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Wisdom Joker Online 〜瑠璃色少女の配信録〜  作者: 月 位相
街無き未開

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堕つ

 メイジの防御力の上昇幅が大きい……と思われる。

 ある程度数斬らないと確実とは言えないけど、間違ってはいない筈だ。


 ナイトの防御性能は外皮が強固だからっぽいんだけど、メイジはその辺は普通のデーモンと大差ない。

 フェンサーやナックラーよりも柔いのは言うまでもない。


 だが、今の感触はさっき斬り捨てたナックラーよりも硬かった。

 なので、上昇幅はかなり大きいと思って良い。


 ただ、他の連中は防御性能はそこまで上がっていない。

 AGIやSTRの方が上がっている。


 ――これは憶測だけど、メイジはVITとINTに強めにバフを掛けているんだろう。


 それはそれとして、全体的に圧倒的なバフではない。

 なんでだろうか……?


 見た目はボスオーガの黒い靄と同一。

 だが、あれは自動防御が出来たのに対して、今のデーモンに付いているバフは基本的なステータス強化。

 全然違う。

 とは言え、同じエルフの国周りのイベントで同じ見た目なのに全く関係が無いとは思えない。


 なので、ここからは憶測。


「バフ対象が多すぎて、個々への出力が低くなっている。…………これが自然」


 厄介は厄介だけど、現状の倍率ならどうとでもなる。


 ただ、平時のボスオーガの性能が分からないせいで、靄による防御以外のバフの内容が分からない。

 一応あれが出力を絞らずにやった結果として仮定するとして、出来るバフはSTR、VIT、AGI、INTなど多岐に渡るのはたしか。


 どうしたものかな。

 これ何が問題って、ボスオーガレベルのバフを名持ちの悪魔が自身にかけた場合だ。

 少なくとも単独で殺すのは無理だ。


 最低でも太刀上流の誰かが1人欲しい。それかカレジさんかアルゴルさんのところのパーティー1つ。

 純粋に手数が足りない。


 ――いや、それは今もか。


 瞬間、半身になり僅かに身体を後退させる。

 私の真横、10cmの間隔も無く空を奔る『ダークランス』。


 ――歩法 滑歩

 膝で揺れを抑え込み、像を結ばせない歩法。


 MP(魔力)を視認しているモンスター相手には然したる効果はないが、それでも無いよりはマシ。

 本当に僅かながら反応が遅れることがしばしばある。


 現状デーモンの集団のど真ん中。

 細かく動き回り、なるべく遠距離攻撃の的を絞らせないようにしているが完全な回避はしきれない場合もある。

 現に風蝕以外の要因で私のHPは1割はもっていかれている。


 とは言え、一度回復を挟めたから今のHPは92%。

 余裕はある。その内に貯金しておくべきだ。


 今回視界の中で反応が遅れたのは、デーモンフェンサー。

 剣士名乗っておいて、この様なのなんなんだろうね?


 ――歩法 嚆矢

 動けるスペースが狭いから最高速度まで加速出来ないが、瞬間的な加速にて認識を振り切る。


「『練魔纏斬』」


 フェンサーとナイトとでは距離があり、味方に対する攻撃へ良く割り込んでくるナイトでも今回は間に合わない。

 いや、今の速度なら強引に逸らす位は出来るかな。


 ――歩法・撃法混合 風蝕

 地面を砕く踏み込み、嚆矢なんて比ではない速度にて彼我の距離を零に。


 雑な左袈裟斬り。

 だが、風蝕のエネルギーと限界までMPを込めた『練魔纏斬』を付与した紺紫金霆空切正近ならば、斬り殺せる。


 ――歩法 狼追

 本来手足の4点で移動のエネルギーを賄う歩法だけど、基本武器を持ったアレンジでばかり使っている気がするが今はいい。右手に刀を持ったまま左手と両足の3点で加速してデーモンの集団へ突っ込む。


「『練魔纏斬』」


 視覚をある程度頼っている生物ならば自分の足元付近の知覚能力は高が知れている。

 特に密集しているのなら、なおさらだ。


「――シィッッ!!」


 ――歩法・撃法混合 風蝕


 ――斬法 裂止

 超低姿勢のまま刃を腰と両手で固定。風蝕の力で地面の水平方向を跳ぶように駆け抜ける。


 膝下を斬れたデーモンの数は10近い。

 この混乱を更に押し広げ――――


「チッ…………!」


 風蝕の勢いが弱まった辺りで地面に広がる黒と紫が混じったMP。

『闇魔法』または『闇黒魔法』。

 該当するとしたら『ダークブラスト』か『ダークネスソール』。

『ダークネスバースト』は座標指定でなく自身の周囲を同心円状に襲う魔法だ。今回は違う。

 味方へのダメージよりも私への攻撃が優先順位が上になったか。……拙いね。


 兎も角、魔法は直撃したら死だ。

『散魔対斬』では使った後に周辺のデーモンの攻撃に対応しにくくなる。


 そして、前方のデーモン達はさっきまでよりも密度が高い。

 てか、本当にデーモンに終わりが見えない。そろそろ最初に見えた数の半分は斬ったのに奥までぎっしりだ。なんでこんなに無尽蔵なんだ?


 ――歩法 碧空

 最短距離にいるデーモンナックラーの右ストレートを躱して、膝、肩の順に足場にして跳ぶ。


 次は5体先のメイジ、その次は――


「――『散魔対斬』ッ」


 デーモンの情報ばっかり拾う聴覚が後ろの方から空気の唸りを捉えた。

 空中で反転、視認してからかち上げるように刃を振るう。


 ただの『ダークアロー』。

 でもそれ1つが致命になる。


 碧空はそこまで圧倒的な運動エネルギーを生み出せない。

 当然生物を足場にすると重心制御にリソースが取られる。風蝕みたいにはいかない。

 また今のタイミングでは風蝕で高く跳び上がるとそれはそれで的になるので碧空しかなかった。


 密集している状況下で斜め上にいる敵への正確な遠距離攻撃。

 恐れ入った。

 死んでくれ。


 地面への不時着を余儀なくされるけど、当然の如く着地予定地点にはデーモン共が待ち構えている。

『ダークピラー』もある。


 ふと、何かが耳朶を打った。

 先の唸りよりも強く、長い。


 視界を僅かに動かす。


 そこにあるのは赤い光芒。

 私よりもデーモンの集団の奥へ突っ込んだ。


 瞬く閃光。

 襲う爆風。

 響く炸裂音。


 暴力的なそれはベクトルが弱まっていた私の身体を後ろへ吹っ飛ばした。

お読み頂きありがとうございます。

今後も読んでくださると幸いです。

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