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異世界転生で理想の生活を  作者: かおりん@
4章

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魔術回路

 ◆魔術回路


 意外なことにアルスターの図書館で魔術回路の文献を発見。


 オレからしてみれば、立派な技術書なのだが、なにしろ実現するのに錬金術が必須で、そのことが書いてないため、実現不可能な空想の技術書という扱いだったようだ。


 分類も伝説・伝承となっていた。


 大量の紙を持ち込んで、錬金術で「複製」して持ち帰る。


 この世界、製紙技術はそれなりに発展しているが、印刷技術がない。


 紙の用途はさまざまだけど、印刷物は一番頻繁に使われると思うのだが。


 いまのところ、大量印刷は錬金術師の仕事になっているらしい。


 この仕事のために領主子飼いの錬金術師がひとりはいるそうだ。


 錬金術の基礎鍛錬をすれば「複製」はすぐに使えるようになるからな。紙とインクを用意して、複製すれば同じ書類の完成だ。


 錬金術そものはレア天啓(スキル)だが、デデンさんのように、この世にいないわけではない。


 ただ錬金術は後天的天啓(スキル)ではないので、錬金術師は弟子を取らない。弟子を取っても天啓(スキル)を得られないからだ。弟子を取る場合は、先天的に天啓(スキル)を持っている場合に限る。


 領主お抱えにならないと、食うにも困る天啓(スキル)なので、これだけで生計を立てている錬金術師は少ない。


 今後、ベアリングの製造により錬金術の基礎鍛錬が行われるので「複製」を持つ錬金術師は増えると思うけど。


 複製して来た本によると。


 魔術回路は古吸血鬼(エルダーヴァンパイア)の技術であり、彼らの発明だと書いてある。著者はあるきっかけで古吸血鬼と知己を得て、魔術回路に関して、ひと用の資料を編纂することを許されたとのことだ。


 実際に回転石などの図を見ると、遺跡から持ってきた図と似ている。


 遺跡から持ってきた図の方が複雑な気はするが基礎は同じだろう。


 最初の方に、素材などの基礎知識が書かれている。


 魔術回路は何にでも組み込めるが、金属、それも上位金属の方がより多くの魔術回路を組み込めるとある。例としてミスリルが挙げられていた。


 ミスリルなら大量にあるな。


 ミスリルは鉄と合金にすることにより、強靭になる。そのため、剣などの武器防具に使用すれば、それだけでランクが上がる。


 一方で、強度が同じでいいなら、薄くできる。軽量化だ。まあ、アルミホイルだわな。


 普通なら絶対にしないだろうミスリルの使用法だ。


 作成したアルミホイルに魔術回路を組み込んでいく。


 当然の回転。逆回転切り替え付き。


 次に停止。回転する物体を停止させる魔術回路で回転と対になる。ほんまもんのブレーキだ。もちろん、魔力量で停止させる力が強くなる。


 遠隔接点。リモコンのような用途を想定していたのだと思うが、対になる接点から魔力を流すことができる。


 いままではデデンさんの工夫でインホイールモーターに魔力を流していたが、魔術回路で置き換えることができる。


 タイヤにも魔術回路を組み込める。こちらは素材的にそれほど大きな容量は組み込めないが、軽量化と構造強化、衝撃吸収。比較的簡単な魔術回路なので3つ行けた。


 ひとつ完成したところで、素材を集めて「複製」。左右の回転の向きを調整して、新型インホイールモーターの完成。


 アクセル、ブレーキ周りの配線も変更になるので、シャシにも手が入る。


 こちらも魔力分配の魔術回路を組み込み、4つのタイヤへ均等に魔力が分配されるようにする。こちらもデデンさんが魔力抵抗などを組み込みながら工夫した部分だったが、魔術回路ひとつで解決できてしまった。


