のおっさんでした】配信文化の根付いた世界で田舎農家のおっさんが伝説の竜を駆除した結果、実力が世界にバレました。  作者: 天池のぞむ
第6章 新たな始まり

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第79話 大狩猟大会、開会式


「これより『大狩猟大会』の開会式を行いまーす! 参加者の皆さまはお集まりくださーい!」


 ゴーシュたちが大賢者エルミナと会った翌日――すなわち大狩猟大会の開催日。


 王都外れの草原地帯には大勢の人間が集まっていた。


 集まった者たちは短剣やら棍棒やら弓やらを所持しており、いかにも腕に覚えがありそうな風貌(ふうぼう)である。


 辺りには観客や配信者の姿も多く、さすがは精霊祭の中でも注目度の高いイベントといったところか。


 幸いにも天気に恵まれ、青空が広がっている。


 そんな中、ゴーシュたちも司会のアナウンスに従って参加者たちの列に加わっていた。


「ハハ、これだけ集まると緊張感があるな」

「人たくさん」

「皆さん屈強そうというか、戦闘がバリバリ得意ですって感じしますね」

「フフン、それでも優勝するのは私たちよ。天才魔女の活躍を見せつけてあげるわ!」


 緊張したり気合十分だったりと。

 ゴーシュたちがやり取りしているうちに開会の時間となる。


 中継配信も始まり、あらかじめ設置されたステージが映し出されるとリスナーたちの視線もそこに注がれた。


「それでは! ただ今より大狩猟大会の開会式を行います! 早速ですが、主催者であるメイシャ・アルダン様より開会の挨拶やルール説明を行っていただきましょう!」


 司会の女性に呼ばれ、ドレスに身を包んだ一人の少女が現れる。


 育ちの良い貴族令嬢という分かりやすい見た目なのだが、いつも《黄金の太陽》の配信を視聴している熱狂的なファンであり、以前シャルトローゼの一件ではゴーシュに念願の挨拶をしていた人物でもある。


(メイシャさん、たまに連絡をくれるけど。大狩猟大会のスポンサーだったのか。さすが公爵家だな)


 ゴーシュとしては顔見知り程度ではあるが、知っている人がこれだけ大規模なイベントを開催していることは感慨深くもあった。


 一方のメイシャは壇上の中央まで向かった後、ぺこりと姿勢よくお辞儀をしてから静かに息を吸い込む。


「皆さま、お集まりいただき大感謝ですわ~! (わたくし)、主催のメイシャ・アルダンと申します。いよいよこの日がやって参りましたわ~!」


 満面の笑みである。


 中々のハイテンションぶりに一部の参加者やリスナーたちは呆気に取られていたが、メイシャは構わず続ける。


「今日皆さまにお集まりいただいたのは他でもありません。実は、大狩猟大会というのは嘘なのです。今日は皆さまに『デスゲーム』というのをやってもらおうと思うんですの!」


 言い放ったメイシャの表情は変わらず満面の笑みだ。


 それは邪気など欠片もないといった笑顔で、だからこそ不思議な圧と怖さがあった。


 参加者やリスナーたちはもちろん、ゴーシュたちですら驚きの反応を見せている。


 が――。


「なーんて、もちろん冗談ですわ~! 一回言ってみたかったんですの~!」


 続けられたメイシャの言葉に、一同は思いっ切り肩透かしを喰らった。


「ウフフフフ。びっくりしました? びっくりしましたわよね? サプライズ成功ですわ~!」


 メイシャは実に楽しそうな様子だったが、参加者や中継を見ているリスナーたちの胸の内は「テンション高ぇ……」という思いで一致していた。


 そして司会の女性が呆れつつもメイシャに声を掛け、何とか主催者の挨拶に戻ることに成功する。


「コホン。失礼しました。ちょっと(、、、、)テンションが上がりすぎてしまいましたわ。改めて、大狩猟大会の説明と参りましょうか。まずルールから発表いたしますわ~!」


 メイシャが元気よく言って、今回の大狩猟大会におけるルールが説明されていく。


 メイシャが発表したルールの要点を纏めると、以下のようなものだった。


・大狩猟大会はどれだけ多くの魔物を討伐できるか競うイベントである。

・1チームのメンバーは4人。外部の者からの助力や攻撃は禁止とする。

・1日目は予選、2日目に予選通過チームどうしで決勝戦を行う。

・魔物は実在する魔物ではなく、アルダン家お抱えの魔法使い集団が本物の魔物とそっくりの幻影を用意する。そのため、どのチームがどの魔物をどれだけ討伐したかという記録は正確に行われる(ちなみにこれは、参加者に危害が及ぶ心配をなくし、安心安全にイベントを楽しむことができるように、というメイシャの配慮である)。

・魔物は小型、中型、大型にそれぞれ分けられ、小型は1ポイント、中型は5ポイント、大型は10ポイントが加点される。中にはレアな魔物が紛れ込んでおり、それを倒したチームにはボーナスポイントが与えられる。



