仕事とプレゼン
翌朝いつものように会社に行き、プレゼンの練習をしつつ仕事を片付け、ついにプレゼンの時を迎えた。私は会議室で、自分の番を待つべく並べられた椅子に座った。
「1番、崎山さん」
プレゼンが始まる。崎山さんは学割を駅で広告するという案をプレゼンした。
「若者は場当たり的に行動を決めますから、駅の電光広告などでこの学割歓迎会プランを宣伝しましょう。広告を作るのは我々の仕事ですし表示するのも広告を作るのも飲食店オーナーの皆様の負担ですから、制作に経費があまりかからないほうがいいと思います。なので我々がシンプルな広告としてデザインし、駅の電光掲示板に表示することを提案します」
宣伝部の部長は話し終えた崎山さんにいくつか質問をしたあと、進行役の高野課長をみて「次」と吐き捨てるように言った。
プレゼンが進み、最後に私の晩が回ってきた。
「夏村さん」
私は一礼して、プレゼンを始める。
「私はTwitterなどのSNSを使用した宣伝を提案します。まず、配布資料のツイート文章案、ポップ案をご覧ください」
部長、専務、取引先の飲食店オーナーたちが資料に目を凝らす。数人のオーナーはすでに笑みを浮かべている。
「これらの文章は私が考えました。したがって、使用は自由です。これを使えば、明日からでも各飲食店様のツイッターで先手を打って宣伝が可能です。さらに学生に向けたツイッター社の既存のプロモーションシステムで宣伝を行えば、十分に印象づけられると思います。私はこの文章を使ってSNSで宣伝を行うことを提案します」
私のプレゼンには、これまで聞いたことのないような拍手が上がった。
「たぶん夏村君の案かな」
高野課長はそう言って微笑んだ。
翌日、私の案が全ての取引先で採用されたことを高野課長が伝えに来た。そして課長はもう一つの衝撃も持ち込んだ。
「僕、四月から新事業担当の子会社に飛ばされることになったんだ」
「本当ですか?」
「ああ、社員は今から選考されるらしい。広告関係から飛び出してコピーライティングを考えるとのことだが、どうせ三年で潰れるだろうな」
「そうですか……」
「業績の少ない社員から選ぶらしいからな、ハナから島流しだろう」
「なるほど……」
「ただ、僕としては夏村君に来てほしいんだがな」
「どうしてです?」
「夏村君がいれば、三年どころか夏村君の退職までの間ずっと活躍する会社になるだろうからな」
「いえいえそんなことありませんよ」
「謙遜するな。この会社で謙遜するのは昇進を蹴るのと同じだぞ」
「わかりました」
私はうなずいて業務に戻り、考えた。
――高野課長がいなくなったら私はどうやってこの部署で味方を作れるのだろう。高野課長が私の味方のように振る舞いだしてから、私の周りの味方だったらしい人は皆去っていく。それで高野課長が去れば、味方はいなくなるのではないだろうか……というか、敵だけが残されるのではないか?
私は、気が気でなかった。




