新ソーニッジ村
◆新ソーニッジ村
「新しいダンジョンを見つけたぁ!?」
今度こそ大声でアマネさんが叫んだ。
土竜を倒してテントで夜明かしした翌日である。
魔石の買取は許されたが、素材の全買取は拒否された。関連商品の価格が、暴落する可能性が高いので、適宜卸して欲しいとのこと。在庫にしておくと冒険者ギルドで流通を仕切ってると商人ギルドから突き上げが来るので、在庫もしておけないらしい。
さもありなん。
なお、魔石の袋を出したらカンダさんが青い顔をしていた。鑑定が終わった分から入金してくれればいいです。
「これは大騒ぎになるわね。領主様にも話を持って行かないと。ああ、その前にギルドマスターへ…」
アマネさんがブツブツ言っている。
「イソさんを疑うわけではありませんが、新しいダンジョンを見つけた場合、複数の冒険者とギルド職員による存在確認が行われます。
聞いたところでは1階層はオーガとのことですから、ランクD冒険者への依頼となるでしょう。
場所はソーニッジ? ですか? 地図にも載ってないような場所なので、道の整備も行われます。
またダンジョンの管理のために衛兵と冒険者を数組送り込むことになります。
最低限の管理が始まると同時に、そこへ新規に村を開拓します。
そのため領主様の許可が必要なのです。
あとは冒険者ギルドの設置、必要な施設、宿などの誘致。
報告はギルド本部にしますけど、実務はこちらに丸投げでしょうね。
ロージアンの冒険者ギルドにも声をかけなければなりませんし。
道路整備などはロージアンの方が近いのかしら?
面倒な案件を持ち込んでくれましたね…」
アマネさんが頭を抱えている。
「ダンジョンを討伐してしまった方がよかったのでしょうか?」
「そんなことはありません。これだけの資源をドロップするダンジョンですから、管理する方針でよかったんです。
単に私たちが忙しくなるだけです」
恨みがましい目でアマネさんが見てくる。そうは言ってもな。
「ダンジョンの近くの元ソーニッジ村を利用するのは構わないんですが、できれば村の名前をソーニッジにして欲しいのと、今回の被害で死んだダークエルフの慰霊碑を安置しているので、それだけ保存をお願いします」
「慰霊碑は大丈夫だと思います。村の名前は領主様に進言しておきます。
しかしまあ」
アマネさんが大きくため息をついた。
「未確定なのに、この話はどうかとも思うんですが。
本当に未発見のダンジョンで発見者がイソさんの場合、ダンジョンにイソさんが登録されます。というか、もうすでにダンジョンにイソさんが登録されているはずです。
ダンジョンマスターを倒すというのは、そういうことなんです。
ある意味でイソさんはソーニッジのダンジョンの所有者になりました。
そのため、ソーニッジのダンジョンで上がった利益、ソーニッジ村へ設置される冒険者ギルド限定になりますが、そこでの売買利益の1割がイソさんの口座に入金されます。
あれだけのドロップがあるダンジョンの売買利益の1割です。
たとえばですね、イソさんの納品したミスリルのインゴットですけど、買取は銀貨10枚ですが、ギルドからの卸値は金貨1枚になります。銀貨90枚が利益です。つまりミスリルのインゴットをひとつ売買するごとに銀貨9枚がイソさんに入金されるんです。
間違いなくソーニッジには冒険者が押し寄せます。
毎日金貨10枚どころではない所得をイソさんは得ることでしょう」
不労所得か。ん? そうか。不労所得か。それはいいな!
しかし買取金額の10倍で売却なのか。ぼってるな。いや、その利益から領主への税やギルド運営費、維持費なども支払われると考えると、そうでもないか。膨大な資料の整備やら、素材の売買を含めた処理やら。人件費もバカにならんからな。
「それで、もしもイソさんが死ねば遺産として、その利益は私のものになるんです!
