青竜
◆青竜
オレたちは青竜のテリトリーと思われるところまで近づいた。
しかしドラゴンに反応はない。
完全に無視しており、羽根は畳んだまま。四肢も畳んでおり、地面に伏せている形だ。
このドラゴンは、いわゆる西洋ファンタジーのドラゴンのスタイルだ。四肢を持ち、獣のような姿で、首が長く、その先にドラゴンの頭がある。
おそらく立ち上がることもできるのだろうし、前脚には鋭い爪もあるのだろう。
いまは巻いているが、その尻尾の一撃も強力に違いない。
20m級というが、それは座った状態で20mということで全長なら100mを超すのではないだろうか? そもそもこれは20m級とは言わない気がする。
後から聞いた話だ。
通常、レベルで測れるのはランクAまで。
それ以上の脅威となる魔物は一律ランクSとなり、普通、冒険者は手を出さないのが、そのランクである。
属性竜もドラゴンであり、ランクAに分類される。
ただこちらはまだ戦える。
ドラゴンスレイヤーの称号があり、ドラゴンの素材として取引されるものの多くは属性竜のものだ。
しかし色竜は、属性竜とは別物である。
ランクSに分類され、単にそれ以上のランクが存在しないためランクSとされているに過ぎない。
属性竜は通常Lv100mまで。長命種やヒューマンの上位職解放した鍛え上げられた冒険者なら、まだ討伐できる。
Lv100なら、まだ攻撃が通るからだ。ダメージさえ与えられるなら、長期戦を見込めば戦うことくらいなら不可能ではない。
実際に属性竜討伐は、高ランク冒険者なら一度は経験していることであり、ダンジョンにも階層主として存在することもあるのだ。
とあるダンジョンは「ドラゴンダンジョン」と言われ全階層、階層主が属性竜というところもある。
勝てる実力があるならという条件はつくけど、挑む者も多いダンジョンではある。しかし、いかにドロップが美味しくても周回する者は少ない。
属性竜と云えどもドラゴンである。
得られるモノと手間や失うものが釣り合わないのだ。
これが色竜になると、話は全然変わってくる。
レベルは最低で200。それ以下のレベルの色竜の目撃はされたことがない。
また、属性竜よりも色竜の方が巨大であり、その分基礎ステータスも高い。結果として、ひとと比較して10倍の基礎ステータスを持つ。
単純にレベルで比較するならば、ひとは色竜の10倍のレベルがなければ、対等に戦えない。
もちろん職業補正がある。
ただ一般職では職業補正による倍率は最大6倍。上位職で最大11倍。
勝負に持ち込むなら、最低同レベルかつ上位職で神に愛された倍率を持ってなければならない。
最低レベルの色竜に挑むためには、平均上昇率の職業倍率で考えるならば、Lv600ないと勝負にならないのだ。
単なるステータスでそうなら、天啓も洒落にならない。
属性魔法耐性99%。物理耐性99%。状態異常無効。
これにドラゴンの鱗の防御力、ランクSによる1/128の効果がある。
同一ランクの武器を揃えても攻撃力の1%しかダメージが通らない。
さらに体力自動回復が付く。
与えたダメージは回復するのだ。
もちろん、ダメージがなかったことになるわけではない。絶え間なく、切れ目なくダメージを与え続けることができるなら、ダメージの蓄積は不可能ではない。
絶望的ではあるが。
さらに色竜は色により属性を2種持つ。
赤竜なら炎と風。
青竜なら氷と風。
白竜なら風と光。
黒竜なら風と闇。
これらの属性魔法を使い、また竜の息も使い分ける。
青竜の場合は、竜の息は氷の竜の息が主体で、風魔法を主に使う。
なお竜の息は防御力無視攻撃である。
救いがあるとすれば色竜でも魔法は上級までしか使わないことだろうか。
知力が高いため、威力はとんでもないが。
知性も高く、人語も解するのではないかと言われている。
これは過去にそういう事例があったという伝説が残されているだけで真偽は定かでない。
なんでもどこかに「竜の巣」という場所があるらしく、地上に現れた色竜は、気が済むとそこに帰るらしい。
それまでじっとガマンするしかない。
天災なのでひとは耐えるしかないのだ。
天災に逆らっても無意味なのである。
ということを、その時、オレは知らなかった。
だから、ランクアップ試験なのだから、倒す手立てがあるのだろうと思っていた。
◇◇◇
「これだけの巨体を剣でどうにかできるとも思えない。まずは魔法だろう」
火魔法Lv4超級・火炎強嵐。
これを威力10倍で叩き込む。
色竜は煩わしそうに身をよじった。
オレは、それを効いていると勘違いした。
単発でダメなら連発すればいい。
火炎強嵐の10連撃。
色竜が立ち上がる。
こちらを向いた。
巨大な咢を開いた。
色竜の巨体からすると、ひとなど小虫に過ぎない。
そのため、細かい狙いなど面倒なのだろう。
氷の竜の息が薙ぎ払われた。
一瞬で周囲が凍る。そのままダイアモンドダストとなって砕けた。
オレは竜の息を感じた瞬間、エミリアとラージャを抱えて転移(短)で逃げている。
威力も範囲もハンパない。
その上、どういう知覚をしているのか、転移先に的確に竜の息が来る。
火炎強嵐で相殺できないかと思ったけど無理でした。
色竜ハンパねぇ。
超級で無理なので、エミリアとラージャの魔法ではどうしようもない。
加えて転移(短)を持っているのはオレだけなので、ふたりを傍から離すこともできない。
近接しかないか?
