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4魔物

三歳になった。

これまで私は魔力操作に力を入れ、身体強化魔法しか訓練してこなかった。

まあ単に他の魔法は目立つという理由もあるけれど。

この二年で魔力量は三倍ほどに伸び、魔力操作にもかなり慣れた。

今ではずっと身体強化していても平気なくらいだ。

しかし、今、攻撃に使えるものをなにか習得しておくべきだったと反省している。


叫び声が、悲鳴が、聞こえる。

魔物が攻めてきたのだ。

レッドウルフと言うらしい、燃える狼だ。

一体だけなら村に駐屯している国の兵で済んだものの、群れをなして何十体と襲ってきたのだ。

誰も予測し得なかったこの状況。

私の両親は私を抱えてほぼ獣道な街道を走っている。

「ルシェナ!!!」

父が叫んだ。

母が転んだのだ。

そこに追ってきた三匹の狼が群がる。

父が私を抱えたまま、膝をついた。

「二人とも、逃げて…!」

それが、母親の最後の言葉。

母は狼に食い殺された。

綺麗な赤い血が飛び散る。

「あ、…あ…」

!?父親が動かない。

何故だ?

狼が迫ってくる。

「何してるの!?逃げないと!私が死んじゃう!」

呼びかけても反応しない。

父親は母の血溜まりを見ていた。

もう駄目か。

私は父の腕の中から出、狼が父を狙っている間に身体強化して木に登った。

「ふぅ」

安全圏から狼の虐殺を見物する。

母の肉を平らげた狼はまだ足りないと言うかのように、放心した父までも牙にかけた。

「ル、シェナ…」

父親の最後の言葉は母の名だった。

それにしても、最後の表情は今までで一番素敵な表情だったよ、父さん。


ある程度時間が経って、もう村に一人も生存者がいないような状態になると、狼達は森に去っていった。

私は今、一度村に戻ってきている。

魔導書の回収のためだ。

市場で本がどれほど貴重なのか分からない。

あるならば大切にしておく方がいいだろう。

家まで村の道を歩きながら辺りを見回す。

村は家や畑が燃え尽きて見るも無惨な状態になっている。

この匂いは…家畜や人間の焼ける匂いか?

焼肉屋の匂いよりもより刺激的で鼻の奥にこびりつくようないい匂い。

死体はどこにもない。

狼が食い尽くしたか持っていったのだろう。

「焼死体、見てみたかったのに…」


「あった、魔導書」

奇跡的に本は表紙が少し焼けただけで残っていた。

ぱらぱらと中身もめくって確認するが、問題はなかった。

「…他の家にもないかな?魔導書」

何かあったら貰ってやろう。

これって窃盗か?

……いやいや、私が丁重に扱って有効活用してやるのだから本も死んだ持ち主も本望だろう。


他の家も回ってみたが、持っていけそうなものはなかった。

「ラスト、村長の家」

村で一番金持ちでその分家も大きいから焼け残っているところがほかの家よりも多い。

入って確認してみるが……

「本棚がある」

本棚に収まっている本は無事だ。

一冊づつ何の本か確認する。

「物語、童話、聖書、教本……」

村長は随分と多趣味だったようだ。

「!魔導書!水の魔導書、火の魔導書…光の魔導書、あった、闇の魔導書!」

他の本も持っていきたかったが、断念して自分の適正の闇の魔導書だけ持っていくことにする。

「あ、それと…」

残っていた本全て焼き払う。

勿体ないと思うが、私の痕跡を残さないためだ。


焼け残っていた衣類を大きめの鞄に入れ、藍色の髪を隠すようにフードをする。

とりあえず、川を目指すことにした。

さあ、予定よりかなり早くなってしまったが、異世界虐殺生活の始まりだ!

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