ランクアップ試験
◆ランクアップ試験
翌日、ギルドに顔を出すとアマネさんから。
「ランクアップ試験の日程が決まりました。明後日、二日後です。本日、午後から試験内容の説明を行いますので、昼の鐘がなりましたら、ギルド2階集会所に集まってください」
こういう連絡も必要ということなのね。
「遅れたらどうなるんですか?」
「今回の試験は受けられません。次回になります。なお、このことはギルドカードにメッセージを送付します。それすら見逃すひとは、そもそも受験資格がありません」
そういうことなのね。
「イソさんは、今日はなにか?」
「ランクアップ試験が近日中ってことだったので状況の確認と、フレンドメッセージの依頼」
「ああ、エイミーさんですか」
「Lv15になったって。ソロで2階層がんばってるらしいから、応援のひとことを」
「マメですねぇ」
アマネさんが苦笑するけど、ここで返信しないとエイミーちゃんならアルスターまで来て文句いうからな、絶対。
「ちょっとオレ常識ないからわからないんですけど、フレンドメッセージって、こんな近況報告に使うようなものなんですか?」
「他に、何に使うんです?」
「緊急時の助けとか?」
「フレンドに頼るより、ギルドに頼るべきことですね、それは。
それよりイソさんもメッセージ送るなら、ランクアップ試験のことも書いておくといいですよ。往復の道のりまで考えると5日くらいは取られますからね」
「意外にかかりますね」
「今回は場所がよくありませんでしたね」
アマネさんがにっこりと笑う。これ以上は試験の説明のときに聞けということだな。
一度出直すと、オレたちの他に6人、2階の集会所に集まっていた。
昼の鐘が鳴ると同時にギルドの職員が入ってくる。
「よく来てくれた。今回の試験を担当するウォートだ。元ランクB冒険者で剣士。
今回は南門から続く街道に出没する盗賊の討伐となる。
アジトは発見済み。試験内容は、おまえたち8人でパーティーを組み、盗賊のアジトに潜入、殲滅。つまり皆殺しだな。をしてもらう。
先日の調査では捕虜はいなかったが、新たな被害者が出ていないとも限らない。
捕虜は救出、盗賊は殺せ。
アジトまでは馬車で2日。途中1泊する。ギルドから6人乗りの馬車を2台出す。御者付きだ。
試験中の馬車の護衛は考えなくていい。
質問はあるか? ないなら明後日、朝2回目の鐘前までに南門に集合となる」
一応確認しておく。
「パーティーと言ったけど、ギルドカードに登録してパーティー編成するんですか?」
「その必要はない。盗賊、人間を殺しても経験値は入らない。パーティー編成しても意味がない」
次に小柄な男が手を挙げた。
「盗賊のお宝はギルドのものになりますか?」
「いや、回収したお宝は今回生き残ったメンバーで山分けとなる。素材などギルドで買取が必要なものは通常依頼と同様だ。金額の分配などはおまえたちで話し合って決めろ」
次に神官服の男が手を挙げる。
「殲滅とのことでしたが、捕虜は取らないのですか?