「要はでっかい魔物をたくさん倒せばいいってわけね! 私の魔法をぶっ放してあげるわ!」

「パルクゥ、気合いじゅーぶん。でも空回りしないようにね」

「とはいえ大型の方が数は少ないだろうからな。小型や中型の魔物もしっかり倒していきたいな」

「なるべく効率よく戦闘したいですね。一回の戦闘にあまり時間はかけられなさそうです」


 ルールの説明が終わると、ゴーシュたちは仲間内でやり取りを交わす。

 それは他のチームも同様で、自然とどういう戦略でいくか話し合っているようだった。


「さてさて、最後に一つ。皆さんも気になっていることでしょう。優勝賞品を発表いたしますわ~!」


 ステージ上のメイシャが合図すると、脇から出てきた執事服を来た人物が台車に乗せた何かを運んでくる。


「ふふん。きっと皆さんを驚かせる一品ですわよ。配信をご覧になっているリスナーの方々もご注目くださいまし。今回の賞品は――コチラですわ!」


 メイシャが掛けられていた布を取り払うと、そこから現れたのは鉱石だった。


 大きさは人の頭部くらいあるだろうか。

 形は鋭利な水晶のようだが、特徴的なのはその色で、陽の光を受けて虹色に輝いている。


 ゴーシュには何なのか分からなかったが、隣にいたパルクゥはすぐにその鉱石の希少価値に気づいたらしい。


 目を見開き、口をパクパクさせていて、さながら打ち上げられた魚のようになっていた。


「あばばばば――」

「パルクゥ、知ってるのか?」


 パルクゥはその問いに答えず、代わりにゴーシュの手をがしっと握る。

 そして向けられた瞳は輝きを放っていて、その様子でゴーシュは何となく察した。


「ゴーシュさん、絶対に優勝するわよ! 絶対絶対、絶対によ!」

「ええと……。あの石が何か?」

「あれはね、魔女たちの間でも伝説とされている『シチイロカネ』っていう超超超激レア鉱石なの! 私も書物でしか見たことないわ! あれがあるとすんごい薬とかすんごい武器とか作れちゃうわよ! だから絶対手に入れましょ!」

「ち、近い近い」

「パルクゥ、すんごい薬ってどーいうの?」

「前に読んだ書物によると色々作れるらしいけど。例えば一時的に空を飛んだりとか、飲んだ後に叫べば咆哮波を飛ばせるとか、食べ物に振りかければハイパー美味しいお菓子に変えられるとか。とにかく不思議な鉱石なのよ」

「なにそれちょーほしい。ししょー、絶対に取ろう」

「おおお、それ配信したらすっごく楽しそうじゃないですか。ゴーシュさん、絶対に取りましょう」


 女性陣三人はシチイロカネ絶対欲しいモードに突入したようで、凄まじい意気込みようである。


 ゴーシュとしては若干押された感じで苦笑していたが、三人がそこまで欲しがるならと、決意を新たにするのだった。


   ***


「それじゃ、作戦でも練っておくとしようか」


 開会式の終了後。


 ゴーシュたちは開始までの間に準備を整えるべく、列から離れようとした。


 ふとそこへ、一人の男がヅカヅカと歩み寄ってくる。


「おやおやおや。《黄金の太陽》のゴーシュか。お前たちも参加するのだなぁ」


 男はかなり太った体型で、印象を一言で表すなら成金趣味を着飾った男、というのが正しいだろう。


 『私はお金を持ってますよ』とアピールするような身なりで、首やら腕やらに金のアクセサリーを身に着けている。


 更には葉巻をふかしながらやって来るというオマケ付きだ。


 いかにも、という感じである。


「ええと、失礼ですがどなたですか?」

「クハハハ。知らないとは可哀想な奴だ。ギルド《黒曜の翼》のオーナー、ジルコーニと言えば聞いたことがあるだろう」

「こ、《黒曜の翼》!?」

「フフン」

「……ってすみません。ギルドもあなたのお名前も聞いたことないです」

「な、なんだと!?」


 ゴーシュの返しには悪意がなく、それ故にジルコーニには刺さったようだ。


 こめかみを分かりやすくヒクつかせ、先程までの横柄な態度は怒りへと変わっている。


 《黒曜の翼》がどういうギルドなのか、配信業界に詳しいミズリーは知っていた。


 が、ジルコーニの見下したような態度が気に食わず、ゴーシュのジルコーニへの返しがいい気味だったこともあり、ミズリーは黙っていることに決める。


「おのれ、虚仮にしおって……。許さんぞゴーシュ……いや、《黄金の太陽》よ。この大狩猟大会で鼻を明かしてやる。必ずウチが優勝するからな! 覚えておけ!」

「あ、ちょっと――」


 ジルコーニは咥えていた葉巻をゴーシュに投げつけ、そして去っていく。


「何よアレ、感じサイアクだわ」

「ししょーにしつれーなの許せない」


 パルクゥとロコは当然のことながらお冠である。


 ゴーシュからしてみれば何がジルコーニの癇に障ったのか分からなかったが、ミズリーがその答えを持っていた。


「《黒曜の翼》。多種多様な配信者を抱えているギルドで、形態としてはマネジメント事務所に近いですね。かなり大所帯な分、数字的にはけっこうな実績があるギルドなんですが……」

