モルガンの森
◆モルガンの森
ジジの街でリハビリを行っていた。
実際にはジジのダンジョンだけれども。
ジジのダンジョン周回をして、ドロップ品を集めまくる。
換金してもいいけど、お金は持ってるし、ラージャの遺産にもなるから、ドロップ品は残しておく。
高級美容ローションなんかは、泡の国ごっこで使うしな!
まあ、高級美容ローションで泡の国ごっこをすると、オレまでピカピカになるのがちょっとアレだが。
ピカピカになるのは奴隷たちだけで十分だ。
なお、泡の国ごっこができるということからもわかると思うが、ジジの街にも公衆浴場はある。
そんな折り、ジジの街の冒険者ギルドの受付嬢であるフィオナさんが、気になる話を持って来た。
「ランクBの冒険者にする話でもないのですが。
ジジの近郊にモルガンの森という場所がありまして。
ランクGからDまでの初級冒険者向けの場所として有名なのですが、最近モンスターの動きがおかしいようでして」
「まさか、暴走?」
「いえ、そこまでの規模ではなさそうなのです。
ただジジの街の冒険者はランクGからD帯がメインでして、調査となるともう少し高ランクの冒険者を派遣したいところなのですが」
「ちょうどいいのがいないと」
「そうなんですよねえ…」
はぁ、とフィオナさんがため息。
「オレが行ってきましょうか?」
「ええ!? 銀貨10枚程度しか出せませんよ?」
確かに安い依頼だ。ランクE程度の依頼だろう。
そのわりには危険度が高いとギルドは見ていて、掲示板に出せていないらしい。
「まあ、金には困ってませんし。
ダンジョン周回も飽きてきたので森の散策は都合がいいですよ」
「そうおっしゃるなら、こちらとしては願ってもありませんけど」
「なによりあなたの笑顔のためならば…」
そこまで言ったところで、エミリアに耳を引っ張られた。
最近、積極性が増して来たように思われる。
「金額は安いですけど、実績にはなりますからね。
ではお願いします」
フィオナさんは苦笑しながら依頼の受理処理をしてくれた。
◇◇◇
「森だー!」
ラージャが元気だ。
ダークエルフだからだろうか? 森が好きらしい。
モルガンの森はジジの街から徒歩一時間ほど。
トウガラシ号なら10分も掛からない。
もちろん、道は無視して平原を突っ切っての話だ。
王都に招かれて、トウガラシ号は有名になったので、どこでも遠慮なく出せるようになったのは嬉しい誤算だ。まあ、アルスターではわりと遠慮なく使ってたけど、もうどこの街でもトウガラシ号は噂だからな。
もちろん、オレも時の人だが、前世のように写真が出回るわけでなし、街では大人しくしていれば注目されることは少ない。
「さて、調査といってもな。考えてみれば平時を知らないから、調査のしようもなかったわ」
「変な気配を探ればいいのです?」
「魔物が密集してるようなところを探ればいいんじゃないの?」
どちらも正解だし、オレの鑑定でも、ある程度の異常は探れる。
「少し気長に考えよう。野営セットは持って来てるし、仲間しかいないから、周りに遠慮する必要はない。野営になったらエミリアの家に泊ればいいだろ」
今回はリルルが一緒とかいうわけではないので、なんの遠慮もいらない。
オレの能力のしばりもないしな。
遠慮なく鑑定と空間把握を森全体に展開する。
「確かに魔物の密度が高い気がするな」
平時を知らんから断言はできないが。
全体に魔物が多い。
これだと採取で来たランクG冒険者が魔物に遭遇する確率はかなり高くなるだろう。
まあ、遭遇するのは当然として、その時にあたる数が多いということだ。
ランクGだと苦労しそうな数の魔物が森のあちこちにみられる。
これだけなら、魔物の間引きがうまく行ってないだけ、ということは言えると思うが、フィオナさんの話だと、そういう感じでもない。
冒険者は森に入ってる。でも、魔物の数が増えている、これが異変なのだろう。
普通なら暴走を疑うところだが。
暴走というほどの魔物の数ではないし、縄張り移動のような魔物の移動も発生してないように思える。
「原因はわからないけど、とりあえず間引きをして行こうか」
「はいなのです」
「わかったよ!」
このレベル帯にびびるオレたちではない。
見敵必殺で、森を駆け抜ける。
シャイバスのダンジョン周回でレベルも80まで上がってるし、職業レベルも上がってる。
正直、このレベル帯でダメージを食らう方が難しくなってる。
鎧もランクSだしな。そういう点では色竜さまさまなのだが、戦いたくはない。勝てるけど。勝てるけど!