盗賊には犯罪奴隷の道もあると聞いています」
「捕虜の必要はない。今回の連中はやり過ぎた。皆殺しにしろ」
ウォートは他に挙手がないかを見渡した。
それ以上の質問がないと見て終了を宣言。
「質問は以上だな。集会所はこの後利用者がいない。明後日のための打ち合わせに使用して構わない。臨時とはいえパーティーだ。打ち合わせはしっかりやっておけ。
それと試験には私も同行するが、試験中の質問や助言は原則受けられない。私が介入するのは非常事態のみだ。なお、非常事態にはおまえたちの全滅は含まれない」
なるほど。本当に臨時編成のパーティーで依頼を達成するのが試験内容だな。
もう一度受験者を見回してウォートは退室した。
ふむ。
「打ち合わせということだが、せめて自己紹介くらいはしませんか? オレはイソ。魔術師です」
「わたしはイソ様の奴隷エミリアです。剣士です」
オレとエミリアの名乗りに応じる形で次々と名乗る。
最初の小柄な男がマーチス。盗賊。
神官服の男がガント。神官。
あとは剣士の女性、ステラ。
魔術師の男性、サトノ。
弓術士のエルフ女性、ララティ。
斧術士の大柄な男性、ドレッド。
以上8名のパーティーだ。人数としては大きめだな。
「盗賊の人数を聞き忘れましたね」
すっかり忘れてたわ。敵の人数を確認しないとか、減点対象だよな。
「たぶん、最近名前が売れてきた黒斧って盗賊団じゃないかな。30人くらいの大所帯で、ロージアンからの隊商を襲ったらしい。そちらから討伐依頼が出ているはずだ」
マーチスはきちんと情報収集するタイプ、と。盗賊だし、そういうものかな。
「依頼がかち合ったりはしないんですかね?」
「この討伐が試験に選ばれたということは、一時的に依頼は取り下げられているはずだ」
「なんでそんなこと知ってんの?」
剣士のステラ。疑問を持っただけで合格。
「仲間がロージアンにいてね。メッセージが来ていた。受けようとしたら依頼凍結されて怒っていたよ」
マーチスが苦笑していた。
本来、ロージアンからの討伐依頼。それがアルスターでの試験に使われているということは、アジトがアルスターに近いのか。南の街道といえば、オレがはじめてアルスターに来たときの街道だ。
次の街まで徒歩10日と聞いた。馬車の速度は知らんがひとの倍は出るとして5日の道のりか。依頼では1泊2日。調査依頼があって、アジトを調査した結果、アルスター寄りだったというところかな。
「パーティーにはリーダーが必要じゃねぇか?」
斧術士のドレッドだ。いた方がいいだろう。見立てではマーチスが適任か。
さて、ドレッドは敵の分析に一度も混ざらずリーダーを先に決めようというのはどういう目論見か。
「どいつもこいつもひ弱そうでダメだ。オレがリーダーになってやるよ」
ドレッドは20代半ばに見える。他は10代後半が多いだろう。神官のガントが20代前半か? ひ弱そうって、ステラなんかは腹筋割れてそうなんですけど。
「ウォートさんって、冒険者何年目なんですか?」
一応聞いてみる。
「おう、もう7年のベテランよ」
7年やっててランクDになれていない、と。これの意味するところを計りかねていると、魔術師のサトノがくすりと笑みを溢してしまった。
「なんだ? 文句あんのか?」
「いえ、なんでもありません」
サトノが慌てて首を振る。
普通はもう少し早くランクDに上がるってことだな。試験内容やメンバーのツキもあると思うが、ドレッドは何度も試験に落ちていると見ていい。
「試験に落ちるとペナルティがあるんですか?」
「次の試験までにランクDに相応しい実績を上げる必要がある。スミストルのダンジョン5階層攻略のような」
マーチスが答えをくれた。
「リーダーは俺でいいよな?」
譲る気はなさそうなドレッド。
「オレはマーチスさんがいいと思いますが」
「いや、俺はリーダーの柄じゃないから」
オレの推薦は辞退された。他にリーダーっぽい人物はいないか。
脳筋でも戦うときに先頭走って士気を上げるならドレッドでもいいか。
「ではドレッドさんでいいです」
他に意見はなかったので、ドレッドがリーダーに決まった。
そのため、これからの打ち合わせもリーダーの指示により進むだろうと思ったが、ドレッドはエミリアへいやらしい視線を向けるだけで何も言わない。
「ドレッドさん、打ち合わせはどうするんです? 作戦とか」
一応聞いてみる。
「作戦? 30人の盗賊程度、一気に突っ込んでなぎ倒せばいいんだろ? 作戦なんていらねぇよ。半分は俺が倒してやるよ」
残りの半分はどうするんだろう? エミリアを除く他の全員がため息をついた。
「では、盗賊の半分15人はドレッドさんに倒してもらうとして。
アジトを発見したら俺が天啓で偵察してくる。
歩哨がひとりなら、戻るときに倒してくるが、ふたり以上だと厳しい。
その場合、一度そのまま戻る。
歩哨はララティさんとサトノに任せられないだろうか?」