「そうだったのか。それを知らないとは、確かに失礼だったかな」

「いえ、ゴーシュさんの返しはむしろスッキリしましたよ。あのおデブオーナーの方が遥かに失礼な態度ですし。それにあの人のギルド、前にお姉ちゃんを(けな)すような配信して数字を集めてたので」

「メルビスの?」

「はい。お姉ちゃんがデビューしたての頃のことなんですが、芸術的な観点からここが足りない、ここの技法は時代遅れだとか難癖つける配信をやっていました。『指摘を入れてやったぞ!』ってマウント取る人は一定数いますけど、あの人の所は典型的でしたね」

「そうか。それは酷いな」

「まあ、お姉ちゃんは気にしてませんでしたけどね。有名になってからはなくなりましたし、まさに出過ぎた杭は打たれないって感じでした」


 さすがだなと、ゴーシュは素直に感嘆する。


 メルビスの芯の強さを感じた気がして、それがどこか嬉しくもあり、気づけば自然と笑みが溢れていた。


「しかし、何であんなに敵視してきたんだろう。けっこうな恨みつらみがあるように感じたんだが」

「それはですね、ウチが注目されるようになってから、《黒曜の翼》のリスナーが激減したようでして。スポンサーとかも《黒曜の翼》から私たちのギルドに乗り換えたいっていう相談がけっこう来てますし」

「あー、なるほど。うん、理解した」

「なのでゴーシュさんの返しはすみませんけど、ちょっとスカッとしました」

「フフン、いい気味じゃない。喧嘩売ってきてゴーシュさんに撃沈されたってことね」


 もちろんゴーシュは意図していなかったが、ジルコーニに対してはいいカウンターになったようである。


「とにかく、俺たちは俺たちでやるべきことをやろう。まずは2日目の進出を目指し――――っ!?」


 途端、ゴーシュは背後から突き刺さるような気配を感じ、バッと振り返る。


「……」

「ゴーシュさん?」


 ミズリーが怪訝な表情を浮かべる中、ゴーシュは慎重に辺りを見渡す。


 視線の先には多くの参加者が点在しており、ゴーシュは警戒姿勢を取っていた。


(何だ、今のは……。一瞬、だけど確かに刺すような気配を感じた。もしかして《黒曜の翼》のメンバーか?)


 出処(でどころ)は分からなかったが、参加者の内の誰かだろうということは推測できた。


 しかし結局、妙な動きを見せる者はおらず、ゴーシュは細く息を吐く。


(……そういえば昨日、大賢者様が別れ際に意味深なことを言っていたな。確か、伏兵が現れるかもとか)


 いずれにせよ、気を引き締めていかなくてはならない。


 ゴーシュはそう考えつつ、先程の鋭い気配の余韻が残っているのを感じていた。


   ***


 一方その頃、ゴーシュたちから離れた位置でルインが空を仰いでいた。


「マジかよー。今のに気づいちゃう?」

「どうしたの兄さん? 嬉しそうな顔して」

「んー。シェリーが目をつけてたおっさんがどんなもんかと思ってな。すこーしだけ気を飛ばしてみたんだよ。ものの見事に反応しやがった」

「フフ。さすがはゴーシュさんね」

「いやいや、めちゃくちゃ極小のやつだぞ。現に他の参加者は誰も反応してねえし」

「ゴーシュさんは元々田舎で農家をやってたから。そういうものには敏感なんじゃないかしら」

「その理屈でいくと農家のおっさんはみんなバケモンてことになるぞ……」


 ルインは嘆息し、そしてその後で、ふつふつとある感情がこみ上げてくる。


 今の僅かな気配に反応できる者がエルミナ以外にいるのかと、武者震いのような感覚だった。


「しかし、これは面白いな。ちょっとそっちにも興味が湧いてきたぜ」

「気持ちは分かるけど。エルミナ様からの依頼も忘れないでよね」

「へいへい」


 シェリーの言葉はそこそこに反応し、ルインは再びゴーシュの方を見やる。


 そうして、ルインはこれから始まる大狩猟大会に思いを馳せていた。





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― 新着の感想 ―
確かにファンタジー冒険者な世界観でデスゲームやったらどうなるか興味はある…けど、盗賊とかだと平気でやりあう世界観だと、身も蓋もないやり合う展開か、デスゲームそっちのけで主催者やりにいきそうでデスゲーム…
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