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異世界転生で理想の生活を  作者: かおりん@
1章

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3/56

これからのこと

 ◆これからのこと

 無詠唱炎弾(ファイアブリッド)で的を撃って遊んでいたらギルド職員のひとが現れた。炎弾(ファイアブリッド)はホーミングするらしく、ひとつの的を狙って無詠唱で連撃していると、自分と的が炎でつながっているように見える。ちょっとおもしろいので、走り回りながら炎弾(ファイアブリッド)を練習していた。


 もちろん魔力切れになるので休みながら。


 その間に。

『天啓(スキル):魔力自動回復Lv1を閃きました』

 とか出たけど。


「…なにやってんの?」


「炎弾(ファイアブリッド)の練習していました」


「はー…。あたしには魔法のことはわからないけど、なんかすごいね。あ、あたしはハンナ。職業盗賊だけど、剣士の基本剣術は使えるから。初級のは大丈夫だよ」


「イソです。よろしくお願いします」


 カンダさんもギルド職員らしくない格好だったけど、ハンナさんもなんかそういう装備で現れた。軽装の革の胸当てに革の手袋。こちらもたぶん革だろうロングブーツ。


 でもへそ出しショートパンツってのはどうなんだ? 冒険者的に。


 そう思って見てると。


「あ、あたしが可愛いからって狙ってもムダだぞ♡ あたし恋人いるからね!」


 可愛いのは認めるし、ちょっとエロい視線がなかったといえば嘘になるが、初対面のこれからお世話になるだろうギルド職員に対して、そこまで失礼にあたることはしないつもりだった。


「可愛いのは認めますし、ちょっと不躾な視線だったのは謝ります。よろしくご指導願います」


「あ、本気にしちゃった? ごめんねぇ。こう言っとかないとたまに勘違いしたやつが出てくるからさぁ。君は大丈夫そうだね。恋人はウソだから狙ってもいいよん♡」


 狙うかどうかはともかく。改めてハンナさんを見る。くせ毛の金髪でケモミミ。猫? かな。スレンダーでしなやかそうだけど、胸部装甲もありそう。いまは革の胸当てではっきりしないけどね。


「じゃあ、始めようか」


「よろしくご指導願います!」


 オレはとりあえずローブを脱いで、片手剣だけの装備になっている。剣を教わるのにローブはないだろうと思ったわけだ。普通の旅人の服に片手剣だけど、教わるだけなら構わないだろ。


