青竜ふたたび
◆青竜ふたたび
ダンジョンの調査は順調だ。
3階層は、ラミア、ジャイアントスコーピオン、パラライズバット。
ラミアは、上半身が人間の女性で、下半身が蛇の魔物だな。
鑑定によると、怖いのは噛みつかれたときの毒と、締め付け攻撃とのこと。
蛇なので、動きも素早いが、オレたちからしてみればそうでもない。
捕まらなければなんてことはない。
ジャイアントスコーピオンは、外殻が固いが、ランクS武器を持つオレたちにしてみれば、これも大したことはない。
ちょっと抵抗があるかな、程度の固さだ。
サソリ肉をドロップしたが、これうまいんだろうか。まあ、ドロップ品なので、食えるのは間違いないと思うので、持ち帰って食ってみるつもりだ。
ちなみにカニみたいな味でした。
パラライズバット。これは単純に数が多くてウザい。
噛まれると麻痺する。
逆に言えば、嚙まれなければ、なんてことはない。
1回の攻撃で100匹近く出てくる。大きさもそれなり(子犬くらい)なので、たいそうやかましい。まあ、魔法で一網打尽だけど、範囲魔法が使えないと苦労するかも。
という風に、3、4階層も順調に調査し、5階層に到達したときに、それはいた。
青竜である。
暴走で現れた個体とはもちろん違う。
それは大きさを見ても明らかだ。
高い天井に頭が付きそうなほど巨大なそれは、ダンジョンの中では圧倒的な迫力だった。
今回は、外のようにオレたちを無視しているようなことはなく、最初から存在を認識している。
無機質な金眼に睥睨されていると、先日の痛みを思い出して、思わず腰を抜かしそうになるが、そんなオレにエミリアがそっと寄ってきて手を握ってくれる。
恐らく、ここが最下層。
まだ若いダンジョンということだ。
5階層で最下層なら、ソーニッジと同じということになる。
奇しくも竜がダンジョンマスターというのもソーニッジと同じか。
色竜と属性竜との違いはあるが。
ソーニッジも比較的ランクの高いダンジョンだったが、シャイバスはさらに1ランク高い。
ボスもそうだってことなんだろうなあ。
ここで引くなら見逃してやる。青竜はそう言ってるようだ。
ここもソーニッジと同じだな。
青竜の陰に隠れて見えないが、奥に宝玉があるんだろう。
破壊すれば、このダンジョンは死ぬ。
今回は、調査のためにダンジョンに潜っている。
踏破が目的ではない。
そのため、ここで帰っても、誰にも文句は言われない。
ダンジョンマスターが青竜で、Lv300超えてました、と報告すればいい。
今回も鑑定は効かない。詳細はわからないのだ。レベル差があり過ぎる。
報告すれば、リルルとウリーリャが合同で討伐隊を組むだろう。
あの二人なら、Lv300の色竜でも行けるだろう。
だから、帰ってもいい。
帰ってもいいのだが。
エミリアが、ぎゅっと手を握ってくる。
自分でも手汗をかいているのがわかる。
恐い。
だが考えろ。
落ち着いて状況を考えるんだ。
前回より敵は強力だ。
しかし、初見ではない。
武具も更新された。
敵がランクSなら、こちらの武具もランクSだ。
レベル差はある。
しかし、こちらも職業チートがあるのだ。
その上、前回の経験が活きる。
弱点を知っているのだ。
いちばん怖い竜の息は抑え込める。
なら、行かない理由はないだろう?
◇◇◇
「色竜を倒して来たあ!?」
ウリーリャの第一声はそれだった。
「ええ、最下層に青竜がいましたので。
前回よりレベルは上でしたが、攻略法は同じでしたよ。
これ、調査報告書になります」
「ソーニッジに次いで、2つ目のダンジョン所有者…」
アマネさんがお金に目が眩んだ顔をしている。
あまり人前で出しちゃダメな顔だ。
「ランクは高いと思います。アルスターからの距離を考えると、このギルドでの管理となるでしょうし、アルスターの危険性を排除したいなら殺すのもありかと思いました。
正直、ドロップはあまり旨味があるとも思えませんし。
あーでも4層に雷竜がいるので、竜素材という意味ではおいしいのかも。
ボスのグリフォンも珍しいんですよね?
