エイミーちゃんの頼み事
◆エイミーちゃんの頼み事
ランクアップ試験の結果発表日。
ドレッド以外の受験者がギルド2階の集会所に集まっている。
ちなみにお宝はひとり金貨5枚相当になった。
盗賊がそれなりに溜め込んでいたのと、襲われた商人が荷と荷馬車を買い戻したからだ。代わりを手配するよりは割高になっても買い戻した方がいいとの判断だろう。信用を重視する商人ならではだと思った。
ドレッドはリタイアなので、今回も確実に失格だし、心も折れたので田舎に帰って鍛冶屋をするとのこと。
鍛冶の才能があるなら冒険者なんぞやらなければよかったのに、と思いつつ、夢を見たかったんだろうと考え直す。オレもそうだからな。
ただ今回ドレッドに感謝すべきこともあった。
あの事件でひたすら殴りながら治癒を使ったおかげで聖魔法がLv3になった。これで部位欠損まで治癒できる。修復という魔法で、神殿では金貨10枚でかけてもらえる魔法だ。
庶民には厳しくても上位冒険者や貴族なら部位欠損に金貨10枚は安いだろう。
過去の部位欠損まで治療できるのか、試してみたいが近くに部位欠損のあるひとはいない。見つけたら実験させてもらおう。
そういやララティだけ、微妙に距離を置かれてるな。なんかしたっけ?
首を捻ってると、ウォートが現れた。
「諸君。試験ご苦労だった。まずは無事に依頼達成されたことを報告しておく。報酬は銀貨10枚だったので、試験の結果如何によらず頭割りとさせてもらった」
当然だろう。文句はない。
試験の結果はやはりというべきか。
サトノとガントが失格となった。
その後、個別に面談ということで、集会所で待機となった。
おずおずとララティが寄って来た。
「よかったら、あなたのパーティーに入れてもらえないかしら?」
掌返しだな。
「ごめんなさい、ドレッドのことがあるから、あなたは失格になると思っていたの。でも、合格だったから。同じランクならパーティーを組んで依頼も受けられると思って」
「ステータスなら見せないけどね。天啓も。
あんた、鑑定持ちでしょ。
本音で話そうよ。なにがしたいわけ?」
「どうしてそう思うの?」
ステータスが見えてるから、とは言わないでおく。
「ギルド職員って鑑定持ってるひといるでしょ? 聞いた話。仲間がステータス参照許可してる場合、鑑定レベルが高いと天啓も見える場合があるって」
口からでまかせだが、真実でもある。オレが鑑定持ってるからな。
ん? ギルドカードにメッセージだな。エイミーちゃんか。
『2階層周回してるパーティーに入れそうなの。パワーレベリングをお願い』
直球だな。でも、どこかのパーティーに入ってくれれば追いかけ回されることもないか。気が楽になるな。受けておこう。
「どうしたの?」
「ああ、メッセージが入ってた。それ読んでた。ごめん」
ララティは相手にされていないことに気が付いたようだ。ため息をひとつ。
「実はパワーレベリングできないかと思って声をかけたの。ドレットはけっこうレベルの高い冒険者だったのよ。それを一撃受けてもなんともなかったでしょ?
