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お面ライダー ~かのライダーを愛するすべての人へ~  作者: 伊部九郎


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第22回 “効果的な殴り方”

「じゃあ、まずはパンチ力を効率よく相手に叩き込むために、正しいパンチの出し方だ」

 次の日、二人はまたしても特訓のために先週使った採石場跡地に来ていた。

「空手の技は、突きも蹴りもそれぞれに型があって、そういう点に予備知識がないと覚えるのに時間がかかるだろうから、お前にはボクシングの殴り方を教える」

「あ、なるほど。ボクシングの試合ならテレビで時々見るし、パンチの名前も大体わかるから、そっちの方が覚えやすいかも」

 弘は、嬉しそうに答えた。すでに、お面ライダーの姿に変身している。

「先週のシロサイ男との戦闘を見てて気づいたのは、お前のパンチは相手に対して斜めに当たったり、一番威力が出る位置より前後で当たったりして、せっかくのパワーをロスしてるってことだ」

 弘は小さく頷きながら聞いている。

「それと、拳は、手の甲の人差し指と中指の付け根で骨が盛り上がっているところで殴るのが一番効果的だが、お前のは薬指の付け根や、ひどいときは手のひら側の指の部分で殴ってるパンチになってたぞ。そのスーツを着てるから平気かもしれないけど、生身でそんな殴り方してたら下手すると骨折するからな」

「えー、そうなんだー。それは怖いなあ」

「そうならないために、ボクシングでは内側にひねり込みながら打つようしている。いわゆる『コークスクリュー・ブロー』だ」

「あ、それ、なんかのアニメで見たことある。こんな感じだよね」

 弘は、そう言いながら右手で拳を内側にひねり込むように出す動作をした。

「おー、それそれ。そのお面スーツ着ているとちゃんとできるな」

「このくらいならお面スーツ着てなくてもできるぞ!」

「そうかあ?・・・まあ、そこはいいや。次は殴る位置だ。ストレートなら、パンチが伸びきる直前、フックやアッパーなら、パンチが体の真ん前に来る、一番スピードが乗ってるところで当てるのが効果的だ。要するに、ストレートを出すにしてもフックやアッパーを出すにしても、拳の当たる位置と力の伝わる方向は意識して欲しいってことだ」

 弘は、また細かく頷いて聞いている。

「じゃ、俺が手本見せるから続けてやって」

 治郎はそう言うと、体の右側が弘に向くように左を向いて立って、ボクシングのファイティングポーズのような構えをした。

「まずはストレートだ。こうやってパンチを伸ばしていって・・・」

 治郎は、そう言いながら、ゆっくりと右の拳が前に出るように腕伸ばしていった。伸ばしながら、握った拳の親指側が下に向くように腕をひねり込んだ。

「そして、肘が伸びきる直前のこの位置でパンチを当てる」

 そう言った位置で少しの間腕の動きを止めたあと、右腕を完全に伸ばしきった。

「こうだ。わかったか?もう一回やるぞ」

 治郎は、そう言うと、もう一度同じように右のストレートを出して見せた。

「さ、やってみて」

 治郎がそう言ったので、弘はファイティングポーズを構えて同じようにパンチを出してみた。

「あー、ダメダメ。拳をひねらないで真っすぐ出してる。それじゃ、パンチの威力が落ちるよ」

「あ、そうか。じゃ、もう一回」

 弘は、そう言ってからもう一度パンチを出す動作をした。拳を内側にひねり込むのを注意しながら。

「うん。まあ、大体いいかな。やっぱりお前、いつもと違って、お面スーツ着てるとすんなりできるな」

 治郎が納得したような顔で言った。

「えー!?このくらいは変身しなくてもできるぞー」

「いやいやいや、絶対できないね。お前、頭は悪くないから頭じゃ解ってるんだけど、体がバカだから、昔から頭で考えてる通りに体が動かせなかっただろ?」

「・・・う!それは間違ってないかも」

「わかればよろしい。じゃあ、覚えてるうちに繰り返しやって。前にも言ったけど、物事を覚えるには反復練習が絶対必要だからな。特に、戦ってる最中は考えながらなんてできないから、無意識にできるようになるまで体で覚えないとダメだ」

「おう!わかった」

「それと、お面スーツに慣れるために、走ったり飛んだりもして、どの程度力を入れればどこまでスピードが出せるかとか、どの程度ジャンプできるかとかも、体で覚えないとダメだぞ」

「そうだな。よし!ちょっとあっちでやってくる」


 弘はそう言うと、百メートルほど離れた場所に2秒ほどで移動した。

「うわ!あのスピード、こっちが慣れないわ」

 治郎は、その様子を見て言った。

「・・・じゃあ、俺も最近運動不足でちょっと体がなまってるから、久しぶりに筋トレやるか」

 治郎は、続けてそう言ってから体のストレッチを始めた。


 そのまま30分ほど、二人でバラバラに訓練をしていたが、そこで、自動車が進入路の坂道を上がって来る音が聞こえてきた。その音からして、かなりの排気量の車のようだった。

 弘と治郎がそっちを見ていると、黒いメガクルーザーが現れた。

「なに!?」

 二人同時に声を上げていた。

「あの車は!」

「ニョッカー!」

「しばらくここらには現れないと思ったのに、何のつもりだ!」

 弘が素早く治郎ところに戻ってきて言った。

 二人がその場に立ったまま見ていると、メガクルーザーの運転席から雑兵が下りてきて後部右側のドアを開けた。

 するとそこから、先週弘たちと立ち回りをしたテッポウウオ男が下りてきた。

「あ、あいつは!」

 弘が言った。

「何しに来た?・・・てゆーか、お面ライダーにアジトを発見されたのが分かってるのに、その近辺になぜのこのこ現れた?」

「何か、ここによっぽど大事なものがあるのかな?」

「アジトにするには好都合だ、みたいなこと言ってたから、すでに何らかの機材を運び込んだのかもな」

「そうかもな。そして、それが見つかりそうだから引き上げに来たってことかな」

「でも、それにしちゃ少人数だな。他に乗ってるヤツはいないないみたいだから二人だけ?」

 治郎は、メガクルーザーが現れた採石場の入り口の方を、他に車が来ていないか見ながら言った。

「うーん確かに。変なの」


 弘と治郎がそう話していると、改人の話し声が聞こえてきた。

「ここが先週報告のあった拠点にできそうな場所か」

「はっ!」

 改人の質問に雑兵が短く答えると、二人は崖の方を向いて、品定めをするようにその近辺を見回していた。


「は?もしかして、今から何かするための視察?」

 治郎は少し驚いた声で言った。

「なんか、そうっぽいけど、昨日の今日でなんでまた」


 改人は、さらに右の方にも視線を送って行ったが、そこに昨日見たお面ライダーとその相棒が立っているのを見つけて動きを止めた。

「な!・・・お前たちは昨日の!」

 改人は驚きの声を上げた。

「はぁーい」

 弘は、お茶目にそう言って、改人に向かって手を振った。


やっと半分終了。これから戦闘シーンが増えていきますよ~。

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