「んじゃ、初級3種やってみせるからね」


 こちらも修練場装備らしい対物理耐性を強くかけた練習用の人形に対して技をかけていく。


 基本は「斬撃」。いくつかのパターンがあるけど、袈裟斬りが基本。


 次が「刺突」。専用武器もあるほどの威力があり、急所を狙うときによいとか。


 最後に「薙ぎ払い」。これは攻撃というよりは防御技で、矢を払うとか、魔法を払うとか、敵を威嚇したりとか。


 ハンナさんに見せてもらって、その後素振りを何度か。


 そのたびハンナさんにダメ出ししてもらって。


『天啓(スキル):剣術Lv1を閃きました』

『天啓(スキル):斬撃を覚えました。

 天啓(スキル):刺突を覚えました。

 天啓(スキル):薙ぎ払いを覚えました』


 と閃いたので、ひととおりの剣術を天啓(スキル)で実行する。


 目標を見据えて剣術を思うと、身体がその通りに動く。なるほど、そういうものか。


 でも魔法と違って、天啓(スキル)として覚えなくてもその通りに動けそうだけどね。


 そう思ってハンナさんに聞いてみる。


「そうね。天啓(スキル)として得た方が簡単だけど、ちょっと応用の効かないとこがあるから、強い人は天啓(スキル)使わなくても同じ動作ができるように鍛錬してるわね」


 ということのようだ。


「でも、ランクSとか狙うんじゃないなら、天啓(スキル)でいいとあたしは思うけどね。剣術も高Lvになると基本連撃だから技のつなぎとかすごく頭使うし」


「そうなんですか?」


「そう。剣術も伝説級だと5連撃だから体捌きとか自力でやるのはしんどいよ?」


 なるほどなぁ。いま教わったのがLv1で初級だから、伝説級が5連撃ならLv5ってことかな。


「じゃあ、これくらいでいいかな。初級はいま教えた型を練習してれば、そのうち天啓(スキル)になると思うから」


 もうなりましたとは言えない。


「あの」


「なに?」


「ハンナさん、盗賊なんですよね? 盗賊ならではって天啓(スキル)見せてもらうことできませんか?」


「いいけど。盗賊は天職だから、君はなれないよ?」


 てんしょく? ああ天職か。生まれ持っての職業とかあるんだ。


 でも、あのときの一覧には盗賊専用っぽい天啓(スキル)はなかったけどなぁ。


「参考までに」


「ふーん。いいけど」


 言ったそばからハンナさんが目の前から消えた。


 後ろから肩に手を置かれる。


「見えなかったでしょー。これが盗賊の天啓(スキル)、隠密(ハイディング)だよ」


 たしかに見えなかった。ハンナさんによれば、隠密(ハイディング)を使った瞬間にすべての認識から自分を外すことができるそうで、実際そこにいても感じることができなくなるというものらしい。


 はー。盗賊というか忍者というか。


 そこで。


『天職:盗賊を獲得しました』

『天啓(スキル):隠密(ハイディング)を閃きました』


 と来た。


 結果ステータスは。


名前:イソ

年齢:15

Lv:5

基本     職業補正

体力:70(70)280(280)

魔力:55(55)220(220)

筋力:70(70)280(280)

知恵:50(50)200(200)

敏捷:50(50)250(250)

器用:48(48)240(240)

幸運:52(52)208(208)

職業:

・魔術師Lv1

体力:1

魔力:2

筋力:1

知恵:2

敏捷:1

器用:2

幸運:1

・剣士Lv1

体力:2

魔力:1

筋力:2

知恵:1

敏捷:2

器用:1

幸運:1

・盗賊Lv1

体力:1

魔力:1

筋力:1

知恵:1

敏捷:2

器用:2

幸運:2


 となり、職業掛け算と足し算のせいで標準からかなり上がってしまった。


 これで職業Lv上がったらすごいことになるんじゃないのかなぁ。


「じゃあ、あたしはこれで。そろそろ受付混み始めるから、アマネに挨拶してから帰るんだよ~」


 そういってハンナさんが立ち去った。


 一応ギルドカードを見てみる。職業は魔術師のままだった。


 天職を得てしまったことは転生チートだとして。この世界、複数職業持ち特化なの?


「イソさん、なんか変なこと言ってますね。職業はひとつだけですよ、誰でも。それは複数職業経験者の方もいます。レベルアップで特性が魔術師方向になったから剣士系の職業から転職とかですね。

 その場合はギルドか神殿で転職の宝玉に願って、なれる職業から選択するんです。だから補正がかかる職業は、選択した職業のものだけです。そんな経験した職業分の職業補正があるわけないじゃないですか」


 朗らかにアマネさん。


 そうかぁ、そりゃそうだよなぁ。


 ということは、これがオレのチート能力ってことなのかな?


 天啓(スキル)だけでもチートだったのに。


 アマネさんと話していると、後ろに行列ができ始めた。これがハンナさんの言っていたそろそろ混み始めるということなんだろう。


 アマネさんにお礼を言ってギルドを出る。


 日が傾き始めているが、まだ夕方というには早い時間だ、というのは前世のオレの感覚。

 この世界では日が沈んだら、街道なんかは完全に暗闇だろうし、日のあるうちに今日のすべてを終わらせるのが普通なんだろう。だからギルドも混み始めた。


 なのでオレは足早にアマネさんに教えてもらったオススメ宿屋「金色の朝焼け亭」へ向かうことにする。


 ギルドからさほど遠いわけでもなく、中央から少し外れた場所。城壁方向へ行った先に「金色の朝焼け亭」はあった。


 料金は教えてもらった通りで、まだ部屋は空いてるとのこと。一人部屋で朝食付き、身体を拭くお湯付きで一泊銅貨50枚。


 風呂はなしか。貴族なら入れるんだろうけどな。


 これからの稼ぎがどのくらいになるかわからないから、固定費は抑えたいところ。露店の食べ物の値段から考えると物価はだいたい前世の日本と大差ない感じ。だとすると銅貨50枚は5千円くらい。

