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異世界転生で理想の生活を  作者: かおりん@
1章

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アルスターの街に入った

 ◆アルスターの街に入った

 森を少し歩くと街道に出た。


 街道を進んでいると人に会ったので、行き先を聞いてみたらアルスターは反対側だった。このまま進んでいたら別の町で、徒歩だと十日ほどかかるらしい。アルスターは数時間とのこと。


 危なかった。


 食い物はコンビニで買ったお菓子くらいしかない。狩りをする羽目になるところだった。無事にアルスターへ向かえることに感謝だ。


 そうしてアルスターに到着。


 どうも城塞都市らしく、高い防壁に囲まれている。魔物がいる世界なら普通なのかもしれない。


「見ない顔だな。アルスターは初めてか? 身分を証明するものはあるか?」


 設定通りに、農家の三男で仕事を求めて来たことを話す。


「入場税で銀貨一枚だ。数日中にどこかのギルドに所属し、ギルドカードを示せば入場税は返却される。ギルドの種類によって返却額が変わる。商人ギルドなら銅貨五十枚、冒険者ギルドなら全額。他の職人ギルドは返却なしだ」


 丁寧に説明してくれた。


 商人は自分の街でなければ出入りに税がかかる。職人も同じ。この街だと銀貨一枚。拠点が自分の街なら無税。近くの森へ狩りに行って戻る程度なら税はかからない。


 冒険者ギルドはどの街でも税がかからない。仕事の内容を考えると納得だ。


「仕事を探しに来たなら、まず冒険者ギルドに入ってギルドカードを作ってもらうといい。それとも天啓(スキル)持ちか?」


 鍛冶などの天啓があるなら職人ギルドに入り、弟子になるのが普通らしい。生産系も魅力的だが、いまはない。


「ありがとうございます」


 門番に礼を言い、入場シートに名前を書き、銀貨一枚を支払う。


 入場証の木札を受け取り、門をくぐるとアルスターの街が広がっていた。


「ここがこれからのオレの街か」


 本が読めたくらいなので、街の看板も普通に読める。


 まずはギルド登録だろう。門番に教えてもらった冒険者ギルドへ向かう。


 アルスターは近隣最大の街らしく、大通りには商店街があり、公園もいくつかある。公園には露店が出ていて賑やかだ。


 昼前で小腹も空いた。露店で何か買うことにする。


(鑑定。うまいもの)


 鑑定スキルで「うまいもの」をフィルター。実験だ。こんな感覚的条件で絞れるかどうか。


 視界にいくつかの露店がピックアップされる。しかしどこも行列。


 一箇所だけ行列のない露店があった。


「くださいな」


 なんてことはないサンドイッチの店だった。


「銅貨十枚」


 普通のサンドイッチにしては高い。それが行列のない理由か?


 とはいえ注文した以上、買わないわけにもいかない。


 銀貨一枚を払い、お釣りを受け取る。


 銅貨九十枚と、サンドイッチの詰まった立派なバスケットを渡された。


 多いよ! そしてバスケット立派すぎない?

 弁当入れにも使えるし、部屋で小物整理にも便利そうだ。


 バスケットを開いてサンドイッチを食べる。


 うまっ!


 普通にタマゴサンドっぽいが、パンはふわふわで、濃厚なたまごの味がじんわり舌に染みる。


 思わず露店のおじさん(というには若い。前世のオレより確実に若い)を振り返った。


「…オレ、本当は細工師なんだが、細工が売れなくてな。幸いかみさんが料理上手で、相談してサンドイッチの露店を出すことにしたんだ。昨日からなんだが…うまいか?」


 黙ってうなずく。


 おじさんは嬉しそうに笑った。


「サンドイッチだけなら銅貨三枚でいいんだが、バスケットを見てもらいたくてな。どうしてもこの値段になっちまう」


 苦笑するおじさん。


「なら…」


 オレは提案した。


 オープン特価として銅貨五枚で売り出す。


 バスケット返却で銅貨二枚返すサービスをつける。


 商売になる銅貨三枚は確保できるし、特価期間が終わったら値上げすればいい。


 さらにバスケットを作ったのがおじさんだと看板に書く。細工物受付中と入れてもいい。


 バスケットの品質はいいし、サンドイッチもうまい。単純に宣伝不足だろう。


 バスケット単体でも銅貨二枚なら原価割れしないらしいので、特価後はサンドイッチ五枚、バスケット五枚、返却サービス五枚にすればいい。


 他の露店での買い物用にバスケットだけ買う客も出るかもしれない。


「そうか。そういう手もあるのか」


 根っからの職人タイプのおじさんには難しい発想だろう。


 おじさんはアイディアのお礼にバスケットをもうひとつくれた。


 いまは食べきれないので、あとで収納しよう。


『天啓(スキル):交渉Lv1を閃きました』


 交渉!? あれで交渉なのかよ!