武器は消耗するから、普段使いはランクCのミスリル製にしてるけど、鎧は何があるのかわからないので、ランクSの青竜の鱗鎧を普段使いしている。
こちらも消耗品ではあるが、性能は破格だし、素材も収納に残っているので、メンテナンスにも問題はない。
防御に出し惜しみして、怪我でもしたら目も当てられないからな。
いや、治癒とかあるけども。
痛い思いはしたくないということだ。
ランクSの防具となると、標準でも1/128の減衰だ。
もはやゴブリンに殴られたところで、1ダメージも食らわない。
青竜の防具は、さらに付与まであるからな。物理防御+50%とか破格だろ。
そういや、金獅子の皮の在庫がなくなってたな。今度金獅子狩に行くか。
そんなことを考えながら、魔物を間引いて行く。
スライム、コボルド、ゴブリン、ファングラビット、ワイルドビーなどなど。
ランクG帯では珍しくない魔物たちだが、確かに数は多い。
魔力溜でもできてるのだろうか。
鑑定してみるが、それらしいものは引っ掛からない。
ん? なんだこの反応。
「どうしたのです?」
エミリアがオレの反応に気が付く。
「いや、なんか見つけたかも」
モルガンの森の奥。低ランク冒険者は踏み込まないような奥の方に、濃い魔力反応がある。
この反応は覚えがあるなー。
「……ダンジョンかな」
「また見つけたですか?」
「引きが強すぎない?」
「そうは言われてもねえ」
行ってみないとわからないが、この魔力反応は、まだ若いダンジョンのものではないだろうか。
シャイバスのダンジョンほどの強力な魔力反応ではないから、低ランクダンジョンかもしれないけどな。
行ってみることにする。
「ダンジョンだねぇ」
「ダンジョンなのです」
目の前には、立派なダンジョンの入り口ができていた。
入らんわけにもいかないかなあ。
報告だけして、ダンジョン調査は別のひとに任せるのもひとつの手ではあるけれども。
「ま、高ランクダンジョンだったら引き返すということで。
低ランクダンジョンなら、制覇してしまおう。
ドロップ品によっては美味しいダンジョンかも知れないからな」
低ランクダンジョンの需要は高い。
ドロップ品が美味しくなくても、低ランク冒険者の修行の場として求められるのだ。
とくにランクGが潜れるダンジョンとなると貴重だ。
スミストルは、そういう意味でもランクGからSまで満遍なく周回できるので、稀有な例であると言える。
まあ、モルガンの森自体が低ランクなんだし、いきなり高ランクダンジョンができてるってことはないでしょ。
◇◇◇
立派な石造りの入口を抜けると、そこには見覚えのある光景が広がっていた。
「……草原?」
ダンジョンの中だというのに、空は青く、柔らかな日差しが降り注いでいる。
見渡す限りの草原。
遠くには木々が生えていて、風が吹くたびに草が波のように揺れている。
「外の森とは全然違うのです」
エミリアが周囲を見回す。
「ダンジョンだからな。内部に独自の環境を作っているんだろう」
オレは鑑定を使いながら周囲を確認する。
まず目についたのはスライムだった。
草むらをゆっくり移動している。
「スライム。ランクG」
鑑定結果は予想通りだった。
少し離れたところにはコボルド。
さらにファングラビット。
空を飛んでいるのはワイルドビー。
「本当に初心者向けだねえ」
ラージャが二本の剣を抜いた。
「ボクが先に行っていい?」
「もちろん。ただし無理はするなよ」
「わかってる!」
ラージャが駆け出した。
最初の相手はコボルドだった。
コボルドが棍棒を振り上げる。
しかし、その動きはラージャには遅すぎる。
身体を半歩ずらして攻撃をかわし、そのまま二本の剣を交差させる。
