高み
時間が足りぬ。
毎日投稿してる方とかどうやって時間用意しているんだ…………?
――歩法 迅雷
魔法の類いは一切を認識できる。全ての着弾地点をざっくり予想して単純な敏捷性で無視して突っ込む。
まだロノウェは『思考加速』に対応できていない。
攻めるなら今の内だ。サニーのリソースを雑魚のデーモン散らしとロノウェへの単純火力としてに絞れるのは非常に大きい。
MPを気にすることが減るだろうし、私へのロノウェの魔法攻撃を迎撃するのだけ魔法の狙いを定める難易度が異様に高い。
なら単純化できるところはしていかないと、MPが切れる前にサニーの精神が消耗してしまう。
判断ミスの原因にもなりうるだろうし、なるべく避けたいところだ。
「『散魔対斬』」
火炎を束ね、踏み込みに更に力を込める。
ロノウェの次の魔法はまだだが、そう時間はかからないだろう。
だから――
「『ショックボルト』」
閃電にて視界を潰す。
――歩法・撃法混合 風蝕
地面とHPを砕きつつ、己が身体を強引に前へ進める。
ロノウェは己を中心とした地面にMPを広げる。
「サニーッ」
おそらく『ダークネスバースト』。
だが、私の方が速い。
「シャッ!!」
――斬法 裂止
速度を緩めることなく、腰に固定した刀で斬る。
流石に自分から刃を振るうよりも断然威力は低くなるが、『ダークネスバースト』を食らうよりはましだ。
また靄自体も僅かながら削ぐことは出来た。
とは言え、この程度ではロノウェに魔法攻撃を届けることは出来ないだろう。少なくとも有効打にはなり得ない。
だが、サニーの魔法への警戒を解くことは出来ないだろう。
現に今サニーが発動した威力もろくにあげていない『ファイアアロー』を警戒して、構えた。
それに、私に範囲攻撃魔法が通用しないと刷り込むことも大切だ。ぶっちゃけ範囲攻撃の方が対応しにくいから、相手から使わなくなってくれたら万々歳。
また、サニーの魔法へ過剰に反応するのは明確な隙だ。
MPとかは見えているだろうになんでそこで警戒しているのかは不明。
ただ、隙は隙だ。
積極的に利用すべき。
「『散魔対斬』」
ロノウェの背後、『ダークネスバースト』を単純な脚力で回避した後に反転。
助走距離は十分。
――歩法 嚆矢
ロノウェは振り向きざまに腕を振るう。
それと同時収斂されたMPが剣となって射出された。
その数20。『ダークネスブレイズ』の10重発動。
平時なら面倒だが、生憎と今は『思考加速』の最中。
この程度の数の認識なぞ造作もない。特にホーミングとかもしないから余計にね。
せめて速度をもう少し上げなよ? サニーのだったらもっとルート限られて到達までに速度かなり落ちてる。
総じて温い。
靄以外脅威になり得ない。
…………それにしても、なんで『呪魔法』使ってこないんだろう? 『呪魔法』にしたって、手を出してデバフ与える以外のものもありそうなものなのにそれも使ってこないし?
まぁ、使ってこないならそれはそれでいいや。敵の脅威度なんて低いに越したことは無いのだ。
――斬法 豪――……
迎撃のロノウェの右の手刀、そこに纏うMPは『闇魔法』系統のそれとは僅かに違う色…………のように見えた。
思考さえろくに介さない一瞬の出来事、ただの直感。
だが、踏み込みに工夫が必要で隙も大きい豪雷は避けた。
手刀を避けるように半歩左へ。
上段から脇構えに刀を下ろしつつ、右足を踏み込み刃に遠心力を乗せる。
――斬法 伐刀
真横に薙ぎり、ついでに手刀を回避。豪雷ほどでは無いにしろ威力の高い伐刀だ。それもそこそこの速度が乗っているとなれば、靄に傷を入れる位訳が無い。
「『多重魔法』『ファイアランス』『魔法融合』」
即時退避。次の攻撃の為の助走距離の確保と避難を同時に行う。
『ファイアランス』が5重、その収束。
今までの魔法に比べれば威力は低いが、サニーの基礎的な魔法威力が高い為にダメージリソースとしてはちゃんと仕事をする。
だが、今回は私がやらかして靄を突破できなかった。だからサニーもMPの消費を抑えたのだろう。
だから、ロノウェのHPが2%しか減っていないのも当然と言える。
…………また、ロノウェのHPが遅れて減少した。
なんでだ?