近接なら竜の息はない。死角に回り込めば3方向からの攻撃が可能だし、注意を逸らすことができれば、目などを狙えるかもしれない。
色竜は立ち上がっているが、オレの転移(短)なら目を狙うことは十分可能だ。
さらには。
色竜には羽根がある。
魔法が効かない以上、飛ばれたら終わりだ。
色竜のサイズでは目と鼻の先にアルスターの街がある。
竜の息威力なら、街の壊滅など数秒だろう。
オレたちとまだ遊んでいるうちにどうにかしないとならない。
「接近戦で行く。竜の息の射線に乗らないように気を付けろ。おまえたちの攻撃に気を取られた隙にオレは目を狙ってみる」
あれだけ巨大な眼球だ。
打ち抜ければ、そこから内部にダメージを叩き込める。
「エミリアは足元に。ラージャへ背の羽根を狙え」
足元は単に注意を引くため。
羽根は可能なら飛行能力を奪う。
ふたりが頷いたので、転移(短)で色竜の足元へ跳んだ。
そのままエミリアは足元へ攻撃。
ラージャは器用にドラゴンの鱗を足掛かりとして背中へと跳んで行く。
エミリアの攻撃。叩き付けるように剣を振るうが鱗には傷ひとつ付かない。
色竜は、やはり煩わしそうに身を揺すったが、ラージャは落ちてこない。足元に視線を向けても咢は開かなかった。
やはり竜の息は自分自身にも有効ということなのだろう。
踏み潰しに出たが、エミリアの敏捷ならば躱すのに問題はない。
色竜がエミリアに気を取られているのを確認し、オレはその頭へと跳ぶ。
金色の瞳はオレの身長ほどもある。
そこへ全力で剣を叩き付けた。
カキィーンといい音がしてオレの剣はあっさりと弾かれる。
ウソだろ。
どんな生き物でも眼球は弱点じゃないのかよ!?
瞼を閉じてガードならわかる。あちらは竜麟で覆われている。
しかし、オレは間違いなく眼球を斬った。
それが弾かれた。
この作戦はダメだー…そう思ったとき、左腕に灼けるような痛み。
色竜による攻撃だと気が付いたのは、空中に投げ出されてから。
「イソ様!」
「イソ君!」
エミリアとラージャの叫び。
二人は色竜の身体を駆け上り、宙を舞う。
オレの身体を確保したのはエミリア。ぐちゃぐちゃに潰された左腕を確保したのはラージャ。
めちゃくちゃ痛ぇ。そういや、こっちに来てから初めてダメージらしいダメージ食らったな。
え、なにこれ。こんなに痛いわけ?