新ダンジョン発見? これ以上の甲斐性なんてありません! イソさん、結婚しましょう!」
アマネさんの目が狂ってる。
あ、カンダさんに叩かれて正気に戻った。
「すまない、イソ。アマネが迷惑をかける。それで魔石だが、全部は無理だが大物はいくつか鑑定した。おまえ、ドラゴン倒したのか?」
「倒したのはラージャです。ソロで」
「「ソロで!?」」
カンダさんとアマネさんがハモった。
「そうだった。ランクアップ処理もお願いしたいんです。オレとエミリアはランクCまで大丈夫だと思うんです。ラージャはランクEですかね。それとラージャのランクアップ試験の手続きを…」
「ドラゴンスレイヤーのダークエルフにランクアップ試験って必要なのかしらね。ランクDですよ?」
「特例は認められない。ギルドの鉄則だ。試験は受けてもらうしかないだろう。イソとエミリアのランクアップは問題ないはずだ。通常なら依頼達成の件数も問題になるが、ダンジョン発見の功績は大きい。
ギルドカードを提出してくれ」
3人分のギルドカードを提出する。
討伐記録を確認していたのだろう。カンダさんが慌てて戻ってきた。
「おい、アダマンゴーレムってなんだ」
「新しいダンジョンのフロアボスですよ」
「ランクAの魔物だぞ!」
「強敵でした…」
疑わしい目付きのカンダさん。
「…こいつをランクCに置いとくのか…」
正直冒険者ランクに興味はない。ランクCまであれば、ランクBの依頼を受けられるのだ。ランクA依頼は超高難度依頼なので、そもそも数が少ない。
そういうのは本気ですごいひとに任せたい。
「とはいえ、パーティを組んだ状態でドラゴンを倒したんだ。パーティに『竜殺し』の称号が与えられる。カードに入れておくからな」
他にも「巨人殺し」とかあるらしい。どこかにいる巨人を倒すと得られるそうだ。
「そうだ。私も口座の遺言に、イソさんを受取人に指定しましたから。暗殺は無理ですよ」
ちくしょう、手を打ってきやがった。殺すつもりもないが。
「結婚か」
「イソ様、結婚するです?」
「エミリアはイヤか?」
エミリアは少し考える。
「ご奉仕の邪魔をしないなら問題ないです」
邪魔、邪魔か。この場合、どっちがどっちの邪魔をしていることになるんだろうな。
アマネさんへ向き直る。
「お金に目が眩んでいるひととの結婚は見合わせておきましょう。もう少し清い交際のままで。そもそもまだダンジョン関係は確定すらしてないんですから」
「そ、そうね。失礼しました。まだ早いわね」
アマネさんが「奴隷の意見に負けたわ…」と呟いている。エミリアの意見を採用したわけじゃなく、欲望に塗れたあんたの目がヤバかったんだよ。
カンダさんから受け取ったギルドカードをオレに返却しながら。
「変な質問かも知れませんけど。個人情報に口を突っ込むような」
「イソさんならいいわよ、旦那様だし」
「アマネさん、魔力操作って使えます?」
「使えないわね」
「髪の毛を乾かすのってどうしてます?」
「意味がわからないわ。そもそも生活魔法を使うから」
そうか。冒険者はそういう手があるのか。
「生活魔法の身体浄化は、まるで魔法の才能がないひと以外はたいてい習得できるの。神殿への寄付も銅貨10枚程度だし。
街の住人もほとんど使えるんじゃないしら」
「宿でお湯を桶にサービスされるのはどうしてですか?」
「気持ちの問題ね。絞ったタオルで拭くと気持ちいいですよね? その場合でも髪は濡らさないですよ」
そういうことか。なるほどな。