 確かにアイディアを渡して報酬を得た。そういうことか。天啓ってこんな簡単に閃くんだな。


 その後、適当に鑑定しながら冒険者ギルドへ向かう。


 わかったことがひとつ。鑑定で得られる情報は、いまのところ種類とLv、たまに簡単な説明。植物を注視すると薬効や素材情報が出る。動物なら状態がわかる。荷馬車の馬を見ると「状態:疲労」とか。


 そして気づいた。空間魔法と違い、鑑定は魔力が減らない。天啓スキルと魔法は別物らしい。


『天啓(スキル):鑑定Lvが上がりました。詳細鑑定を覚えました』


 どうやらレベルアップした。成長補正のせいか、単純に使いすぎか。


 でも鑑定って面白いじゃん? 目に入るもの全部鑑定したくなるじゃん?


 で、「詳細鑑定」。


 近くの草を注視。


『種類:ネネ草

 状態:健康

 感情:興味なし

 説明:主に観葉植物として品種改良された草花。植える時期によって色の違う花を咲かせる。植えてから1か月で花を咲かせ、3か月維持したあと種を付ける。

 土に栄養があれば放置で発芽し、適切な時期に花を付ける。

 市街地の景観向上に使用される』


 辞書的な情報だ。詳細度合いは場面で変わるかもしれないが、確かにレベルアップした感じだ。感情まで出るのは面白い。


(鑑定。害意)


 田舎者丸出しだから、害意を持って接してくる人もいるかもしれない。予防線は張っておく。


 いまのところ強い悪意はなし。警戒くらいはあるが、見慣れない人がいれば当然だ。アルスターは治安がいいらしい。


 というわけで、気になるものを鑑定し、終わったら害意フィルターを張り直しつつ冒険者ギルドへ向かった。


「いらっしゃいませ。初めてですよね? 受付のアマネです。今日は登録ですか?」


 冒険者ギルドは二階建ての大きな建物で、人の出入りも多い。


 中に入ると正面に受付カウンター、左手に酒場。


 4つある受付はどこも空いていた。昼時だから酒場が賑わっているのだろう。


 オレは空いているカウンターの元気そうなお姉さんのところへ。


 受付は美人と決まってるのか? ケモミミの受付もいたが、ここは素直に好みの美人さんで。


「はい。街に入るとき、冒険者ギルドを勧められまして」


「あっ、アルスターも初めてなんですね。では登録できましたら入場証をこちらで預かり、衛兵に返却します。税の返却も本日ギルドから行いますので安心してください」


 にっこり微笑むアマネさん。うわぁ、結婚してぇ…。いかん、騙されるな。営業スマイルだ。


「こちらの書類に記入をお願いします。字は書けますか? 無料で代筆もできますよ」


「いえ、大丈夫です」


 書類を受け取り、名前と年齢だけ記入。


 天啓スキルは任意なので空欄のまま提出。


「はい。イソさん、十五歳ですね。では適正を検査しますので、まずこちらの宝玉に手を置いてください」


 青い台座の透明な玉。


「これは剣士の宝玉といって、剣士の適正があると強く輝きます。光らなくても剣士になれないわけではありませんが、剣士と魔術師のどちらが向いているか最初に調べるんです」


 手を置く。


『天啓(スキル):剣術を閃きました』


 こういうきっかけで閃くのが天啓なんだな。


 宝玉は普通に光った。


「イソさんは剣士の適正がありそうですね。次は魔術師の適正です」


 赤い台座の宝玉に交換。手を置く。強く光る。


『天啓(スキル):火魔法を閃きました』

『天啓(スキル):水魔法を閃きました』

『天啓(スキル):風魔法を閃きました』

『天啓(スキル):土魔法を閃きました』


 一気に4つ閃いた。


「あっ。イソさんは魔術師の方が向いてますね」


「そうなんですか?」


「はい。魔術師の宝玉の方が輝きが強かったので。職業は魔術師でよろしいですか?」


 職業の斡旋もしてくれるらしい。


「わかりました。魔術師でお願いします」


「では、こちらに血を一滴お願いします。あ、入場証も出してもらえますか?」


 謎金属カードと針を渡され、指先を刺して血を一滴。


 血を止めようと押さえていると、アマネさんが手を出し、何か唱えた。


『天啓(スキル):聖魔法を閃きました』

『天啓(スキル):聖魔法Lv1を閃きました。治療(キュア)を覚えました』


 え?


