起.傲慢な王太子の婚約破棄宣言
タイトル時点で王太子の『ざまぁ』が確定しますたヾ(:3ノシヾ)ノシホントウニアリガトウゴザイマスタ
アルテリア王国の老王には二人の子供がいた。王太子レオンハルトと、その妹である王女セレスティアである。
兄であるレオンハルトは、彫刻のように整った顔立ちと、人を惹きつける優雅な物腰を持っていた。公の場では慈悲深く聡明な君主として、民衆の喝采を浴びた。しかし、それは単なる仮面に過ぎなかった。
実態は無能で強欲、何よりも傲慢な男だった。政策の細かい決定はすべて側任せにし、その成果は自分の物とした。国庫も私的な贅沢のために湯水のように使われた。それでも、彼が王太子の地位を揺るぎなく保てたのには、二つの理由があった。
第一に、王国には「王位は長子が継ぐ」という不文律があったこと。
第二に、彼にはエレオノーラという、比類なき才覚を持つ婚約者がいたこと。
エレオノーラは公爵令嬢という将来の王太子妃として申し分ない身分であり、後ろ盾としては十分。彼女自身も執務能力が高いだけではない。レオンハルトのあらゆる醜聞を影で処理し、失敗を巧みに取り繕い、彼を「有能な後継者」として演出する術に長けていたのだ。彼女の手にかかれば、レオンハルトの失態はすべて戦略的深慮に、浪費は文化保護事業に早変わり。彼女の献身こそが、レオンハルトの地位を盤石にし、王国に表面的な安寧をもたらしていた。
一方、妹のセレスティアは、世間の目には「醜く怠惰な王女」と映っていた。髪はいつも無造作に束ねられ、礼服より動きやすい簡素な服を好み、宮廷の舞踏会より書斎で居眠りする事を選んだ。彼女の口癖は「めんどくさい」。宮廷の儀礼も、無意味な社交も、すべてが「めんどくさい」の一言で片付けられた。
しかし、ごく一部の者だけが知っていた。彼女は「めんどくさい」とぼやきながらも、多くの厄介事を解決してきた事実を。
例えば、軍事演習で起きた兵站の破綻を、一夜で問題点を洗い直した上で再構築した。
例えば、隣国との間で難航していた通商協定を、相手国の弱点を見抜いて有利な条件でまとめた。
例えば、調子に乗って天狗になってる若手の騎士を、模擬戦で徹底的に叩きのめしてその鼻をへし折った。
彼女は文武に秀で、問題の核心を「面倒だから早く片付けたい」という一心で見極め、最小の労力で最大の成果を上げる天才だったのだ。
「セレスティア殿下こそが王にふさわしい」
そう囁く廷臣は少なくなかったが、不文律とエレオノーラの存在。何よりも、当人が王の座を「めんどくさい」で目指そうとしないからこそ、廷臣達も王女を王へと担ぎ上げるような事をしなかった。
そんな表面的な安寧を、レオンハルトが自らの手で破壊してしまった。
春の祭典の真っ只中、広場に集まった民衆と貴族の前で、彼は前触れもなくエレオノーラとの婚約破棄と追放を宣言。
理由は「心が醜いからだ」という理不尽極まりないもの。さらに、彼は驚くべき言葉を続けた。
「私の新しい婚約者は、隣に立つ平民の娘マリアこそがふさわしい!!」
場は水を打ったように静まり返った。エレオノーラは突然の発表に一切の抗議もせず、静かに会場を去った。今まで捧げてきた貢献の全てを否定されたにもかかわらず、その背中は悲壮感を漂わせる事なく壮麗としていた。
この無謀な宣言が国中に波紋を広げている頃、老王は隣国への親善使節に出ていた。
知らせを聞いて慌てて帰国したものの、事態は最悪だった。
今までエレオノーラがこなしていた政務は滞り、国庫はエレオノーラというストッパーを失ったレオンハルトの散財で逼迫し、エレオノーラの実家を筆頭とする有力貴族たちは怒りに震え、民衆の間にはエレオノーラが押さえつけていた醜聞が漏れ始めていたのだ。
それらの報告を聞いた老王は疲れた声で命じた。
「辺境に居るセレスティアを呼べ」
王「この私を知らぬわけではあるまい!!」
王「国王と知ってこんな物を出したのか?!」
王「この私もなめられたものだ!!」
王女「………(こいつ、めんどくせー(´Д`;))」




