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77:やつか1 土俵入り

「やりました!米俵3俵もらいました!」

 え、景品やったんか。

「やったね!」

「かーっ(やった!)」

「大した力持ちどすな」

「とつかさん、よろしければ後ほど日本の重量挙げに関するオハナシを」

「とつかちゃん、いい娘ねえ、良かったら私の妹にならない?」

「駄目です」

 あかんに決まってるやろ、曖昧な返事でもして言霊的に認められちゃったりしたらかなわんから即拒否る。

「スポーツサポートに関しては後ほどお話し合いいたしましょう」

 しかし米俵って、どうやって持って帰るんだ?


 成人男性の部が始まる。今度は60kgの俵からスタートで、獣人とか獣人とか。獣人ばっかりやん。いや、普通の人もおるけど紛れるなあ、犬っぽいのと狸っぽいのと熊っぽいの、でももしかした全部人間かなあ。

「これは、純粋な物の怪はいませんな、基本的にほぼ人間ですな」

「ちょっと眷属化されてる?くらいなものね」

「あれどすな、(あやかし)は一応排除されてるようどすな」

 専門家が多くて助かります。

 でもやっぱりエスパーやん。

 やつかさんが廻しを巻いている、いや全員廻しを巻いている。これからというところで、呼ばれた。消防団の獣人ぽいあんちゃんについていく。隅っこの狭いテントに入れられる。やっぱり廻しか。

 うぉ、くっさ!

 生成りっぽい色の、綿の廻しである。勿論新品ではない。廻しは洗わないというのは伝説ではなかった。

 一応消毒してあるというが、臭いやん。でもしゃあないんやろなあ。ほんま諦念が先に立つのは良くないと思うんやけど。

 グイグイ締めてもらって外に出ると、なんでか全員とつか上げしとる。いわゆるスナッチ、溜めずに一気に上げるやつ。

 米俵2つは全員クリアしたようで、3つ縛ったやつを順番に上げている。

 全部で7人、俺を入れて8人。あれ?俺も出るのん?

 やつかさん含めて3人がクリアしたところで、俺に順番が周る。1回戦シードみたいなー。

 余裕で持ち上げて回転、次は4俵か。2俵の俵を2つ括り付けている。

 熊みたいなんとたぬきみたいなんは持ち上がらなかった。

「きえぇーーー!」

 やつかさんが怪鳥の声を上げてがばっと持ち上げる。プルプルしながら立ち上がった。よっしゃ、頑張れ。

 周囲の歓声が大きくなる。ゆっくり回ろうと思っていたのだろうが、微妙に傾き出す、そのままくるりと回って放り出す。あれ、ごっつ微妙やなあ。

「……成功!」

 ヤンヤの喝采を受けている。微妙やけど、お祭りやからな。もりあがれば、ありやね、あり。

 やつかさんが完全にへたばって、転がってしまう。やっぱこれで限界やわな。

 俺はあんちゃんに頼んで、5俵の塊を作ってもらう。ここで一気に決めよう、面倒くさくなってきたしな。

 300kg。これって人類の限界やんな、多分。

 せーの!

 おっと、上げすぎた、ほり投げてもうた、ちょっとジャンプ、よっしゃ掴んだ、安定した、あせるわほんま。

 すり足もせず、どすんどすんと1回転。よっしゃ。

 行司が真剣にこっちを見ている。あれ?下ろしてええんかな。ええよな。

 ドシンと地響きを立てて米俵を置く。

「成功!」

 見届け役の男が叫ぶ。

 行司が流れるような動作で姿勢を正す。

 自分も蹲踞の姿勢で居住まいを正す。

「かね~かつ~ら~」

 割れるような喝采、当然ご祝儀はないので軽く礼をして立ち上がる。本殿に向かって一礼。

『いいねえ、滾るねえ』

『いえいえ、そんなに大したことでは』

『本番でも楽しませてねえ』

『鋭意努力いたします』


 れいかとすてに烏と猫が大げさに喜んでいるのが見えたので、軽く手を振って、案内されるままに下がる。

 奥のテントの前辺りにゴザが敷いてあり、そこが仮の楽屋となっていた。

「神さんとお会いできて光栄です」

ユプケカムイ(つよいかみさま)に会えてうれしい」

「握手してよろしいでしょうか」

「かねかつら様!がんばりました!」

 とつかうるさい。って、口々に何か言いつつごつい連中が寄ってくるが、汗臭い、暑苦しい、毛深いからもじゃもじゃする、やめてくれ。SAN値が削られるというのは、こういうことか。

 やっぱり、トーナメント形式で相撲することになっているようだ。昨日予選があったが、2人例の負傷で出られなくなったらしい。申し訳ないなあ〔棒〕

 一応簡単にルールの説明があった。顔への張り手、突っ張りは禁止。サバ折り禁止。関節系の技も禁止。無茶はしないように。後は普通の相撲と同じ。

 顔見世というか土俵入りというか、先程の4人で土俵に登って四股を踏んで豊穣祈願をしてから始まるということだ。

 ぞろぞろと即席の花道を通り土俵に上がる。4人が東西南北を向いて、蹲踞。

 千代の富士の四股はかっこよかった。こう、ぴーんと足を伸ばして、力強く下ろす。

「そーーれ!」

 見届人の声に合わせて、四股を踏む。ドゴーン。あれ?