コボルドは倒れた。
「次!」
続いてファングラビット。
こちらは戦闘力よりも逃げ足が厄介だ。
だが、ラージャは森で鍛えられた身のこなしを活かし、草原を走りながら追い詰めていく。
「捕まえた!」
ファングラビットを仕留める。
魔物の身体が消え、肉だけが残った。
「ウサギ肉か」
「食料にするのです」
エミリアが拾い上げる。
「それにしても、ドロップがずいぶん実用的ですね」
「モルガンのダンジョンは生活に関係するものが多いみたいだな」
スライムからは水。
コボルドからは毛皮。
ファングラビットからは肉。
ワイルドビーからは蜂蜜と蜜蝋。
初心者が冒険しながら生活資源を集められる。
そんな設計なのだろう。
ジジのダンジョンと似た構成なのかも知れない。
しばらく進むと、ボス部屋を発見した。
迷わず中にはいる。
「……来るのです」
エミリアが盾を構えた。
草むらから、一匹の巨大なウサギが飛び出した。
頭には一本の角。
「ホーンラビット!」
鑑定する。
ランクF。
この階層のボスだ。
「オレは手を出さない。二人でやってみろ」
「わかりました」
「任せて!」
ラージャが正面から突っ込む。
ホーンラビットが角を向けて突進してくる。
その速度は通常のファングラビットとは比較にならない。
ラージャが横へ跳ぶ。
その瞬間、エミリアが盾を構えた。
「そこです!」
盾で角を受け流す。
ホーンラビットの身体が大きくよろめいた。
「もらった!」
ラージャの二本の剣が閃く。
ホーンラビットが倒れた。
「角と肉ですね」
「一階のボスとしては悪くないな」
オレたちはそのまま二階への階段を探した。
◇◇◇
二階は森林だった。
一階よりも薄暗い。
木々が密集し、ところどころに木漏れ日が差し込んでいる。
「ゴブリンがいます」
エミリアが指差す。
その数は多い。
だが、ランクG。
ラージャが軽々と倒していく。
「キラービーもいます!」
今度は蜂だ。
ワイルドビーよりも明らかに大きく、鋭い毒針を持っている。
オレは風魔法を使った。
「雷撃」
雷撃が走り、キラービーをまとめて撃ち落とす。
魔物が消え、蜂蜜と蜂毒が残る。
「毒まで落とすのか」
「薬の材料になりそうなのです」
森の奥にはフォレストラットもいた。
そして、地面から不気味な植物が顔を出している。
「マンドレイクです」
エミリアが慎重に近づく。
「不用意に抜くなよ」
「はい」
マンドレイクは薬草素材を落とした。
ここまで来ると、冒険者だけでなく薬師にも人気が出そうだ。
やがて、ボス部屋に到達する。
巨大な蜂の羽音が響き渡った。
ブゥゥゥン――。
「……来たのです」
木々の向こうから巨大な蜂が現れた。
キングビー。
二階のボスだ。
ランクE。
「ラージャ、エミリア。いけるか?」
「もちろん!」
「はい!」
キングビーが突進する。
ラージャが前へ出ようとした瞬間、エミリアが先に踏み込んだ。
盾で蜂の突進を受け止める。
衝撃で地面が少し沈んだ。
「ぐっ……!」
「エミリア!」
「大丈夫です!」
エミリアがキングビーを押し返す。
その隙にラージャが背後へ回った。
二本の剣が羽を切り裂く。
飛行能力を失ったキングビーが地面に落ちる。
「今です!」
エミリアの剣が振り下ろされた。
キングビーが消える。
「高級蜂蜜だ!」
ラージャが嬉しそうに拾った。
「蜂蜜好きなのか?」
「甘いものは好き!」
……なるほど。
◇◇◇
三階は、さらに深い森林だった。
ここから敵のランクも上がる。
グリーンウルフ。
ウッドゴーレム。
ポイズンフロッグ。
そしてドライアド。
「ここからは少し気をつけよう」