ふたりはうなずいた。
「そのあと、ドレッドさんを先頭にアジトへ突入する。アジトが洞窟の場合、分岐があることもあるので、その場合は、イソさん、エミリアさん、俺の順番で分岐を調べ、盗賊がいたら倒す。
最悪の場合、ステラさんとガントさんが15人抑えることになるが、分岐の調査が済み次第合流するので、ドレッドさんが15人倒し切るまで待つか、援軍の到着まで待つ方法で行こう。
すべてドレッドさんの働き次第です。よろしくお願いします」
マーチスが綺麗にまとめてしまった。
持ち上げられてドレッドも満足そうだ。
ま、現場見てから再度練り直しだろうけど、大まかな方針があれば、現地で調整だけで済む。アジトが洞窟じゃなくて廃屋だった場合とか。
ひとまず打ち合わせを完了し、解散となった。
その日、オレとエミリアはテントに宿泊し、実際の使い勝手を試したのだった。
◇◇◇
試験当日。偽装のため、普通にリュックを背負う。中身は携帯食料と毛布だ。エミリア用のリュックも用意したが、テントしか入ってない。偽装だからな。
自分が魔法使いだったことを思い出して、装備も買っておいた。スパイダーシルクのローブとトレントの杖。どちらもランクEなので、性能はそれなりだろう。
エミリアにも魔法は使わないように指示しておいた。加えて、指示するまで全力戦闘を禁止する。エミリアが全力出したら盗賊30人は瞬殺されてしまい、他のひとたちの試験にならない。
集合場所には最初に着いた。ドレッドより後になったら何を言われるかわからないからな。
次に現れたのはマーチスである。考えることは同じだったのだろう。
「おまえたち、ずいぶん早いな」
ウォートがギルドの馬車を連れて現れる。
その後続々と集合し、最後から2番めにドレッド、時間にはかなり余裕があったが最後にサトノが到着し全員集合となる。案の定、サトノはドレッドに怒鳴られていた。
曰く「リーダーより後に集合するとはなにごとだ!」だが、オレにいわせれば時間に間に合っているのだから単なる言いがかりである。パワハラというやつだな。
その上、これは臨時パーティー。義理もない。
「じゃあ、馬車の組分けを決める。最初の馬車には俺とエミリア、ララティ、ステラ。残りは次の馬車だ」
「悪いけどエミリアは俺の奴隷です。ドレッドさんの命令は聞きません」
「…なら、おまえが命令しろ」
「拒否します。エミリアと同じ馬車がいいなら、オレも同乗しましょう。ステラさん、代わってもらえますか?」
ドレッドはステラにはさほど執着がないようだ。おもしろくなさそうな顔をしているが、それ以上文句を言うことはなかった。
「いいか、馬車で移動する最中も見張りは必要だ。御者台見張りを立てるぞ」
その意見には賛成なので、黙ってうなずく。
「こっちの馬車は最初、ララティにお願いする。いいな」
ララティにも異論はないらしい。
向こうの馬車では見張りの順番まで決めていたようだが、向こうは向こう、こちらはこちらというところかな。
馬車で半日くらい進んだところで。
「見張りを交代だ。イソ、おまえが出ろ」
「イソ様の代わりに、わたしが見張るです」
ドレッドが言い終わるかどうかのタイミングでエミリアが御者台に出る。交代でララティが腑に落ちない顔で戻ってきた。
「どうしました?」
「いえ、次はイソ君が来るものだとおもっていたので」
そういう指示だったけどね。ここまでの道中もドレッドはしきりにエミリアに話しかけて気を引こうとしていたが、無意味なのは当たり前。強制の仕方次第ではあるが、主人以外に好意を向けるような奴隷はいない。愛想くらいは振りまくとしても。それすら禁止されれば、機械のような無表情で対応するだろう。
「エミリアって奴隷なのよね?」
ララティの質問。
「ええ」
「あんな表情豊かな奴隷は、はじめて見たわ」
ロリソン商会に行ったことがないのだな、そう思った。あそこの店員は、全員少女ということを除けば実に楽しそうに働いているように見えるし、実際ロリソンは奴隷を大事にしている。
とはいえ、これは褒められているのだろう。
「ありがとうございます」
「奴隷を見れば主人がわかるっていうけどねぇ。実例をはじめて見た感じ。あらためてよろしく、イソ君」
ララティと握手。ドレッドの不機嫌メーターが急上昇しているように見える。
今度はララティにアピールを始めた。これまでの戦闘と、どれだけ自分が強いか。
男はちからがすべてだ、と必死ともいえるアピール。
ララティは醒めた目でそれを見ている。これ以上は空気が悪くなりそうなので、会話をフォロー。
「そういえば、ドレッドさんは冒険者7年目だそうですが、ララティさんはどのくらいです?」
「1年くらいかしらね。年齢は秘密にしておくわね。エルフだから見た目通りじゃないってことだけ教えてあげる」
ララティがそう言って笑った。不機嫌回避か?