 魔力分配器から、それぞれのホイールに遠隔接点を繋ぐ。これは遠隔接点同士にIDを割り振ることで対応する。IDはユニークである必要があるが、対応する接点同士を一度物理的に接触させることでIDの決定が行われる。


 これをブレーキ用にも1セット。


 前後退切替は、回転の魔術回路に特殊な魔力を打ち込むことで切り替える。


 そのためのスイッチは既存の物を利用し、信号生成の魔術回路のみ作成し、魔力分配器に接続した。


 ついでに、フロントのステアリングを見直す。


 まあ、そもそも「ハンドルを切る」という考えのない中、デデンさんはよく工夫してくれたと思う。それでもスクラブ半径の長さは気になっていたので、これを作り直した。


 サンマル号用のホイールとブレーキを作成。


 ブレーキは前後に搭載してハンドル左右のレバー操作だ。


 ブレーキを付けたことによって、今まで以上のコントロール性を得るはず。


 ラージャの曲乗りに磨きが掛かるだろう。


 後日、加減がわからず華麗にムーンサルトを決めていたのは笑い話だろう。


 なんでその速度から1回転できたのかわからん。本人曰く「垂直になったから、このままでは不味いと思って両手でフロントを押し込んでジャンプ力を得た」とのことだが、ラージャの体重で、あのショックは押し込めないはずなんだが。筋力補正、恐ろしいな。


 魔術回路の本のことはデデンさんにも教えた。


 連日図書館に通うデデンさんの姿が見られるようになったらしい。


 たくさんの紙を持ち込んで、写本しているようだ。


 疑問点などを、そのまま紙に書き込んで、関連魔法の本などを参考にしつつ考察を進めるとのことだ。


 ◇◇◇


「それは付与(エンチャント)ではないのか?」


 新トウガラシ号の試運転のお誘いに、アマネさんと会うためギルド飯に訪れた冒険者ギルドにて。


 なぜか当然のように同席しているウリーリャが告げた。


「付与?」


「んー…たとえばこれだ」


 ウリーリャは何かを探すように空中に目を彷徨わせたあと、一振りの弓を取り出した。アイテムボックスだな。


「剛力の弓と言ってな。筋力に+50の補正をくれる。短弓なのに、それだけの威力があるので、速射性も高く、愛用していた。のちにもっと性能のよいものを手に入れたが。

 見るならば性能のシンプルなものの方がよかろう。

 これに、その魔術回路とやらが組み込まれているのではないか?」


 渡されるので見てみる。錬金術の「構造解析」なら魔術回路も読める。


「筋力強化がびっしり組み込まれていますね。しかし効率がよくないような」


「ダンジョン産だからな。それに筋力+50というのは、低レベル帯ではありがたいが、超高レベルになると意味がない。割合加算でないとな」


 それはその通りだと思う。Lv200を超えるなら+Lv5相当は誤差の範囲だろう。


「それで、そういう追加能力を装備に与える天啓(スキル)があってな。それを付与(エンチャント)という。

 以前、付与(エンチャント)を扱うものと話をしたことがあったが、魔術回路などということは一言も言ってない。

 しかし組み込まれているのは魔術回路だという。

 魔術回路そのものが古吸血鬼(エルダーヴァンパイア)のものとするなら、ひとに理解できるものでもない。それを実現したのが付与(エンチャント)なのかもしれん。

 錬金術を持つものは頭の構造がどこかひとと違う、と聞いたことがあるが、イソもその類かの」


 頭の構造は同じだと思います。知識が違うだけです。電気知識があると、魔力を電気に置き換えて考えやすい。


「それにこの弓は、単なるトレント材で、素材もよくない。よくあるランクDの弓だ。イソの話では、素材によって施せる魔術回路の量も変わるようだし、高級トレント材なら、また違った結果になるのかもしれん。気が向いたら試してみるといい」