だから、あなたもレベルが高いのかもって。
私、冒険者の期間は短いけど、地元の森で狩りをしてたから、弓術士の職業レベルは高いけど、実際のレベルがランクDの推奨レベルの30に到達してないの」
パワーレベリングの依頼ならちょうどいいかな。
「受けてもいいけど、希望のレベルは?」
「Lv30まで。いまはLv22なの」
「金貨1枚出せる?」
ララティは少し考えている。
「期間によるわ。1か月以内に達成できるなら」
1日でイケるけどな。
「成功報酬でいいよ」
「助かるわ」
その後、ララティが面談に呼ばれた。どうも合格点の高い順に呼ばれてるような気がする。ララティは3番目。ということはオレが最低? ドレットのことが減点かな? 妥当な評価だ。
待ち時間で、エイミーちゃんにメッセージを投げておく。明日行くとだけ。
待たせてもしかたないし、相手のパーティーに別の要員が入ってしまうかもしれない。そうなったら最悪だ。
ララティが出てきた。けっこう言われたのか暗い顔であった。フレンド登録したいから、待ってて欲しい旨を伝える。次はオレが呼ばれるからな。
「イソ! とエミリア」
エミリアがオレの奴隷なのは知っているはずだ。別々に面談しても仕方ないと判断したのだろう。
個室に入った。
ウォートは若干眉を顰めているが、座るように指示した。椅子がひとつしかないので、困ってるとエミリアが膝に乗ってくる。
「…そのままでいい。まずは合格おめでとう。
その上で、今回の試験で最高得点を出したことも伝えておく。
評価点だが打ち合わせ時点から全体に話をリードしていたのが評価されている。
移動中もパーティー内の空気を悪くしないように振る舞っていたのも加点対象だ。
一番評価されたのは現場での作戦の修正・立案だ。
もちろん現場での動きも高評価だった。範囲攻撃じゃない炎弾を使用し、乱戦中の味方を誤射しないようにした配慮と盗賊に対して容赦ない攻撃も見事だった。
盗賊殲滅後の戦利品の獲得もスムーズに行い、鹵獲品の荷馬車を即座に使用するなどの機転も高評価だった。
最後に依頼達成のため、横暴で無能なリーダーであるドレッドを事前に排除し、きちんと依頼を達成させたことも審査員全員から高評価を得ている」
「ドレッドの件が、ですか?」
「そうだ。冒険者の目的は依頼達成だ。依頼達成のためなら、何をしてもいいとは言わないが、必要な行動はある。
今回、自薦したリーダーのドレッドを認めたのは全員の減点行為だったが、ドレッドの為人を知るための時間はなかったため、減点とはならなかった。
しかし、1日の行動の結果、ドレッドの為人を知り、排除に移ったのはおまえだけだった。
ドレッドがリーダーのままでは依頼失敗の可能性もあったため、排除に動いたのは正解だ。これは実際のパーティーでもたまにあることだ。
ドレッドが引退したことについては、ギルド内でもドレッドの適性に疑問の声が上がっていたため、減点となることはなかった。
なにか質問はあるか?」
「減点になった点はないんですか?」
ウォートはしばらくじっとオレを見ていた。
「減点はひとつだけ。奴隷のエミリアを過保護にしていたこと。
減点ではないが、帰りの馬車でララティを不安にさせたことは懸案になった。
殺していい生命とダメな生命という考え方は異質だ」
一歩間違えればシリアルキラーだからな。理解はできる。
でも、そういう風に求めたのはギルドだからな。オレは魔物を殺したくなかったんだし。オレなりに折り合いを付けて行き着いた考え方だ。
以上、とのことだったので退室した。
ララティが待っていてくれたので、早速受付でフレンド登録する。もちろんエミリアのカードにも行う。
「また新しい女の子ですか?」
アマネさんのジト目が痛い。
「フレンド登録くらい見逃してくださいよ」
「どういうことなの?」
ララティが話に混ざってきた。これは混乱の気配。
「イソさんは私の婚約者です!」
これにはララティも目を丸くした。
「まさか…」
アマネさんがにっこりと微笑んでうなずく。
「わ、枠は?」
「50です!」
アイテムボックスの枠数に今度こそララティの顎が落ちた。
真剣な表情でオレの手を取る。
「イソ君。私とも結婚しませんか? 私の村では一夫多妻が認めらています」
ララティが欲望に塗れた目付きへ変貌した。
おまえらアイテムボックス欲しいだけじゃねぇか。
「ララティ。明日は、朝に北門前へ集合ということでよろしく!」
オレはそのまま逃げ出すのだった。
◇◇◇
エミリアに王権神授で聖魔法を渡せるか試す。
聖魔法そのものはエミリアも取得済みなので、渡すことはできないのだが、上位魔法を渡せるか試したかった。レベルは引き継げないとのことだったから望み薄だったがやはりダメだった。
いくつか検証があるので、午後に娼婦通りへ向かう。オレ自身はここではエミリアにしかお世話になっていないが、エミリアは2年間お世話になった場所だ。
エミリアに確認したところ、特別不仲なひとはいないとのことだった。
なら普通に並んでもらおう。
娼婦通りの一角に椅子を持ち出して、身体に不調のあるひとに並んでもらう。
以前は性病などの病のひとは治せなかった。聖魔法レベルが上がって 完全回復が使えるようになったので、以前に治せなかったひとも治せるのでは、と思ったのだ。こちらの勝手な都合の検証なので、もちろん無料である。
オレの隣ではエミリアがニコニコしながら立っている。以前にもオレが来たことを覚えているひともいるのだろう。行列ができ上がって行った。
鑑定・治療・身体浄化・鑑定の流れで体調が戻ることを確認しながら進める。身体浄化はおまけだ。ひとり10秒も掛からない。以前、性病を患っていたひとには 完全回復も使う。
ひととおり治療を終えて、全体を鑑定すると、病気の子がふたり。
エミリアも知らない顔だった。
「どうして並ばなかったの?」
「「お金ないから」」
ハモられた。双子か?
