感嘆符と疑問符
閉鎖された屋上への階段で昼食をとる。待ちあわせの場所はここだ。
「ごめん、遅れました」
崎山さんがやってくる。
「夏村さん、それでなんだけどね」
「なんでしょう」
崎山さんは少し黙って、話を始めた。
「昨日、高野課長に褒められてたわよね」
「……仕事の話ではないのでは?」
「うん、仕事の話じゃない。高野課長、どう思う?」
「いい人だと思いますけど」
「……そう?」
「はい。確かに口調は厳しいですし傲慢ですし人に当たりますしイケメンとは言えない顔です。でも高野課長は仕事に責任を持てる人だと思いますし、信念も持っています」
「……信念?」
「ええ。高野課長は宣伝は面白くあるべきだという信念を持っている人です」
「うちの会社のポリシーとは……『顧客に満足される広告』とは……少し違うわね」
「ですが私も課長の信念には賛成します。面白さは見た人を動かす原動力です」
「なるほどねぇ……で、この前の話はどうなの」
「……?」
「この会社に残るかって話よ」
「え?」
「今から履歴書書かないと間に合わないわよ。来年の4月までにこの会社をやめて転職したけりゃね」
「やめる……?」
「そう。私は今年度で退職して東京電子に入社する。給料も良くないしね」
「そうですか」
「夏村さんも確かやめたいって言ってたわよね」
「……」
「どうしたの?」
「すみません、覚えてません」
私は慌てて言った。
「事故で記憶喪失にでもなったの?」
「はい」
「そうだったのかぁ……まあいいや、頑張ってね」
「はい」
崎山さんはそう言うと、昼食をかきこんだ。私はオフィスに戻り、平常業務を片付け、資料をファイルに綴じながらプレゼンの練習をした。
18時になったが、仕事は終わる気配がない。単調な仕事だが、溜めるとあとが怖い。私は仕事を片付けるべく、机に残った。21時になって、やっと仕事が終わった。明日のプレゼンのためにも早く寝なければ。そう思い、まだ人が半分以上も残っているオフィスから出る。高野部長は渋い顔をしてパソコンの画面を見ていた。
家に帰ってから風呂に湯を入れた。手術の跡が残る腕で、ワイシャツを脱ぐ。まだブラジャーを外すのには慣れていないが、今日は昨日よりもうまく外せた。元の体より大きめの胸は、まだ慣れない。
「……Twitterでの広告は、面白さが命だと考えられます。我が社の広告で成功したものを見ても、駄洒落や慣用句、簡単な四字熟語をもじったものなどが並んでいます。そこで私は、……」
口が勝手に動いて、プレゼンを始める。そして私はシャワーを浴び、体を洗って風呂に入った。風呂上がりの体で、帰りに適当に買ったコーラを飲む。酸味のある爽快な味が、私の目を覚ます。
「だめだ、寝ないと」
食事を終えた私は布団に入り、眠りについた。