オレが言う。
「ランクDのボスもいるからな」
グリーンウルフの群れが襲ってくる。
今度はラージャだけではなく、エミリアも前に出た。
グリーンウルフがエミリアへ飛びかかる。
盾で受け止める。
その横からラージャが斬り込む。
一匹。
二匹。
三匹。
あっという間に群れが消えていく。
「かなり息が合ってきたな」
「エミリアが受けてくれるから戦いやすいよ」
「私もラージャが側面を取ってくれるので助かるのです」
二人の連携は確実に良くなっていた。
さらに進むとウッドゴーレムが現れた。
「これは木材になるのか」
倒した後に残ったのは、かなり質の良い木材だった。
「建築にも使えそうですね」
「ダンジョン産の木材なら、かなり需要がありそうだ」
そして森の奥。
ボス部屋だ。かなら広い。
巨大な樹木が見えてきた。
「……あれは?」
木が動いた。
枝が腕のように伸びる。
巨大な樹木型モンスター。
「エルダー・トレント」
ランクD。
三階のボスだ。
枝が一斉に襲ってくる。
ラージャが避ける。
エミリアが盾で受ける。
「硬いのです!」
エミリアが叫ぶ。
「なら、根元を狙え!」
ラージャが地面を走る。
巨大な根が追いかける。
それを紙一重でかわし、根元へ斬り込んだ。
エミリアも正面から攻撃する。
二人の攻撃によって樹皮が剥がれていく。
「もう少しなのです!」
最後はエミリアの一撃だった。
巨大な幹が大きく揺れ、そのまま崩れ落ちた。
残ったのは高級木材と樹液。
「これはすごいな」
オレも思わず感心した。
◇◇◇
四階。
扉を開けた瞬間、オレたちは目を疑った。
「……畑?」
そこには広大な農地が広がっていた。
整然と並んだ畝。
青々と育った作物。
遠くには小さな水路まである。
「ダンジョンの中に畑を作る意味がわからない……」
しかし、魔物はいた。
泥の塊のようなマッドスライム。
地面から飛び出してくるモグラモンスター。
空を走るように飛ぶグラスバード。
そして、農具を持ったゴブリン。
「ハーベストゴブリン?」
鑑定するとランクDだった。
しかも、倒すと野菜や穀物を落とす。
「……食料生産ダンジョン?」
オレは思わず呟いた。
この階層だけで、街の農業に役立つ素材が大量に手に入る。
マッドスライムの肥料素材。
モグラモンスターの土壌改良素材。
グラスバードの肉と羽根。
ハーベストゴブリンの野菜と穀物。
「これは価値があるのです」
エミリアも驚いている。
「でも、冒険者ギルドがこの価値を知ったら大変なことになりそう」
「だからこそ、まだ知られていなかったんだろうな」
そして畑の中央。堂々とボス部屋が鎮座している。
ボス部屋に入ると、巨大な植物が生えていた。
その根元には、無数の薬草。
「グレート・マンドレイク……」
ランクC。
四階のボスだった。
植物とは思えないほど巨大な根が地面から飛び出す。
「ラージャ!」
「わかってる!」
ラージャが走る。
根が地面を突き破る。
ラージャは跳躍してかわした。
しかし、その先にも根が待ち構えている。
「危ない!」
エミリアが盾を構え、ラージャを守った。
巨大な根が盾に叩きつけられる。
「ぐっ……!」
「エミリア!」
「大丈夫です!」
エミリアが根を押さえている間に、ラージャが懐へ入った。
だが、根元は硬い。
「これじゃ斬れない!」
「オレが補助する!」
火炎魔法を放つ。
炎が根元を包む。
そこへラージャが斬り込んだ。
そして最後は――。
エミリアの剣が巨大な根を断ち切った。
グレート・マンドレイクが消える。
残されたのは、高級薬草と大量の薬草の種だった。
「……これだけの種があれば、畑を作れそうですね」
