火災
爆炎がデーモンの集団に突っ込み、かなり距離のある私でさえ吹っ飛ばした。
私が覚えている限り、この現象を引き起こせる、または引き起こせる可能性のある存在は2例のみ。
そして、その内1例はこの戦いに参加できない。
火の精霊王 ローガ。彼女はユースさんと同様に私達の戦いには介入できない、と思われる。
なら、まぁ答えは簡単だ。
前方、赤が煌いた。
幾度となく響く炸裂音。
数は63。
先の光芒の時よりは小さいものの爆風は変わらず、私の頬を撫でていく。
「――『練魔纏斬』」
――歩法 迅雷
蒼炎を束ね、駆けだす。
デーモン共は混乱に混乱を極め、距離が結構ある私の周辺の連中の動きもガタガタだ。
今なら迅雷で一気に距離を稼げる。
あと早めに止めに行かないと流れ弾で私が死ぬ。
近づくのはそれはそれで攻撃の密度が上がって危険だが、ここで下手に攻撃を緩めさせるとそれこそ打つ手が無くなる。
リスクを承知で突貫するのが今の最適解だ。
さっきの63回の爆発。
あれは恐らく『多重魔法』での9重『フレイムバレット』。
『フレイムバレット』は小規模爆発を起こす火球を7発放つ魔法だ。
ここで大事なのが小規模という点。
63回分とは言えどう考えても小規模な音では無かった。
最初の大爆発だけは種が分からないが、今は関係ないだろう。
取り敢えず、合流を最優先として……その後はまぁ適当で良いか。
どうとでもなる。
「『スパークバースト』!」
まずは牽制及び怯ませるために範囲攻撃魔法で薙ぎる。
あれを見た後だと自分の魔法の威力に悲しくなるが、しょうがない。INTだけで計算しても1/8とかだろうし、その他スキル、装備の影響を考えると1割の火力が出ていればいい方だ。…………5%はあると良いなぁ……………………。
正面にいるのはデーモンナイト。
一撃入れる隙はギリギリある。でも、その後に繋がらないか。その真後ろにはフェンサー、その更に後ろにメイジ。これだとナイト殺しても面倒事は残るか。
「フ――ッ!!」
――撃法 飛衝
ナイトの胴に手を触れる。全身の体重と関節の締めにて力を伝導し、体重自体は然程でもないナイトを吹っ飛ばす。巻き込むのはフェンサー。メイジからの射線も切れた。
――歩法・撃法混合 風蝕
飛衝を放った後はこっちの動きが止まる。でも、風蝕なら多少無理な体勢からでも強引に加速できる。
現実なら絶対に出来ない無茶だけども、WJOならHPが減るくらいで済む。
多分骨折とかのデバフが起こる可能性が存在することはこの際無視だ。
「シャアァァアッッ!!」
――斬法 箒星
真正面から突っ込み、ナイト、フェンサーを瞬間的に串刺しに。
また、風蝕のエネルギーがその程度で終わる訳が無い。……が、足りないのでもう一度だ。
――歩法・撃法混合 風蝕
更に一歩、地面を砕きつつ前進。
メイジの腹にも刃を突き立て、抉りつつ思い切り引き抜く。
今更な話だが、デーモンの口が腹じゃなくて胸にあって良かった。胴への攻撃が難しいから今みたいな無茶は効かなかっただろう。
私の顔面を狙った拳が側面から接近してきたナックラーより放たれる。
刃を引き抜いたときの力に逆らわず、身体を回転。
20cm程斜め左へ、ついでに左手を開く。
――撃法 東雲
顎に掌底を撃ち込んで、視界を上へ。
身体の捻りをそのままに右腕を引き絞る。
「『練魔纏斬』」
――斬法 鎧通
至近距離でも腰の捻りがあれば、そこそこの威力の突きは出せる。
首を正確に貫いて、雑に蹴り飛ばして他の連中の視界を潰す。
こっちには目もくれず、今はただひたすら爆発の中心へ急ぐ。
斬って殴って蹴りつけて、抉って捨てて掻い潜る。
前後から攻められている為か、デーモンの戦闘能力は低下している。進めば進む程に魔法の密度が上がっていき、低下の仕方も悪化していく。
突き進むこと2分程、視界の先に見えた赤に咄嗟に半身となる。
私の背後、数体のデーモンを貫いたそれを尻目にゆっくりと進む。
――歩法 隘路
弾幕の如く乱舞する魔法の隙間を縫うように歩を進め、漸く着いた。
「『多重魔法』『ファイアブラスト』ォ!」
「ちょ、馬鹿ッ!!」
下手人――サニーがテンション任せに自身を覆うように座標を指定。
全てを薙ぎ払うつもりらしい。…………私も巻き込んで。
――歩法・撃法混合 風蝕
叫ぶより早く地面を踏みしめ急加速。
HPは減るが、必要経費だ。消し飛ぶよりはマシ。
「うっすうっす」
「救援に来たやつに殺されかけたんだけど??…………まぁ、良いや。来てくれてありがとうね。取り敢えず悪魔殺すの手伝って」
「実験ついでよ、気にすんない」
実験?
と言うと、最初のやつか。
「あれ、本当に何? あの勢いでぶつかったらサニー挽き肉不可避でしょう?」
「豪風のバリアと炎の加速魔法の合わせ技。いいっしょ?」
「たしかに凄かったよ。配信中なのに良かったの?」
「情報はとっくに公開してるし。あとINT次第だからここまで派手になるの私位」
本人が良いなら良いか。
じゃあ、まぁ――
「行こうかっ!」
「応さ。背中は任せな」
――歩法 迅雷
サニーを中心にポッカリと空いた空隙、そこを十全に使い加速、背後からの暴力的な魔法を確認さえせずに敵軍に突っ込んだ。
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