第94話 廃坑奥に蠢く影
「というわけで、ゴーシュさんの新武器開発のための素材、『ゴウタンセキ』のゲットを目指して探索開始です!」
リスナーたちに現況を説明した後、ミズリーたちはボルガから教わった廃坑へと足を踏み入れる。
中は一見通常の洞窟らしい光景だったが、所々に採掘現場を支えるための坑木が見えたりトロッコのレールが敷かれていたりと、かつての名残のようなものが見て取れた。
【ほう、廃坑でござるか】
【いかにもって感じですねー】
【こういうのも雰囲気あっていいな】
【昨日のグリフォン討伐見てたよ〜】
【大狩猟大会でのご活躍、凄かったですわ! 改めて優勝おめでとうですわ〜! 今日の配信も頑張ってくださいませ!】
【↑メイシャさんもお疲れ様〜】
【昨日参加してました! グリフォンが出たと聞いて避難してましたが……。倒してくれてありがとー!】
【昨日のでメンバーのファン登録も一気に伸びたらしいな(元々いっぱいいたけど)。掲示板スレも大盛り上がりだった】
【急上昇ランキング余裕の1位だった】
【大狩猟大会の切り抜きもめっちゃ再生されてた】
【パルクゥのポンコツまとめ、カッコいいところまとめより再生されてて笑ったわw】
【それは草生える】
【草】
【茶葉】
【草】
【今日の配信も楽しみです!】
【ミズリーちゃんがさっき説明してたゴウタンセキっていうの、どういうやつなんだろうな?】
【↑前に考古学者の配信で解説してるの見たことあるぞ。マグマみたいな石なんだとか】
【ほえー。熱そうだけど持ち運びできるんかな?】
【それは問題ないらしい。熱を加えなければ普通の石みたいなんだって】
【ワシの爺さんが昔掘り当てたことがあるとか言うてたのぅ。もっとも、モノ好きのドワーフくらいしか欲しがらんからハズレ枠だったらしいが】
「あはは。昨日の大狩猟大会を見てくれていた人も多いみたいですね。メイシャさん始め運営してくれた人たちに大感謝です」
ミズリーは昨日の大狩猟大会の件に触れつつ、廃坑内の様子の解説へと移る。
「鍛冶師さん曰く、ここはかつて『シンネ坑道』と呼ばれていた場所なんだとか。これまで洞窟の探索は何度か配信してきていますが、こういうのはまた新鮮ですねー」
「魔物の住処になってるとも言ってたわね。警戒しながら進みましょ」
「ごーたんせき探検隊、れっつごー」
ボルガの話によると、かつてゴウタンセキが確認されたのはこのシンネ坑道の最奥部らしい。
ミズリーたちはその情報を頼りに、坑道の最奥部を目指して進んでいく。
かつて採掘が行われていた影響か、シンネ坑道はそれなりの広さがあった。
この先魔物との戦闘が予想される状況を考えれば、動きが制限されないことはミズリーたちにとって好都合と言える。
「っと。さっそく出たわね」
気配を察知し、杖を構えるパルクゥ。
他の二人も同様に構えを取り、ミズリーたちは現れた魔物と対峙した。
「いくわよ。《バースト》――!」
狼型や爬虫類型、トロール型など様々だったが、リスナーたちがその全てを確認するより先にパルクゥの範囲攻撃が炸裂する。
魔物の群れを飲み込むようにして閃光が走り、洞窟内に爆発音が響き渡った。
「ふふん、どうよ」
現れた魔物を一網打尽にしたことでパルクゥがドヤ顔を見せる。
が、まだ油断するには早い状況だった。
岩場の影から蛇型の魔物が現れ、素早い動きでパルクゥに襲いかかってきたのだ。
「パルクゥさん、伏せてください!」
「へ――? ひゃあ!?」
パルクゥの頭上から蛇型の魔物が噛みつこうとしていたが、それはミズリーによって阻止された。
ミズリーは勢いよくレイピアを突き出し、蛇型の魔物を突き刺す
調子に乗っていたことをギギに諌められるパルクゥだったが、いつもの口喧嘩に発展する前にまた別の魔物が姿を見せた。
「きゃあ!?」
地面がもこりと膨れ上がり、パルクゥは尻もちをつく。
現れたのは岩石の巨人、ゴーレムだ。
ゴーレムはパルクゥをターゲットに巨大な腕を振り下ろそうとするが、今度はロコが助太刀に入る。
「ごつごついわなら私の出番。――ぱんち」
――グゴアアアアア!
ロコが小さな体から恐ろしいスピードの打撃を放つと、ゴーレムは一瞬にして崩れ去った。
少々ハラハラする場面もあったが、見事魔物の群れを捌き切ったミズリーたちにコメント欄も盛り上がりを見せる。
【お見事!】
【ゴーシュさん抜きでも強いんよな、この女性陣】
【毎回ロコちゃんの辛辣言葉がツボるw】
【大剣オジサンも見てるかな】
【バランスの良い攻撃でござるな】
【パルクゥちゃんは魔法がすごいし、ミズリーちゃんはスピードがすごいし、ロコちゃんはパワーがすごい】
【さらっとお約束のようなピンチになるパルクゥw】
【可愛くて強すぎる女性陣】
【あの魔物の群れ、普通3人で対処できるものじゃないと思うんですが】
【普通じゃないからな】
【ほとんど何もさせなかったのヤバい】
【この調子でどんどんいこう!】
パルクゥは少しヒヤリとさせられたようだが、それでもやはり歴戦をくぐり抜けてきたメンバーだ。
ミズリーたちはその後も進撃を続け、廃坑内を奥へと進んでいく。
この分ならゴウタンセキも順調に入手できるだろう。
リスナーたちの間にもそんな雰囲気が流れていたのだが、ある程度いったところで予想外のことが起きる。
「ありました! あれがきっとゴウタンセキです!」
「でも、これって……」
「おっきな水たまり……」
ボルガから聞いていた特徴と一致する石があるにはあった。
しかし、ゴウタンセキと思われる石は水の奥に沈んでいたのである。
おそらく長い年月をかけて雨水が溜まったと思われる、地底湖がそこにはあった。
「ど、どうしましょう……」
行く手を阻むのが地底湖だけであれば特に問題はない。
水の中を潜っていけばいいだけだ。
しかし、ミズリーたちを困惑させたのは地底湖の中に「ある魔物」がいたからだった。
「スパークフィッシュ……。しかもあれだけの数がいるなんて……」
別名、魔雷魚と呼ばれる危険性の高い魔物。
数はゆうに30を超えているだろうか。
それが不気味な黒い影となって水中を漂っていたのだった。





