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異世界転生で理想の生活を  作者: かおりん@
1章

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エミリアふたたび

 ◆エミリアふたたび


「イソさん、金貨も稼いだことですし、ギルドバンクに口座を開いてみてはどうでしょうか?」


 ギルドバンク? バンクってことは銀行か。


「どこのギルドでもいいのですが、ギルドにお金を預けることでギルドカードに預金として登録されます。引き出しはどこのギルド、たとえば冒険者ギルド以外でもできますし、ギルドカードでの決済もできるようになります。

 露店のようなところではダメですけど、商人ギルドに参加している商会や商店ならたいてい大丈夫です」


 やっぱり銀行だった。クレカっぽい使い方もできるのか。ギルドのメリットは、銀行同様に大金を運用しての投資とかだろうな。


 ま、預けてしまうか。この前のゴブリン集落依頼で報酬もらってから、ちょっとヤバい目付きのヤツがいるんだよな。ギルドに預けてしまえば狙われないだろうし、アマネさんも気が付いて提案して来たのかもね。


「利用しようと思いますけど、お金はここで出せば?」


「いえ、事故があるといけませんので、奥の個室、ふたり以上で対応します」


 金貨以上の預け入れや引き出しの場合は、不正、事故などの防止のためにギルド職員がふたりで対応するとのこと。


 奥の部屋に案内される。


「では預けるお金を出してください」

 金貨は全部でいいだろ。銀貨も、端数残して切りのいいところで預けるか。銅貨は全部持ってていいよな。


 金貨を51枚。銀貨を50枚出した。収納から出したので一瞬だ。お金は万が一があっても困るから、アイテムボックスではなく自前の収納にいれていたのだ。


 アマネさんが悲鳴を上げかけて、ギリギリこらえた。


「な、なんて大金持ち歩いてるんですか!」


 小声で叫ぶという器用なことをするアマネさん。


 続いて入ってきたカンダさんも金貨の枚数を見て息を呑む。


 どうやら非常識な金額のようだ。


 まあ、そうか。日本円なら5千万以上だ。仕事を探しに来たはずの農家の3男がこれだけの金額を持ってたらびっくりするわ。


「どこでこのお金を手に入れたのかは聞きません。ギルドバンク利用時のルールですから」


 またルールだ。今度もダメージを負うのだろうか。


「ルール?」


「はい。不正なお金はギルドバンクに預金できません。脱税。殺人。あるいは詐欺、恐喝。第三者の手を経由してもダメです。その代わり、預金できたお金の入手方法も詮索できません。詮索すると死にます」


「え?」


「死にます」


 真剣な表情だった。ウソではないのだろう。


「預金できないお金だった場合には詮索できます。詮索というか追求ですね。イソさん、本当に全額預金してかまいませんか?」


 アマネさんは真剣だ。秘密はあるが、やましいことがあるわけではない。どっかの誰かにもらった金だ。犯罪ではないだろう。


 オレが頷くと、アマネさんは言葉を続けた。


「では口座開設にあたって遺言はありますか? 流行りは神殿に寄付です」


 冒険者らしいといえば冒険者らしいのか。死んだときに口座の遺産をどうするか。


 神殿に寄付する? バカらしい。


「じゃあ、オレが死んだらアマネさんにあげます」


「えっ?」


「アマネさんにあげます」


 知らない誰かのために寄付するくらいなら、お世話になっているひとにあげた方がいいだろ。


「み、未亡人になってからのことまで心配してくれるなんて!」


 感動で涙目になってるアマネさん。


「後日、遺言の取り消しとか、上書きとかできるんですよね?」


「できるが…」


 おまえ、ここでそれを言い出すのか、というカンダさんの目が厳しい。


「アマネさんも乗り換える気満々でしたので、フラレたら書き換えようかと」


 違う意味で涙目になっているアマネさん。


「ひとまず口座の遺言はアマネさんへ渡すでお願いします」


 カンダさんがうなずいた。


 渡したお金とギルドカードを持って二人が立ち去る。


 しばらくしてアマネさんだけがギルドカードを持って戻ってきた。カンダさんは業務に戻ったのだろう。


「残高を確認してください」


 ギルドカードを見る。名前と職業、ランクの他に預金額とあり、金貨51、銀貨50となっていた。よく見ると、例のホロウィンドウで討伐履歴も表示され、ゴブリン集落の調査と討伐の2件が登録されていた。