以前にラージャの腕を切断して見せたことがあったけど、こりゃ正気を疑われても仕方ないわ。痛みで気が遠くなりそう…。
「イソ様!」
オレを引き留めたのはエミリアの叫び。
色竜の身体から落ちたということは、竜の息の射線ということ。
ゆっくりと開く咢にオレはラージャを引き寄せて転移(短)。
転移(短)は天啓だから助かった。
これが魔法だと、最低でも集中する必要はある。
死の恐怖の中で実行できるものではない。
ゴブリンから逃げ回るのに、恐怖の中で転移(短)を使っていたのが、ここへ来て幸いしたな。
恐怖で身体が硬直してても転移(短)だけは実行できる。
逃げた先で、ラージャが左腕を傷口に合わせる。
エミリアが修復で繋いでくれた。
痛みはなくなった。失った血の回復は…治癒でどうにかなりそうだ。
疲労が状態異常だとすれば、完全回復でどうにかなる。
とはいえ現状だ。
眼球すらこちらの攻撃を受け付けないとなれば、もはや手の打ちようがない。
「イソ様に傷を付けるとは許せないのです」
エミリアの瞳孔が開いている。輝きを失った瞳が恐い。
「エミリア!」
ラージャの叫び。エミリアはオレの両手剣を持って、色竜へと駆け出していた。
速い。身体強化によるフルブースト。それだけじゃない?
「ラージャ! 弓で援護を!」
一応指示は出す。
弓などほとんど意味はないが、魔力を込めた矢なら気を引くくらいはできるかもしれない。
とはいえ、並みの矢ではダメだ。魔力1000の矢くらいないと、当たったことすら気が付かない可能性がある。
オレが攻撃されたのも、そのまま目への攻撃を許すとマズかった可能性はある。
単に目についただけの可能性もあるが。
エミリアは、ものすごい速度で色竜に取り付くと、そのままドラゴンの身体を駆け上る。
目標は…オレを傷つけたドラゴンの腕らしい。そのまま腕に取り付くと、ガンガンと剣で殴り始めた。
ん? ダメージが入ってる?
なんで?
エミリアに新しい天啓が生えてる。
天職・英雄の天啓だな。
英雄覇気・覇王?
【覇王】
自分より強力な敵に対し任意発動。
現在のステータスを100倍にする。
魔力消費。
100倍って。つまりエミリアのレベルが100倍になってるってことか。
そらダメージも通るわ。
ただ、この天啓は魔力消費型だ。
残念ながらエミリアの魔力でも、そう長くはもたない。
おそらく、ほとんどの場合は全魔力を消費して数秒の100倍ステータスを得る天啓なのだろう。
職業チートのおかげで、エミリアはその状態を長く維持できているに過ぎない。
魔力自動回復が追い付いてないからな。
ラージャも必死に弓を撃って色竜の注意がエミリアだけに向かないようにしている。
何発かは竜の息直前の口腔内にぶち込んだようで、色竜もそれを嫌がってか、こちらに向けて咢を開かない。
ついに、色竜の左腕が落ちた。
血飛沫と雄叫びを上げる色竜。
悲鳴かも知れない。
ちなみにオレは何をしていたのかというと。
普通に恐怖で腰を抜かしてました。
仕方ないでしょ。一歩間違えれば死んでたわけだし。
その場合でもエミリアが生き返らせてくれたかもしれないけど、生き返る保証はない。
誰だって死ぬのは恐いと思うんだけど。
死にそうな目に遭って腰を抜かすのって普通じゃね?
オレはエミリアとラージャの方がおかしいと思うんだけど。
あ、ごめん。エミリアはアレで正常運転だわ。
エミリアの世界は、オレを中心に回ってるからな。
とはいえ。
ほどなくエミリアの魔力が尽きる。
そうなれば、完全にこちらを敵視した色竜が、オレたちを無視しして立ち去ることはないだろうし、アルスターに逃げ込むこともできなくなった。
詰んだか?
エミリアが戻ってきた。完全に魔力切れとなる前に、という考えだろう。
「イソ様を傷つけた腕は退治したです。でも、剣が」
見れば剣がヤバイ。エミリアのちからに耐えられなかったんだろう。
所詮ランクCの代物だ。ランクSの鱗を打ち破っただけすごいと言える。
エミリアを抱き寄せて撫でてやった。
ご褒美ということだな。
これ以上のご褒美はあとでたっぷりと。もしも生きて帰れたなら。
さて考えろ。
どうすれば生きて帰れるんだ?
◇◇◇
「弱点でもあればね」
今も必死に弓を射るラージャの言葉が閃きを与えた。
天啓を閃いたわけではなく。
現状を打開するための手段だな。
ウリーリャは色竜には手を出すなと言った。
色竜にはウリーリャとリルルで当たると。
それはすなわちウリーリャとリルルなら勝つ算段があるということだ。
オレは単純にレベルが高いふたりなら、戦う術があるのだと思っていた。
長命種なのだ。
単純にレベルは高いだろう。
それだけか?