スライム系がいないから、生活用品ドロップしないんで、旨味が少ないかな、と思ったんですが、普通の素材と考えるとけっこう貴重なドロップが多いのか」
「判断はリルルと協議することになるな」
とはウリーリャ。
「暴走の危険性は排除してきたのか?」
「そうですね。それなりに狩ってはきました。しばらくは大丈夫かと思いますが、溢れると、この前の暴走規模で発生しますよ?」
俺の言葉にウリーリャは少し考える。
「あの程度の暴走なら、アルスターの冒険者のランクを考えると問題はない。
それより、アルスターのギルドの管理業務にダンジョンが加わるのが問題だな。
一応、ダンジョン周りは整備して、衛兵の配備は行わねばならん。
どちらが得になるか、だが。
ダンジョンだからなあ。
管理できるなら、残しておいた方がよいのは間違いないないところだ」
まあ、そらそうだろうな。
ソーニッジのダンジョンの管理はロージアンのギルドで行っているため、アルスターのギルドとは関係がなかった。
しかし、シャイバスのダンジョンは間違いなくアルスターの管轄だ。
徒歩で2時間のところにダンジョンがあるのは冒険者にとってもよいことだと思うが、ちとランクが高い。
結果として高ランク冒険者がアルスターに居つくことになるのかもしれないが、街にとっては悪いことではないだろう。
何しろ高ランク冒険者は稼ぐ。
しかも稼いだ金を派手に使う。
そら高ランクダンジョンは街にとっても美味しい場所になる。
一般人が近寄れるほど近くに現れたなら殺す選択もしたと思うが、シャイバスは絶妙な距離にある。
低ランク冒険者の縄張りとも被らないのだ。
街道の方角とも被らないし、この前の暴走でオレが焼いた道があるので、実は道の整備も案外ラクにできてしまうだろう。
開発しない理由がない。
「ランクSダンジョンということになると、いままでアルスターでは少なかったランクBからの討伐依頼、素材採取依頼が増えるかもしれませんね」
ぽつりとアマネさん。
これまで、アルスター近隣の森では、魔物は強くてもランクC。
素材もランクCまでしか依頼がなかったし、めったにそんな依頼も入らなかった。
しかし、ランクSダンジョンが近くにあるということは、そのダンジョンでの素材採取依頼が入る可能性が高まる。
これまでアルスターには見向きもしなかった商人たちがたかることになるだろう。
魔物素材は武具防具だけではない。
高価な魔道具の素材にもなるのだ。
新たな入手先ができたとなれば、販路を求めて商人たちが黙っているはずがない。
そういう意味でも、アルスターに新しい風が吹くことになる。
ちなみに。
スミストルも金獅子がランクSなので、ランクSダンジョンである。
スミストルは、ランクGからランクSまで、満遍なく挑めるバランスのよいダンジョンであり、だからこそ冒険者に人気が高い。
自分のランクに合わせて階層周回をすることで、レベルも上げられるし、ドロップも美味しい。
シャイバスはまだ成長中ということもあり、上層から高ランクである。
初心者向けではないところが残念なところであるが、この先、ダンジョンが成長すれば、どのようになるかはわからない。
スミストルのようにバランスのよいダンジョンになる可能性も捨てきれない。
アルスターとしては、近隣にバランスのよいダンジョンがあるのは望ましいので、順調に成長して欲しいところだろう。
「しかし、その歳で、ふたつのダンジョン所有者か。
本気で私の夫にならんか?」
妖艶な微笑みでウリーリャ。
「私もたいがい金持ちではあるのだが、ダンジョンの権利は持ってないのだよ。
幸い私は長命種。
添い遂げたとしても、私の方が長生きだ。
どうだ?
ダンジョンの管理者としても私ならうってつけだろう?