 ビジホと考えれば都会で朝食付き5千円は安い。


 とりあえず10泊分前払いにする。連泊だと割引らしいので、10泊銀貨4枚になった。なにそれ安い。


 なお夕食は宿の食堂でも食べられるとのことで、時間はこれからで酒場も兼業しているから夜中まで大丈夫だそうだ。


 おかみさんにお礼をいって部屋の鍵を受け取る。まずは部屋に向かおう。これからのこともゆっくり考えたいしね。


 荷物を降ろして、ベッドに座る。


 部屋は狭い。ベッドと小さな机、その前に椅子。机の上には小さなランプ。これが魔石ランプなんだろう。スイッチを入れるとぼんやりと光った。


 さて、まずはギルドでもらった装備を鑑定しておこう。


 皮の鎧

  防御力:F

  追加効果:なし


 片手剣

  攻撃力:E

  追加効果:なし


 ローブ

  防御力:G

  追加効果:知恵+5


 木の杖

  攻撃力:G

  追加効果:知恵+5


 皮のブーツ

  防御力:F

  追加効果:敏捷+5


 詳細鑑定してみたけど、ごくありふれた品だった。追加効果も店売りの杖とかローブでも同じくらいの効果はあるらしい。


 今日試した感じだと杖のあるなしで魔法の効果に違いがあるようには思えなかったので、スタイルは剣士スタイルの方がいいかもしれない。魔法剣士だな。かっこいい。厨二かよ。


 そういえば。収納って魔法なんだよな。あれから定期的に魔力が減るとかないから、収納する領域を作るときに魔力を使うということなんだろう。


 一覧を出してみると6/10となっていた。全部で10個入る領域に、いま6個入ってるってことだな。


 試しに魔力を2込めて収納を追加してみる。6/30になった。1魔力で10枠か。大きさはどうなんだろうな。毛布とか普通に入ったから、触ることができれば、大きさ関係なさそうだけど。


 とにかく収納は大きいに越したことはない。ある限りの魔力を使って収納を作成し、魔力を回復させては収納を作成するというのを繰り返した。途中、晩飯を食いに行って、それをずっと続けていた。


 最初魔力が完全に元に戻るまで1時間くらい掛かっていたのが、魔力自動回復がLv5まで上がって5分くらいで全快するようになった。


 結果として朝まで掛かって収納はLv10になり、容量は∞と表示されるようになった。


 さらに。


『天啓(スキル):空間魔法のLvが上がりました。転移(短)を覚えました』


 収納のLvがカンスト? したせいか空間魔法のLvが上がった。これは収納を使い過ぎたからなのか、収納がカンストしたからなのかはわからない。


 とにかく目的の収納が∞になったので満足だ。仮眠を取ったらギルドに行こう。固定費が掛かるなら、収入も確保しないとならない。手持ちに金貨が40枚以上残っているから10年くらいは遊んで暮らせるけど、先がない。先を見据えて仕事を探そう。


 本当はね? 仕事なんてしたくないんだよ?


 ◇◇◇


 寝すぎた。1時間くらいで起きるつもりだったのに、なんか宿はすっかり静かだ。


 それで「起こさないでください札」を出し忘れてたから、シーツ交換に来たおかみさんから起こされてようやく起きた。


 慌てて支度してギルドへ向かう。今日は依頼の仕方とかそういうのを教えてもらおうと思っていたんだ。


 ギルドに到着すると中は空いていた。冒険者のお仕事なんてそんなにないのだろうか?


「あらイソさん、こんにちは。寝坊ですか?」


 アマネさんに笑われた。


 確かに寝坊は事実だけどもさ。


「はい。寝坊しました。オススメの宿、良かったです。それで今日は冒険者の仕事について教えて欲しいと思いまして」


「いいですよ。朝の混雑も終わりましたし」


 朝の混雑?


「朝って混むんですか?」


「はい。その日の依頼が更新されて、依頼ボードに貼り出されます。手頃な依頼は競争になるので、みんな朝早くからギルドの前に並んで、依頼を探すんです。あれが依頼ボードになります」