それだけなら、ランクアップ試験として色竜退治は挙げないだろう。
他に何かあるのだ。
そう、ラージャの言ったような「弱点」が。
実際には失敗したらしいが、台風の目に爆弾を落として台風を相殺しようとした試みがあるという。
天災にも叩くポイントがあるのだ。
本物の天災ではなく、こちらは生き物だ。
オレは目が「弱点」と思ったが、そんな汎用的じゃない弱点があっても不思議はない。
ちなみに腰は抜けたままだ。
竜の息を転移(短)で躱しながら考えている。
どのみちこのままではジリ貧なのだ。
気持ちが折れれば転移もできなくなるだろう。
考えるのをやめて他の街に逃げるか?
いやアルスターがやられれば、アルスター領そのものがヤバイ。
まあ、ドラゴンの弱点となれば、だいたいアタリは付いている。
ファンタジーの王道だ。「逆鱗」だろう。
問題は、どうやって逆鱗を探すのかという点だ。
種別ごとに違うとも個体ごとに違うとも言われてるのが逆鱗だ。
だいたいドラゴン退治では逆鱗の位置の特定がカギになるからな。
ちなみにラージャの言葉を聞いたあと、鑑定で「弱点」を探ったけど「なし」と出ている。そのため、逆鱗も望み薄ではあるのだが、相手は詳細鑑定を妨害してくるレベルだ。
単純な鑑定では発見できない可能性は高い。
ということは。
限界突破した天啓・鑑定のLv9強制鑑定の出番ではないのだろうか?
通常はLv5完全鑑定で事足りる。あまり使わないが。魔物の特徴などは完全鑑定で把握できる。天啓もだ。
その上位の鑑定である強制鑑定なら妨害も無視できる可能性がある。
やってみよう。
あ、行けた。
天啓なども見られる。
じゃあ強制鑑定を発動したうえで「逆鱗」を探しましょうか。
あった!
場所が悪い。喉元か。
片腕になっているとはいえ、竜の息をかいくぐり、腕を躱して喉元まで行かないと逆鱗を攻撃することはできないというわけだ。
普通ならな。
エミリアと大人のキスをする。
よし、抜けていた腰も戻った。エミリアは蕩けた顔になっている。ラージャが少し羨ましそうだったので、ラージャともする。
「弱点を見つけた」
その言葉でふたりとも顔を引き締めた。
「オレが最初に一撃入れる」
おそらくこれで剣がダメになる。
「エミリアとラージャは、同じ場所へ最高レベル剣術に致命撃を乗せて打ち込んでくれ」
頷くふたり。
「そのあとは、オレが最高レベルの魔法を叩き込む。
魔力切れがあるはずだ。その時は、エミリアとラージャのふたりが、同じく剣術と致命撃を撃ち込んで欲しい。
あとはこれの繰り返しだ。
倒すぞ」
「絶対に許さないのです」
「わかったよ!」
奴隷たちが頼もしい。
ふと思いついた。
空間魔法Lv9空間干渉。
これも「女の子に痴漢し放題」の魔法なわけではないはずだ。
使ってみよう。
まずは空間把握で色竜の周囲を把握。
その後、空間干渉で色竜の動きを止める。
できるか?
できた!!