「…ということはですよ? ダンジョンドロップしか期待できないレア追加効果の武器をイソ君なら量産できるってことですか?」


 アマネさんの目が例によって物欲に狂っている。


「魔術回路の追加にどれほどの手間が掛かるのか私は知らんが、その可能性はあるだろうな」


「それって…」


「いますぐ冒険者をやめても、武器職人として将来は安泰ということでもあるな」


「…狙われたりはしませんかね?」


 優秀な武器を作る職人。敵になれば恐ろしい。


「さてなぁ。私なら子飼いにして、望む武器を作らせるが。逃げられて敵対勢力に行かれたらやっかいだ。

 私の持つ弓のひとつ、『神弓』の追加効果に『アローシャワー』というものがある。魔力は消費するが、1矢で1000の矢の雨を降らせるという効果だ。

 イソのいうところの魔術回路で実現できるのかどうかは知らんが、可能というなら、50の弓兵が5万の弓兵と同じになる。敵に回したくはないな」


 オレは自分のためにだけ魔術回路を使うとしよう。


 どうも、オレの知識と魔術回路の組み合わせは危険な感じがする。


 オレにとって欲しいものだけをオレが作る。


 この世界のひとが独自に魔術回路を進化させていくのは、この世界の責任だ。


 種はあった。本が1冊ということはあるまい。


 発芽させたのはオレかもしれないが、育てて行くのはこの世界だ。


「そんなことより、だ」


 ウリーリャが億劫そうに呟いた。


「私の発情期が近い。普段は気力で抑え込むんだが…こうも優秀なオスの気配が強いと難しいかもしれん。そのときは頼んだぞ」


「断るとどうなりますかね?」


「いろいろとギルドの決裁処理が滞るな」


 アマネさんが仕方ないという顔で首を振った。


「ギルド業務のためには人柱をも必要ですよ、イソ君」


 その様子に目を丸くしたのは当のウリーリャだ。


「どういう風の吹き回しだね?」


「あのイソ君がですよ、デートのお誘いに来たんですよ? 恋人確定です。ギルドマスターは数年に一度の愛人枠じゃないですか。その程度認めらないようじゃ、イソ君の恋人は名乗れません。そもそもエミリアがいるんですから」


 ウリーリャは感心している。


「鉄壁が砕けたってのは本当だったか。感心、感心。イソが長命種なら、私もこの先の心配がなかったんだが。必要なときに頼れる相手がいるのは頼もしい」


 女ふたりで話がまとまってしまった。


 リルルの件もある。トップの決裁処理が滞ると現場は回らない。現場は意外に理解してないものだが、決裁の判断は重要だ。それが滞るということは現場全体の手が止まる。損失は計り知れない。

 重要な役割を任されて光栄と思っておこう。


 ◇◇◇


 アマネさんの休みの日。ルーシティへ行きたいとのことだった。


 日帰りは無理と言ったら、ちゃんと週休二日制だから大丈夫とのこと。


 そういえば、この世界の暦を知らんな。


 アマネさんが呆れて説明してくれた。


 一日は24時間。1週は7日。1月は4週、1年は12月とのことだった。


 前世より月が短いんだな。曜日は月曜~日曜。ギルドは年中無休なので、土日固定で休みではないし、アマネさんやハンナさんのような人気受付は連日の休みは取りにくいらしい。ふたりが同時に休みだと、どうしてか冒険者のテンションが下がり、依頼受注数も達成報告数も下がるとのこと。


 見栄を張りたがるんだろうな、と思う。アマネさんやハンナさんにいいとこ見せたいのだ。そうすればアフターのお誘いも受けてくれるかもしれないじゃないか。


 実際、ハンナさんは冒険者にたかることもあるとか。それ以上、踏み込むことがあるのかどうかは知らない。オレの直観では軽そうに見えるハンナさんは身持ちが固い。簡単に寝るようなタマじゃないと思う。