 差された方を見ると、巨大な掲示板みたいなのがある。そこには、現在は十数枚の紙が貼られているだけだ。


「見てきていいですよ」


 アマネさんにそう言われたので依頼ボードを見に行く。


『ワイバーン討伐依頼:ランクB以上限定。金貨10枚』

『幻の果実ネクタール採取:ランクA推奨。金貨100枚』


 高ランク指定、もしくは推奨の高額依頼が残っている。


『常時:薬草採取:指定ランクなし。ひとつ銅貨5枚』

『常時:ゴブリン討伐:指定ランクなし。魔石銅貨5枚』


 あとは常時となっている報酬の安い依頼。とはいえ、薬草なら10本で宿分。食費を考えるなら20本ほど採取すれば生活費にはなりそうだ。


「わかりましたか? 基本依頼ボードから自分のランクと報酬、難易度を判断して依頼票を取ってきて、この受付で依頼を受けるんです。

 もうそこには残っていませんが、大抵の依頼には期限が付けられていて、依頼を受けて期限内に達成できない場合、依頼失敗となり、報酬の1割をペナルティとして支払わなければなりません。

 だから危険が少ない報酬の高い依頼を奪い合うことになります。

 とはいえ、依頼ごとに向き不向きもありますから、冒険者によっては依頼ボードを見ずに受付へ来て、自分たち向きの依頼はないか確認したりもします」


 なるほどなぁ。アマネさんの説明にしきりに頷くオレ。


 ゲームじゃないんだから、死んだらそれまでの世界で無謀に挑戦するバカは少ないってことなんだろう。


「ただ安全ばかり追っていても、なかなかランクアップにつながらないので、そこはバランスをみながらというひとたちが多いですね」


「ではオレの場合は、まだランクも低いので常時依頼をやった方がいいんでしょうね」


「そうですね。幸い今日は出遅れたようですし、仮に朝に間に合ったとしても、私は常設の薬草採取かゴブリン討伐を受けることを勧めたと思います。

 採取と討伐の基本ですからね。

 ああ、依頼にはありませんが、ツノウサギも素材としてギルドで買い取っていますよ。一匹銅貨5枚です」


 アマネさんはそう言ってにっこりと笑った。思わず「結婚してください」といいそうになったが、これは営業スマイルだ。落ち着いて行こう。


「では薬草の採取に行こうと思いますが、どの辺りになるでしょうか?」


「南門を出てしばらく行くと右手に森がありますので、そこにたくさんあると思います」


「わかりました。ありがとうございます!」


 きっちり頭を下げて、受付カウンターを後にした。


 さあ! しばらくは薬草採取と行こうか!


 ◇◇◇


 アマネさんから教わった通りに森へと到着。


 森なのに、けっこう下草が多い。どういうことなんだろう?


 まあ、それほど日光を必要としないのが薬草なのかもしれない。


(鑑定、依頼の薬草 or 害意)


 初日だし無理しない方がいいだろうなってことで鑑定のフィルター設定。


 魔物と薬草の区別はホロウィンドウが見えてるから種類で判定できるだろう。


 で、設定が間違っていることにすぐに気がついた。


 つまり魔物ってのは、普段はノンアクティブ(非攻性)ってことなんだな。テリトリーに入るとアクティブ(攻性)になる。


 なので害意のフィルターに引っかかってるってことはアクティブ(攻性)だし、手遅れ。ノンアクティブ(非攻性)の時は害意のフィルターには引っかからないから、テリトリーに入るまで気が付かない。


 それで最初の薬草の近くまで行ったらツノウサギにターゲットされた。


 転移(短)で逃げた。転移(短)は視線が通っているところなら最大1km先へ転移する天啓(スキル)。タゲられた魔物から逃げるには便利だった。森の中だとイマイチ距離は稼げないけど、街道近くまで転移するのができたのは幸いだった。いのちだいじに。


