特訓
※ここから拓真に視点を戻します。
「あ・え・い・う・え・お・あ・お、お・あ・お・え・い・う・え・あ。 大きく吸って、せーの」
「あ・え・い・う・え・お・あ・うぉ、♪・#・☆・◯・¥・%・×・お」
いきなり何一得るのと思った人もいるかもしれないけどこれは滑舌の練習中。 声優やアナウンサーなど声を仕事にしている職業なら誰もがやったことがある練習法。
その練習を三浦さん直々に教えてもらうことになった。
他の準所属声優さんは事務所が経営している養成所に通ってもらいながら活動しているらしい。 僕もそうなるのだろうと思っていたのだが、三浦さんいわく他の準所属声優とは僕のランクは違うらしく一日でも早く世に放ちたいらしい。 だから、他の準所属声優には申し訳ないが社長直々に教えてもらっている。 なんて誰にも言えない話なんだけどね。
「もっとハキハキと発音せいや! 『お』が『うぉ』になってたり『お・あ・お・え・い・う・え・あ』なんて何言ってるかわからない。 もう何回めだよ」
期待をしてくれているからなのか元々こういう性格なのかはわからないがさっきから怒鳴られてばっかりだ。 期待して叱ってくれているとは思うが少し気が滅入ってしまいそうだ。
「はいもう一回。 ここでつまずいてたら、まだまだ終わらないぞ。 声優になったからには四月からラジオ以外でも仕事もらって力つけてもらわないとこの先、生きていけないぞ」
息を『大きく吸って』せーの
「あ・え・い・う・え・お・あ・お♪、お・あ・お・え・い・う・え・あ♪」
できた。 三浦さんがやっていた通りではないにしろ発音することはできた。
「文字で今の発音を表現しようとしたら『♪』ってマークが最後に着きそうだったけどとりあえずいうことはできたな。 それじゃあもう一度やって成功できたら次行くぞ」
あ・え・い・う・え・お・あ・お、お・あ・お・え・い・う・え・あ。
あ・え・い・う・え・お・あ・お、お・あ・お・え・い・う・え・あ。
一回でよかったのだが、『♪』をつけずに言えたことが嬉しくて二回も言ってしまった。 嬉しさのあまり赤い帽子に『M』のマークが似合うキャラクターがブロックを叩く時のようなジャンプまでしてしまった。
「嬉しがっているところ悪いが、まだまだ始まりに過ぎないぞ」
三浦さんがいうように発音練習はまだ続きがある。 まだまだ地獄の特訓は始まったばかり。