 剣術を教わったときの身ごなしから見て、いまでも鍛錬は怠っていないのだろうし、冒険者が力づくというのも無理だろう。


「前よりスムーズじゃない?」


 助手席のアマネさん。エミリアが気を利かせた形だ。ちなみにラージャはサンマル号で付いて来ている。サンマル号のテストも兼ねているからだ。ブレーキによる動きの変化はすでに慣熟走行をしているので慣れたとのことだ。本当にラージャはこういうことのコツを掴むのが上手い。


 アマネさんの感想に魔術回路による効能を熱く語っていたら、アマネさんが苦笑しているのに気が付いた。同じ趣味でもない限り、女性に趣味の話を延々と聞かせても退屈させるだけだ。この辺の話はデデンさんとしよう。


 エミリアはエミリア無双中だし、ラージャは自立で無双している。


「そういえば、他のひととは試したんですか?」


 男性恐怖症のことだ。


「男性恐怖症? 事情を知ってるカンダさんに少しお願いしてみたけど、ギルドの個室でもダメね。どうしてイソ君だけ平気なのかしらね」


「捕食対象だからじゃないですか?」


「こっちが食べようと思っていれば平気ってこと? …たしかに過去にそう思ったひとはいないわね」


 肯定しやがったよ、この女。


「でもー…ひとりいれば十分だわ。イソ君がアルスターへ訪れた。それが運命の出会いだった、でいいじゃない? ロマンティックだわ」


「物語の冒頭風に言えば、農村からアルスターへやって来た彼は、冒険者ギルドの受付で彼女とはじめて出会うことになる。それが運命の出会いとも気付かずに…。みたいな感じですかね」


「吟遊詩人に歌われるなら、そんな感じかしらね」


 アマネさんが笑う。魔術回路よりはこういう話題の方がお好みで。


「どうしてルーシティに?」


「イソ君が、海鮮丼が美味しいって言ってたから、食べてみたいと思ったの。好きなひとの好物くらい、一緒に食べてみたいじゃない?」


 くっそ可愛いんですけど。こういうことを狙える狡猾さはエミリアにはないからな。エリアは良くも悪くも天然だ。もちろん可愛いし、愛らしいし、愛おしいが、こういう狙った言葉はない。ラージャも田舎者特有の朴訥さはあっても、年齢相応の狡猾さはない。こういう狡猾さはやはり男性経験失敗3桁のアマネさんなりのものだろう。


「興味を持ってもらって嬉しいですよ。じゃあ宿は露天風呂ですね」


「露天風呂?」


「屋外に備えられたお風呂のことです。温泉といって、地下から湧いて来たお湯を使っているのも特徴ですね」


「へぇ、そんな施設もあるのねぇ」


 アマネさんはお風呂入らない地域出身のはずだ。


 実際には入ってからのお楽しみということで。


 ルーシティには昼前に到着した。ララティが気絶した山岳地帯もアマネさんは無事に乗り切った。若干顔が引きつっていたいたが、気絶しなかったのはドライバーであるオレへの信頼だといえる。


 以前作った橋なども残っていて、地元住民が利用しているのか、踏み固められた道ができている。ぶっちゃけルーシティへ向かう直通の道路だからな。地元住民にはありがたいものなのだろう。ただ突貫で作ったものなので、強度は怪しい。後日補強だけはしに来た方がいいかもしれない。この橋を利用して死者が出ましたとかかなわんし。


