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お面ライダー ~かのライダーを愛するすべての人へ~  作者: 伊部九郎


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第21回 “4号と6号”

 弘と治郎は、来るときに寄ったファミレスに再び寄っていた。時刻は午後4時を回ったところだったので、店内は比較的空いており、問題なく他の客から離れた席を確保できた。

 少し立ち回りをして小腹がすいていたので、二人ともショートケーキのセットを頼んで、弘がコーラを、治郎がアイスコーヒーをすすっていた。

 1号から連絡が入るかもしれないと思い、弘はベルトを自分の横の椅子の上に置いていたが、例によって、店員や他の客からは見えないように右の太ももの陰になる位置にした。


「なんかすごい人数だったけど、あれ、何やってたのかな?」

「うーん、よくわからんな。俺が見た限りじゃ、普通に採掘作業をしているように見えたけどな。といっても、石を掘り出す作業ってのがどういう手順なのかは全然知らないけどな」

 治郎は、少し笑いながら言った。

「ああ、俺も知らないけど、普通に作業しているようには見えたな」

「1号さんがニョッカーは資金集めのために会社も経営してるって言ってたから、その会社の一つってことかな」

「それはあるだろうけど、ここいらで採れる水草石って、墓石とか記念碑に使うってやつだろ?それって、そんなに儲かるのかなあ。商社とかやってた方が効率良くないか?」

「ああ、確かになあ。俺も水草石ってのがどれほど儲かるか知らないけど、少なくとも商社の方が効率良さそうだな」

「そこらへんは、1号さんの増援が着いて、ニョッカー団員の一人でも捕まえたらわかるかもな」

「ああ、そうだな」

 治郎がそう答えたとき、窓の外を高回転の甲高いエンジン音を響かせて2台のオートバイがもの凄いスピードで先ほどの採石場の方へと走り去った。

「うわっ!なんだアイツら!150キロは出てたと思うぞ!こんな一般道で危ねー」

 治郎が驚いて言った。

「あのスピードじゃ、捕まったら1発で免停じゃないの?」

「ああ、そうだな。でも、あれだけ出てれば白バイに追いかけられても逃げられるな」

 治郎は笑いながら言った。


 通り過ぎたオートバイの二人は、弘と治郎がさっきまで立ち回りをしていた採石場に急行するお面ライダー4号と6号だった。

 4号がドイツ人、6号がスペイン人で、二人とも自国語しか話せないのに変身前の普通の姿だったため会話ができず、黙々とオートバイを走らせていたが、そのせいで知らず知らずのうちにスピードが上がっていたのだった。

 とはいえ、弘と違って、二人とも元々非常に高い運動能力を持っていたので、一般道でオートバイを150キロで走らせることなど造作もなかった。


 二人は、弘と治郎が曲がったのと同じ交差点から採石場へ向かい、目的地と近づいて行ったが、その距離が1キロほどになったところでオートバイを止めて藪の中に隠し、二人して変身して、弘たちが上ったのとは少し違う場所から採石場の崖の上に登って行った。

 二人とも、元々のジャブ力が弘の倍ほどもあったので、やすやすと崖の上までたどり着いた。

 それから、頭を低くして足音を立てないように崖の反対側の端に行き、採石場を見下ろした。

 しかし、端から端まで見渡したものの、どこにも人影はなかった。

「なんだ?・・・全員、あっちの横穴にでもいるのか?」

 4号が、右手の崖の下に開いている穴を指して言った。

「そうかもしれんが、俺たちに居場所がバレたのを警戒して、すでに逃げた後かもしれんな」

 6号はそう言ってから、左手に見えているプレハブの建物を指さして、

「あそこに誰か残ってるかもしれないから、とりあえず行くか」

 と、言った。

「ああ、そうだな」

 4号が同意すると、ほぼ同時に立ち上がり、二人して崖の下に飛び降りた。


 それから、窓から見えないように頭を低くして建物に近寄って行って壁にとりつくと、弘が暴れたときにできた壁の穴から中に入り、1階、2階とすべての部屋を見て回ったが、どの部屋にも人の姿はなかった。

 ただ、筆記用具が無造作に机の上散乱していたり、飲みかけのお茶があったりしたため、直前までここに誰かがいたのは間違いなかった。試しに4号がお茶の入っている湯呑を持ち上げてみたところ、まだ暖かかった。