「イソ君は何年目なの?」
「2か月くらいですかねぇ」
そのくらいじゃないかな。もう少し短いか?
「「え?」」
ララティとドレッドがハモった。
「2か月で、ランクD試験ですって?」
「俺だって最初の試験まで3年近くかかったぞ…」
エイミーちゃんがムダに過ごした期間を含めて半年でLv15。ランクDがLv30推奨だとすると、ドレッドの3年は変な期間じゃないし、むしろララティが異常。冒険者登録する前に、どこかでレベル上げしてたとかじゃないと1年では難しいだろうな。
「ま、魔物の討伐数ならどうだ? 俺は1日でゴブリン100匹狩ったことがあるぜ!」
手柄自慢は好きじゃないし付き合わされるのもゴメンだ。
「『草食系』って聞いたことないです? アルスターではわりと有名だと思うんですけど」
オレが言った瞬間。
「草食系のイソ! ゴブリン集落壊滅の!」
「他にもゴブリンハンターとか、オークジェノサイダーとか聞いたことがあるわね…」
他にもふたつ名付いてたか。どちらも心当たりはある。ララティのオレを見る目は好意的な方向に変わったが、ドレッドの目付きが怪しい。嫉妬? なんでよ。
街道はわりと整備されているためか、馬車そのものの性能がいいのか、あまり揺れない。そのため、御者台でもあまり疲れないようで、半日交代でもララティもエミリアも疲れた様子を見せなかった。
少し気になったので、馬車の車輪を調べてみると、独立懸架のサスペンション装備だった。動力が付いてるわけじゃないからドライブシャフトとかはなかったが。
けっこう文明的にも進んでるような気がする。前世知識でチートしまくりってのは難しいかも。いまのところ、うまく行ったのは「泡の国」だけだな。
「いいか! 馬車を中心にテントを張るんだ! 護衛のときの基本だぞ!」
ドレッドが怒鳴る。護衛依頼じゃないけどね。リーダーぶりたいんだろう。
一応言われた通りにテントを設営。
みんなで馬車の近くに集まって、具の少ない、味の薄いスープに干し肉、日持ち優先の固いパンをスープに付けて、マズい飯を食う。
食後、軽く雑談をしていると。
「おい、イソ。おまえのところのテントはひとつしかないようだな」
「エミリアと一緒に使いますからね」
「よし、俺が代わってやろう。おまえは俺のテントを使え。俺がおまえの…」
「お断りします」
ドレッドの言葉を遮って答える。
「なんだと! リーダーの言葉に逆らうのか!」
「意味がわかりませんね。ドレッドさんと交代することでオレになんのメリットがあるのかわかりませんし、デメリットしか感じません。ですからお断りします」
顔を真赤にするドレッド。
「おい! おまえらからもなんか言ってやれ! リーダーの指示に従うことはパーティーメンバーとして大事なことだ!」
「ドレッドさん、言葉だけ取れば正しいですけど、リーダーの権利を持ち出す場面が間違ってますよ」
苦笑しながらマーチス。
「さすがにないわ」
冷笑するステラ。
「…」
無言で軽蔑の目を向けるララティ。
サトノも苦笑しているだけだし、ガントも同様。
「何が草食系だ! 俺の方が強いことを教えてやる!」
ドレッドが掴みかかってきた。エミリアが動くが視線で止める。
一発もらっておこう。
「!」
殴った拳の痛みか、笑ったオレの顔か。あるいは両方か。ドレッドの目が驚きに見開かれる。
殴り返しておく。
ドレッドが吹っ飛ぶので、マウントを取る。ステータスを見ると死にそうになっていたので、治癒を2発。これで全快だ。