「あ、治療(キュア)ですか? 冒険者ギルドの受付に必須の天啓なんです。登録時に血をもらう必要があるのと、冒険者は荒っぽい仕事なので応急処置ができないとダメで」


 にっこり笑うアマネさん。エンジェルスマイル。癒やされる。いや、いま癒やされたばかりだ。


 つか、天啓って見ただけで覚えるのか?


「質問いいですか?」


「なんでしょう? 冒険者の基礎なら後で説明しますけど」


「天啓って、誰かが使ってるのを見ると覚えるものなんですか?」


 アマネさんはきょとん。


「…そういう方もいるとは聞きますが、普通は素質があって、修練所で半年くらい修練して身につけるものです。私もキュアを覚えるまで一年かかりました」


 遠い目をするアマネさん。修練が大変だったのだろう。


「そうですか。余計な話でしたね」


 素直に引き下がる。


「では、ギルドカードができるまで冒険者の基本を教えます」


 紙を取り出し説明。


・国の法律を守る

・魔物の横取り禁止

・冒険者同士の争い禁止。揉め事はギルドへ

・冒険者にはランクがあり、最初はG

・素材はギルドが買い取る


 常識的なこととMMOの常識を守れば問題なし。


「あ、それとこれをイソさんに」


 杖とローブ、ブーツを渡された。


「標準的な魔法使いの装備です。初回登録時のサービスです」


「そこまで面倒見てくれるんですか?」


「初心者はお金がなくて無理をしがちで、装備もないまま魔物に挑んで亡くなる方が多いんです。ギルドとして支援しています」


 理屈はわかるが、サービス過剰では?


「ちなみに、この装備品は新品っぽくないんですが」


「善意の寄付です。あとは…あまり大きな声では言えませんが、亡くなった方のものです」


 魔物にやられて死んだ人の装備は見つけた人のものになるが、縁起が悪くて使われない。遺族は遺骨や髪などだけ持ち帰り、装備は残る。


 遺体は放置するとアンデッドになるので、法律で回収が義務。無理なら身元のわかるものだけでも回収し、遺体は焼く。冒険者の遺体はギルドへ集められる。


 死蔵しても邪魔なので、初心者支援として配布しているらしい。


「ああ、そういうことですか」


 納得して受け取る。


「この話をすると気味悪がって受け取らない人も多いんですけど」


 困ったように笑うアマネさんも可愛い。


 オレは縁起を担ぐタイプではないので喜んで受け取る。


「剣士用の装備ももらえたりします?」


「イソさんは剣士の素質もありましたね。大丈夫ですよ。どちらを使うかは試してから決めてもいいです。複数素質がある場合、最初の一月は転職無料です」


 そう言って軽鎧と片手剣も持ってきてくれた。


 両方ただでくれるとは太っ腹だ。


「魔法や剣術を教えてくれるサービスは?」


「初級ならギルド職員が手引します。受けますか?」


「お願いします」


 その後、アマネさんと宿や食事処、狩場の雑談をしているとギルドカードが完成。


 入場税の銀貨一枚も返却された。


ギルドカードには名前、ランク、所属、職業が記載。


「では、あらためまして、イソさん。アルスター冒険者ギルドへようこそ!」


 職業は魔術師。申告通りだ


 ステータスを確認する。


――――

名前:イソ

年齢:15

Lv:5


基本  職業補正

体力: 70(70)→210(210)

魔力: 55(55)→165(165)

筋力: 70(70)→210(210)

知恵: 50(50)→150(150)

敏捷: 50(50)→150(150)

器用: 48(48)→144(144)

幸運: 52(52)→104(104)


職業:

・魔術師Lv1

 体力:1

 魔力:2

 筋力:1

 知恵:2

 敏捷:1

 器用:1


・剣士Lv1

 体力:2

 魔力:1

 筋力:2

 知恵:1

 敏捷:2

 器用:1

――――


 なんか職業がふたつあって、それぞれの補正が付いている。


 職業補正って倍率なんだな。魔術師と剣士の補正が両方乗っている。


 つか職業があるだけで基本ステータスが二倍とか、すげぇ。


「どうしました?」


「いや、職業補正ってすごいなって」


「ああ、ステータスを確認してたんですね。職業によってはマイナス補正がある場合もありますけど、戦闘職は最大二倍とかありますよ」


「最大二倍?」


「はい。上級職だと三倍とかあるとも聞きます。最低でも一割増しです。職業Lv5まで行けば倍率もかなり伸びますよ」


 ということは、職業Lv1で最低1.1倍。


 最低を引き続ければLv5で1.5倍。


 最大を引き続ければ6倍。


 かなり開きがあるな。


「イソさん、魔術師の方が準備できたそうです」


「はい」


 アマネさんに案内され、ギルド内の修練場へ向かう。


 ローブ姿の男性が待っていた。


「ギルド職員のカンダだ。よろしく頼む」


「今日登録したイソです。よろしくお願いします」


 アマネさんは業務があるらしく去っていった。


「まず魔法というのは――」


 講義が始まった。


「では実践に入る。ギルドで教えるのは初級だけだ」


 カンダさんは的に向かって呪文を唱える。


「炎よ我が敵を焼き尽くせ! 火球(ファイアボール)!」


 バスケットボールほどの火球が的に命中した。


「修練場の的は強力な対魔法防御が施されている。この程度では壊れん。次だ」


炎弾(ファイアブリッド)、炎壁(ファイアウォール)と次々に魔法を見せてくれる。


 さらに風刃(ウィンドカッター)、土槍(アースランス)など特徴的な魔法も披露。


 その瞬間――


『天啓(スキル):火魔法Lv1を閃きました

 火球(ファイアボール)を覚えました

 炎弾(ファイアブリッド)を覚えました

 炎壁(ファイアウォール)を覚えました』


『天啓(スキル):水魔法Lv1を閃きました

 氷球(アイスボール)を覚えました

 氷弾(アイスブリッド)を覚えました

 氷壁(アイスウォール)を覚えました』


『天啓(スキル):風魔法Lv1を閃きました

 風刃(ウィンドカッター)を覚えました

 風弾(ウィンドブリッド)を覚えました

 風壁(ウィンドウォール)を覚えました』


『天啓(スキル):土魔法Lv1を閃きました

 土槍(アースランス)を覚えました

 土弾(アースブリッド)を覚えました

 土壁(アースウォール)を覚えました』


 一気に全部覚えてしまった。


「やってみるといい」


 促されたが、ここで本気を出すと騒ぎになりそうなので、少し手間取ったふりをして火球(ファイアボール)を放つ。


 カンダさんの火球より倍ほどの大きさの火球が的へ飛んだ。


 カンダさんによれば、魔術師は初級魔法なら呪文を唱えることで使える。ただし呪文を正確に覚える必要があり、ひと言でも間違えると失敗する。


 天啓で魔法を覚えると、使いたい魔法を思い浮かべるだけで頭に呪文が示されるため、失敗が少なくなるらしい。


 魔法を覚えるには繰り返し使うしかない。地道に頑張れと言われた。

 もう覚えたけどな。


「ふむ。全力かもしれんが、実戦では魔力切れは死につながる。

 初級魔法は使い勝手がいいが、魔力配分を間違えるなよ」


 なるほど。講義でも言っていた。


 魔力量によって威力を変えられる。


 ステータスを見ると、いまの魔力使用量は1。職業倍率も威力に関係するのかもしれない。


「では、私は剣術の手ほどきができる者を連れてくる。教えた魔法を練習していろ。魔力が残っていないなら休憩していてもいい。魔力は自然回復する」


 カンダさんが修練場を出ていったので、軽く閃いた魔法を試す。


 もちろん魔力使用量はすべて1。


 詠唱が面倒なので、頭の中で炎弾(ファイアブリッド)と考えると、そのまま的へ飛んでいった。


『天啓(スキル):無詠唱を閃きました』


 ……なんか、やったらできちゃいましたってのはさ、チートっぽいよね。


 異世界チートおじさんだよね。


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