「くそっ!逃げられたか!逃げ足の速い奴らだ」

 6号は悔しそうに言った。

「念のため、横穴も調べておこう」

 そう言うと4号は、入ってきた壁の穴から外に出て横穴に向かい、6号もそれに続いた。


 弘と治郎がファミレスで作戦会議を続けていると、突然ベルトの着信ランプが光った。

 弘は、ベルトをつかむとトイレの個室に駆け込み、立ったままお面ライダーに変身した。

 治郎も見張りを兼ねて後に続き、洗面台にお尻を乗せて弘の入った個室を見つめ、会話に耳を傾けていた。

「1号だ」

「あ、はい。どうも。何かわかりましたか?」

「たった今、4号から報告があったが、すでにニョッカーは撤収したあとで誰もいなかったそうだ」

「えー!そうなんですかー。そういうところは素早いなあ」

「ただ、あの場所を所有している会社は調べられるから、そこから手掛かりが得られると思う。とにかく、拠点の位置が特定できただけでも随分と前進だ。礼を言うよ、ありがとう」

 1号は本当に感謝しているトーンで言った。

「ところで、キミは今どこにいる?」

 続けて1号は聞いてきた。

「家に帰る途中にあるファミレスです。治郎と次はどうしようかって話してました」

「そうか。キミが言う通りの人数で逃走したとなるとかなり目立つ集団になるはずだが、それっぽい者たちがその辺りの道路を通ったりしなかったかね」

「いや、特にそういう大所帯が移動していくのは見てないですね。採石場の方にとんでもないスピードでかっ飛んで行った2台のオートバイは見ましたけど」

「そうか。ああ、その2台のオートバイは、たぶん、4号と6号だろう」

「ええっ!そうなんですか!めちゃくちゃだなあ。とんでもないスピード違反でしたよ」

「そうなのか。あいつららしい・・・でも、各国の政府に特権が認められているので、スピード違反には問われないようになっている。安心しろ」

「え?そうなんですか!?じゃあ、俺もスピード違反なし?」

「もちろんだ。ただし、任務中の場合に限るから、プライベートでスピード違反しても見逃してはくれないぞ」

「ああ、そりゃそうか。わかりました。でも、それは少し助かりますね」

「ああ、安心しろ。そうか、キミも高性能なオートバイに乗っているんだな?まあ、ライダーと名乗っているからには基本だな」

「え?・・・あ、はい。もちろんじゃないですか!」

 弘は、少しドキドキしながら答えた。

「そうか。しかし、お面スーツを着ていない状態での運転には注意してほしい。自分の運動能力に見合った行動をすることだ」

「あ、はい、わかってますって」

「それで、話を戻すが、かなりの人数のニョッカーの団員がキミの市で何かをやろうとしているのは確かなので、こちらで少し人数を投入して調べる予定だ。キミに聞いた人数の数倍の人員が投入されていることも考えられるので危険も高い。こちらに任せてキミたちは少し行動を控えて欲しい」

「あ、そうですか。それは、正直助かります」

「じゃあ、何か新しい事実がわかったら連絡する」

 それで電話は切れた。


 弘が変身を解いて個室から出ると、洗面台のお尻を乗せた姿勢で治郎が、ニヤニヤした顔でこっちを見ていた。

「なんだよ、その顔」

「お前のマシンが高性能なオートバイねえ」

「い、いいだろ!オートバイはオートバイだし!」

 弘は、少しむっとして言った。

「残念ながら、お前が乗ってるのは、原動機付『自転車』でオートバイではありません」

 治郎はニヤニヤしたまま言った。

「知ってるよ!うるさいな、もう!」

 そう言うと、弘は、治郎の横の洗面台で弘のズボンにかかるように大げさに手を洗った。

 しかし、治郎はその行動を予想したかのように素早く洗面台を離れた。

 逆に、そのしぶきが自分のズボンにかかり、弘のズボンは、おしっこの飛沫が飛び散ったようになった。

「ああ!なんてこった!」

「はい、残念でしたー。そして、相変わらずドジー!」

 治郎は、勝ち誇ったように言った。

「ちぇっ。お前の運動能力には敵わないな」

 弘はそう言ったが、特に怒っているというトーンではなかった。


 それから、二人して席に戻ると、

「さっきの話だと、他の2つの採石場には1号さんたちが行ってくれそうだから、俺たちは少し様子見をしよう。あの人数じゃ、さすがにヤバいしな」

「ああ、そうだな。それと、やっぱりお前はもう少しお面スーツに慣れないと、この先、もっと強い改人が出てきたら苦戦すると思うぞ」

「ああ、俺もそう思うが、それはお前もだ。いくら空手の達人だからって言っても、人間じゃないものを相手にするのは危険だぞ」

「うーん、まあ、それはそうなんだろうが、まあ、そこら辺は状況を見ながらなんとかするよ」

 と、治郎はニヤリとしながら言った。

「ホントにわかってんのか?とにかく慎重に頼むよ」

「大丈夫だって。それじゃ、明日は先週の採石場跡地で特訓だな」

「うん、そうしよう。よろしく頼むよ。今日のことがあったから、明日ぐらいはあの近辺にはニョッカーも現れないだろう」

「そうと決まったら、なんか本格的におなかが空いてきたな。飯も食って行こうぜ」

「ああ、俺もおなかが空いてきたからそうしよう」


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