竜の息を吹こうにも咢が固定されて開けない。
こうなれば、逆鱗の場所が明らかになった以上、色竜とはいえ、たんなる生贄だ。
さて行こうか。
転移(短)で逆鱗の直前に転移。
青竜なのに逆鱗だけは違う色だ。とはいえ、よく見なければわからないだろう。
逆鱗は濃い青だが、周囲の鱗は鮮やかな青をしている。
鱗の一枚一枚が大きい。これなら、的を外すこともない。
まずはオレの剣術・流星斬+致命撃。色竜が叫ぶが、ダメージはほんの少し。こんなもの僅かな時間で回復されてしまう。
だから。
連続して攻撃する必要がある。
オレの次はエミリアの攻撃。そしてラージャの攻撃。
残念ながら空中に足場は…空中に足場? 空間干渉で作成。
とはいえ、魔法を放つ都合がある。
一度地上に降りる。
あとは魔力が切れるまで直径を絞って威力を乗せた火炎砲をぶちかます。元々弾系はホーミングだ。この魔法も砲と付いているがホーミングする。
もっとも色竜は身動き取れないんだけどね。
連射連射連射。
色竜の体力がゴリゴリ削れていくが、まだ足りない。
魔力切れで魔法を止めると、すかさずエミリアとラージャが空中の足場で逆鱗に攻撃を叩き込んでいる。
あ、エミリアの攻撃で大きく削れるようになった。覇王発動したな。
その後も連携を続け、火魔法Lv5伝説級が生えてきた。
そこからは伝説級の極火炎砲に切り替えて。
威力が高いだけで、火炎砲と大差ない魔法のようだ。
こうなると作業ではあるが、色竜の体力も膨大であり、体力自動回復も並みじゃない。
色竜の悲鳴が響き渡り、そこから実に4時間ほど掛かって、色竜の討伐は終了したのだった。
◇◇◇
「約束通り、素材はギルドで回収しよう。
欲しい素材はあるかね?」
ウリーリャと向き合っていた。
「色竜の素材で剣と鎧をどうにかできないですかね?」
オレの剣と結局エミリアの剣もダメになった。
「時間は少し掛かるが、手配は可能だ。それで、それ以外の素材はすべてギルドに?」
「解体はお任せしますが…素材は半分、こちらにもらいます。取り急ぎ剣と鎧は必要になるのですが、他にもいろいろと作れるんですよね?」
「武具ならひととおり。内臓などは新薬と言われる体力・魔力・状態異常を一気に回復する薬が作れるな。
他にも軟骨と骨を組み合わせて弓などだな。弓弦は腸を加工するとバランスがよい」
弓術士だからか、その辺は詳しいらしい。
「…正直に言えば」
ため息をつきながらウリーリャ。
「色竜を倒すとは思わなかった。
あれは当初の報告よりデカい。20m級であれば倒せる可能性はあった。
レベルが低いからな。20m級というのは色竜の幼体で、成体とは比較にならんほど弱い。
しかし100m級というのは、完全な成体だ。
私とリルルでも厳しい相手だ。
それを4時間とは。
怪物かね? おまえは」
どうやら当初の見積もりとは違った話らしい。
「実際に倒した結果があるし、魔石からの情報も色竜で間違いない。おまえたちには『真竜殺し』の称号が与えられる。
冒険者ギルドでも十数名しかいないたいへん名誉な称号だ。
この称号だけでランクSに相当するといってもいい。
とはいえ、ランクA以上には、別の試験項目があるため、単純に色竜を倒したからと言って昇格はできんのだが。
約束通り、ランクBは間違いなく与えられるだろう。
…ギルド本部に報告もしないとならん。面倒なことだ」
本当に面倒くさそうにウリーリャが言った。
「本部に?」
「色竜が現れたことと、それを倒した冒険者のことは、ここで止めて置けるレベルの話ではないのでのう。
王都にあるギルド本部へ報告を上げねばならんのだよ。場合によっては査察が入る。色竜というのはそれだけの相手なのだ」
仏頂面でウリーリャ。
「いろいろと隠し玉があるのだろうがー…ここで吐いておかないかねえ?
私と協力関係にあった方が、なにかと都合がいいと思うんだが?」
ウリーリャの提案も尤もではあるのだが。
一部天啓くらいなら開示しないでもないが、チートは難しい。
「ギルドマスターがオレの奴隷になるなら、共有できますが」
「…奴隷になるのはかまわんが、それだとギルドマスターを続けられんのう」
奴隷はいいんだ…。
にやりとウリーリャが笑う。艶然と言えるだろうか。
「奴隷を見れば主人がわかる。おまえの奴隷なら、不自由しそうにないうえに、いろいろと可愛がってくれるんだろう? のう?」
オレは渡さないとばかりにエミリアが引っ付いてきた。釣られてラージャがオレの手を握る。
まあ、そこまで譲歩する気があるなら仕方ない。
「契約でどうですかね? オレの能力は他人に話すことができない」
オレも譲歩するべきだろう。ギルドマスターと共謀できれば、いろいろ都合がよいのは事実。
知っておいてもらえばなにかと便利だろう。
「よかろう。おまえの秘密、墓まで持って行こうではないか」
そう言ってウリーリャは微笑んだ。




