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異世界転生で理想の生活を  作者: かおりん@
4章

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雨の日

 ◆雨の日


「イソ様の様子がわかるようになりましたです」


 突然エミリアが言った。


 家の中でエミリアは編み物をしており、オレは鑑定から派生した天啓(スキル)の翻訳で、魔術回路の書類を読んでいた。


 古吸血鬼(エルダーヴァンパイア)語ともいうべき言語で書かれた魔術回路の書類は図書館で複製した本よりも内容が進んでいるようで、写本時に失われたと思われる情報も得られるので読み込んでいたのである。


 エミリアはその傍らで編み物をしていたのだが、突然先ほどのセリフだった。


 ちなみにラージャの家である。外は雨降りなので、出掛けずにゴロゴロしていたわけだ。なおラージャはお昼のための新作料理に挑戦しているところだ。


「オレの様子?」


「はいです。前にイソ様が言っていたのです。わたしがイソ様を常に感じていられれば、それは常に傍にいるのと同じことなのです。なので、ずっと気配察知でイソ様を追う訓練をしていたのですが、つい先ほど、明確にイソ様の状態がわかるようになったのです」


 エミリアのステータスを見てみると、気配察知がLv10になっており、そこから「主人探知」が派生していた。


【主人探知】

 奴隷が主人の位置、状態を把握できる。

 主人の危機には奴隷に通知が行われる。

 また奴隷から主人に自分の位置を通知できる。


 というものだった。


 奴隷限定天啓(スキル)とかあんのかよ…。


 エミリアがオレのことを好きすぎて生えてきたとしか思えない天啓(スキル)なんだが。


「これでイソ様が誰とどこに行っても、いつもお傍にいられるのです」


 ストーカー天啓(スキル)だよな。


 いやエミリア限定で構わないんだが。


 加えて、エミリアからオレに向けて位置情報を送れるのは大きい。


 何かあっても転移できるからな。エミリアを誘拐する/できる猛者はいないとは思うが。万一があっても大丈夫になったということだ。


 王権神授でラージャにも付けようと思ったら、そもそもオレに移せない。オレが奴隷じゃないからか、レア天啓(スキル)だからか。実験もできない。


 まあー…ラージャは自力でどうにかできるだろう。ただレア度でいったらエミリアよりラージャの方がレアではある。狙われるならラージャの方が可能性は高い。


 発信機みたいなものがあればいいんだけどな。


 そこまで考えて、そもそもオレの場合、探知でラージャの位置はわかる。何かあったらギルドカードで連絡さえもらえば、転移はできるのだ。ラージャには不要だと判断。


 危うくギルドまでそういう魔道具がないか聞きに行くところだった。


 そういうことなら。


 まずは実験だろう。


 ◇◇◇


「本当に濡れないです」


「濡れないんだねぇ」


 エミリアとラージャである。


 この世界では日傘はあっても雨傘はない。なんで?


 普通は雨の日は外出しないし、緊急時はレインコートが普通らしい。


 オレたちはどうしているかというと。


 魔力操作により、体表の外に魔力の膜を作ることで雨を避けられる。


 ナニコレ? オレ天才ジャネ? と思ったが、魔力操作そのものがポピュラーな天啓(スキル)ではないし、レインコートを着れば済む話なので、誰もマネをしないだろう、とは後でアマネさんから指摘された話である。