 また空気が止まる。ああ、来たなスーさん待ってたホイや。

 水の中のような、でも今度は何故か動くことができる。なんでや?と思い振り向く。

 羆がいる。金太郎がいる。やつかさんがいる。え?前を向いて他の4人を見る。めっちゃ日に焼けたおっさんが3人。最後についさっき見たイケメン、スーさん。

 羆がしゃべる。

『いや、やっぱりたまらんので来たわ。』

大山祇(おおやまつみ)様。なんで羆なんでしょうか?』

『ほら、儂って山の神やん?(きむんかむい)ってアイヌでは山の神やん?なんとかなるもんやで?』

『えぇ……そうっすか。わかりました。で、金太郎さん、坂田公時さん、ですね?』

『おおそうじゃ。熊と相撲といえば儂じゃからな、来てやった』

『やつかさん、も話せるのかな?』

『われこそが當麻(たぎま)蹴速(けはや)野見宿禰(のみのすくね)よ尋常に勝負じゃ』

 やつかさんの目が逝ってる。

『ちょっとまって。俺?野見宿禰なの?』

めんたしね(すまんね)。ちーとお邪魔しとる。』

『え、中におられるんですか?』

『あー、蹴速がはばしわやくそ(めっちゃめちゃくちゃ)言いよるんわ。』

『本当に申し訳ないんですが、標準語でお話しいただけませんか?』

『あー、すまんな、金桂殿には申し訳ないが、蹴速に引っ張られてのう。本来相撲関係の神さんって言えば儂のようで、蹴速も組になってるから、出ざるを得なかったんじゃなあ。まあ、必要なのは体裁だけだから、躰は自由になってる、ていうかこちらでどうこうできないですな、すごい神気ですなあ』

『いえいえ、いや、わかりました、やつかさんのせいですね、分かりました』

 もう一度正面を見ると、スーさん、

『うっふっふ、呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン』

『別に呼んだ記憶はないんだけども』

『ばーか、土俵で四股を踏んで祓っちゃったんだから、ここはいきなり神域になったんだよ』

『まじか』

『まーじまーじ』

『このバカっぽいノリやめね?』

『むーりむーり』

『お前は小学生男子か!』

『神格系男子だよ!』

 ……。

『すみません、そちらはどなたでしょうか?』

『うむ、吾は上筒之男命(うわづつのおのみこと)

『うむ、吾は中筒之男命(なかづつのおのみこと)

『うむ、吾は底筒之男命(そこづつのおのみこと)

『『『三人合わせて……とぅ!』』』

 飛び上がり空中で重なり合う。

『『『合体!』』』

 ぴかーと光り、真っ黒い大男が1人。

『『『吾こそは住吉三神(すみのえたいしん)なり!』』』

 合体してもエコーがかかるんか?一人カラオケか?

 いや、いや、そうではなく。合体とか。いや、そうではなく。

『えー、とですね。えー、あれですね、海の神様で相撲がお強いとかでございましたか』

『『『そうじゃ!スサノオ殿が楽しそうにしていたので、機会を伺っていたのじゃ!』』』

 スーさんに半眼を向けるが、飄々として

『なんかさぁ、気付かれちゃって。姉貴とか撒いたんだけどなあ』

 のんきに(うそぶ)いてるが、はあ、来たものはしょうがないんか?このまま相撲やって大丈夫なんか?

『大丈夫だよ、加護のない普通の人間には、普通の人間にしか見えないし。ちょっと迫力はあるかもだけど』

 そこで気がついて桟敷を見ると、ペレとあおいさんが手を振っている。

 りくと伏見課長は青ざめて手を挙げて、固まってる。いや、動けないわけじゃない、わかってビビってる感じやね。狐はのんびり尻尾を揺らしている。え?尻尾?人間のかっこなのに尻尾?

『……失礼しました』

 はっと気付いた様子で、ドロンと尻尾が消える。

 とつかとれいかと烏と猫は、とりあえず動いていない。動いていないが目はせわしなく動いている。すては首を動かしてキョロキョロしている。

 これ、とつかにすてやれいかまで、影響を受けてんのか?大丈夫か?(なにが?)


 他に動いているものは……いやいるいる、桟敷に、強そうなのがようさんおるやん。

 見物客、いや見物神……。お客様は神様ですって、三波春夫か!

『結構熾烈だったんだよ、出番争い。あれは頼光(らいこう)(つな)、あれは吉法師(のぶなが)、あれもっといるかな?』

 ……

 ぱねー。

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