10歳くらいに見えるが、世の中幅広い需要があるからなぁ。ロリソンみたいに。
ロリソンみたいに!
「「それに」」
「タダで何かくれるひととか信用したらダメだって」
「前にいたおねえちゃんが教えてくれた!」
うわぁ、正論だ。何も言い返せねぇ。でも病気放置するとアルスター全体に広がる可能性があるんだよ。冒険者なら神殿行って自分で治療するかも知れないけどさ。娼館では主が管理してるだろうし。
「わたしが話してみるです」
エミリアは双子を連れて、何人かの娼婦のところへ行った。
戻ってくると双子は伝説を目の当たりにした子供の目をしていた。
「「娼婦通りの聖者さまだ!」」
そういうふたつ名が付いていたらしい。
「じゃあ、病気を治すぞ~」
鑑定・完全回復・治療・身体浄化・鑑定のフルコース。
「「すごい! きれいになった!!」」
なお、この完全回復、未知の病気は治せない。ぶっちゃけ、インフルエンザは治せても風邪はダメだってことだ。
その後、防具屋に回る。ちなみに武器屋も防具屋もどちらも「武具店」である。金属製の武具を扱ってる店を武器屋、木や革製の武具を扱ってる店を防具屋と呼んでるだけだ。主にそういう武具を買うからな。
防具屋に来たのは弓を新調するため。このお店の支店がスミストルに出てなかったのである。アマネさんオススメのお店なので弓も上等なのを揃えているはずだ。
弓は大きさで取り回しも威力も変わるが、威力は材質で補えるところもある。
小さくて強力な弓は引く力も必要だ。
筋力に関していえば、オレもエミリアも補正値が洒落にならないので問題ない。
ランクDだけど、誰も引けないという弓があったので、試しに引いてみたら問題ない。ひとつはそれを購入。似たようなランクDの弓があり、店主の仕入れセンスに疑問を持つがこうして売れることがあるのだから問題ないのだろう。ふたつで金貨1枚。ランクを考えると高いような。
鑑定してみる。
【精霊の弓】
ランク:D
追加効果:敏捷+50
【鬼人の弓】
ランク:D
追加効果:筋力+50
なにこれすげぇ。追加効果って職業補正前の基本ステータスにかかるんだよな。
それぞれLv5分の補正とか。精霊の弓はエミリアに。鬼人の弓はオレが使うか。
あとは雑貨屋で羊皮紙を買って来ようか。
明日はあの天啓をはじめて使うことになるな。
◇◇◇
ララティと無事に合流して。
歩きで行くのははじめてだな。スミストルに向かっている。
天気もよく、偽装にリュックを背負っているだけの軽装だ。もちろん武器防具は身に付けているわけだが、そんなもんの重さはオレとエミリアにとってはないも同然。
「あの、スミストルのダンジョンに潜るのよね?」
気楽に歩いているオレたちを怪訝そうに見ているララティ。
「パワーレベリングだろ? 基本的にララティは一緒にいるだけで何もしなくていいから気にすんな」
昨日の受付での1件でオレの中のララティの株はストップ安だ。言葉遣いも自然と砕けたものになる。
「私が心配しているのは、貴方たちの方なんだけど」
「無理はしない。安全重視で行くから大丈夫。魔法だけで倒すし」
開幕ブッパでカメ狙いも考えたけど、仮に盾をドロップしても行き場に困る。
周回してそうなのもいるけど、ワイトの方がいいか? ドロップしても買取依頼で問題ないし。まあ、それにそれほど周回しなくていいだろ。
徒歩1時間ほどでスミストルへ到着。エミリアはお散歩気分で終始楽しそうだった。
ギルドに到着するとエイミーちゃんが待っていた。
「イソ!」
「おう、元気だった?」
「元気! イソもあたしに会いたかった?」
「そうでもない」
エイミーちゃんはがっかりした顔をしたが、復帰も早い。
ササラさんに階層の状況を聞いて、いまはワイトのフロアを周回しているパーティーがいないことを確認。
ララティとエイミーちゃんのパーティー申請を行い、ついでにギルドの個室を借りる。
「珍しいですね、秘密の匂いがしますよ」
「秘密の話をしますからね」
ササラさんを軽くあしらって個室に入る。そもそもギルドの個室は密談に使うための部屋なので、防諜結界は施されている。追加で自前の遮音結界を。
