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コミック③巻発売中!【最強は田舎農家のおっさんでした】配信文化の根付いた世界で田舎農家のおっさんが伝説の竜を駆除した結果、実力が世界にバレました。  作者: 天池のぞむ
第6章 新たな始まり

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第98話 デートのお誘い


「えっ?」


 新武器完成から一夜が明けて。


 ロコと一緒に日課である朝の運動を行っていたゴーシュだったが、ある人物からの連絡に思わず声を上げた。


「どした、ししょー?」

「い、いや……」

「……?」


 ゴーシュの手元には半透明のウィンドウが浮いており、ロコがうーんと背伸びをして覗き込む。


 そこに表示されていたのは『デートをしましょう』という内容。


 送り主は、先日の大狩猟大会でゴーシュたちと共闘した兄妹の、妹の方――シェリー・クライドだった。


   ***


「ワッハッハ! ゴーシュ、ぬしもスミに置けんのう!」


 ギルドの面々が集まり、遅めの朝食を摂りながらのこと。


 ロコがシェリーから来た連絡の内容をバラし、ゴーシュがデートに誘われたという事実はギルドメンバー全員の知るところとなっていた。


「いや、俺も何でこんな連絡が来たのかさっぱりなんですが」

「ちっちっち。ゴーシュの旦那は分かってねえなぁ。あの嬢ちゃん、思いっきりゴーシュの旦那に興味ありげな感じだったじゃねえか。たぶんもーっとお近づきになりたいのさ」

「そ、そうだったか? だとしても、何でいきなりこんな……」

「あの嬢ちゃん、中々グイグイいくタイプらしいなぁ」


 ギギは面白いおもちゃを見つけたかのように活き活きとして、ゴーシュをからかう。


「ギギ、アンタ絶対楽しんでるでしょ」

「あん? そりゃそうだろ。朝からこんな楽しい話題をぶっ込んでくれたんだからよ」

「まったく」


 完全に面白がっている使い魔に嘆息しつつ、パルクゥはテーブルの上に置かれた紅茶を口に運ぶ。


 ギギをたしなめてはいたが、パルクゥも興味が隠せないようで、カップを口に運ぶ所作がどこかぎこちなかった。


 と――。

 そのままカップに口を付けたパルクゥだったのだが、眉間にシワを寄せて変な声を漏らす。


「うきゅっ……な、ナニコレ。ミズリーが淹れてくれた紅茶、なんかしょっぱいんだけど」

「え? そんなハズは…………ああっ! すみませんパルクゥさん! 砂糖と塩を間違えてました!」


 どうやらミズリーの平常心はもっと彼方に吹き飛んでいたようだ。


 慌ててパルクゥの紅茶を取り替えようとして、近くにあった観葉植物の鉢を蹴飛ばしていた。


「ミズリー、気持ちは分かるけど落ち着きなさいよね」

「や、やだなぁ、パルクゥさん。私は至って普通ですよ」

「全然そうは見えないけどね」


「で? ゴーシュの旦那は行くのか? 行くだろ? 行くよなぁ?」

「ハッハッハ。乙女の申し出だ。断るのも無粋というものだぞ、ゴーシュよ」

「いやまあ、確かに今日は予定ありませんが……」

「ならば行ってくるがよいさ。皆で精霊祭を回るのは明日の最終日でよいだろう」

「気をつけろよぅ、ゴーシュの旦那。あの嬢ちゃんはけっこう小悪魔っぽい性格してたからな。油断してると一気に持っていかれるかもだぜ?」

「持っていかれるって何を……」


「ミズリー! 今度はお鍋が吹きこぼれてるわよ!」

「あわわわわっ! マズいです!」


 各々がやり取りを繰り広げ、一部の者は慌てに慌てていて。


 いつも以上に賑やかな朝の風景を見ながら、ロコが一言呟く。


「しっちゃかめっちゃか」


 結局、面白がっているギギやボルガに押され、ゴーシュはシェリーとの待ち合わせ場所に向かうことになるのだった。


   ***


「あれ? ルインも来ていたのか」

「よぅ。こないだぶりだな」

「ご機嫌よう、ゴーシュさん。お誘いに応じてくれて感謝するわ」


 ゴーシュがシェリーに指定された王都の広場に向かうと、そこにはルインの姿もあった。


 広場は精霊祭の最終日前ということもあり人がごった返している。


 そんな中で、ルインとシェリーの美男美少女兄妹はかなり目立つ存在だった。


「フフ。兄さんてばゴーシュさんに挨拶がしたいと言って聞かなくて」

「ま、せっかくだしな」


 ルインが来ていたことで、ゴーシュは少しホッとする。


 デートというのはシェリーの(たわむ)れ的な言い方で、ルインも含め何か話があるのだろう。


 ゴーシュはそのように考えたが、一方でルインはどこか複雑そうな顔をしていた。


 苦い顔というべきか、少し不機嫌そうというべきか。

 とにかく、以前のように飄々とした余裕が今日はあまり感じられなかった。


「ゴーシュさん、悪いが妹のことを頼んだぜ」

「え?」

「アンタは紳士っぽいし変なことはねえと思う。そこは安心してるんだが、シェリーの奴は兄貴の俺にも何考えてるか分からんところがあるからな。そこはゴーシュさんを信頼するしかねえ」

「ええと、ちょっと意味が分からないんだが……」

「そんじゃ、俺はあっちの方だから。よろしく」


 ルインはひらひらと手を振りながら、広場の外れへと去っていってしまう。


 残されたゴーシュは困惑することとなり、その背中を呆然と見送るしかなかった。


「さて、兄さんもいなくなったことだし、私たちは私たちで行きましょうか」

「ちょっ――」


 呆気に取られていたゴーシュの腕を取り、ルインとは反対方面に向かおうとするシェリー。


 まさか本当にデートをする気なのかと、ますます困惑するゴーシュだったが、シェリーはそんなことはお構いなしだ。


 微笑を浮かべているのは普段通りだったが、その表情は心なしか楽しそうだった。



 一方、広場の外れにて。


 出店の影に隠れるようにして、ゴーシュとシェリーを遠目から伺う者たちがいた。


「ど、どうしましょう、パルクゥさん。なんか人気(ひとけ)のない裏路地に入っていっちゃいましたよ」

「しっ。あんまり大きな声出すと気づかれるわよ。こっちはロコの嗅覚があれば追跡できるんだから、あまり近づきすぎず後を追いましょ」

「探偵ごっこみたいでわくわく」

「くっくっく。これはやっぱり面白い展開になりそうだなぁ」


 ゴーシュたちを遠巻きに観察しながら、ひそひそ会話を交わす女性陣一行と、喋る帽子。


 その様子はとても怪しげだった。



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