 なお預金の残高は本人か、本人が許可しない限り他人には見えないようになってるそうだ。さすがは魔法のカードだよな。


「あの、遺言、本当によかったの?」


「ああ。大丈夫ですよ。アマネさんがひとを雇ってオレを殺したりした場合は、ルールのせいでアマネさんにはお金が渡らないんでしょ?」


「…よくわかったわね。あの遺言があると、私は悪意をもって君に接することができない。そのせいで君が死んで、遺言が実行された瞬間、私も死ぬわ」


 すげぇな。ギルドバンクのルール。


「このルールのために自分の後継者なんかに遺言を設定すると、後継者は遺言の主に対して暗殺とかができなくなるの。お金だけが財産ではないとはいえ、権力者には安全確保のためのルールでもあるみたいね」


 暗殺防止か。その発想はなかった。


「オレは暗殺を恐れたわけではないですよ」


「わかってるけど。ルールの詳しい内容を知ってるようにも思えなかったし。私も文句はないわ。

 どういうわけか懐かれた新人冒険者君が実はお金持ちで死んだら遺産を自分に残してくれるし、無事に生き延びれば立派な高ランク冒険者で旦那様でしょ?

 私に損なんてひとつもないじゃない?」


 ちょっとうっとりした目でアマネさん。


「というか。結婚を前提としたお付き合いとか、アマネさんは良かったんですか? その、オレみたいなので」


「男は甲斐性よ」


 断言するアマネさん。冒険者時代に苦労してそうだな、このひと。この年でそう言い切っちゃうところが。


「伊達に男で3桁失敗してないわ」


 3桁失敗してんのか。それだけ失敗してて清いままとか、ある意味すげぇな。


「失敗にカウントされないようがんばります」


 オレの宣言にアマネさんがにっこり笑う。これは営業スマイルではないな。


「じゃあ、戻りましょうか。金貨1枚の報酬で、ちょっと目の色変えてたひとが何人かいたけど、ギルドバンクに預金したのがわかれば諦めるでしょうし」


 やっぱりそっちが狙いだったのね。オレの安全を考えてくれたわけだ。思ったよりすごい金額が出てきただけで。


「あと、今後、報酬はギルドバンクへの振り込みになるから、素材の買取とかもやりやすくなるかも。狙っていくんでしょ? オークの素材とか。

 アイテムボックス持ちじゃないと狙えない素材だし、裏で素材を出してくれれば査定もやりやすいしね」


 なるほど。オークをまるっと持ち込む場合、買取金額も高くなる。そこからアイテムボックスに足が付く可能性もあるのか。


「カンダさんは知ってるから、査定は大丈夫ですよ」


 にっこりと今度は営業スマイルで笑うアマネさんだった。


 ◇◇◇


 通常依頼の後に緊急依頼だったので、すっかり夜は更けている。


 それに加えて、ギルドでの女の子の騒ぎにギルドバンクでのいろいろ。


 それなりの時間ってことだね。


 ちょっと早いけどエミリアのところへ行ってみようか。なんなら待っててもいいな。


 隠密(ハイディング)しながら娼婦通りへ足早に。


「銀貨1枚も取ってるのに客のいうことが聞けないのか!」


「痛いです! 乱暴するのは許してません!」


「俺はそういうプレイが好きなんだよっ!」


「苦しいっ! 首絞めたらダメです…」


 エミリアのテントだ。んー迫真。これ、そういうプレイだとすれば邪魔するのはマズいよな。商売の邪魔だ。


 鑑定。ヤベェ、エミリア半殺しになってる。


 テントに突入、半裸の男の足首持って引きずり出す。


 ついでに、目に付いた男の服も持ってテントの外に出た。隠密(ハイディング)で物陰まで男を連れて行き、銀貨を1枚握らせる。


「お客さん。商品を傷物にされたら困りますよ。明日から商売できなくなるでしょう?」


「てめぇ、いいところで邪魔しやがって!」


 男の頭を握る。メシメシと男の頭蓋の軋む音がする。そこで最近鍛えた「殺意」だ。きっちり男の目を見つめて。


「娼婦通りに来るなとは言わない。次にエミリアを買いに来たら殺す。エミリアを脅しても殺す。このことを広めても殺す。わかったら声を出さずに2回うなずけ」


 男はコクコクとうなずいた。しまった殺意が濃すぎたか。男の座ってるところに染みができてしまっている。まあ、これくらいはサービスだろう。身体浄化(クリーン)を使ってやった。


 男は身支度を整えて、逃げ去る寸前、「おぼえてやっ…」叫び切る前に、もう一度オレは掴まえた。


「そういうとこだぞ」


 再び濃密な殺意に晒されて、男はもう一度失禁することになる。さっき出したばかりなのに、まだ失禁するだけ残っていたのだなぁ、と妙なところに関心してしまった。もう一度身体浄化(クリーン)。男は腰が抜けてしまったようで、立ち上がることもできないようだ。