「沐浴とか水浴びしても、服を着る前に身体浄化で水を飛ばしますからね。魔力操作は使わないと思います」
聞いてみないとわからないことは多いものだな。
ひとまずギルドでの用事は済んだ。
あとはおいおい決まって行く話だろうしな。
ちなみに後日、ダンジョンは無事に確認され、新しい村の名前はソーニッジに確定する。その後、報奨金としてギルドから金貨10枚支払われた。村として本格的に始動するのは一年後くらいだそうだ。ただ、もう少しすれば衛兵の詰め所が配置され、それからなら冒険者も受け付けることになるらしい。
同時に詰め所へ併設の形で、ロージアンから冒険者ギルドの出張所が設置されるとのことだ。受付業務だけでもできるようにしないとダメなんだと。
◇◇◇
武器屋にアダマンタイトを持ち込んだ。
全部金属にするつもりはないが、鎧を部分的に金属で補強できないかと考えたわけだ。
「できないわけじゃないが、ベースがいまの革鎧だと貧相だな。革鎧もドラゴンの皮くらいは欲しいところだぜ」
加えてインゴットひとつでは鎧ひとつ分とのこと。
ドラゴンの皮か。まあ、あることはある。
「ドラゴン1体で、何人分の素材になりますか?」
「ドラゴンの大きさにもよるが。10人分ってことはないだろ。足のひとつで3人分くらいは素材が取れるんだから」
解体するか。まず解体レベルを上げて、ドラゴンを綺麗に解体できるようにしよう。
その間にミスリルでいまの鎧を強化してもらう。
合わせて武器も作るか。ミスリルならたくさんある。
「ミスリルでいまの鎧を加工ならどうです?」
「バランスは悪くねぇな。素材持ち込みなら、ひとつ銀貨50枚だな」
3人分をお願いする。
「ミスリルで武器を作ったら? 両手剣と片手剣をふたつ」
「それも素材持ち込みならひとつ銀貨50枚でやってやるよ。でもミスリル持ってるのか? あれもレア素材で、入手困難なんだが」
500個ほどかな。
「いくつ必要ですか?」
「インゴットなら全部で6つだな」
「わかりました」
一度店の外に出て、物陰でリュックにインゴットを入れる。
「これでお願いします」
「おいおいあんたがアイテムボックス持ちってのは知ってるから、手間かけなくていいよ。それに誰にも言わねぇし」
手間のかからないのはいいことだ。
「この革鎧は…ああ、あいつのところだな。こっちで相談しながらやっとくから3日くれ」
「わかりました。ありがとうございます」
その後、防具屋の方に回って、高級スパイダーシルクの糸で、冒険者の服を作れないか相談。ランクD相当の防御力の服が作れるそうな。
いくつか見本を見せてもらって、オレのを予備含め2着。エミリアもデザイン違いで4着。ラージャも同様に作ってもらうことにする。素材を余計に渡せば手数料は不要とのことだったので、10個ほど渡した。
ひとまず方針は決まった。
まずドラゴンの解体だな。
そのためには解体レベルをあげよう。オークが2000体くらい未解体の状態だから、これを使って解体レベルを上げる。
単に魔石を抜いて収納に戻すだけの作業だ。ギルドの倉庫を借りよう。
そのまま土竜も解体する。3人がかりなら1日で終わるだろう。
その後、アダマンゴーレム周回か。こっちはラージャメインになるが、やはり3人がかりで致命撃を繰り出せばどうにかなるはず。レアドロップだから回数は必要かもな。
結果的に土竜の素材の確保、アダマンタイトのインゴット追加で9個。アダマンゴーレムの魔石500個をその日のうちに確保したのだった。
鎧? 当たらなければ、どれほど強力な攻撃だろうと意味がないのだよ!