そして2枚の羊皮紙を準備した。
「この羊皮紙にはオレの天啓による契約が記載されている。
こちらの羊皮紙は『今回の臨時パーティー内で経験したことを今回のパーティーメンバー以外に話すことができない』という契約。オレが死ぬまで有効。オレが死んだら話してもいいよ。
こちらの羊皮紙は『今回の臨時パーティー内で経験したことをすべて忘れ、かつ今回のパーティーメンバー以外に話すことができない』という契約。覚えていることを他人に話せないのも辛いかなと思って作った契約書。
天啓で作った契約書なので、契約は絶対に履行される。
内容を確認してもらって、好きな方の契約を選んで血を1適垂らしてくれれば契約完了となる。
じゃ、よろしく」
交渉カンストから派生した契約天啓。なんで交渉上がってんのと思ってたけど、ギルドでの買取処理が交渉扱いになってたっぽい。
よほど無茶な契約じゃなければ、契約書を作成できる。逆に筋が通っていれば、相当な無茶な契約でも契約書を作成できる。
たとえば、契約したら死ぬは作成できなかった。契約の対価がなにもないからだ。オレの財産に手を出したら死ぬ、もダメ。エミリアに傷を付けたら死ぬ、はOKだった。
契約の内容が具体的なら行けるっぽい。
だから、今回の契約書は有効ということだ。
「あたしは話せない方にする。イソとの思い出は忘れたくない」
エイミーちゃんはそっちか。そうだろうと思っていたよ。
「記憶を失うのはいつなの?」
さすがにララティは考えている。
「パーティーを解消したタイミングだな。それまでは、エイミーちゃん同様にパーティーメンバー以外に経験したことは話せない」
「私は記憶を失う方でお願いするわ。なにかとんでもない経験をしそうな気がするの。それを覚えたまま、誰にも話せないなんて、そんなストレスは抱えたくない」
ララティの性格を考えると妥当な選択だろう。そうなると思って2種類用意したんだからな。
血の誓約が成された羊皮紙を回収し、収納に入れる。
「さて、楽しいダンジョン周回と行きますか!」
◇◇◇
ダンジョン入口から4階層を選択。
エミリアはわかっているから問題ない。ララティとエイミーちゃんにオレの身体にしがみつくようにお願いする。
そのままボス部屋の前に転移。
「どういうこと?」
「オレの天啓なんだよ。転移」
「まさか、空間魔法!」
「使えるひとはめったにいないと聞くけど、知名度は高いね」
呆れた顔のララティ。同時に、秘密にすべき内容であることも、契約内容も腑に落ちたようだ。
「記憶を失う選択でよかったわ。ちょっと黙ってられる自信ないし、言えないストレスで頭おかしくなりそう」
オレとしては天啓の検証もできるし、ララティの選択には感謝だけどな。
ボス部屋へ入る前に経験分配でオレとエミリアを0、エイミーちゃん20%、ララティ80%に割り振る。エイミーちゃんの方がレベル低いから必要経験値も少ないだろ。
ワイトへの攻撃はオレとエミリアで交互に。火魔法以外を順番に使う。
火魔法はLv3、上級まで覚えてるが他がまだLv2だからだ。
「じゃあ、行こうか」
ボス部屋へ突入。ワイトがポップ。ポップといっても、急に現れるわけではなく、どこか滲み出る感じ。
完全に現れたところで、水球の魔力20。オーバーキルかも知れないけど、ワイトは魔法抵抗も高いので、10倍程度は付けといた方がいいだろ。
もちろん一撃。
レアドロップはないな。
魔石を回収。
「うわ、もうレベル上がった」
「私も」
ふたりともレベルだけなら、まだランクFだからな。ランクDのワイトなら経験値も美味しいんだろ。
「どんどん行くからな~」
20周でエイミーちゃんが予定レベルになったのでパーティーから外す。
レアドロップが5個。呪いの指輪も5個。やっぱり開幕で倒すとドロップしやすような。ギルドに情報だけ上げておこうか。
50周でララティも希望レベルに到達した。
残念ながら属性魔法のレベルアップはしなかった。
火魔法のレベルアップは2000周とかしてたからだな。していくか?