 ただ、この方法なら走ったときとかの泥はねまで完璧に防げるので、オレとしてはこちらの方がいいと思っている。視界も確保できるしな。


 で、こんな雨の日にわざわざ何をしに外へ出たのかというと。


 単にエミリアの新天啓(スキル)の確認と、ラージャの位置把握の確認だ。


 ついでにラージャにも気配察知を使ってもらい、可能ならレベルアップを図る。


「じゃー鬼ごっこなー。これから3方向に城壁まで走って、城壁に着いたら、右回りで城壁沿いに走る。

 その間、エミリアはオレの位置と何をしているか、ラージャはエミリアの位置、オレはラージャの位置を報告しながら走る。

 壁際を大きく離れなければ、途中の建物などの迂回方法は自由だ。

 エミリアはオレに追い付けば終了、ラージャはエミリアに追い付けば終了、オレはラージャに追い付けば終了だ。追い付かれた時点で停止。

 魔法で妨害とかなしな。街中だからな」


 ラージャが不利だが、身体能力はラージャが高い。


「雨だから通行人は少ないと思うが注意しろよ。

 じゃー、スタート!」


 ちょっとした遊びではあるが、遊びだけに真剣にやる。


 奴隷ふたりは訓練だと思っているようなので手を抜く素振りはない。


 まずは城壁に到着。右回りに道があるので、城壁沿いに速度を落とさず走る。


 オレたちくらいの敏捷になると、普通に走っただけでトウガラシ号より速い。トウガラシ号の意味あんの? ということになるが、人員輸送という観点ではトウガラシ号は有効だ。それにトウガラシ号は趣味の結晶だしな。うん、あれはよいものだ。


「イソ様、本気出さないと追い付くです!」


「エミリア速いっ!」


 オレも本気なんだが? って奴隷ども身体強化使ってんな!


 こちらも使わざるを得ない。禁止してなかったからな。


 もはや常人の目では追えない速度で街中をグルグル疾る。最初は建物を跳んで躱していたのだが、それだと空気抵抗で速度が落ちるので、城壁を走った。


「イソ様! いま瞬きしたです!」


 エミリアは次々とオレの状態を報告する。オレもラージャの位置把握には問題ない。ラージャも気配察知で問題なくエミリアを追えているようだ。


 最終的に全員壁を疾走することになった。速度が出ているから遠心力で普通に壁走りができる。


 しかし、そこで悲劇が起こった。


 オレが壁で足を滑らせたのだ。


 身体を捻って衝撃を逃し、速度はそのまま上空へ飛ぶ形で逃がした。


 結果、空高く打ち上げられることになり、オレを追って飛んできたエミリアに捕まった。さらに落下するオレたちをラージャが受け止め、事なきを得る。


 終わりよければすべてよし。


 なかなか楽しい遊びだったし、エミリアの天啓(スキル)も確認できた。


 まさか変顔や瞬きなどもわかるとは思わなかった。


「途中からわかるようになったです」


 とはエミリアの言葉。「主人探知」にはレベルはなかったと思うが、天啓(スキル)には習熟度のようなものがあるのかも知れない。


 たとえば、剣術にしてもLv2を取得するには剣術Lv1を100回使えば到達するが、習熟度はカンストしていなくて、剣術Lv1を使い続けると剣術を出しやすくなる、みたいな。


 もしくは威力が上がるとか。


 この辺は詳しいひとに聞いてみた方がいいのかもな。


 レベルのない天啓(スキル)の場合には、その精度が高まるとかありそうな気はする。オレの魔力操作とか、使い続けるうちに精度上がったしな。人形作成の精度と時間短縮に現れてる。最初に人形作成したときは1時間ほど掛かっていたが、いまでは5分もあれば作成可能だ。


 こういう数字で測れない部分はなかなか難しいところだなあ。


 ダメージなら誰か研究してるかもしれんから、アマネさんに聞いてみることにしよう。


 というわけで、オレたちはそのままギルドへ向かうの立った。


 ◇◇◇


「ふう…」


 オレたちがギルドを訪れると、アマネさんがアンニュイなため息をついていた。


 ギル内部はひとが少なく、雨天での冒険者の活動は少ないため、アマネさんも退屈していたというところか。


「アマネさん」


「あらイソ君。こんな天気に珍しいわね。…悪いけど、業務中だからデートは無理よ?」


 そう返事をしたアマネさんはオレたちがまったく濡れていないことに気が付く。定番のレインコートすら着ていない。


「濡れてないけど、天啓(スキル)かしらね?」


「魔力操作です。雨粒を避けえるという魔力を身に纏うことで、レインコートよりも完全に雨を避けることができるようになるます」


「…それができるのはイソ君たちだけね…」


 魔力操作は通常、属性魔法として放たれる魔法をその前段階で止め、物理現象に変換する。火の魔力操作なら熱を操り、物を燃やしたり。風の魔力操作なら単純に風を起こしたりする。人形作成は土の魔力操作で土を操作することで実現している。