「モルガンのダンジョンが農業のために存在してるみたいだ」
◇◇◇
そして五階。
階段を降りた先にあったのは、巨大な神殿だった。
今までの階層とは明らかに違う。
石造りの柱。
壁に刻まれた古い文様。
中央には大きな祭壇。
「神殿……」
ラージャが小さく呟く。
オレも周囲を見回した。
ここには普通の魔物がいない。
「静かすぎる」
その瞬間。
神殿全体が震えた。
祭壇の奥から巨大な光が立ち上がる。
木々。
草。
花。
そして大量の精霊。
それらがひとつに集まっていく。
巨大な人型になった。
「フォレスト・エレメンタル……」
鑑定結果はランクC。
五階のボス。
そして、このダンジョンの最深部を守る存在だった。
フォレスト・エレメンタルが腕を振る。
地面から巨大な木の根が飛び出した。
「来るのです!」
エミリアが盾を構える。
ラージャが横へ回る。
オレは後方から魔法を放った。
だが、フォレスト・エレメンタルは炎を受けても動じない。
「普通の火では効きにくいか!」
自然そのものを具現化したような魔物。
ならば――。
「ラージャ、エミリア。無理に倒そうとするな!」
「え?」
「まず動きを見ろ!」
二人が攻撃をかわしながら戦う。
フォレスト・エレメンタルは強い。
だが、動きそのものは単調だった。
巨大な身体ゆえに、方向転換に時間がかかる。
エミリアが正面から引きつける。
ラージャが背後へ回る。
オレは二人の動きを見ながら魔法を撃つ。
少しずつ。
本当に少しずつ。
フォレスト・エレメンタルの動きが鈍っていく。
「いまです!」
エミリアが叫ぶ。
ラージャが一気に懐へ飛び込む。
そしてエミリアも正面から突進する。
二人の攻撃が同時に叩き込まれた。
巨大な身体に亀裂が走る。
光が漏れ出す。
そして――。
フォレスト・エレメンタルは、静かに消滅した。
神殿に静寂が戻る。
「……終わった?」
ラージャが剣を下ろす。
「そのようだな」
祭壇の上に、一本の枝が現れていた。
精霊樹の枝。
そして、淡く光る魔力草。
「これが最終ボスのドロップか」
オレは拾い上げた。
その瞬間。
神殿の奥で、何かが光った。
「……ん?」
壁に刻まれていた古い文字が浮かび上がる。
オレは鑑定を使った。
だが――。
「読めない」
「イソ君にも読めない文字があるんですね」
「古代文字かもしれないな」
すると、神殿全体から淡い光が溢れ始めた。
ダンジョンが崩れるわけではない。
むしろ逆だった。
これまで少し濁っていた空気が、急に澄み渡っていく。
まるで、何かが正常な状態に戻ったようだった。
「……もしかして」
オレは気づいた。
モルガンの森で感じていた、あの異常な魔力反応。
魔物の数が増えていた原因。
このダンジョンそのものが、何らかの理由で不安定になっていたのではないだろうか。
そして今。
最深部のフォレスト・エレメンタルを倒したことで、その異常が収まった。
「フィオナさんに報告しないとな」
「ダンジョンを攻略したことをですか?」
「それもだけど……」
オレは神殿の奥を見つめた。
「モルガンの森で起きていた異常についてだ」
そのとき。
神殿の奥から、小さな音が聞こえた。
カラン――。
何かが転がる音。
「……まだ何かある?」
ラージャが剣を構える。
エミリアも盾を構えた。
オレたちは慎重に神殿の奥へ進んだ。
そこにあったのは――。
一本の古びた杖だった。
ただの杖ではない。
鑑定すると、表示された名前は――。
『森の神殿の鍵』
「鍵?」
いったい、何の鍵なのか。
オレたちはまだ知らなかった。
モルガンの森には、このダンジョンとは別に、もうひとつの秘密が眠っていることを。