私を嫁のひとりに迎えてみるというのは…」
「ダメです! 私だって、まだ結婚してないんですから、ギルマスは遠慮してください!」
アマネさんが割って入る。
正直、ウリーリャの提案は魅力的ではある。
ウリーリャの技をエミリアに伝授してもらえるなら、望むところだ。
お金が目的の割り切った望みも好感が持てる。
アマネさんがちょっと面倒なひとなので、その辺の折り合いをどうつけるか、だけど。まあ、その辺にはオレは関わらずにふたりでやってもらおう。
「そういや、王都の近くにもダンジョンがあるんでしたっけ?」
「ああ、王都の近くには、ランクDの低ランクダンジョンから、ランクSの高ランクダンジョンまで複数存在する。
数年に一度、ダンジョンができるのだが、あまりにも王都に近いダンジョン以外は、ほぼ資源として残してあるからな。
それなりに数はあるぞ。
よくもあんな狭い土地に、と思わないでもないが、王都の土地が特殊なのかもしれん。
王都の冒険者の仕事の大半は、ダンジョンの魔物の間引きだ」
ウリーリャが教えてくれた。
王都にそんなにダンジョンあるのかよ。
暴走とか大丈夫なのかね。
ああ、だから冒険者を集めて、間引きさせてるのか。
「王都に興味があるんですか?」
アマネさんが問うてくる。
「王都に興味があるというか。
ダンジョンに、ですかね。
低ランクでもダンジョン所有者になれば、不労所得が得られるわけでしょ?
そんなにぽんぽんダンジョン生えるんなら、冒険者はみんな狙ってるのかなあって」
「王都の冒険者は、確かに狙ってるな。
イソのいう通り、ダンジョン所有者は美味い。
低ランクダンジョンでも所有者になれば、一生遊んで暮らせるだけの金は手に入るからな。
みんな、鵜の目鷹の目で王都周辺を探索してるよ。
王都に冒険者が集まる理由のひとつでもあるな」
ウリーリャが教えてくれた。
現時点でのソーニッジの収入だけで、月に金貨10枚くらいあるのだ。
ソーニッジは比較的高ランクダンジョンのため、冒険者のランクも高く、集まる素材も高値で取引されている。
だからこその金額ではあると思うが、仮に低ランクダンジョンの売り上げが1/10としても、月に金貨一枚稼ぐのであれば、余裕で暮らせる。
そら狙っている冒険者は多くいるだろう。
「イソ君は、いまさら低ランクダンジョンなんか狙わなくても、もう一生安泰ですよね?」
「ダンジョンの権利が失われないってことならそうかも知れませんが。
失われないんですか?」
「ダンジョンの権利者を殺すと、ギルドルールで、その人間も死ぬ。
基本的にダンジョンの権利は遺言以外で移ることがない。
イソの場合は、ある意味、暗殺によって殺されることはなくなったといってもよい。
ダンジョンの権利は、ギルドルールによって守られており、国王でも、その権利を侵すことはできない。
だからこそ、未踏破のダンジョンは貴重だし、みな、踏破を目指すのだ。
ある意味、冒険者の最終目標が未踏破ダンジョンの制覇と言ってもよいな。
未踏破のダンジョンを見つけて、踏破すれば『あがり』だ」
すげぇな、ギルドルール。
事故死や病死でも遺言が適用されるし、暗殺された場合でも基本は同じか。
ギルドバンクの遺言の中にダンジョンの権利も含まれているわけね。
「ちなみに、パテントの権利もギルドルールで守られていますよ。
パテントを狙って暗殺しても、ギルドルールで死にます。
パテントを無理に奪おうとすると致死ダメージです。
権利者にとって有利な設定なっているものが多いですね。
ギルドルールって」
アマネさんが教えてくれた。
パテントに関しては、オレは持ってないからあまり関係ないが、デデンさんが守られてるわけね。
発明家とか、戦闘力ないだろうしなあ。ギルドルールに護られてるなら、安心してパテント登録できるわけか。
ま、パテントの場合は10年の縛りがあるけど。
「そういえば」
ふと思ったことがある。
「この前の暴走の時、騎士って出てました?」
「出ていたぞ。街の方に、冒険者の後詰として、2000人ほど出張っておった。
さすがに街の危機に騎士が動かんはずがなかろう。
領主がなんのために騎士を抱えているのかわからなくなる」
ああ、騎士団出てたのね。
前線に出ずっぱりだったから、見えてなかっただけか。
2000人の規模が多いのか少ないのかはわからないが。
「ちなみに、リルルの騎士団は辺境伯というわりには少ない方だ。
巡回に回っている騎士もけっこう数がいるから、城に常駐しているのは、2000程度ということだな。
暴走に、その全部を出して来たんだから、リルルの本気度は伺えよう」
街を守らずして、何が領主か、とは言えると思う。
リルルってまともな領主だったんだなあ。
あんななりだけど。
「それで、今回の青竜の素材はどうするのだ?