 本来の魔法発現に組み込まれる魔術師が無意識に行っている魔力の操作を切り出して任意の形で実行するのが魔力操作であり、自由度は高いのだ。


 オレたちが行っている「雨除け」は分類するなら風の魔力操作になるだろう。


 身体に空気を纏い雨が当たらないようにしているからだ。試してないからわからんが、潜水なんかにも使えると思う。


「それで物憂げな顔をしてどうしたんですか?」


「うん? それはもういいの。

 最近、イソ君、あまりギルドに来ないじゃない?

 雨だとなおさらだから、今日もイソ君来ないなって。

 でも来てくれたからもういいの」


 無意識に「もっと会いに来い」って要求してるよな。これが「恋する乙女」か。


「確かに依頼を受けることがあまりないですからね。ギルドに来る機会は減ってますね。不労所得が増えたもので、ちょっと慢心がありました。

 もう少し依頼をこなすようにします」


「でもイソ君たちはランクCまで上がってるから普通の護衛依頼とかはないのよね。最近は討伐も少ないし。あ、ランクDの討伐は少なくないけど、ランクC、ランクBとなるとね」


 ランクB討伐依頼か。あるならやってみてもいいかもな。


「今日来たのは、質問があったからなんですよ。冒険者の基本なのかもしれないですけど、ほら、オレまだ日が浅いですし」


「そう言われればそうね。なにかしら?」


「天啓(スキル)なんですけど、習熟度みたないものがあるんじゃないかと思ったんです」


「習熟度?」


「ええ。ステータスには現れない『慣れ』ですかね」


「あると思うわ」


 アマネさんは即答した。


「あるんですか」


「具体的にこう、とは言えないけど…たとえば私の経験でいうと、弓術初級を使い続けて中級になるわけじゃない? でも中級を使ってもすぐに使いこなせるわけじゃなくて、初級の方が断然使いやすいのよ。なにしろ、覚えたばかりの中級の弓術って外れることすらあるんだから!」


 弓術が外れる。まさかそんなことが。


「失敗ではないんですか? 発動しなかった、みたいな」


「いいえ。弓術が発動した手応えはあるの。でも矢は外れるのよ。あれにはびっくりしたわ。10回くらいで慣れたけどね。

 だから天啓(スキル)にも慣れはあると思うの」


「なるほど…上方向、慣れてくるとより向上したりはしないんですか?」


「それもあると思うわ。これも弓術の話で申し訳ないんだけど、弓術中級を取っても、それほど威力が必要ない場合、初級の狙撃ばかり使ってたのよ。

 そしたら、威力も僅かに上がったし、何より命中距離が伸びたのよね。

 中級に引っ張られる形で初級の威力も上がったんだと思っていたけど、イソ君のいう『慣れ』のおかげで伸びたのかも知れないわ。

 ただ、中級を取るまでは上限はあったのよ? 中級を取って、それでも初級を使ってたら初級の威力と精度が伸びた感じかしらね」


 限界突破みたいなもんか。体術レベルを上げることで、下位レベルの技の上限解放がある、と。


 実際、剣術の場合Lv1は単発なので技も短い。高レベルの剣術は連撃になるので、当然高ダメージだが、その分技の時間も長いため、乱戦だと隙になる。


 それを嫌がり剣術Lv1で済ませる場合も多いと思うが、自身のレベルが上がれば、剣術Lv1で与えるダメージも当然上がるため、習熟度のようなものは見落とされていたのだろう。職業によってはアマネさんの言う通り、「慣れ」を意識しているひともいるかもしれない。