 これ以上は時間のムダだよな。


 オレはエミリアのところへ急ぐことにした。


「よっ。空いてる?」


 テントをまくりあげると、服は着直したものの、顔や首に痛々しい痣のついているエミリア。必死に笑おうとするが、痛みの方が上回るのだろう。


「ひどい客がいたもんだねぇ」


「いつもは、ああいうお客さんはロリソン様の使いが見張っていてお客様になることないです。でも今日は…」


 ポロポロと涙をこぼすエミリア。


「泣いてると綺麗な顔が台無しだよなぁ。ちょっと待っててね」


 エミリアに治療(キュア)をかけていく。顔の痣、首の痣、手足の打撲痕。見える範囲の傷を治して行った。


「痛くないです。お客様、治してくれたですか?」


 うなずくと「ちょっと待ってて欲しいです」と言ってペンダントを首にかけ、売上の革袋を持ってテントの外に出て行った。


 すぐに空の革袋を持って戻ってきたところをみるとロリソン商会の使いは近くにいたのだろう。近くにいたのに、あんな乱暴を見逃していた?


 ちょっときな臭いかなぁ。


「銀貨1枚先払いです」


 定型文。


「あの、助けてくれたので、本当はお金いらないです。前のときもお願いして来てもらったですから、お金いらなかったです。でも、ロリソン様から命じられているので、お客様からは必ず銀貨1枚先払いをいただかないとならないです」


 ああ、奴隷への命令ってことなのか。奴隷は主人に逆らえない。こ(・)う(・)い(・)う(・)縛(・)り(・)もできるってことか。


「全部脱ぐです?」


「ああ、他にもケガがないか確かめないとならないから。今日は最初に全部見せてもらう」


 毎回全部見るわけだが。


 羞恥に頬を染めながら脱ぎ始めるエミリア。前、後とじっくりと触診していく。あの男がどんなプレイを強要したのかはわからないが、かなり痛がっていたのは間違いないし、見えない打撲や脱臼の可能性もある。


 鑑定の結果、現時点で体力は全快しているが、顔を殴られたのだ。頭を揺らされたということでもある。


 触っていくと、やはり何箇所か痛がるところがあったので。治療(キュア)で回復させる。上位の聖魔法が使えれば、こんなケガなど一発なんだろうけど、治療(キュア)だと範囲が狭い。全身を一発でとはいかない。


 腹にもひどい痣があった。女の子の腹を殴るとか、人間か、あの男。もっと痛めつければよかった。物理的には頭を握った以外は何もしてないからな。精神的にはかなり追い詰めたと思うけど。


「お客様、ありがとうございます。もうどこも痛くないです。お客様、神官様ですか?」


「いや、神官じゃないけど、神官の天啓(スキル)は使えるってだけだな」


「すごいです! すごいです! そんなお客様、この辺りでは見たことないです。もっと普通の娼館行くです」


 普通の娼館に断られたとは言いにくい。


「普通の娼館よりエミリアの方がいいかな。朝ごはんもおいしいしね」


 エミリアは真っ赤になって俯いてしまった。


「あれはお屋敷にいたとき、コックのひとに習ったのを中途半端に覚えているだけです。それに材料がロリソン様の食べるような高級な材料は買えないので、味は落ちるです」


 そらまあ、金に飽かせて集めた食材を一流の調理人が料理すれば、極上の一品にはなるんだろうよ。でも、毎日食いたいのはそういう料理じゃねぇんだよな。そうだなぁ。金色の朝焼け亭の料理みたいなもんかなぁ。


 前世のコンビニ弁当がおふくろの味になりつつあったオレとしては、自分のために手間のかかった手料理は嬉しい。


 宿の宿泊客のための料理よりも、エミリアの、自分とオレのために作られた料理の方が嬉しく感じられるわけだ。


 とか考えていると、エミリアが全裸のままくっついてきた。


「もうどこも痛くないです。なんだかちからも漲(みなぎ)ってる感じです。しないですか?」


 するか、しないか?


 するに決まってるでしょ!