またギルドに卸してくれるのか?」
「武具は十分ですからねえ。少し考えさせください。
解体して、肉食ってみたいとも思ってるんですよ。
高ランクの魔物肉ってうまいらしいじゃないですか」
青竜は、魔石と素材にならずに、まるごと残った。
竜は全身が素材ということもあり、まるごと残るのだ。
血ですら、薬の材料になるというのだから、ムダになるところがまったくない。
「まあ、前回の青竜で、だいぶ稼がせてもらったからな。
今回は待ってもいい。
処分するなら、言ってくれれば、こちらでオークションの手配をしよう」
「オークション?」
「前回の青竜は王都でオークションだった。
竜の素材ともなるとな、貴族たちが黙ってないのだ。
もちろん、王家に献上する素材もあったが、ほとんどはオークションで販売された。
ああ、結果を教えてなかったが、イソのギルドカードに入金されているはずだ。
部位ごとに解体して、オークションにかけたが、かなりの値段になった。
手数料は引いてあるが、イソの口座にも大口入金があったはずだ。
金貨で1000枚くらいの入金がなかったか?」
慌ててギルドカードを確認してみる。
確かに金貨1000枚超の入金があった。
最近、残高は増える一方だったので、ろくに確認していなかったのだが、金貨1000枚はデカい。
「ちなみに、だが。
オークションにはギルドの名前で出品しているから、個人名は出てないが、目聡い貴族たちはイソのことを調べ始めているぞ。
中には、お抱えにしようと誘いを掛けてくるものがいるかもしれん。
腕のいい冒険者は、ある意味金の成る気だ。
どの貴族も虎視眈々と狙っている。
イソの場合は、興味もないだろうが、注意はしておくんだな。
あいつらに関わると面倒ごとが増えるぞ」
貴族か。貴族ねえ。以前の嫡男を思い出す。
あんな高慢なのに仕える気はないな。
そもそも人生悠々自適になったのだ。別に貴族に仕える必要もない。
便利使いされるだけなのがわかっているのに、わざわざ関わるつもりもない。
「そうなる前にボクの庇護下に入る手もあるかな」
リルルがやってきた。
「まずは暴走解決おめでとう。
ランクBになったんだって?
異例のスピードだねえ」
「その上、こやつ、ふたつ目のダンジョン所有者になりおったぞ」
「え!?」
かくかくしかじか。
リルルにも、ダンジョンの説明をする。
「いや、君、ちょっと強すぎない?」
若干引いた顔でリルル。
「とはいわれましてもねえ」
空間魔法が異常なのだ。
職業チートもだが。
長命種なみのステータスが得られるのだから、竜種といえども戦えないことはない。
その上、武具もランクSだ。
これで、魔物にどう負けろと。
「まあ、新しい村を作らなくて済むのはボクにとっては救いかな。
ソーニッジの悪夢再びなんてなったら、ボクはイソ君になにをしたかわからないよ」
今回は距離的にアルスターの管理範囲だからな。
新規に村を起こす必要はない。
それでも、衛兵の出張所や道の整備、その他諸々の建物などは必要になるかもしれないが。
案外ギルドの出張所なんかも必要になるかも知れない。
ダンジョンから出た資源の買取のため、それらのものは必要になるかも知れないのだ。
まあ、冒険者がアルスターまで持って来ればいいだけの話かも知れんけど。
商人は店を出すかな?
いずれにせよ、オレの考えることではない。
皆さんがんばってくれ、という感じだ。
「ダンジョンは置いとくとして。
領主様の庇護下に入るというのは?」
リルルに聞いてみる。
「ああ、貴族との面倒ごとを避けるためにね。すでにボクと契約してることにするんだよ。
本当に契約を結ばなくてもいいけど。
ようは、ボクが君の後ろ盾になってあげようという話さ。
これでも辺境伯だからねえ。
木っ端の貴族なんか、それだけで君にちょっかいかけられなくなるのさ。
悪い話じゃないだろ?」
「確かに悪い話じゃないですが、領主様の見返りはなんです?」
見返りのない話などあるはずもない。
何か裏があるはずだ。
「いやだなあ。ボクとイソ君の仲じゃないか。
見返りなんて求めてないよ!」
ウソ臭い。
「ホントだよ? たまに遊びに来てくれるだけで十分さ!」
領主は忙しいと聞いている。
遊びに行く暇もないとの話だったが…。
今日は何の用だったんだ?
「まあ、信じますけど。それで今日は何の用だったんですか?」
「忙しいから息抜きにね。イソ君の顔でも見ようとやってきたのさ!