◇◇◇
鎧は預けてしまったので、冒険者の服だけでギルドに顔を出す。
依頼を受けるつもりはなかったが、習慣になってる感じだな。
「あ、イソさん。昨日の話だと、イソさんは魔力操作を使えるんですよね?」
「ウチのパーティは全員使えます」
「あら珍しい。奴隷のおふたりは前衛の剣士ですよね。普通は魔法を使えないと魔力操作も閃かないものですが。
それはどうでもいいんですけど。
ロージアンから協力要請が来ていまして、ソーニッジまで道を通すのに魔力操作を使える冒険者を派遣して欲しいとのことだったんですが、どうです?」
「依頼ですか? 報酬は?」
「正式な依頼になりますね。報酬はひとり1日銀貨1枚です。依頼内容には同行するギルド担当者の護衛も含まれます。
元々ギルドの調査対象外地域ですから周辺の魔物ランクは不明ですが。
どうします?」
退屈してたしな。ちょうどいいだろ。
「受けます」
「では、ロージアンにはメッセージを送っておきます。ロージアンの冒険者ギルドでソーニャという女性を訪ねてください。よろしくお願いしますね」
アマネさんに見送られてギルドを出た。
そのまま南門から出てロージアンへ転移。
衛兵に冒険者ギルドの場所を尋ねて、そのまま受付へ。
「ソーニャさんをお願いします。ソーニッジへの道の件で訪ねてきたとお伝えください」
その後、現れたのは黒髪黒目のオレに取っては懐かしい顔立ち。つまり和風美人ってことだな。その名前で和風美人はねぇだろ。名前変えろよ、ナデシコとかさ。
「ソーニャです。道路の整備を手伝っていただける冒険者の方でよかったですか?」
「イソです。このふたりはオレの奴隷でエミリアとラージャ。どちらも冒険者で魔力操作が使えます。ただ、ふたりは魔力操作に不慣れなため、少し効率は落ちると思いますが」
「問題ありません。いままで作業していた方が指名依頼で作業を中断せざるを得なかったので、作業を進められるだけで助かります。
依頼の処理をしますのでギルドカードを貸してください」
パーティへの依頼ではなく3人への依頼となるため、個別でカードを渡すことになるようだ。
「作業場所まで馬車で2日かかります。
…そういえば、ロージアンまではどうやって?
アルスターから依頼を受ける冒険者がいると連絡が来たのはついさきほどですが」
「ソーニャさんは鑑定持ちですか?」
「いえ…それとなんの関係が?」
「オレの天啓に関することなので、ちょっと話せないことなんですよ。契約の天啓はご存知で?」
「はい。もちろん。私が持っています」
羊皮紙を取り出して、契約内容を記載。パワーレベリング時のエイミーちゃんと同じ内容だな。1滴血を垂らす。
「この契約を受けてもらえば、臨時パーティを組んで天啓のことを教えられます」
「ギルド職員には冒険者の秘密を守る義務があります。いまさらの内容ですから受けることに問題はありません」
ソーニャさんも羊皮紙に血を1滴垂らした。契約成立である。
「では依頼と臨時パーティの手続きをしてきますね」
それからしばらくして戻ってきたソーニャさんは、お洒落な冒険者の服と軽鎧、弓を背負った格好である。道路工事なので、ギルド職員の制服ではダメなのだろう。
「そういえば、みなさん鎧はいいのですか?」
「いまちょっと修理に出してまして。問題ないですよ」
「はぁ…?」
そのままロージアンの門を抜ける。ひと目につかないところまで歩いて行く。
「馬車を使わないと4日かかりますけど…」
「それも問題ありません。ちょっと掴まっててくださいね」
ソーニャさんの知っている工事現場まで転移した。パーティメンバーになってもらわないとこれができないからね。
「えっ!?」
「オレの天啓で移動しました」
「まさか、空間魔法…」
「秘密でお願いします。契約によって話せないんですけどね」
しばらく待っているとようやく我に返ったのか、ソーニャさんは道路工事の指示を始めた。
オレは、すでに作成済みと言われている道の方が気になった。
「エミリア、ラージャ。ソーニャさんの指示にしたがって、道を作ってくれ。オレはすでに作成済みの道を調べてくる」
「本格工事前の、作業用の道路ですから」
「ちょっとチェックしてくるだけですよ」
そう言って別れる。
少し歩いただけでわかる雑な土魔法だった。幅は十分に拓いてあるが、表面を固めていないし、なによりデコボコが目立つ。これでは馬車の道中が不快に違いない。