 ◇◇◇


 今日は体力ステータスを回復してからいたしたので、エミリアとふたりでがんばった。もう明け方近くまでがんばって、ふたりとも汗とかいろんなものでベタベタになった。


「身体浄化(クリーン)」


 ふたり分の身体浄化(クリーン)を使う。ついでに寝床も身体浄化(クリーン)。これで元通りというか使用前より綺麗になってる。


「お客様、すごいです。生活魔法まで使えるなんて」


「イソ」


「イソ?」


「オレの名前」


「イソ、さま?」


 上目遣いのエミリア。喜びで頬を上気させている。


「寝る?」


「少し、お話、したいです」


 恥じらうように、怯えるように。エミリアはオレを見つめる。


 そんなことを言い出すってことは、この仕事の最中はもちろん会話なんてないし、普段の生活でも周囲の娼婦との軽い会話だけなんだろう。


 どこかたどたどしいエミリアの話し方は、そういう極端な環境のせいだと思われる。


 とはいえ。


 何を話したものか。オレもこっちの世界に来て、それほど時間が経っているわけではない。常識的な話など何も知らないしな。


 冒険者の話でいいか。冒険者のいろいろをエミリアに話してやる。


「おもしろそう、です」


「おもしろそう?」


「イソ様と冒険者、やってみたいです」


 オレの話のどこにおもしろ要素があっただろうか。ステータスに関しては伏せて話したし、基本宿とギルド、森にしか行かない生活だ。あまり変化もないし、心躍る戦いもない。お仕事なので、そういうものなのだ。


「なんで?」


 エミリアがかぁーっと赤くなってしまった。


「イソ様、いじわるです」


 これはアレだ。冒険者になりたいわけじゃないわ。オレと一緒にいたいとかそういうやつだ。あれ? モテ期来た?


「エミリアのステータス、見せてもらっていい?」


「すてーたす?」


 そういう教育もなしか。まあ性奴隷にはいらんか。


「天啓(スキル)を使ってもいい?」


「イソ様ならいいです」


 じゃあ失礼して。


 エミリアのステータスは。


名前:エミリア(奴隷)

年齢:18

Lv:1

体力:13

魔力:11

筋力:11

知恵:12

敏捷:13

器用:12

幸運:12

スキル:

 攻性スキル無効

魔法:


体術:


職業:英雄(未使用)

・英雄Lv1

体力:4

魔力:4

筋力:4

知恵:4

敏捷:4

器用:4

幸運:4


 Lv1なのはいいとして。


 なんだよ、職業の「英雄」って。なんで娼婦の職業が英雄なんだよ。あーこれ天職っぽいな。


 そんで。これか。「攻性スキル無効」。これのせいでロリソンの天啓(スキル)が効かなかったんだな。英雄の天啓(スキル)っぽいな。そら成長を止めるなんてのは、攻性と判断されても仕方ないか。実際、治療(キュア)は効いたし。


 ただ、どこまで「攻性」と判断されるのか微妙なところだよな。


 ちょっとなんともだけど、これ前衛職としてイケるのでは?


 でも奴隷なんだよな。エミリアの首輪に触れてみる。


『天啓(スキル):奴隷支配を閃きました。

 使役項目設定を覚えました。

 奴隷化を覚えました。

 奴隷譲渡を覚えました。

 奴隷解放を覚えました』


 あー奴隷化も天啓(スキル)なのか。世の奴隷商はこの天啓(スキル)を持ってるわけね。


 奴隷解放を鑑定する。


【奴隷解放】

 自分が契約した奴隷、または主を失った奴隷を奴隷状態から解放する。

 他の奴隷契約が有効な場合、解放できない。


 そらそうだよな。そんな都合よくいかないだろ。


「なあ、エミリア。本当にオレと冒険者になりたいか? 死ぬかも知れないぞ?」


「イソ様がいるなら死なないです。

 イソ様が死んだら、わたしも死にます。

 イソ様といっしょがいいです」


 愛が重い。ここまで懐かれるようなことはしてないと思うんだがなぁ。


 ただまあ。


 美人・巨乳・奴隷。性格もスれてない。純真、素朴。明るくてポジティブ。


 冒険のパートナーには申し分ないか。


「じゃあエミリア。オレは行くよ」


「また来るです? 今日も来るです? わたし待ってます。最後のお客様で来て欲しいです」


「また来る、けど。最後のお客様はどうかな」


「…そうですか」


 ちょっとしょんぼりするエミリア。感情が素直に出るのもおもしろい。


「でも、違う意味で最後のお客様になるかもね」


「どういうことです?」


「それは後のお楽しみで」


 そう言ってオレが笑うと、釣られるようにエミリアも笑顔になった。


 おっともう夜が明けるな。徹夜は遠慮したい。エミリアの営業開始も午後からだから、午前中に手配しないとなぁ。


 その後、宿に帰って仮眠を取ることにする。


 おかみさんは朝食の仕込みに入ってたところだったので、商会が動き出す時間に起こしてくれるようにお願いして、ひとまずベッドで横になった。


 多忙な一日だった。予定通りなら、今日も忙しい一日になるけどな!