 だからフィルターを「依頼の薬草 or 魔物」で指定。これならテリトリーに入らず薬草採取ができる。


 そんな感じで魔物が近くにいない薬草採取を続けながら、ひたすら鑑定する。


 というのも、採取した薬草は複数あって、体力回復系ポーションの材料になるもの、魔力回復系ポーションの材料になるもの、毒薬になるもの、などなど。


 ぶっちゃけ初心者救済の常時依頼なんだろうなぁ、と思う。


 そうじゃなければこれだけ雑多な薬草を依頼しないだろうし、薬草の群生地にはたいてい魔物がいることに説明がつかない。


 冒険者ギルドとしては、この常時依頼で採取の難しさと魔物との戦いを経験して、次のステップに進んで欲しいんだろう。


 採取の難しさってのは、薬草の種類によって薬効成分のある部位が違うので、そこを傷めないように採取する必要があるということ。


 葉に薬効成分があるなら、周囲を少し掘って、葉を傷めないように引き抜く必要があるし。

 根に薬効成分があるなら、根を傷めないように掘り出す必要がある。


 その判断を薬草ごとにしないとならない。経験を積まないと難しい側面だろうと思う。


 オレ? 採取の前に詳細鑑定してるから大丈夫。説明でどこに薬効成分があるかわかるんだよね。

 とはいえ、この方法って、かなり手間がかかるのは事実。


 昼飯用に例のサンドイッチ買っていたので、それ食って、そこそこ時間経ってるけど結局20本くらい。

 近くに魔物がいない薬草って条件で探してるから効率が悪い。


 本当ならあちこちにある群生地でまとめて採取するのが常道なんだろう。


 でもオレは魔物を警戒しながら鑑定して、見つかった薬草を詳細鑑定して。


 で、次の魔物が近くにいない薬草のところまで移動して、ってやってるから捗らない。


 正直どうしたものかなぁ、とは思うけど。


 ひとまず一日分のノルマになる薬草20本は超えたから街に戻ろうか。


 何度かヤバかったけど、全力で転移(短)を使って逃げた。


 取った薬草は全部収納していたから、街に着いてから適当な麻袋を薬草の種類分購入して、種類別に薬草を分別。


 これは空間魔法持ちってことを秘密にするため。


 オレはまだレベルも低いから変な冒険者に目を付けられて粘着されたらたまらんからな。


 全体的に治安はいいアルスターだけど、すべての冒険者が善人ってことは絶対にないから、極力目立つマネは避けとこう。


 そういや、昨日の段階で気がついてたけど、収納の枠って種類ごとなんだよね。


 リストを見ると「金貨49枚」とかなってる。こちらは脇に上限数が表示されてないから、同種類は元々制限がないんだろう。


 無理して収納の枠を広げることはなかったのかもしれない。でもおかげで転移(短)が得られたんだからムダな努力ではなかったはずだ。


 努力? もちろんしたくないよ? ムダなのもそうでないのも。


 努力なんてせずにできるのがいいじゃん?


「戻りました」


 幸いギルド窓口は、まだ混んでなかったので、アマネさんのところに直行。


「あら早かったんですね。収穫はありましたか?」


「はい。薬草の採取を。あ、薬草の種類ごとに分別して採取しています」


 5種類に分別した麻袋をカウンターの上に置く。


 アマネさんは笑顔を貼り付けたまま、ちょっと微妙な雰囲気を出していたけど、その笑顔は崩れなかった。さすがプロだと思った。


「それでは素材を確認しますので、少々お待ちください」


 麻袋を持って、ギルドの奥に行くアマネさん。奥の部屋には天啓(スキル)・鑑定を持ってる誰かがいるんだろう、たぶん。


 しばらくするとアマネさんが戻ってきた。


「ご苦労さまでした。薬草採取の依頼達成となります。全部で23本。ひとつ銅貨5枚ですから、銀貨1枚、銅貨15枚になります。

 かなり丁寧に処理されてたみたいで、カンダさんも驚いてました」


 カンダさん、鑑定のひとだった。


「植物辞典を持ってるんです」


「え! 結構高価ですよね?」


「実家にあったもので、餞別としてもらいました。初級だけですけどね」


 適当にごまかした。


「それと、魔石はないんですか? 1個からでも買取できますよ?」


「魔石もツノウサギもないです。なんとか魔物と遭遇しないで済んだので」


「はぁ?」


 なにやら疑いの目でアマネさんがオレを見てくる。


 薬草採取でわかったが、鑑定なしだとほぼ間違いなく魔物と遭遇する。


 なぜか魔物は薬草のそばにいることが多いし、群生地だと必ずいる。


 それに初心者が薬草に注意を向けて森を進めば、間違いなく薬草を見つけるより先に魔物のテリトリーに入る方が早い。


 盗賊の天啓(スキル)、隠密(ハイディング)でも使わない限り、魔物との遭遇なしで薬草の採取は難しいのだ。


(ん? なら隠密(ハイディング)使えばもう少し楽できるかな?)


 そんなことを考えていると、ギルドに帰ってくる冒険者が増えてきた。


 アマネさんはなにか言いたげだったが、オレは追求されても困るので、本日の成果を手にして宿に帰るのだった。


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