オレは街道まで歩いて行き、魔力操作をしながら走った。イメージはキツく均された土の道だ。中央を僅かに高く。左右を僅かに低くすることで水捌けも確保する。
さすがに街道でもやっていないので、石畳は不要だろう。馬車が安定して通れる道になっていればいい。
ソーニャさんに追いついたので、そのまま背負って指示を受けながら走った。
森を拓き、川に橋を架け、谷を埋め。
全力で走る。
エミリアとラージャはその後始末をしながら付いてくる。
掘り返された木を処理しやすいように分割し、道の脇に置く。橋の製造に使用された周囲の土を均す。魔物の気配があれば処分するのもふたりの仕事だ。オレは天啓・英雄覇気・咆哮しながら走っていたので、弱い魔物は咆哮でやられているはずだが。
昼を少し過ぎた頃、新ソーニッジ予定地に到着する。門に当たる場所は、慰霊碑を避けて、道を作った。
ついでにダンジョン入口である洞窟までの道も整備しておく。
「こんなもんでどうでしょうね」
「…次の整備のひとはなにをすればいいんでしょうね?」
「側溝とか作ればいいのでは?」
「街道にもありませんよ、そんなもの。街中じゃないんですから。これだけ整備されていれば道は開通したと報告しても問題ありません!」
しまった。道路工事のひとの仕事を奪ってしまったか。
「はぁ…。大丈夫です。道路工事の業者は、そのまま村の建物、冒険者ギルドとか、各種誘致の決まった宿や商会の建物の工事がありますから。
下水道などもありますし。とはいえ、道路が開通したのは大きな進捗です。見積もりでは特急で半年だったのに…。
でも、これで衛兵の詰め所も作れます。いつまでもダンジョンを監視しないで放置するのは危険すぎますからね。
今日は助かりました。予算も大幅に余裕を持つことができます」
「まあ、見つけたのもオレですからね。ソーニッジは早く村ができて欲しいんですよ」
「え? イソ? イソ。イソ! あなたが発見者のイソさん! こんな若い方だったんですね。驚きました」
「恐れ入ります。では街に戻りましょう。パーティーも解散しないとなりませんし」
「はい。しかし空間魔法の使い手が存在するとは。ユニーク天啓と言われていたのですが。いるものなのですねぇ」
ソーニャさんは遠い目をしている。なんかあったのかな、過去に。
とにかく、そのままロージアンに転移。ギルドで依頼達成の証をもらってアルスターに戻った。延ばせば美味しい依頼だったかも知れないが、1日で銀貨3枚。悪くない稼ぎだろう。
◇◇◇
翌日、ラージャのランクアップ試験が決まった。緊急性が高いようで、翌日には出発になるとのこと。奴隷の主なのでオレもギルド試験官のウォートと同行する。エミリアも付いて来た。盗賊の数は30数名ということなので、ラージャには6人以上殺すなと厳命しておいた。ラージャが本気出したらひとりで全員狩ってしまう。他のひとの試験にならん。受験者は6名。
「この短期間で随分ご活躍だな、草食系」
アルスターではオレは相変わらず草食系と呼ばれている。ま、ふたつ名なんて簡単には変わらんか。
「偶然が重なっただけですよ。ダンジョンも今回試験を受けているラージャの故郷の村近くですからね。魔物に襲われて逃げ出したと聞いたので、村の様子を見に行ったらダンジョンがあっただけです」
「だとしても、普通はそのまま最下層までは行かないものだが。若いダンジョンだったか?」
「成長途中な印象でした。これから迷路とかできるんじゃないでしょうか。罠もありませんでしたし」
「ツイてたんだろうな。ただ少し気を付けた方がいいかも知れんぞ。今回の件で、他所のギルドまで草食系の名前が知れ渡った。
ウチのギルドの冒険者には、そんなことを考えるヤツはいないが、わざわざやっかみに来るようなバカな連中もいる。
そんなデタラメに綺麗な奴隷を連れてるのも目立つ。
面倒に巻き込まれないようにな」
「わざわざありがとうございます」
いまのオレは宝くじに当たったようなものだ。
そのおこぼれに与ろう、あるは横取りしようってヤツが現れるかもしれないってことね。OK。返り討ちにしてくれよう。
来ない方がいいのは間違いないけど。
そして。
ラージャは、他の受験者が連携について来られず突出する形になり、それでも自分ひとりで全滅させてはいけないという縛りのため、盗賊を誘導、受験者の前に個別に引き出すという離れ業をやってのけたが、全滅させるまで泥仕合となった。
ラージャは無事に合格したが、半数は失格という残念なランクアップ試験となったのだった。