 ◇◇◇


「エミリアを譲っていただきたい」


 オレはロリソン商会に来ていた。


 アポ無しで会うには難しいかと思ったが、すんなりと通された。


 案外冒険者という立場も侮れないようで、とんでもない儲け話を持ってくることもあるとか。たとえば鉱床を見つけたので権利を買わないか、とか。


 冒険者じゃ鉱床見つけても開発できないからな。そういうのは商会に持って行かないとどうしようもない。


「たまにあなたのようなひとが現れるのですが。たいていは交渉にもなりません」


 目の前のロリソンというオヤジは、ちょっとオヤジというには失礼なナイスミドルで、銀髪碧眼でスラリとしてスタイルもよく、目鼻立ちも整っている。そのうえ金持ちとなれば、なんかモテそうな感じ。


「私としては、エミリアを手放すのは問題ありません。

 エミリアは金貨10枚で購入しました。その後、8年間面倒を見てきましたので、それなりに費用がかかっています。維持費が年に金貨5枚と考えて、金貨50枚。

 これからエミリアが稼ぐ金額は…まあ置いておきましょう。

 払えますか? あなたに」


 維持費って。まあ奴隷は道具だから維持費か。近々の2年間は娼婦通りで暮らしてるんだから、そんなにかかってないと思うけど、その前の6年間、贅沢させていたから均して年金貨5枚って言われるとウソじゃないのかな、って思ってしまう。


 ギルド職員の看板窓口娘の年収が金貨4枚なのだ。


 ここからは交渉かぁ。


 オレはポーチをロリソンの前に置いた。


「どういうことですかな?」


「あんたもはっきり値段を示してくれたし、エミリアがこれから稼ぐだろう金額のことは話の外にしておいてくれたから、オレも正直に手札を晒すよ。

 それはアイテムボックス。枠は30。金貨50枚には不足かい?」


 ロリソンは目を見開いた。商人の憧れのはずだ。


 もちろんロリソンくらいの商人なら、買うことはできるだろう。ア(・)イ(・)テ(・)ム(・)ボ(・)ッ(・)ク(・)ス(・)が(・)あ(・)れ(・)ば(・)。


 通常は、アイテムボックスは見つけられると高ランク冒険者に買われてしまうし、同様にオークションに出されれば貴族や大商人が資金に物を言わせて落札してしまう。


 ロリソンはアルスターでは大商人だが、王都の本物の大商人の資金力には遠く及ばないはずだ。想像ね。アマネさんの話からイメージを飛躍させてみました。金額が高価なだけの高級品なら、出されたとき、あんなに驚かないと思うんだよ。「知ってはいても見たことはない」珍品じゃないと。


 実際、アルスターの他の冒険者がアイテムボックスを持ってるとは聞かなかったし。


「冒険者の生命線とも聞きますが、それを手放してまでエミリアが欲しい、と」


「欲しいね」


 即答する。だって職業:英雄だよ? 前衛、後衛どっち寄りかはわからないけど、パートナーとして考えるなら絶対欲しいでしょ。


「エミリアをどうするつもりですか?」


「もちろん性奴隷だな。あとメイドの技能があるんだろ? 身の回りの世話もしてもらおうと思ってる」


 ウソは言ってない。どっちもオレの目的だからな!


 でもアイテムボックスはダメ押ししておくか。


「そのアイテムボックスは『本物』だからな。時間管理機能付きだ。枠ごとに時間停止と通常進行を設定できる。運搬中に熟成させる商品もあるんだろ?

 そういう商品を購入しても問題ないし、わかってると思うけど、アイテムボックスの中なら運搬中の商品の扱いに悩まなくても済む」


 さっき詳細鑑定するまで知らなかったけど、アイテムボックスの枠には通常通り時間が流れるように設定できる。標準では時間停止だ。


 他にも商人にとってのアイテムボックスの利点は数え上げれば切りがない。そもそもオレも空間魔法で商人やろうと思ってたくらいだから、アイディアもたくさんある。


「わかりました。エミリアをお譲りします」


 元々エミリアはロリソンにとってお荷物だったのだ。


 そのお荷物がアイテムボックスという金のなる木と交換なら、商人ならどちらを選択するべきかは考えるまでもない。


 よっしゃ! エミリア、GETだぜっ!!


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