 オレは確信した。天啓(スキル)に習熟度はある。


 アマネさんの話とオレの魔力操作での実感。


 ただ数字で表れるものではないため、カンストがあるのかどうかも不明なのが微妙だな。いや…逆に考えるんだ。数字に出ないステータスということは、上限はないのだ、と。体術の場合、体術レベルによる上限があるのかもしれないが、体術レベルが上がっていれば、上げ切っていれば習熟度の上限は無限の可能性もある。


 究極的には使い慣れない剣術Lv10より剣術Lv1の方の威力がある、ともなりかねない。


 実験するにしても、当面の課題は体術レベルのカンストか。これは先が長い。


 ◇◇◇


「そういえば」


 アマネさんはギルドのバックヤードに向かって何かを取ってきた。


 持って来たのは短剣というには長い、片手剣というには短い小剣ともいうべき剣だった。それも2本。片刃でやや反りが入っている。


「なんですか? これ」


「双剣というらしいわ。両手に剣を持って戦うスタイル」


 あー、ラノベとかで見たことあるわ。


「ラージャにどうかと思ってね? 双剣使いなんて、初心者にはまずいないし扱えないじゃない? でもギルドで在庫しててもしかたないし。

 イソ君のパーティーはエミリアが盾役なのよね? ダメージディーラーは魔術師のイソ君なんでしょうけど、呪文詠唱中に牽制する役も必要なのかなって。

 前にラージャは体術特化だってイソ君が言ってたから、扱えるかもって思ったの」


 実際にはウチは全員オールラウンダーなのだが。装備だけ見ればエミリアが盾役に見えるのはそうだし、ラージャにも盾を持たせているので盾役2枚に見えるのかもしれない。


「両手にひとつづつということは、それぞれ斬撃が放てるということなんですかね」


「そうみたい、としかいえないんだけどね。持ち主が亡くなってるから…」


 ああ、例によってそういう。


 しかし剣術Lv1でも連撃の効果を得られるということは、致命撃も2発乗せられる。他の剣士はともかく、ラージャには向いてそうだ。たまにアクロバティックな動きで魔物に飛び掛かってるからな。


「というわけで、これは進呈するわ」


 にっこりとアマネさん。


 戦闘の可能性が広がったのはいいことだろう。


 元々ラージャは限界突破がないので、同レベルだと、どうしてもエミリアより1撃の弱さが目立つ。手数で補えるなら悪くない。


「というわけだそうだ。ラージャの新しい武器だな」


「ボクの?」


「もらいものだから性能は期待するんじゃないぞ。そうだな、ダンジョンで少し試して、使えるようなミスリルにするか」


 素材置換と魔術回路による付与(エンチャント)で追加効果を付けるのもいいだろう。手に馴染むかどうか確認してからでも遅くはない。


「イソ君のところはパーティーメンバー増やさないの?」


「それはオレのハーレムに女性を追加しろって意味ですか?」


「違うわよ」


 ものすごく冷静にツッコまれた。


 絶対零度のツッコミだ。


「家もいっぱいですしねぇ」


 恐かったのでマジメに答える。


「マーヴァイル家って覚えてる?」


「貴族ですか? 誰です?」


「エミリアに乱暴をしたって損害賠償請求した相手よ」


 そういうのもいたな。


「その貴族がどうしました?」


「破産したの」


「オレのせいですかね」


「そうね」


 アマネさんが容赦ない。


「それで、屋敷も押収されてね。いま売りに出されているのよ。ちらっと見て来たんだけどね、貴族街にあるんだけど、超豪邸ってほどでもなくて、装飾品なんかは全部引き取られてたけど、家具なんかは残ってるの。

 なにより、格安なのよ」


 これはアレだ。結婚するならコレを買えって流れだ。


「いくらなんです?」


「金貨100枚」


 それを格安というのだろうか。


「普通に買ったら金貨1000枚でもおかしくない物件よ。部屋も使用人を同居させる前提があるから20以上あるし、立派な寝室も3つあってね。

 なによりイソ君の大好きなお風呂が広いのよ。5人は余裕ね。ルーシティの露天風呂並みの広さじゃないかしら。

 息子はアレだったけど、子爵本人はごく普通の貴族だったみたいで、屋敷も庭も趣味が悪くないのよね。きちんと馬車の駐車スペースも確保されてるし。トウガラシ号だって置いておけるのよ?」


