第101話 巨大蜘蛛を撃破せよ
「赤い巨大蜘蛛……。クリムゾンハンターか」
「指定S級の魔物、ね。こんなのまで出るなんて、やっぱり今のままじゃデートスポットにはならないかしら」
ゴーシュとシェリーは各々の武器を構え、臨戦態勢に入る。
クリムゾンハンターの見た目は赤々しく、それだけで不気味だ。
虫嫌いのパルクゥが見たらそれだけで卒倒しそうなものだったが、幸いゴーシュたちを追跡している女性陣はかなり距離を空けていたため、悲惨なことにはならなかった。
「アイツの毒性は毒牙虫の比じゃない。吐いてくる粘糸にも要警戒だ」
「了解よ、ゴーシュさん。協力して仕留めましょう」
クリムゾンハンターの攻撃手段は主に3つ。
自身の巨体と俊敏性を活かした踏みつけ攻撃。
そして粘着性の高い粘糸の吐出攻撃と、極めて強力な毒の牙による噛みつきである。
ゴーシュとシェリーはクリムゾンハンターの口の向きに注意しつつ、両サイドから一気に距離を詰めようと試みる。
「ハッ!」
「やぁっ!」
まずは敵の動きを封じるため、長く伸びる足の部分にそれぞれの武器を振り下ろすゴーシュたち。
しかし、クリムゾンハンターもその攻撃に対して敏速に反応する。
足を引き抜いたかと思うと、素早く跳躍したのだ。
「天井に……!」
さすがは蜘蛛型の魔物と言うべきか。
クリムゾンハンターは巨体であるにもかかわらず、天井にべたりと張り付いていた。
おそらく粘着系の物質を自身の足に付着させることで可能にしているのだろう。
ゴーシュはクリムゾンハンターを見据え、冷静にそう分析した。
「やぁっ!」
そこからゴーシュとシェリーも追って攻撃を試みる。
が、クリムゾンハンターは天井や石柱へと三次元的な移動を繰り返し、的を絞らせなかった。
(あまり動き回られると厄介だな……)
ここに来るまでも崩落した箇所があったことを考えれば、クリムゾンハンターのような巨体が天井やら石柱やらを駆けずり回るのは好ましくない。
天井に向けて下手に強攻撃を仕掛けるわけにもいかない。
攻めあぐねるゴーシュたちだったが、その隙にクリムゾンハンターが動く。
――ブパァッ!
クリムゾンハンターは口を大きく開けたかと思うと、広範囲に粘糸を放ってきたのだ。
粘糸はゴーシュたちのいる地面を丸ごと覆うほどで、逃げ場はない。
直接的なダメージこそなかったが、かなり粘性の強い糸で、ゴーシュたちは動きを封じられることとなった。
それを好機と捉えたクリムゾンハンターは、シェリーに狙いを定め、自身の巨体を落下させる。
「このっ――」
ブチブチと、力任せに粘糸を振りほどくゴーシュ。
その脱出は見事なものだったが、動きは一瞬遅れることとなる。
(くっ、間に合わない……!)
直ちにシェリーの助けに入ろうと疾駆するも、クリムゾンハンターの踏みつけの方が早い。
そう判断し、ゴーシュは一か八か剛牙を投擲しようと試みる。
が――。
「その必要はないわ、ゴーシュさん」
シェリーはいつものように落ち着いた微笑を浮かべていた。
そして、持っていた戦斧を手首の動きだけでくるりと回転させると、自身の体を拘束していた粘糸を容易く断ち切ったのだ。
クリムゾンハンターの落下攻撃は石畳を粉砕し、辺りに土砂を撒き散らすこととなったが、シェリーに命中することはなかった。
――キシャア!
回避行動を取ったシェリーに向けて、クリムゾンハンターは追撃を試みる。
口を大きく開き、毒の牙で噛みつこうと迫る巨大蜘蛛。
その敵に対してシェリーは冷静に、ある魔法を発動させていた。
「3倍――くらいでいいかしら」
石柱に足をついた一瞬で呟くシェリー。
すると、体からぶわりと光の気流のようなものが湧き起こる。
「《トリプル・ドライブ》――」
そこからは、小柄な少女の動きとは思えないものだった。
蹴った衝撃で石柱にヒビが入るほどで、一瞬にして飛びかかってきたクリムゾンハンターの至近距離まで接近する。
そのまま戦斧を連続で振るったのだが、あまりの速度にクリムゾンハンターからは光の線が走ったようにしか映らなかった。
――ギシャ!?
「ゴーシュさんっ」
「ああっ!」
シェリーの斬撃を受けてクリムゾンハンターは仰向けに落下することになり、そこへゴーシュが待ち受ける。
「四神圓源流――《獅子穿撃》!」
大剣を突き出し、跳躍の勢いを乗せた一撃。
それは剛牙の破壊力も併せ、文字通り必殺の威力を放つ。
クリムゾンハンターの硬い甲殻を易々と貫き、ゴーシュは決着の手応えを感じ取っていた。
「フフ。やったわね」
「ああ、何とかなったな」
クリムゾンハンターの撃破を確認した後で、ゴーシュとシェリーは互いの手をぱちんと合わせる。
互いの力を発揮した共闘に、二人は心地よい達成感を覚えていた。





