焔と舞う
「『想起』」
サニーは『フレイムブレイズ』が9重で発動。
十八振りの炎剣が私の背後から空を駆ける。
それは私の迅雷程では無いにしろ、常人では満足に反応するのは難しい領域である。
そして、それは密集したデーモンにも当てはまる。
集団で固まっているのは勿論足を引っ張るが、実を言うとデーモン自体の反応速度は別に圧倒的なものではない。
そりゃ鍛えてもいない一般人よりはよっぽど速いが、人間の範疇にはしっかり収まっている。
まぁ、兎も角サニーのINTで放たれた『フレイムブレイズ』は威力の面でも速度の面でもデーモンにはかなり有効って話だ。
爆風に髪と服の裾が荒れ狂う。
でも、そんなのどうでもいい。
ただ斬る。…………と言いたいところだが、一点問題がある。
いや、その前にまずは――
「『練魔纏斬』」
――斬法 円環
集団の内に入り込んで、周囲を薙ぎる。MPを限界まで込めた『練魔纏斬』ありならばデーモン共の首を掻っ切る位は出来る。とは言え、確殺出来るのはサニーが魔法を巻き散らした結果だけど。
キルカウントを一気に3つ進めつつ、ちらりと後ろを確認。
厳密には後ろのサニーとの距離をだ。
サニーの姿を捉える寸前にチカ、と視界の端が瞬いた。
同時に豪と重々しい音が耳朶を打つ。
彼我の距離15mを1秒足らずで駆け抜けて、それどころか僅かに足を止めていた私を追い抜いて、デーモンの眼前へ。
「『想起』」
今度は『炎魔法』Lv.50で習得できる『フレイムショット』。
ショットガンよろしく射程が短いが散弾がばら撒かれる関係で高い面制圧力を持つ魔法だ。
それを8重。己を中心とした半円状に展開。
デーモンの至近距離でぶっ放された火炎の散弾は、直喩的な表現としてデーモン共をハチの巣にする。
殺した数は6。
やっぱり範囲攻撃では勝ち目がない。
殺戮兵器も良いところな我が親友だが、弱点は分かりやすい。
――歩法 嚆矢
急加速にてサニーの前へ。デーモンを蹴散らしてくれたおかげでスペース的にも時間的にも余裕が出来た。
「『散魔対斬』」
――斬法 地嵐
真っ向から一閃、正面からサニーを狙う『ダークランス』を斬り捨てる。
――歩法 迅雷
地嵐の体勢から更に身体を沈みこませる。重力を推進力に変えつつ、サニーにパーティー申請を行う。
「『練魔纏斬』」
目指すは先程の『ダークランス』の主。
サニーの強みは圧倒的な遠距離火力とそれに由来する面制圧。
逆に弱みは近接と回避。移動速度はさっきも見せた炎の魔法でなんとかなるかもしれないが、恐らくだがあれは小回りが利かない。ならば、回避性能は然程変わっていないとみるべきだ。
そんな弱みがあるサニーは勿論のことだが、遠距離攻撃に弱い。
近接を仕掛けてくるのならその前に消し飛ばせばいいが、同等以上の射程がある存在には弱い。
そこを私が補う。
「その加速、クールタイムは?!」
「無い! けど、MP消費エグイ!!」
なら…………、パーティー申請が通ったことを確認しつつ、手持ちのMPポーションの7割を移譲。
サニーにもMP消費が凄まじく感じるって相当に狂ってるね。
あいつMP上限3000よりも上なのに。
正面のデーモンメイジはMPを広げ、私目掛けて『ダークネスブレイズ』六振りを放ってくる。
――歩法 隘路
だが、弾幕として薄い。私を捉えるには薄いし遅いし距離がある。
最後の一振りを地面に身体を投げ出すようにして、回避。
瞬間的に迅雷の体勢に至って僅かに加速。
『『多重魔法』『生に撃砕を、地に颶風を。破砕の衝撃、意志を打ち砕く――』
後方、サニーの詠唱をパーティー間で繋がる通信機能で耳にしながら、刃を引き絞る。
――斬法 烈火
下から喉を突く一刀。だが、なんやかんや『ダークネスブレイズ』の影響かほんの少し踏み込みが甘かった。
なので、左拳を握る。
――斬法 玲瓏・撞響
拳で峰を打ち据えて、強引に刃を押し進める。
デーモンメイジの首を掻っ切って、数瞬。
次の獲物を探るろうと視線を動す……前に、斜め上へと全力ジャンプ。
高度は低め。
『この咆哮は世界全てを破壊する』『魔法融合』!!』
『炎魔法』Lv.60で習得できる『フレイムカノン』。
大火球を打ち出すその魔法をサニーが全力で行使するとどうなるか。
その答えが今ここに。
前方30mのデーモンが消し飛ぶか吹き飛ばされ、直線状の草木が跡形も無く焼け焦げた。
そして、その先に靄が殊更強い人型がある。
お読み頂きありがとうございます。
今後も読んでくださると幸いです。
この2人は公式からも別ゲーやってるのではないかと思われているっていう裏話。