後日でいいか。
ギルドに戻るとエイミーちゃんが待っていた。ダンジョンに潜っていてもいいとは言っていたんだけど。
「一度潜ったよ。2階層。強くなってた!」
いまのエイミーちゃんは剣士Lv3だし、単純にレベルさえ上がれば、2階層はソロで余裕だろう。でも、オレとしてはエイミーちゃんをスミストルに繋ぎ止める首輪を付けておきたい。それがパーティーだな。
「今日はありがとね! いまは誘ってくれたパーティーもダンジョンに行ってるから、紹介できないけど、次に来たときは紹介できると思う。
パーティーのエースになってみせるから期待しててよね!」
はいはい。期待してますよー。
「男女混成パーティー?」
「んにゃ。女性だけ。リーダーは22歳のバツイチ。男なんて信用できない、が口癖」
エイミーちゃんが苦笑する。
「もしかして、エロいこと心配してんの? 大丈夫。ダンジョンでストレス発散できてるし、っていうかストレスないし。
他の男見ても、なんでかそういう気分にならないんだよね。でもイソならいいよ! エロいことして行く?」
おまえがしたいんじゃねぇの? とは言わないでおく。
「ララティをアルスターに送らないとならないから、また今度な」
「あら? 私ならひとりで帰れるから大丈夫よ。それに私もここのダンジョンなら2階層まで潜れるから、ソロでレベルアップの確認もしてみたいし。
ここで解散しましょう」
余計なことをララティが言い出した。微妙に視線が冷ややかなのは、倫理観の違いだろう。推定処女だしな。
仕方ないので、パーティーを解散する。
酒場のテーブルで待っていたララティはきょとんとした顔をしている。
ギルドカードを返す。
「パワーレベリングは終わったのよね?」
「ステータス確認したんだろ?」
パワーレベリング中の記憶は失われているようだ。
「ええ…契約は成立したようね。ちょっと待ってて。貴方の口座に金貨1枚を振り込んで来るわ」
ララティが受付に行った。ササラさんがこっちを見てるが、また彼女に負担をかけなくてもいいだろう。買取はアルスターでやろう。ワイトの魔石はそれなりに高容量だ。10個は手元に残しておきたい。
さて。幸いまだ時間はあるか。
ダンジョンに行くと言ったララティを見送って、ササラさんにギルドの裏を使う許可を取る。野営の道具を確認したいという名目。
「ちょっとこれ、どういうテントなの!」
せっかく作って、一度しか出番のなかったテント。
エイミーちゃんのエロいことのために宿を借りるのもバカらしい。テントの中なら、どんな大声も大丈夫。
レベルが上がって体力が増したエイミーちゃんを満足させるのに、朝までかかった。少し控えろよ。エミリアだって抑えるぞ。
「だって、次、いつ会えるかわかんないじゃん!」
意外に殊勝なことを言っているエイミーちゃん。
ま、オレはもう2度と会えなくても問題ないけどね。
そうして、朝早くアルスターへ戻ったのだった。