手加減しながらドレッドを殴る。左右交互に殴る。
「離せっ! 魔術師なんかのちからで俺をどうにかできるはずが、がはっ!」
どうにでもなるっつーの。手加減しないとおまえが死ぬだろ。
「イソ君! それ以上やったら死んでしまう!」
「死にませんよ~。治癒!」
周囲にわかるように魔法。
殴っては治癒、殴っては治癒を1時間くらい続けた。
「…ごめんなさい…ゆるしてください…もう痛いのはイヤです…」
全快するとしても、殴られた痛みはあるわけで。まあ、生きてはいる。
「死んでないでしょ?」
と周りを見渡すとドン引きしていた。
「生きてるって言えるのかねぇ」
かろうじて感想をひねり出したのはステラ。
「治癒持ちを怒らせない方がいいって見本だね、これは」
精神的に復帰したマーチス。
「気の毒とは思わないけど、ドレッドはここでリタイヤね。連れて行くしかないけど、馬車に残しておけば邪魔にはならないでしょう。馬車はギルドで保護するらしいし」
ララティの意見が正しいだろう。
「パーティーリーダーどうします?」
全員の視線が俺を指していた。
◇◇◇
結論からいえば。盗賊のアジトは壊滅。盗賊も全滅。お宝も回収。捕虜というか捕まってたひとはいなかった。商人を襲ったときの戦利品なのだろう、荷馬車が残されていたのでお宝はそちらに積んで回収。ギルドの馬車に連結させてもらおう。
ウォートが繰り返し「殺せ」を強調してたのは、対人戦の想定。
魔物と人間、こちらの世界のひとには重さが違う。エミリアの場合、世界はオレを中心に周っているので、他の生命は等しく価値がない。これは特殊な例。オレは違う世界のひとだから、生命を奪うことを克服する必要があり「草食系」だった。いまは克服したので、相手が他人なら生命を奪うことに躊躇いはない。エミリアだとちと難しい。エイミーちゃんだと迷う程度。
試されていたのは殺人可能かどうか。
どうも知ってたような経験済みのようなのがマーチスとステラ。
対処はできたけど、少し迷いが出たのはララティ。
サトノとガントはひとり殺してギブアップ。
帰りの馬車で。
「人殺しに慣れてるの?」
ララティからの質問。何いってんの?
「ララティさんは魔物を殺しませんか?」
今度はララティが何いってんの? という顔をした。
「ダンジョンの魔物は別、というか、アレはダンジョンが用意した餌に思えますが、外の魔物は生き物ですよね。日々がんばって生きようとしているわけで、ひとを襲うのも生き残るため、餌にするため、あるいは繁殖するためです。
そういう魔物を殺していいのに、ひとはダメっていうのは、ひとの社会のルールなんですよ。ルールに守って欲しいから、自分もルールを守る。
盗賊っていうのは、そのルールから外れた存在です。
そんなのもう魔物と同じじゃないですか?」
ララティは少し怯えた表情をしている。
「もう、ひとじゃないから殺しても平気ってこと?」
オレは首を横に振る。
「わかりにくいですかね。元々草食系なんて呼ばれてたくらいなので、生き物を殺すのはイヤだったんですが、ランクアップのために慣れました。
討伐ですから殺される覚悟もありますし。生命と生命の戦いなので、片方が絶対ってことはないんです。これは与太話ですが。
殺すのは慣れました。
あとは、殺していいのか、ダメなのか、だけなんですよ。
街のひとは殺しちゃダメ。盗賊は殺していい。それだけです」
「そう。わかったわ」
ララティは化け物でも見るような目でオレを見ていたのだった。