そもそもHPの自動回復的なのあったのに、今はそれが機能していない。
それどころか僅かずつサニーの魔法とは関係なくHPが減っている。
いつからだ?
――恐らく靄を以前より高密度に纏うようになってから。
少なくとも私がロノウェのHPが勝手に減ったのを認識したのは、それ以降。
残り2分。
焦る程ではないが、迷っている暇はないか。
ガンガン行かないとね。
「『散魔対斬』」
――歩法・撃法混合 風蝕
地面と己を砕き、瞬間的に彼我の距離を零へともっていく。
咄嗟に両腕を交差し、胸部と顔を保護するロノウェ。
右腕だけでなく、左腕にも『呪魔法』らしきエフェクトを纏っているが、正面から斬り伏せよう。
「豪雷ッ――!!」
――斬法 豪雷
無音の踏み込み、全霊の袈裟斬り。高密度に纏った靄を何度も突破して見せたその斬撃を風蝕のエネルギーを余さず乗せて放つ。例え防御の上からでも心臓まで届かせるつもりで。
先よりも強い抵抗。
だが、威力が相手によって大きく変動する奥伝の剛咆を除いて、太刀上流最高出力の技がその程度で刃を止める訳が無い。
寧ろ一度振るいだしたら止めるのに苦労するレベルだ。
靄の前に濁った黒色が散る。
直後に靄に到達。腕の靄を斬り飛ばしてロノウェの身体を数m程弾く。
「『想起』!」
「――」
零した舌打ちはサニーの咆哮、爆炎にかき消された。
『フレイムカノン』の9重の圧縮。
現実基準なら塵も残らなそうな火力に晒されたロノウェのHPの減少量は12%。
残りは47%。
漸く半分だ。
さぁ、どのような手を打ってくる?
サニーの付近まで後退して、重心を落とす。
瞬間、視界の4割ほどが黒に染まる。
拙い。脳がそう思考する前に身体を動かす。刀を持ったまま背後のサニーを横抱きにして全力で跳ぶ。
下を見れば靄で覆われた地面。
それも以前のそれとは範囲が違う。圧倒的に今の方が広い。
境界線は、デーモン共の最前線。
「サニー、蹴散らして!!」
「『多重魔法』『フレイムバレット』ッ」
計63発の弾丸がデーモンの前線を蹂躙する。
だが、サニーの破壊の範囲外から飛来する魔法は止められない。
『空間機動』の力で空中を踏みしめて、デーモン共の反対側、ロノウェの背後へ空を駆ける。
ロノウェの視線がこちらを捉えた。
流石に近距離での急加速に比べれば今の私を認識するのは余裕だろう。
右手を掲げ、私達へ向ける。
私達が突っ込んで行く先、その空間に15の黒い球状のMPが展開される。
『闇魔法』の系譜。『闇黒魔法』のレベル40以降で覚える奴だろうか?
思考は嫌に冷静だが、現状はかなり拙い。
私にこれを回避する手立ては無く、私もサニーもVITMND共に低い。
「ラピス、離さないで! 『フレイムバーナー』!」
殆ど無意識、サニーを抱く力を強める。
瞬間、異様な力で腕が上に引かれる。
『フレイムバーナー』とは恐らくサニーが新しく習得した加速する魔法。
それで私ごと身体を持ち上げて、魔法の範囲を逃れる。
着地はサニーの『フレイムバーナー』と私の『風皚・籠転』でなんとかするとして、眼前の異常な範囲の靄……どうしようか?
全域で『呪魔法』とか使われたらいくら私のAGIが高くて『思考加速』を使っていても全てを無視して駆け抜けるとかは出来ないだろう。
これ、詰んだか?
サニーに『呪魔法』だけ払ってもらう?
端からロノウェのいる中央までの道を開くだけでもかなりのMP消費になる。
正直な話私達にそんなリソースの余裕はもうない。
でもデバフは無視できない。これ以上私の靄への影響力が無くなったらそれこそ詰みだ。
どうする? どうすれば…………
「――――はぁ?!」
「え、きっしょ…………」
叫んだのは私。
サニーは驚きよりもドン引いている。
魔法使いであるからこそ、なのだろうか?
ロノウェが展開した広域に広がる靄、それ以上の規模で茶色のMPが展開されている。
およそ半径にして50m。
こんなことが出来る存在は限られる…………と言うか、1人しか知らない。
やっと戻ってきたようだ。
お読み頂きありがとうございます。
今後も読んでくださると幸いです。