いや、君が色竜と戦って面白いことになってると聞いたから、見物に来たんだけど、なんともなってないみたいだねえ」
ひどい話だ。弱ってるオレを見物に来やがった。
「幸い、ギルマスのおかげで立ち直りましたよ」
リルルはウリーリャをちらりと見る。
ウリーリャは、悪い顔で笑っていた。
「そうかい。残念だよ。ボクがその役をやりたかったなあ。
でも、ウリーリャに依存はしてないみたいだし、まずは上々ということかな。
後ろ盾の件は考えておいてよ。
おそらく、ウリーリャも後ろ盾になるんだと思うけど。
貴族相手だとボクの方が力になれるからねえ」
顔だけ見てると善意で言ってるように見えるが。さて?
「わかりました。後ろ盾の件はお願いします。
貴族に絡まれたら領主様のお名前を出してよいってことですよね?
それはそれとして。
シャイバスのダンジョンは残す方針でいいんですか?」
「慌てて決めることでもないよ。
もう少しギルドの方で冒険者を集めて、探索してもらおう。
高ランクの冒険者にも手に余るようなら、街に近いし殺すことも考えるけど、いまの段階では資源を潰す方向にはしたくないね。
せっかくのダンジョンなんだ。基本は生かす方針になるよ」
ランクSダンジョンなんだし、資源は欲しいか。
色竜の素材が手に入るダンジョンともなれば、こぞって高ランク冒険者があつまるかも知れない。
なにせ、オークションで金貨1000枚だ。
一攫千金を狙う冒険者がいないとも限らない。
金獅子を倒せるなら可能性はあるわけだしな。
「そういうことなら、イソに指名依頼で、しばらくはシャイバス周回を依頼することになるな。
冒険者の誘致が済むまで、魔物の数を調整して欲しい。
依頼になるから、素材の買取もしよう。
ああ、色竜の素材は要らんぞ」
シャイバスのダンジョンについての方針は決まったようだ。
責任のある立場ではないが、いまのところ安全に周回できる冒険者は多くないか。
断る理由もない。
個人的にはスライムがいないし、食材もあまり落とさないので、周回には向かないダンジョンではあるが。魔石は美味いか。
「いいでしょう。その依頼、受けますよ」
ウリーリャは満足そうに頷いた。
「イソ君、ランクBになったんだから、ちょっと領主様のところに通って、礼儀作法を学んだ方がいいかもしれないわよ?」
アマネさんだ。
「礼儀作法?」
「ランクBから、貴族案件も増えてくるの。
冒険者だから、ある程度は見逃してもらえるけど、なかにはうるさいひともいるから。
せっかく領主様が後ろ盾になってくれるって言ってるんだから、この際、甘えちゃって、そういうことも教えてもらった方がいいかも知れないって」
貴族案件かよ。受けねぇって選択はないのかね。
「ランクAの試験が貴族案件になることが多いな。
イソが高ランク冒険者としてやって行くなら、必要な知識だろう。
いまでも品がないわけではないが…。
正式なのを学ぶから、リルルのところで学んでみるのは悪い話ではない」
「ボクが直接教えてもいいけどね。幸い、そういうが得意なのはウチに何人もいるし、その気があるなら、勉強に来るといいよ。
あ、勉強に来た日は執務室にも寄ってよね!」
礼儀作法を学ぶ流れになっている。
ちらとエミリアを見た。
エミリアはロリソンのところで教育を受けている。
案外エミリアが教えてくれるかも知れない。
「ああ、エミリアか。
悪くはないが、本格的に学ぶならリルルのところの方がいいだろう。
エミリアが学んだのは、しょせん商人が貴族に対応するための知識。
足りんとは言わんが、本物の貴族のマナーを学べるんだから、リルルののところに行った方がいいと思うぞ」
「貴族語、というのがあってだね。
それを知らないと、自分では気が付かないうちに結婚の約束をしたことにされたりするのさ。
普通は冒険者に貴族語でトラップなんて張らないけど、イソ君の場合はね?
知らないうちに養子縁組に同意したとか言われても困るでしょ?
正式に学んでおいた方が後のトラブルは減ると思うよ」
貴族語ってなんだよ。怖えよ。
「トラブルは嫌ですね。仕方ない。近々うかがいますよ」
オレは諦めてそう言ったのだった。
ストックが尽きました。
以後は不定期になります。




