灰
失敗した。
サニーにもそれが分かったようで『フレイムカノン』は放たれなかった。
「ごめん、しくじった。見えてると思うけど、靄の形状が変化。枝みたいに変形して、ロノウェの身体を露出させられなかった」
『みたいよなぁ。どうする? 正直HPポーションもう無いけど』
「ギリギリまで送るけど、こっちもこっちで結構キツイね。やるのなら、一撃で決めたい」
『おk。具体的には?』
枝のように靄が伸びている関係で刃が拒まれる。
2択かな。
全てを斬るか、隙間を探すか。
とは言え隙間があってもそこに正確かつ高出力で刃を通す必要がある。
突きの方がやりやすいけど、そこそこの助走をつけての箒星が望ましい。
そうじゃないとサニーの最高出力でも一撃で葬ることは困難だろうから。
ロノウェの残りHPは丁度20%程。
さっきよりまた減ったな……? やっぱり靄を纏うのはあっちにとっても負担だったりするんだろうか?
元々は自動回復で自己補完できるレベルだったけど、密度というか濃度を上げて回復よりもダメージが上回っていると考えるのが自然に思えてきた。
私の攻撃をある程度でも防がないとサニーの一撃でジエンドだ。
靄で多少は軽減されているのにボスのHPを一撃で2割削ったりと、本当におかしいな…………。
さぁ、考えている間に私達のタイムリミットは着々と近づいてきている。
最大の問題は枝のように伸びた靄がこれから変形することを念頭に置くと、殆ど目的達成が不可能な点かな。
『思考加速』は一旦止めていて、3度目ともなると時間は極々短くなるが全集中力を一合に注ぎ込んで――――…………
「やるしか、ないか……」
正直厳しい。
けれども、私達が動くのが最も被害を少なくできる筈。
周囲に黒いMPが球状に展開される。
数は6。
おそらく老師さんやスヴァルドさんが到着する寸前に使用した炸裂する魔法。
効果範囲がどれほどなのかが分からない。
大げさに回避。先程よりも僅かに距離を空け、助走距離を確保。
「サニー、3カウントで行ける?」
『あと2発分の余裕も無いから、しくんなよ? 『多重魔法』――』
「善処するよ…………。――」
口の中で転がすように呟いて、呼吸を止める。
刃を肩位まで持ち上げて、呼吸と同様揺れを無くす。
――3。
「『Function:――」
『Function:Semiauto Fire』では足りない。
あれは私自身が意識的に認識した事象をこれまた意識して計算する技だ。
私が全力で踏み込んだ場合、認識して計算してなんてしてる時間の余裕が少ないことと、靄の変化は流動的である為にこの技では対応不可能。パターンを読み取る時間があれば別かもだけど、そんな時間の余裕も当然ない。
ならば、フルオートに出来ればどうか?
悠真が常日頃から行っていた狂気の沙汰。私の脳じゃあ情報処理が追い付かない、まさしく人外の業。
無理だ。
でも、その一端なら。
「――Sentry Shot』」
――2。
――歩法・撃法混合 風蝕
地面を踏み砕き、身体を前へ。
だが、その速度は平時から然程速くはなっていない。
余裕のあるHPに任せて風蝕の連続使用。
爆発的な加速、加速度的に削れるHPを尻目に言の葉を紡ぐ。
「『散魔対斬』」
――1。
『思考加速』によって解放された思考のリソース、その一切をロノウェが纏う靄へ向ける。
正面以外の情報は捨てろ。
元々密度が高い場所の情報も捨てろ。
今更大きく軌道は変えられない。
ならばニューロンへ落とし込むのは僅かな情報だけで良い。
見えた。
その思考をする頃には、身体が軌道を整えていた。
――斬法 箒星
火炎を束ね赤の光と閃電を纏った刃が伸びた靄の0.2mm横を通り、ロノウェの鳩尾を貫いた。
だが、私の身体は枝葉のように不規則に伸びた靄の内、絡まるように取り込まれている。
サニーの放つ大火炎の気配を感じる。
抵抗は無意味だ。
お互いに。
瞬間、意識がブラックアウトした。
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結論から言おう。
私達の勝ちだ。
その瞬間を私は認識出来ていないけれど。
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