 トウガラシ号は持ち歩くものだ。ただ整備スペースがあるのはいいかもしれんな。


「土地込みなんです?」


「土地込み屋敷付き」


「…もしかして…」


 アマネさんはちょっと悪そうに笑う。


「ギルド内情報だから、まだ外に出てないの」


 オレはため息をひとつ。


 まあ、ラージャの家は残したままでもいいだろう。


 ベッドはスライムベッドにするから人数分追加購入は必要かもしれないが、とりあえずはオレたちとアマネさんの分、エロ部屋にするベッドだけでいいだろう。


 また出費が嵩むな、などと考える。


「内覧してから決めたいので、手付だけオレの口座から払っておいてください。晴れたら明日にでも見に行きましょう」


「やったあ! イソ君、愛してるっ!」


 この屋敷はアマネさんの家ってことになるのかな。


 ラージャの家にエミリアの家があるんだから、アマネさんの家があってもいいだろう。


 ラージャの家は隠れ家的なものになるんだろうか。エミリアの家は完全に秘密基地だしな。


 元々オレのせいで破産したわけだし、家を買うことで、マーヴァイル家に貸した金のいくらかでも戻るなら悪い話ではないだろう。


 しかし、そんなに部屋があっても使わねぇよな。戦乙女に話を持って行くか?


 スミストルへ毎日通うのは大変だろうけど。宿代が浮く代わりにメイドのマネゴトしてくんないかなぁ。奴隷ふたりで維持するには大変な大きさの屋敷なのでは?


 まあ、見てからか。


 ギルドの裏手に回って、スミストルに跳ぶ。


 ラージャに武器の感触を確かめてもらうためだ。


 ついでにミノタウロスを狩り牛肉を集めてもらおう。ひとりで放り込んで罠検知と罠解除の修行もやってもらうか。


「ボクひとりで!?」


「武器の手応えを確認したら戻ってきていい。周回しろとはいわないから」


 最初は一緒に行く気だったのだが、なぜか戦乙女がギルドの酒場でだらけていたので、話をしてみようと思ったのだ。


「じゃあ行ってくるよ!」


 ラージャは元気にダンジョンに潜る。無理はしないだろうし、エミリアほどオレに依存しているわけではないから単独行動にも躊躇いはない。


 オレはギルドでぐだっている戦乙女のヴァネッサさんのところへ向かった。


「どうしたんです、今日は?」


「イソ君か。雨じゃないか。攻略なら関係ないけど、周回だとね。ダンジョン入口に戻るたび濡れるのがイヤなんだよ」


 ボス部屋からの転移は「ダンジョン入口の外」だ。複数の転移が重なっても問題ないように配置される。だから、屋(・)外(・)へ放り出されることになる。


 攻略ならそれで一区切りだから、ある意味雨も歓迎だが、周回の場合はそれが何度もだ。次に潜るまで待つ場合もあり、濡れたままは危険だ。


 そのため、潜るたびに身体浄化(クリーン)となるのだが、周回だとこれが意外と鬱陶しい。攻略組以外が雨の日にダンジョンへ積極的に挑まない理由である。


「それで君はなんでスミストルに?」


 まずラージャの武器慣熟のためと説明する。


「双剣ねぇ。確かに使いこなせるなら強力だろうが」


 ヴァネッサさんは否定的だった。理由を聞くと、利き手以外はどうしても斬撃が弱くなり、盾用の運用になりがちなこと。それなら盾技を覚えて盾撃(シールドバッシュ)を覚えた方が強力なことを理由として挙げた。


 ただヴァネッサさんは以前にラージャの器用さは見ているため、ラージャならあるいは、とも思っている気配はある。


「ああ、これはついでの話なんですが」


 ギルド全体が聞き身を立てている気配がある。なんだろう?


「一緒に住みませんか?」


 スミストルの冒険者ギルドに激震が走った。


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