 帰りを少し早めに出て、補強しながら帰るか。


 先に宿を押さえる。二部屋。シングルとシングル&ダブルの部屋。


「あら? ご配慮いただきまして」


「ララティが地雷を踏みましたからね」


 地雷で通じるのが不思議だったが、ダンジョンのトラップにそういうのがあるらしい。踏むと爆発する。地雷だ。


 この前のお店に行く。思ったより混んでる。待つほどではなかった。


「お、ウニ丼がある。オレはこれと海鮮丼の2つで」


 エミリアはそれぞれミニで。ラージャはオレと同じ。


「ウニ丼ってどんなの?」


「来たら食べてみればいいですよ。まずは海鮮丼のミニで様子を見て足りないようなら、ミニを追加でいいんじゃないですか?」


 嬉しそうなオレの様子に自分もウニ丼を頼みたいが、知らない食べ物は恐い。


 そらそうだ。見た目で食えないなんて不思議なことじゃない。冒険者のサバイバルに現地調達で虫を食うというのがあったが、オレは無理。


 だから飲み物と食い物はせっせと収納に溜め込みます。


 配膳されてきた。


「美味しいです」


「美味しいよ!」


 ウニ丼を食ったエミリアとラージャだ。見た目は気にしないらしい。


 オレは一口分掬い取ってアマネさんにあーんした。


「あら、美味しい」


 恐々食べたアマネさんの感想。「頼みますか?」と尋ねたところ、頷いたのでミニウニ丼を追加。


 エミリアが物欲しそうに見ている。オレはすぐにピンときた。


「はい、エミリアもあーん」


「あーん」


 これがエミリアの天然攻撃だ。


「美味しいのです!」


 さて、オレも取り掛かろう。新鮮なウニだな。甘味が出ている。タレもいい。うん、やはりここの魚介類は美味いよ。


 例によってラージャは追加で海鮮丼。ウニ丼と悩んだようだが、ウニ丼は単調な味といえば単調な味。海鮮丼の多様な味わいには敵わないという判断らしい。


 夜の寿司までが、この店のセットだ。明日の昼は…悩ましいところだな。今日はこの後、何もないから腹一杯でも問題ないが、明日は運転もある。食い過ぎると問題だ。眠くなるからな。


 よしウニ丼だ。季節ものの可能性もある。ウニ丼を食って帰ろう。


 市場は午後には閉まっているので、食材の入手は明日の朝だな。


 おもしろかったのは、アマネさんの観光情報の入手法で、まずは冒険者ギルドに行き、受付で雑談。依頼ボードを見て危険な地域を判断。次に商人ギルドに行って特産品を押さえる。


 実に冒険者らしい手順で情報を集めていた。


 情報を多く持っているのはギルドの受付。なるほどその通りだわ、と思ったな。


 その情報により、あちこちを歩く。ウィンドウショッピングだが、たまに特産品を買っていた。自分のカードで決済してたからお土産っぽい。


 宿に入り、まずは温泉を堪能。もちろん貸切なのでオレたちは全裸だ。それを見るとアマネさんもすっぱり全裸になった。

「こういう部分は私が慣れて行かないと、ね?」


 可愛らしく笑う。そんなアマネさんのおっぱいをつつく。「公共の場では禁止です!」と叱られた。貸切なのになあ。


「アマネがダメならわたしのおっぱいで遊ぶといいのです」


 エミリアが背後から抱きついてくる。正直辛抱たまらんのだが、ここはガマンしておこう。アマネさんが歩み寄ってくれたのに、こちらが譲歩しないというわけにもいかない。何事も慣れていけば動じなくなる。ラージャみたいにな。


「僕のおっぱいも使っていいよ!」


 変な時に変なノリを持ってくるな。


「だ、だったらいいです。私のおっぱいも触って大丈夫です。貸切ですし!」


 ということで折り合いを付けたらしい。


 その先はさすがにガマンした。晩飯があるからな。


 その晩飯の席で。


「手掴みなんですか? 下品なのでは?」


「そういう料理だから」


 念のため身体浄化(クリーン)を掛けて手掴みで寿司をいただく。


 持ち方が悪いと崩れる。ララティは慣れるまで時間が掛かった。ラージャは一発だ。エミリアはラージャを見て、こちらも一発だった。


 アマネさんは2度ほど失敗し、ラージャにコツを教わってうまく食べられるようになった。


 ワサビの付け過ぎは鉄板のネタである。


 前回は止めたのに3人ともワサビ盛り盛りをやって、鼻に来ていた。


 アマネさんは情報の重要さを知っている。オレたちのワサビの量を見て、適量を調整していた。さすがだ。


「お寿司って美味しいのね。でもアルスターでは無理なのよね。ここへ食べに来ないと」


 オレたちが流通に関われば不可能ではない。ただそこまで関わるつもりもない。


「毎日食べるようなものでもないでしょう。旅行だからいいんですよ」


「そうかも知れないわね」


 アマネさんの穏やかな微笑み。狙ってんだろうなあ。


 食事に満足したあとは、もう一度お風呂。ララティは来なかったがアマネさんは来た。お酒も入ってほろ酔い加減だったからかもしれない。


 前からぴったりくっついてくる。


「不思議よね、イソ君だと平気なの。全然恐くないのね」


「イソ様は優しいのです」


 エミリアは後ろからぴたりと張り付いている。むにゅんと潰れた感触が艶めかしい。


「不思議と居心地がいいっていうか、安心感があるよね。奴隷契約のせいかなって思ってたけど、違うっぽいね」


 ラージャはオレの手を自分のおっぱいに持って行く。


 このまま「泡の国ごっこ」か! と思ったが、止めておく。アレはまだアマネさんには敷居が高い。もっと馴染んでから。もしかしたら「泡の国ごっこ」を抵抗なくできることがオレの女になる条件かも知れん。


 …エイミーちゃんは要らん。


「…今晩、一緒に寝てもいい?」


「エミリアのご奉仕がありますけど」


「その後でいいの。一緒に寝るだけ。ダメ?」


「エミリアももれなく付いてきますよ?」


「構わないわ」


 そこに異論がないなら、オレは構わない。ダブルだから3人はちと狭いが、寝られないことはないだろう。


「じゃあ、エミリアのご奉仕が終わったら呼びに行きますよ」


 アマネさんはこっくりと頷いた。


 エミリアのご奉仕が終わった。オレもエミリアも満足だ。アマネさんを迎えに行く。


 寝てるかと思ったら起きていた。


「寝てるかと思いましたよ」


「こちらからお願いしたんだもの、待ってるわよ。でも音も声もしないのね」


「結界を張ってますからね」


 同じ部屋で寝ているラージャにも迷惑だろうしな。


「エミリアのご奉仕は寝る前ですからね。その前に時間を取ることもできましたけど」


「そういうんじゃなくて…確かめたかったのかな。お風呂で大丈夫だったから、眠るのも大丈夫なのかもって」


 ああ、そういうことか。男性恐怖症の確認なのね。


 部屋に戻ると、エミリアも寝息を立てている。いつものパターンだ。


 体力を使い切って、フラフラになって服を着て横になると、そのままお休み。


 オレの邪魔にならないようにベッドの端で。オレはエミリアの横に。アマネさんはエミリアの反対側に。


「おやすみなさい」


 アマネさんはそう言って微笑んだ。


 翌朝、ぐっすり眠っていたアマネさんだったが、エミリアの朝のご奉仕に目が覚めて、声にならない叫びを上げたあと自室に戻った。


 まあ、これも慣れてもらうしかない習慣だ。早めに知れてよかったとしよう。


 その後、朝市を見物、食材を購入。ギルドで聞いたという珍しい食材も合わせてGET。


 朝のことは気にしないと決めたようで、アマネさんは触れてこなかった。


 少し昼には早い時間にウニ丼を食って帰途につく。


 道々、作った橋に構造強化の魔術回路を組み込む。燃料は周囲の魔力。こんなこともできるから魔術回路はおもしろい。


 周囲の魔力を使うから、結果として魔物も減るだろう。


 オレとしては、なかなか有意義なデートだったのではないかと思う。


 アマネさんにとっても有意義であったことを祈るばかりである。


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